Case 1 SCSK-GAI開発

Y.N.
事業革新推進グループ 技術戦略本部
技術開発部
理工学研究科修了｜2020年入社

社内専用環境下に生成AI（以下、GAI）環境『SCSK-GAI』を構築するべく発足された開発チームのリーダーを務める。SCSK-GAIリリースにあたって、GAIの業務利用のためのガイドライン作成や機能検証などを行った。リリース後は、社内の文書などの独自データの内容を元にGAIが質問回答を行う機能の開発に従事し、社内外のニーズに応じた検証を実施。現在は、他社との差別化のための新機能開発に取り組んでいる。

記事内の情報は2023年度取材当時のものです

GAIの活用に
乗り出す背景

GAIは「技術ドリブン推進」の
重要テーマに

2022年秋、OpenAIからChatGPTがリリースされ、公開後5日間でユーザ数が100万人を超えるなど大きな反響を呼んでいます。ChatGPTは対話型の生成AIサービスの1つで、人間がテキストで指示を与えるとその内容を理解し、人間のような回答ができることから大きな注目を集めました。従来のAIは翻訳や文章分類、要約などタスクごとに特化したものでしたが、ChatGPTは複数のタスクを処理することができます。WEB上の大量のデータから学習した内容を元に様々なタスクを実行可能なChatGPTは、ビジネス分野からも大きな期待が寄せられています。
既存業務の効率化・品質向上をはじめ、新たなビジネスやサービス創出の原動力になりうる生成AIは、経営基盤強化の手段として「技術ドリブン推進」を掲げているSCSKにとって、まさに可能性の宝庫といえます。経営陣はGAI開発を重要な注力テーマと位置づけ、さっそくプロジェクトが発足しました。

GAIの
試用環境を
整える取り組み

アジャイル開発で
早期リリースを実現

プロジェクト始動にあたって私たち開発メンバーが最初に求められたのは、全従業員が安心・安全に利活用できるGAIのWEBアプリ環境の早期整備です。競合が無数にひしめくなかではスピード感が重要になるため、開発チームはスタートから約半月でのリリースを目指すことになりました。
早期リリースを達成するため、アジャイル開発の一般的なスクラムよりもスプリントの期間を短く設定し、開発サイクルを高速で回しました。開発メンバーにはAIの研究チームのメンバーに加えて、WEBシステム開発やインフラ開発、システム運用で経験豊富な方にも参画してもらいました。開発中はメンバー間のコミュニケーションを密にして意思決定や諸作業の速度を高めました。こうして「SCSK-GAI」を構築し、社内専用のクラウド環境下でのリリースにこぎつけたのです。
また、GAIは非常に有望な技術である一方で、扱ううえでの注意点が多数あります。私たちは、開発と並行して「利用ガイドライン」を作成し、各社員が試用できる環境を整えました。

GAIを活用した
新サービス創出の
取り組み

質疑応答支援システムとして
概念検証に着手

SCSK-GAIリリース後は、コーポレート業務への適用を推進するとともに、SCSK-GAIを活用した既存業務の効率化・新規サービス創造につなげるアイデアソンの取り組みなどを通じ、SCSKの強みである多様な業界・業務に従事する役職員からの意見・企画を収集するなど、生成AI活用のノウハウを蓄積していきました。
それらの取り組みの中で、問い合わせ対応業務の効率化を目的にSCSK-GAIを活用した質疑応答システムの概念検証を実施しました。
本システムでは、公開済みの情報を学習している汎用的な生成AIとは異なり、経営資料や社内文書などの非公開情報を参照し、利用者からの質問に対して適切な回答根拠となる文書を検索し、SCSK-GAIが人間らしい自然な回答を利用者に返します。
検証では、過去の株主総会やアナリスト向けの説明会で実際に発生した質疑応答を参考にして、回答の精度や速度の評価を行いました。検証を重ねる中で、生成AIに意図通りの回答を実行させるためのチューニング方法などのノウハウを蓄積することができました。現在は、社内外での問い合わせ業務全般への適用範囲の拡大を目指し、ユースケースごとに検証・導入準備を進めているところです。

今後の
目標・ビジョン

スピード感をもって
GAI技術によるサービスを創出

「スピード感」は、本プロジェクトの始動時から重要視されていますが、社内の試用環境が整い、実用化に向けたサービスの整備も推進している現在は、全従業員が自分ごととしてGAIの活用法に考えを巡らせ、迅速な実用化を強く意識して臨んでいます。また、SCSKでは、人々が日常的に使う言語をコンピュータに処理させる「自然言語処理」に長年取り組んできていますし、社外のAI有識者とのネットワークも構築できています。今後のトレンド予測やGAIをシステムに組み込むための課題抽出など、早いタイミングで先々を見据えたアクションを起こせる体制が整っているのです。
そもそも、SCSKは技術が好きな人の集団です。新たな情報が出れば誰もが進んでキャッチアップに努める風土が根付いていますから、GAIという先端技術をお客様のさまざまな課題解決につなげる新たなソリューションサービスとして、次々と創出し、社会に新たな価値を提供していきたいですね。

Message

学生へのメッセージ

ご紹介したGAI以外にも先端技術に触れられる機会が多い会社のため、私自身がワクワクしながら職務に臨んでいます。また、重要なプロジェクトのリーダーを入社4年目の私が担えるくらい、若手にチャンスが巡ってくる会社でもあります。
自身が興味・関心のある技術を用いて社会課題を解決できるので、技術に興味がある方にはぜひおすすめしたいです。