能力・スキルを高める、活かす「事業戦略と人材ポートフォリオ」

事業戦略と人材ポートフォリオ

事業戦略と人材戦略の動的な連動

SCSKでは、事業戦略と動的に連動する中期の人材ポートフォリオ計画を、各事業をマネジメントする組織単位で策定しています。この計画に基づき、OJTとOFF-JTを組み合わせた人材育成やリスキリングを実行することで、事業戦略に合致したスキルや高度な専門性を有する社員の育成を進めています。さらに、多様な社員がそれぞれの能力や意欲を最大限に発揮できるよう、事業の構造改革、適材適所の人材配置、職場環境の整備などを同時に進めることで、人材価値最大化を目指しています。

これまでの取り組みにより、事業計画の達成に必要なスキル・人員構成を示す人材ポートフォリオと現状とのギャップを認識し、そのギャップを解消するための人材育成、安定的な人材確保、最適配置を計画し、実行するプロセスが浸透しつつあります。現在は、事業戦略をリードする高度デジタル人材や事業拡大の鍵となるハイスキル人材を定め、採用活動の強化を図るなど、より戦略的な人材ポートフォリオの活用を推進しています。今後も市場環境の変化に柔軟に対応しながら、この取り組みを一層加速させ、SCSKグループの人材価値最大化と企業価値向上を目指します。

人材価値最大化を実現するキャリア開発基盤

事業の成長と社員一人ひとりの成長を通じて人材価値を最大化するために、事業戦略・人材戦略・社員の能力発揮と成長意欲の三位一体の連動を重視しています。その実現に向けて、自律的・戦略的・統合的なキャリア開発基盤として「iCDP(IntegratedCareer Development Plan)」を策定し、人事制度・施策との連動を図りながら、人材価値最大化の基本サイクルとして運用しています。

「iCDP」の効果的な運用を支える仕組みとして、人的資本管理システム「LAP-HCM」を導入しています。人材情報の可視化・分析を可能にすることで、全社的な人材戦略の立案をはじめ、各組織のマネジメントや育成計画の策定、社員一人ひとりのスキルアップと自律的なキャリア形成に活用しています。これらの取り組みは、ラーニングカルチャーの醸成にもつながっており、社員の成長を通じて企業価値の向上を目指す基盤として機能しています。

※ LAP=Learning,Action and Pleasure / HCM=Human Capital Management

キャリア開発基盤「iCDP(Integrated Career Development Plan)」

未来を創る人材の確保

事業戦略と連動した人材ポートフォリオ計画を策定し、新卒採用とキャリア採用の両輪によって、安定的かつ戦略的な人材確保を推進しています。

新卒採用においては、将来の中核人材の発掘・育成を目的に、現場で活躍する若手社員が一定期間リクルータとして採用活動に専念する「専任リクルータ制」を導入しています。この取り組みにより、学生とのリアルな接点を創出し、当社の企業文化やキャリアパスに対する理解を深める機会を提供しています。入社を決めた理由として、会社の将来性や事業内容に加え、社員の人柄やライフステージに応じた柔軟な働き方が挙げられており、当社の魅力が多面的に伝わっていることがうかがえます。

キャリア採用においては、採用市場の変化に柔軟かつ迅速に対応するため、採用チャネルの多様化を積極的に推進しています。中でも、社員紹介によるリファラル採用の強化は、企業理解度の高い人材の獲得を可能にし、選考通過率や定着率の向上にも寄与しています。2025年3月期には、社員がより主体的に紹介活動に参加できるよう、スマートフォンアプリと連携した社員紹介システムを導入しました。社員が自社の理念や魅力を自らの言葉で発信することで、エンゲージメントの向上や企業文化の浸透といった好循環が生まれつつあります。

事業戦略をリードする高度デジタル人材の育成

SCSKでは、中期経営計画において、事業戦略の実現に向けた高度デジタル人材の育成を重点施策として位置づけています。デジタル技術を活用した先進技術者の育成に加え、コンサルティング機能の拡充・強化や新規事業開発を担うコンサル・ビジネスデザイン人材、質の高いプロジェクト遂行とマネジメントができる高度プロジェクト・マネージャ人材の採用・育成に関して、具体的な目標を設定し、育成強化を図っています。

コンサル・ビジネスデザイン人材

市場をリードする事業推進、次世代デジタル事業創出に向けて、実践ワークショップ型の育成プログラムを実施しています。新規事業開発や事業創出に必要な知識・スキルの習得機会を拡充するとともに、SAPやモビリティなどの成長分野ごとに独自の上流人材像を定義し、戦略的に育成を強化しています。

コンサル・ビジネスデザイン人材の育成目標を示すグラフ

高度プロジェクト・マネージャ人材

案件の大規模化・複雑化に対応し、高品質なプロジェクト遂行を実現するため、事例研究やケースメソッドを活用した判断力・行動力の強化研修を実施しています。また、PM専門部会のコミュニティ活動を通じて、社内事例共有や人脈形成を促進し、組織全体のプロジェクトマネジメント力の向上を図っています。

