SCSK

事例| iRobotiRobot社がaPrioriコストモデリングを使ってサプライヤー交渉を最大化する方法

iRobot社はaPrioriのコストモデリングと見積ソフトウェアを採用することで、変革を開始しました。このケーススタディは、iRobot社が導入当初の課題をどのように克服し、最終的にどのようにコスト見積のベストプラクティスを導入して成功に至ったのかを検証します。
コストドライバーの分析とサプライヤーとの交渉において、aPrioriはどのようにカスタマイズして、ボトムアップ戦略を導入したかをご覧ください。

問題

aPrioriを正しく活用していなかったため、真のShould Cost(あるべきコスト)ツールではなく、ベンチマークツールとして認識されていた。

ソリューション

aPrioriを構築し、ベストプラクティスを導入することで、コスト見積精度を高め、より良い収益を実現する。

iRobot社はどんな会社か?

iRobot社は、ロボットの設計・製造を行うロボット分野のリーディングカンパニーであり、人々の生活をより良くすることをサポートしております。その素晴らしい製品ポートフォリオには、iRobot OS Home Intelligence、掃除機やモップのルンバ、空気清浄機などがあり、顧客に多様な体験を提供しています。

本社はマサチューセッツ州ベッドフォードにあり、ヨーロッパ、中東、アフリカ(EMEA)、アジア太平洋(APAC)の各地域で「iRoboteers」と呼ばれる1,100人以上の熟練した従業員をグローバルに擁しています。

問題:aPrioriコストモデリングの限定的な理解と活用不足

iRobot社は当初、新製品の総コスト構造を評価するために、別のコストエンジニアリングツールとExcelのスプレッドシートを使用していました。しかし、このような従来のツールは時間がかかり、エラーが発生しやすいため、満足のいく結果が得られませんでした。 この問題に対処するため、iRobot社は射出成型モジュールの研究開発・設計部門でaPrioriを採用しました。目的は新製品導入(NPI)のためのDTC(Design to Cost)とVA/VE(ValueAnalysis/Value Engineering)プロセスに焦点を当てることでした。さらに、aPrioriのデータに基づく実用的なインサイトは、実業務においてのオペレーションと、事実に基づいた交渉を行う調達での活用を支援します。

しかし残念ながら、iRobot社はaPrioriのコストモデリングテクノロジーを効果的に導入することができず、不正確で定量化できない結果を招き、ソリューションに対する信頼を一度失いました。加えて、iRobot社の社内文化は新しいソフトウェアを採用することに適しておらず、aPrioriは高度なコスト計算テクノロジーではなく、ベンチマークツールとして認識されていました。

社内評価の結果、iRobot社の意思決定者は、aPrioriの自動化主導コストモデリングツールをフルに活用していないことを認識しました。同社は、aPrioriを使用して正確かつ迅速にコストを見積もるテクノロジーと機能を持っていたにも関わらずです。 結果として、iRobot社はaPrioriを再度立ち上げ、チャレンジャーマインドセットで収益性に焦点を当てました。これにより、同社はコストを削減し、ロボット掃除機市場に新規参入をする競合他社に対して優位に立つことができました。 再立ち上げの過程の中で、iRobot社は最初の導入時点の欠点を特定しました。 詳細は以下の通りです。

  • ・CADファイルを読み込み、正確なコスト見積を待っているだけというほど、ソリューションは単純ではありません
  • ・関係者は結果を出す前に、問題と目標を正確に特定する必要があります
  • ・コスト見積の精度を上げるため、正しい仮説を立て、関連するデータを収集し、Should Cost(あるべきコスト)に活用する領域を理解する必要があります

「多くの人はaPrioriを手に入れたら、電卓が手に入ったように、1+1=2だと考える。しかし、そうではない。むしろ、1が何かであるかを定義し、2を得るために1を足すことが何である AJay Vermaかを定義する必要があります」 -AJay Verma氏 シニアコストエンジニアリング・アドバイザー

