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事例| ABB 株式会社 島田テクニカルセンター開発、営業、カスタマーサ−ビスがフル活用
Vault Professional で生かすCAD データ資産

導入の背景・効果

当事業部の製品は、標準品と個々のお客様 向けカスタマイズ品の2つがあり、特に後者 はどんどん増え続けます。以前は紙の図面 で管理していたので、名豊(名古屋)で「注文が来た製品について知りたい」となると、島田にいる私たちが図面をひっくり返して 探し、ファクスしていました。電子化した今では、PC にアクセスして、ブラウザで営業自身が簡単に検索できます。どのお客様の どの工場に納めた製品か、ドキュメントも含めて Vault Professional で管理しているので誰でも簡単に見つけ出せるのです。

寺田 勝 氏

ABB 株式会社 オートメーション・モーション事業部 ロボティクス部門 塗装機器部 研究開発グループ 工学博士 システムチームリーダー

ソフトウェア

AutodeskⓇ Vault Professional/Autodesk InventorⓇ/AutoCADⓇ Mechancial

何よりまず AutoCAD Mechanical との親和性の高さが大前提である
そこで私たちが採用したのが、Vault Professional だった

CAD データという情報資産を活用するために

ABB 株式会社は電力・オートメーション技術を中心に世界約100カ国に展開する ABB グループの日本 法人である。その技術力を生かし日本でも製造、販売、サービスの各分野に展開している。 「中でも、産業用ロボットを用いた工場の自動化事業を担うのが BU ロボティクスで、ここ島田テクニカル センターでは、特に自動車の塗装機器に使う塗装機を研究開発しています。」そう語るのは塗装機器部で 研究開発グループを率いるチームリーダー、寺田勝氏である。寺田氏によれば、同ビジネスユニットは他 にエンジニアリング部門やセールス&マーケティング部門が置かれた渋谷本社と、メンテナンスを担う名 豊事業所の2カ所に主拠点があり、これらの拠点が連携しながらワールドワイドに事業を展開しているの だという。

「塗装機ロボット本体は主にノルウェイの ABB が開 発しており、製造は中国の ABB で行なっています。日本ではこのロボットの主要パーツの1つである、塗 装機の先端部分の開発が中心となっています。当初は国内自動車メーカー向けのスタートでしたが、今は 各社とも世界各地に工場があるのでお客様も海外の方が多いくらいになり、地域に関係なく世界中に輸出 しています。」 こうしたことから、同社では早くからその膨大な製品、部品類の図面を中心とする書類管理が大きな課題となっていた。CAD 化はいち早く実現していたが、当 初データ管理は生データをフロッピーディスクにバックアップするしかなく、一時は数千枚の FD を管理 する状態だった。これではデジタルデータは全く生かされず、紙図面と変わらないレベルの活用しかできなかったのである。

Vault Professional の操作画面
Vault Professional の操作画面

「その対策として、2000年ごろに PDM システムを導 入しました。これはドイツの PDM 製品で、欧州の ABB で導入実績があり入れやすかったのですが、導 入後いくつかのトラブルが発生しました。特にメイン ツールの AutoCAD Mechanical との親和性に大き な問題があったのです。」 ABB ではグループの標準 CAD として AutoCAD Mechanical を ABB 全社で使っているが、この PDM が AutoCAD Mechanical との親和性を欠い ていたのである。結果、バージョンアップ毎に PDM のインターフェイスに不具合が発生し、改修に多くの 工数が費やされた。 「それでも4〜5年使い続けましたが、やがてベンダー がサポートを終了してしまい、これを機に他の PDM へ乗り換えることになりました。新規導入する PDM の前提は、もちろんメンテナンス等の手数をかけずに 済むこと。つまり AutoCAD Mechanical との親和性 が高い高機能な PDM 製品を、という条件でした。そ こで出会ったのが、Vault Professional だったのです。

3つのオートデスク製品の緊密な連携により それぞれのパフォーマンスが最大限に発揮される

オートデスク3製品の緊密な連携による相乗効果

「当時 Vault Professional は登場したばかりの 新製品でしたが、業界ではすでに成熟した CAD だった AutoCAD のメーカーの製品ですから、信頼性は十分期待できるだろうと考えました。もちろ ん他社製品とも比較しましたが、前記の CAD との親和性やコスト面も考え、Vault Professional を選んだのです。」そう語るのは塗装機の設計開発を担当している井之上大樹氏である。

