ステークホルダーダイアログ(2013年8月)

ダイアログ開催日 2013年8月1日

SCSKは、成長し続ける企業になるためには社員に働きやすい職場環境の提供が必要と考えています。
働きやすい、やりがいのある会社になるために何が必要なのか、有識者の方々と意見交換をさせていただきました。

(所属・役職は2013年8月時点)

働きやすい、やりがいのある会社を目指して

ダイバーシティ推進のため女性のキャリア開発に注力

薗田 「働きやすい、やりがいのある会社」を目指しているSCSKですが、最初は、ダイバーシティ推進のために女性が長く働ける仕組づくりから始められたと聞きました。岡下さんは、そうした仕組を、率先して利用されてきたとのことですが、女性の働きやすさという点で、どのような感想をお持ちでしょうか。

岡下 真理子(SCSK)

岡下 1991年に女性の総合職5期目として私が入社した当時は、まだ女性は結婚したら退職するものとして考えられていました。私は社内結婚・出産した後も仕事を続けましたが、それが産休取得後に復職した会社初の例となりました。これには当時の上司の理解・協力も大きかったと思います。「これからの時代のモデルとなるように頑張って」と部署異動を含めてさまざまな支援をいただきました。それから徐々に制度も整ってきて、十数年を経た今では全く状況が変わり、育児休業を終えた部下や後輩たちがどんどん戻ってくるのを心強く感じています。

佐藤氏 結婚・出産を機にした女性の退職率には、結婚する以前の初期キャリアが大きな影響を与えています。「結婚して子供が生まれてもこの仕事を続けたい」という意識が根付くかどうか、また、出産後に育児が大変な中でも「早くフルタイムで職場復帰したい」と思えるかどうかは、入社後の数年間で決まってくるのです。仕事のやりがいやおもしろさを伝えるという点でも、この時期の配属先の上司は重要な役割を担っています。

小室氏 佐藤先生のおっしゃる通り、女性のモチベーションダウンは早い時期に起きることが多いといえます。結婚を意識し始めた頃に「この先もずっとここで働けるか」を考え、自分の周囲に前例がいなければ諦めてしまいがちです。女性の定着率をさらに高めていくためには、入社3~5年目の女性へヒアリングを行いその声に耳を傾ける、または結婚・出産を経てキャリアを積んできている先輩社員たちとの交流を促すなどの支援も必要でしょう。

中谷 当社では2011年の合併を機に、働きやすい会社づくりへの取り組みを本格化させており、結果として今では社員全体の定着率がかなり上がってきています。年間の離職者は2~3%程度まで減少し、極端な男女差もありません。ただ、確かに入社3~5年目という早い時期の女性へのサポートは十分ではなかったかもしれません。女性管理職を増やすなど一層のダイバーシティを推進していく上で、今後は真剣に考えていくべきだと感じます。

すべての社員にとっての持続可能な働き方へ

薗田 結婚・出産を経ても、やりがいを持って働き続けられると、女性が早いうちから実感できるようにするためには、会社としてどのような取り組みが必要なのでしょうか。

佐藤 博樹氏(有識者)

佐藤氏 育児中の人が働き続けられる環境整備は非常に大切であるものの、気をつけなければならないのは育児と仕事が両立しやすい特定の部署ができてしまうことです。配属先が限られてしまえば、能力開発機会やキャリアを妨げかねません。重要なのは会社全体の働き方を変えていくことでしょう。育児休業や短時間勤務から復職した女性が「普通」のフルタイム勤務に早く戻れるためには、「普通」が仕事と子育ての両立を可能とするものでなくてはなりません。毎日長時間の残業を前提にしていては不可能です。

中谷 まさにご指摘いただいた通りで、今SCSKでは「スマートワーク・チャレンジ20(以下スマチャレ20)」※1 と銘打ってそれを目指した取り組みを進めています。周りが早く帰る職場では当然ながら自分も帰りやすく、周りがきちんと有給休暇を取っていればやはり自分も取りやすくなります。