関連記事:コスト見積りソフトウェアを最適化し、利益を向上させるiRobot社の4つのベストプラクティス

ソリューション:コストモデリングのベストプラクティスを活用して、aPriori適用を促進

iRobot社はaPrioriをベンチマークとR&Dにおいてのツールとして認識していましたが、それ以上のものであることが証明されました。aPrioriソリューションは、メーカーに以下を可能にします。

  • 1. 正当化でき、粒度の細かいコストモデルを作成する
  • 2. 初期のコスト要因を特定し、見積プロセスを合理化します
  • 3. 部門間のコラボレーションとコミュニケーションを強化し、情報に基づいた意思決定を行う
  • 4. 標準化され、繰り返すことが可能なコスト計算プロセスを獲得し、サプライヤとの事実に基づいたディスカッションが可能になります。

これらの利点を活用するため、iRobot社のチームはコストモデリングのベストプラクティスを取り入れ、aPrioriプラットフォームの活用を再開した。これらのベストプラクティスをグループ化したのが、以下の5つの明確な戦略である

1. 社内のビジネスニーズを満たすためのaPriori設定

iRobotには、aPrioriのコストモデリングソリューションを使用するためにカスタマイズされたアプローチを必要とする独自の要求と障害がありました。同社はaPrioriを効果的に使用するため、データーベース開発や関係者のトレーニングに割くことができる労力を評価しています。

aPriori側のエキスパートサービスチームは、iRobotがプラットフォームをシームレスに統合し、活用できるように支援する上で非常に重要です。彼らはaPrioriソリューションのデモと詳細なトレーニングを提供し、CADで座利用を識別するためのユーザー定義属性(UDAs)を設定しました。

2. サプライヤーの「ブラックボックス」を解明し、コスト削減機会を特定

iRobot社は、個々の製品コンポーネントの内訳が分析が不足しているため、サプライヤーの総コストを理解することが困難でした。 状況を分析した結果、iRobot社は様々な要因が効率的にコストを検討し、サプライヤーと協力する能力を妨げていることを発見しました。これらの要因には以下が含まれます

  • • aPrioriのコストモデルの使用方法について間違った期待や知識不足があった
  • • カスタマイズの必要性を考慮することなく、aPrioriにリアルタイムで正確な結果を期待した結果、信頼を失った
  • • 部品の最終的なコストのみ注目し、その算出方法を考慮しなかった
  • • 非効率的な交渉アプローチに頼った

これらの問題に対処し、コスト見積を改善するため、iRobot社は以下の変革を行った

  • ・現在のニーズに合わせてaPrioriの使用方法を再定義
  • ・ビジネスモデルに合わせてaPrioriのデータベースをカスタマイズし、サプライヤーごとに特化したデジタルファクトリーを作成
  • ・コストモデルを活用し、事実と仮定に基づいてサプライヤーに異議を唱え、サプライヤーの原価計算構造と技術パラメータを明らかにするように促した
  • ・aPrioriのソフトウェア、計算、データベースの理解を深めるため、トレーニングプログラムを再開した
  • ・交渉戦略を総コストからコストドライバー比較に変更

3. サプライヤーとの関係強化のためコストドライバー認識の最大化

iRobot社は、aPrioriによる新しいボトムアップ・アプローチを採用、コスト要因を特定し、各費用要因を評価し、サプライヤーとの事実に基づいた議論を促進します(図1)


aPrioriの見積は、世界87地域の原材料、労務費、製造間接費など、様々な現実の要因に基づいた高精度なものです。これらの見積は、iRobotの様なメーカがサプライヤーから部品を調達する際に、調達の意思決定を改善し、コスト削減機会を創出するのに役立ちます。
「aPrioriは企業が”こちらの言い分”と”向こうの言い分”という対立的なやり取りから、サプライヤーとの知識に基づいた対話へと変革するのに役立ちます。」-Daniel Costa氏 新製品開発コスティングチーム マネージャー