高度プロジェクト・マネージャ人材の育成目標を示すグラフ

デジタル先進技術者

急速に進化するデジタル技術や、お客様のデジタル変革に対応できる人材の育成が求められる中、技術スキルに加え、ビジネス変革をリードする力も重視しています。技術トレンドや現場ニーズも踏まえ、実践力と推進力を高める研修プログラムを拡充し、クラウドやデジタル技術に関する専門性と戦略的思考力の向上を図っています。

デジタル先進技術者の育成目標を示すグラフ

デジタルスキル人材

新たなビジネスモデルやサービスの創出を促進するため、グループ会社を含む全社員を対象にデジタルスキル標準教育を実施しています。DXの概念や関連技術の習得に加え、市場動向について学ぶ意義と重要性を浸透させ、グループ全体でのデジタルスキル人材の育成とラーニングカルチャーの醸成を推進しています。

デジタルスキル人材の育成目標を示すグラフ

キャリアオーナーシップの推進

仕事に対する価値観が多様化する中、社員一人ひとりがオーナーシップマインドを持ち、自らのキャリア開発に主体的に取り組む重要性が高まっています。SCSKでは、社員自身がキャリアプランを策定するCDP(Career Development Plan)制度を、より自律的かつ戦略的にキャリアをデザインしていくCDP(CareerDesign Program)制度へと進化させ、変化の激しい環境下でも自らのキャリアの軸となる“内的キャリア”を探索する機会としていきます。

若手キャリア開発プログラムでは、若年層の早期戦力化を目的とした4年間の教育プログラムに加え、キャリアの考え方や事業に精通した社内のキャリア・アドバイザーによるキャリア・アドバイス面談を通じて、自己理解と環境理解を深め、キャリアビジョンの検討を支援しています。

さらに、ジョブ・チャレンジ(人材公募)制度では、SCSKグループ全体での人材募集に挑戦できる機会を提供し、キャリア・チャレンジ(社内FA)制度では、自らの経験・スキル・意欲を、希望部署に直接アピールすることが可能です。これらの制度により、組織によるジョブアサインに加えて、社員自身が新たな業務や環境に挑戦できる仕組みを整え、自律的なキャリア形成を力強くサポートしています。

キャリアオーナーシップ推進とラーニングカルチャー醸成の制度・施策

ラーニングカルチャーの醸成

人材価値の最大化には、社員が環境変化に柔軟に対応し、継続的に学び続けることが不可欠です。SCSKでは、全社教育プラットフォーム「SCSK i-University」を通じて、「キャリア開発」「リーダーシップ開発」「ビジネス能力開発」「グローバル能力開発」「専門能力開発」と「越境学習」のカテゴリで200コース以上の研修を提供しています。「専門能力開発」では専門性認定制度に基づく職種別研修を設定し、ハイレベル認定者が研修アドバイザーとして参画することで、知見の共有と専門性の強化を図っています。また、多くの研修を組織による受講指名型から社員の手挙げ型へと移行し、自律的な学びと成長を積極的にサポートしています。

また、「コツコツと自己研鑽を重ねることが、勝つ・克つためのコツ」という考えのもと、社員の自己研鑽を可視化・応援する「コツ活」のプラットフォームを提供しています。学び手当や資格取得報奨金による自己研鑽の奨励や、スマートワーク・プラス(副業・兼業)制度により、業務に関連した学びのみならず、幅広い領域の技術・知識の習得や経験を通じた多様な学びを促進し、ラーニングカルチャーの醸成を進めています。

SCSK-iUniversity 教育体系

専門性を可視化し、成長を加速する専門性認定制度

「SCSKキャリアフレームワーク」を活用し、社員の専門能力を7段階で評価・認定する専門性認定制度を導入しています。技術職・営業職の専門性を可視化することで、社員一人ひとりのキャリアステップを促進し、持続的な成長を支援する仕組みとして運用しています。専門性認定審査のプロセスを通じて、目指すべきレベルとのギャップを把握し、その結果をもとに上司とともに具体的な育成計画を策定・実行することで、専門能力の着実な向上を図る環境を整えています。

また、職種ごとの有識者で構成された専門部会を設置し、認定審査の審議に加え、職種別コミュニティの形成や事例共有など、社員の専門性向上を支援する活動を推進しています。これにより、専門分野における知識と経験の社内共有が促進され、職場全体のスキル向上にもつながっています。さらに、2022年12月に経済産業省・IPAが発表した「デジタルスキル標準」を活用し、デジタル人材の可視化にも取り組んでいます。これにより、ビジネスイノベーション人材やマルチスキルを備えたエンジニア、セキュリティ/AI/データサイエンス人材などの育成を強化し、変化の激しい時代のニーズに応じた専門性の強化を進めています。

専門性認定制度の進化にも取り組んでおり、よりタイムリーな専門性の可視化と認定審査プロセスの負荷軽減を目的に、一部のレベル認定審査でAI技術を導入。認定業務の人的負担を軽減し、スピーディーなスキル評価の実現を目指して制度改定を進めています。