Vault Professional のバージョンアップや保守も担う同氏は、寺田氏と共に導入検討も行なったのである。 選定理由とした AutoCAD Mechanical との親和性の高さは期待通りだったと言う。 「以前は CAD のバージョンアップの度に PDMのインターフェイスを作り直しましたが、Vault Professional 導入で必要なくなりました。Vault Professional のクライアントをインストールすれ ばアドオンが入って自動チェックイン可能となり、毎回チェックイン用データを何通りも作る手間も 不要となりました。」(井之上氏)

>ABB株式会社 ロボティクス事業部  研究開s発部アトマイザーグループ  井之上 大樹 氏
ABB株式会社
ロボティクス事業部 研究開s発部アトマイザーグループ 井之上 大樹 氏

こうして動き始めたデータ管理システムは、ABBの社内ルールで2年ごとにバージョンアップするた め、当初は対応に手間取ることも多かった。しかし、2010年頃にはシステムも安定し、SCSK 株式会 社の支援もあって、いよいよその真価を発揮し始めた。その設計からデータ管理への流れについて、 両氏に紹介してもらおう。「基本的には Vault Professional に組込まれた ワークフローそのままです。まずカスタマサービスや営業から依頼書が届きます。これを受けてセー ルス&マーケティング部が、Vault Professionalの変更管理でファイルを作成。依頼書を添付して こちらに回してきます。」(井之上氏)

「変更管理が R&D へ回ってくると、内容を見て担 当に振分け、それぞれ AutoCAD Mechanicalや Autodesk Inventor を使って設計を進めま す。 2D を使うか 3D かは各自が判断します。図面が完成したら Excel 書類に必要事項を記入し、 図面と一緒に Vault Professional に登録します。承認をもらった上でリリースとなります。」(寺田氏) 同社の Inventor 導入は Vault sProfessional後で、3次元設計は現在普及段階にあるが、3D データも Vault Professional にそのまま登録できるためデータ管理面では全く問題がない。取 扱説明書に入れる鳥瞰図のリクエストがあれば、Inventor の 3D モデルをそのまま利用できるの である。結果として普及は確実に進んでいった。まさに3つのオートデスク製品を使うことで、それ ぞれ最高のパフォーマンスを発揮させることに成功したのである。

ABB株式会社 オートメーション・モーション事業部 ロボティクス部門 塗装機器部 研究開発グループ 工学博士 システムチームリーダー
      寺田 勝 氏
ABB株式会社
オートメーション・モーション事業部 ロボティクス部門 塗装機器部 研究開発グループ 工学博士 システムチームリーダー 寺田 勝 氏

事業部全体のインフラとして定着&活用

同社にとって欠かせない存在となった Vault Professional によるデータ管理システムは、当初 の計画を超えて大きな進化を遂げている。その変化は利用者数にも現われている。当初は開発と技 術の50人弱だったユーザ数が、現在はセールスやマーケティング、見積り、メンテナンス部隊まで活 用しており、その数は渋谷・名豊(名古屋)・島田の3拠点140人余となっているのである。

「この爆発的な普及は Vault Professional をWeb ブラウザで見られるという点が大きいで すね。以前のように特別なソフトを入れなくても、ブラウザで簡単に使える。しかも図面に加え Word や Excel 等のドキュメントも管理できる。もちろんデジタル化以前の紙図面も全て PDF 化 して登録済みです。結果、図面だけでなく仕様書や報告書、取扱説明書まで扱うようになり、ロボ ティクス部門全体のインフラとして定着しました。」 (寺田氏)

Autodesk Inventor による作業
Autodesk Inventor による作業

極論すれば、いまや権限を持つ誰もが、いつでもどこからでもこのデータ管理システムにアクセスで きる。寺田氏らも、昔のように営業から依頼されて図面を探し回るようなことはなくなり、営業マ ン自身がみずから図面を見つけて利用するようになったのである。 「現在では Vault Professional への登録数はCAD データだけで約6万件。その他の細々した帳 票類や紙図面の PDF 等々まで含めると総計36万件に達しています。当初は渋谷にサーバを置いて いましたが、現在は島田にも置いて2台体制のレプリケーションでレスポンスの向上と緊急時のバッ クアップを図っています。」(井之上氏)

最後に将来への展望を聞くと、やはりさらなる国際化への対応が最大の課題、という答えだった。 「近年、当社ではグローバル化が積極的に進められ、島田だけで収まらないグローバルな R&D 体 制が本格化しつつあります。組織としてはもちろん、ここで設計するものも、よりグローバルに対応し ていかなければならないでしょう。今後は Vault Professional による海外とのデータの受渡し等 にも挑戦していきたいですね。また、将来的には Vault とクラウドを連携させたデータ管理を実現 したいと思っています。」(寺田氏)

塗装ロボット
塗装ロボット

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