岡下 その点、私の部署では課長の私が育児のため週3日は定時で帰るので、「帰りにくい」という雰囲気はないかもしれません。私自身「絶対に残業できない」という意識から働き方が変わりましたし、周りにもできる限り仕事を早く終わらせて帰るよう呼びかけています。ただ、やはり全社的に見れば残業を減らすことはまだ大きな課題です。スマチャレ20では具体的な数値目標がトップダウンで定められており、積極的な残業削減のよいきっかけになったのではと考えています。

佐藤氏 育児よりさらに多くの社員に関係するのが仕事と介護の両立です。50代以上に多い管理職の人も、親の介護に直面すると、仕事だけの生活は成り立たなくなります。なぜ今の働き方を変える必要があるのかを、全社員が自分のこととしてとらえられるよう意識の変革が求められています。介護休業は育児休業とは異なり、取得する人が多いほど良いという制度ではありません。自分で抱え込んでしまうのではなく、地域や専門家の手を上手に借りられるような情報提供が企業にも求められています。

小室氏 「ワークライフバランス」と聞くと他人事のように感じてしまう世代の社員たちも、「親の介護と仕事の両立」と聞くと身近なこととして響きやすいようです。介護の問題はいざ直面してからでは対応が間に合わず、退職という道を選んでしまう人が多くいます。親の介護をどう考え、どのような制度があって、いかに乗り越えていくべきかといった情報は、高齢の親を持つ社員にあらかじめ提供し、備えさせておくことが極めて重要です。

※1 スマートワーク・チャレンジ20:社員の健康増進を目的とするとともに、①業務の効率化や生産性の向上、②積極的にリフレッシュや自己研鑚を図り、さらなる生産性の向上につなげる、という好循環のきっかけを作る取り組み。「年次有給休暇取得日数20日(当年度付与日数の100%消化)」と「平均月間残業時間数20時間(前期比平均20%低減≒1日平均20分減)」を全社目標としています。また、目標達成のため「スマチャレ20アイディアコンテスト」を行っています。

残業削減のため、業務を徹底的に見直して

薗田 ワークライフバランスは全ての社員に関係する問題であるとすると、仕事のやり方そのものの見直しも重要なポイントになるかと思います。この点については、どのように取り組まれているのでしょうか。

大嶌 良彦(SCSK)

大嶌 システム部門の残業削減では、お客様との契約形態も課題となっています。私の部署でも7割の社員がお客様先に常駐していますが、時間精算での契約となっていることが多く、残業を減らそうと思っても定時退社しにくいという現実があります。現在は、これを勤務時間に左右されない成果ベースでの契約に切り換えるよう取り組んでいるところです。

小室氏 納期や仕事の進め方について、お客様との交渉が必要になることもありますね。時間精算での契約では、短納期であればコストも削減できると誤解されやすいですが、納期を短縮しようとすると実質的な現場の負担は大きくなり、本来は高コストになるものです。そのことをお客様にもご理解いただいたうえで、適切な納期をお客様と調整すべきでしょう。なぜ残業が発生するのかを見直し、その仕事は本当に残業なしでやれないかを徹底して追求していただきたいと思います。

大嶌 その意味で私が日々重要だと感じているのは、お客様の業務をいかに深く理解するかという点です。いただいた指示通りに業務を行ったところで、お客様が本当に求めるものを理解していなければ手戻りが増えます。残業ゼロを目指すためには、そうしたロスのない仕事のやり方を確立していかなければなりません。今までSEという職種は労働時間が長くて当たり前とされてきましたが、SCSKが率先してこの慣習を変えることで、業界全体をもっと良い方向へリードしていければと考えています。

