コラム/技術的な情報

なぜQoS/帯域制御が必要なのか?

安定したネットワーク環境を構築するために

QoS(Quality of Service)は、アプリケーションの通信要件に応じて、データを流す順番や量をコントロールする技術です。帯域制御(Bandwidth control/management)はQoSの一部で、特定通信に帯域を保証/制限する技術です。

QoS/帯域制御が必要な理由

 企業におけるネットワークのトラフィックは、量と種類のどちらもが増加し続けています。特に2020年以降の新型コロナウイルス禍では、テレワークの導入が促され、トラフィック量増加の傾向は一段と高まっています。
 性質の異なるさまざまなトラフィックがネットワークに混在しており、アプリケーション(VDI、データ、音声、動画など)ごとに異なる必要なネットワークの通信品質を、どのようにして維持するかが企業の課題になっています。
 例えば、制御系や音声では必要な帯域幅は少ないものの、通信品質低下の影響は大きくなります。音声ならば、通話が途切れ途切れになるなどの業務コミュニケーションへの支障が出ますし、制御系では通信経路が切り替わってしまうなどといったネットワーク全体に影響を及ぼす可能性があります。一方、データ転送においては必要な帯域幅は多いものの、通常はパケットロスなどは再送により補完されるため影響は大きくはありません。
 通信品質の低下を招く原因は、主に2点ほど考えられます。
 まず、通信の集約ポイントでの混雑(輻輳)による遅延やパケットロスが考えられます。複数の端末やサーバから通信経路上にある1つのスイッチやルータにパケットが集まるとそこで送信待ちが発生し、その結果、パケット間隔が増大してしまい遅延してしまう、スイッチやルータのバッファで受信しきれずパケットロスしてしまう、といったことが起こります。
 次に帯域差によるパケットロスです。通信経路上で帯域差があるポイントのネットワーク機器は、帯域差を吸収するためにパケットをバッファリングしますが、バッファでも救えずに廃棄される可能性があります。例えばLAN側からルータを介してインターネットに接続する場合、LAN側は1Gbit/sでルータ以降が100Mbit/sのような場合にパケットロスが起こる可能性があります。データセンタ回線が1Gbit/sで拠点回線が100Mbit/sという構成で、データセンタから拠点への通信についても同様です。
 また、これらを引き起こしやすい、瞬間的に大量のパケットが送信されるマイクロバーストという問題もあります。
 このような原因による通信品質低下を防止/抑制するために必要な技術がQoS/帯域制御となります。

集約ポイントでの遅延
送信時にパケット間隔が増大
帯域差によるパケットロス
バッファでも救えずに廃棄される可能性がある

優先制御と帯域制御

 前述のとおり、ネットワークにはさまざまな種類の通信が混在しており、通信内容に応じてそれぞれに適した通信品質を確保することが必要です。ネットワークを利用したサービスを安定的に運用するには、通信を伝送する順番や量を調整する技術が必要です。
 文書ファイルのような通信ならば、ある程度の遅延は許容されます。しかし、音声や動画のような、リアルタイム性が求められる通信では遅延は運用上致命的な問題になります。
 通信の種類によって、送信の順序を変更する技術が優先制御です。通信の種類に応じて優先度を設定し、優先度の高い通信を優先的に伝送したり、優先度の低い通信を制限することによって、伝送要求が増大した時も通信が途切れないようにすることができます。
 また、通信の種類によって、帯域を保証したり利用できる帯域を制限する技術が帯域制御です。混雑時にも重要な通信は帯域を保証し、重要な通信が流れていない際には非重要通信で空いたその帯域を利用できる、といったような帯域の効率的な利用も帯域制御を使用することで可能です。企業ネットワークにおいては、例えば大容量ファイルを送信しようとするユーザーに対して、回線を独占させないといったことにも利用できます。
 QoSでは、これらの優先制御と帯域制御を組み合わせて行います。

優先制御と帯域制御

通信品質を維持するために

 現在、テレワークや在宅勤務が増える傾向にありますが、リアルタイム性が強く求められる動画などの通信量が増加することは、ネットワークの運用上よい傾向とは言えません。帯域は無尽蔵であるはずはなく、通信量の増加は必然的にネットワーク管理者を悩ませることになります。
 帯域が不足しているなら、回線を増速する方法もありますが、増やしても、さらに増やしても足りないという状況に陥りかねません。
 ネットワーク管理者は、ネットワークの用途拡大、利用者の急増、利用時間の増加、特定時間における利用者の集中など、深刻な悩みを抱えることになっていきます。そして、通信の遅延やデータロスなどの通信能力不足は、苦情の原因にもなります。
 通信量の増加と帯域確保は永遠の課題であり、終わりはありません。帯域拡張にはコストの問題もあります。必要であろう帯域の調査、拡張に伴うネットワークの再構成、機器の更新や新規導入、設定の変更など膨大な作業が必要になります。
 さらに、短期間のうちに何度も帯域拡張を行うと、その都度、大きなコストと労力が必要になります。また、帯域を増やしたとしても、集約ポイントや帯域差が発生するポイントは通信経路上どこかに存在し、通信品質低下を招く懸念は残ります。
 そのため、通信の品質を維持するためには、限られた帯域を効率的な使用を可能にするQoS/帯域制御が必要となります。ネットワークを流れる通信に対して、通信の種類によって流れ方を変えることができれば、限られた帯域でも快適なネットワーク環境を実現できるわけです。
 ネットワークの通信品質向上、維持にお悩みでしたら、QoS/帯域制御装置の導入をご検討なされてみてはいかがでしょうか。

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