4. 継続的な学習とデータ統合によるコスト見積の改善

iRobot社はaPrioriのコストモデリングソリューションを採用することで、サプライヤーとのやり取りから得られるデータを統合することができます。メーカーは頻繁にサプライヤーを訪問し、直接費や間接費、工具料金レートなどのデータを収集します。この反復的なアプローチにより、iRobot社はサプライヤーから最新の情報を常に最新の状態に保つことができます。 次にこの情報はaPrioriに追加され、サプライヤ価格とaPrioriによって算出した見積価格との間の大きなギャップをピンポイントで特定します。この戦略はiRobot社に以下の様な方法で役に立ちました

  • ・コスト見積のため最新かつ最も正確なデータを確実にaPrioriに反映するようにする
  • ・サプライヤーのコスト構造をより深く理解する
  • ・将来のコスト分析とサプライヤー交渉プロセスの合理化
  • ・隠れたコスト要因と、さらなるコスト削減機会を特定する

5. 製品開発の最適化に注力

iRobot社は新規設計のコストと価値を最適化するために、研究開発部門や製品開発チームと社内で協力しています。これらのベストプラクティスは、設計から製造、調達にいたる製品開発プロセスにおいて、他のグローバルなイノベーターが同様の成果を達成するのに役立ちます。

結果:コストドライバー比較で10%近い削減を実現

aPrioriを再スタートさせた後、iRobot社の新製品開発チームは、初回から適正なコストで革新的な製品を市場に投入することに成功しました。彼らは以下製品で優れたコスト削減を達成しました

Clean Base® Auto-Fill Dock.:

この大型のドックは、ごみ箱を自動的に空にして、自動で洗浄タンクに水を補充します。プラスチック部品のコストを最適化するため、iRobot社はコストドライバーのアプローチとaPrioriの正確なShould Cost(あるべきコスト)見積を使用して、サプライヤーの見積とのギャップを特定しました。その結果、iRobot社は1台当たり7.5ドル、つまり15%の削減を達成しました。生涯生産台数は20万台に達する見込みで、iRobot社は150万ドルの削減を見込んでいます。

Roomba Combo®.:

このロボット掃除機は床掃除のイノベーション製品として広く認知されています。ルンバの製造工程は通常の射出成型よりも複雑で、そのためサプライヤーはiRobot社に高い価格を請求するようになりました。これに対抗するため、iRobot社のシニアコストエンジニアリング・アドバイザー・AJay Verma氏は、自らサプライヤーを訪問し、サービス、セットアップ、金型能力、プラスチック工程について学習しました。iRobot社はその後、これらのパラメータを使用して、aPrioriで高精度のコストモデルを作成しました。最終的にiRobot社は、新製品販売サイクルタイムを短縮しながら、最初の交渉で9.61%のコスト削減を実現しました。

Front-End Innovation (FEI) Projects.:

iRobot社のFEIアプローチは、実際の生産を開始する前に新製品の可能性をアイデア化し、評価をします。aPrioriは、プラットフォーム内で新しい量産技術を探求し、以前に採用が見送られたコストのかかる設計コンセプトを再検討することによって、企業のFEI戦略を支援します。


iRobot社がaPrioriの役割を特殊な研究開発ツールから、コストエンジニアリングとサプライヤー管理を改善する多用途のソリューションにどのように変えたかを詳しくお聞きください

関連記事:コスト見積りソフトウェアを最適化し、利益を向上させるiRobot社の4つのベストプラクティス

iRobot社の次なる目標は?

iRobot社は”Zero-RFQ"を達成するため、aPrioriのコストモデリングソリューションを活用する計画を発表しました。aPrioriを使用することで、iRobot社は面倒で時間のかかる見積依頼書(RFQ)プロセスを省略し、適切なサプライヤーに直接発注書を送ることができます。さらにaPrioriは、RFQを作成する前であっても、iRobot社は製品コストを理解することが可能になります。

関連事例