小室氏 現在進められている労働時間削減のための「スマチャレ20アイディアコンテスト」は、少しやり方を変えれば、さらに成果があがるのではないでしょうか。残業の原因は部署ごとに違いますので、それぞれの原因に即した削減策が必要です。削減アイディアを共有するだけでなく、この部署の業務内容はこうで、このように問題を洗い出したらここに原因がありました、といった原因と抽出方法を、対策や成果と併せて共有すれば、他部署でも効果的な取り組みを選択できます。

中谷 仕事のやり方そのものの変革が本当に求められているという点は人事としても痛感します。残業削減は長く訴え続けてきたことですが、ただ単に上司が「残業をするな」と命じるのでは、残業削減はあまり進まず、むしろ社員一人ひとりの負担感だけが増すだけになりかねません。

佐藤氏 残業削減の上でもうひとつ気をつけるべきなのが、毎日の残業を少しずつ減らして平均残業時間を抑えるよりも、残業ゼロの日を週に何度かつくることを優先するということです。残業が必要な場合は計画的に日を決めて行い、ただ漫然と仕事を続けている状態がないようにします。これは言い換えれば、毎日だれかが定時で帰っている状況を各職場で当たり前にするということです。

小室氏 定時で帰る曜日を固定することも重要ですね。固定の曜日に継続して早く帰れるのであれば、社員は新しい勉強や習い事を始めるなど自己研鑽の時間を確保しやすくなります。

自発的に学び続ける社員が企業の未来を支える

薗田 労働時間を削減することで、社員が自己研鑽を行い、能力を上げることができれば、会社にとってもメリットが大きいですね。社員が自ら学んでいくことに対して、会社はどのようなスタンスを取れば良いのでしょうか。

小室 淑恵氏(有識者)

佐藤氏 変化が激しい現代社会においては、社員に求められる職業能力も変わってきています。企業の未来を支えるのは、今、目の前にある仕事を問題なくこなせる人ではなく、数年先の変化に対応していく汎用的な職業能力や高い学習能力を備えた人材なのです。会社が将来のために学び続ける社員を高く評価し、支援することは欠かせません。

小室氏 まさに同感ですね。会社が自分にかける期待を感じられる人ほど自己研鑽に励む傾向があります。管理職の方は部下と長期的ビジョンを話し合う機会をしっかり持っていただきたいと思います。5年10年後のキャリアをどう考えているか、そこを目指すため今どんなスキルを磨くべきかなど、一人ひとりの自発性を引き出すマネジメントやコーチングが大切でしょう。スマチャレ20のような取り組みを定着させていくためにも、社員が主体的に動くことが不可欠です。

大嶌 ご指摘の通り、私たち管理職がコーチングスキルを磨いていくことは重要だとつくづく感じます。「上から言われたからこうする」といった取り組みは長くは続かず、監督者がいるかいないかに関わらず現場のメンバーたちが自発的に働き方を変えていくことが求められるのでしょう。そのためには、まず私たちが努力し、目標としてもらえるような姿を示していかなければなりません。

中谷 働きやすい職場づくりとは、やりがいのある会社づくりとも密接につながっているのだと感じます。SCSKで働く多様な人材が自発的に自らを高めていけるような、やりがいを追求する企業を目指したいと思います。

薗田 綾子氏(ファシリテーター)

薗田 ぜひ、「やりがいナンバーワン企業」を目指していただき、本当に魅力ある人たちがたくさんくるような会社を実現していただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

ステークホルダーダイアログを受けて

中谷 光一郎(SCSK)

今回のダイアログでは、「働きやすい、やりがいのある会社」を実現するうえで示唆に富むお話を多くうかがうことができました。現在、スマチャレ20を通して働き方の見直しを進めていますが、より社員一人ひとりが自身のための取り組みとして理解する上で、今後は「介護の備え」に着目した取り組みをさらに進めていきたいと思います。また、働き方の見直しで創出した時間を、将来に向けた学習や多様な人との交流など、社員自身の成長に活用してもらえるよう、一層の支援をしていきたいと考えています。