IoT時代におけるBRMSの役割について (第5回 最終回)
2021.09.22 InnoRules
本エントリーはイノルールズ株式会社 白石浩一様が寄稿したエントリー(https://business.facebook.com/innorules.co.jp/)を転載したものとなります。
企業は顧客獲得のため、IoTで採取したデータを利用しながら新しいサービスを構築しています。ここでユースケースを2つほど取り上げてみます。
1つ目は、損保会社が被保険者の自動車運転状況を収集して特定条件のもとで保険料の引き下げに使用するケースです。2つ目は、2016年の家庭用電力自由化に伴い、ユーザが携帯電話のキャリアを選ぶように、電気料金やサービスを元に電力会社を選べるようになりました。家庭に一台スマートメータを設置、30分毎の電気使用量を電力会社に送信して、遠隔での自動検針を可能とし、適宜多様な割引プランを提案します。また利用者は電気使用量が詳細なグラフなどで可視化されるため、省エネを効果的に行う動機付けができます。
このようなビジネスは従来のIT開発方法では限界があります。ビジネスのスピードにITが追従していく仕組み、すなわちビジネスドリブンでITシステムが自動的に改善できる仕組みが必要になります。そのためには何が必要でしょう。大きな視点では3つ挙げられます。
・ガバナンスとして変化に対応できる組織
よくBRMSを導入したが、全く使われていないという状況があります。ルールを追加変更するときも従来のシステムエンハンスの方法を踏襲していることが原因の一つです。つまりルール変更時の最終責任をITサイドが担っておりシステム運用の負荷が大きくなってしまうためです。ビジネスとITの役割と責任範囲を明確にする必要があります。
・ビジネスルールの変更対応も従来のPDCAからOODAへ
生産管理や品質管理の業務改善などでよく適用されていたPDCAサイクルも、上記のような進化したビジネスモデルには対応できないことがあります。OODA※のような新たなサイクルで迅速にアクションへ移る仕組みが必要になるでしょう。
※監視(Observe)=>情勢判断(Orient)=>意思決定(Decision)=>行動(Act)
・BRMSではファイア(実行)されたルールをモニターすることで上記O=>O=>Dを効果的に実現できます。どのルールが頻繁にファイアしているか、売り上げに貢献しているルールセットはどれか、3年間全くファイアしていないルールセットはどれかなどをビジネスサイドから判断してルールの運用をサポートすることが重要になります。
IoTの基礎技術が整うことで産業データの利用が進み、それに伴うM2M(Machine to Machine)市場の拡大も見込まれます。例えば医療・ヘルスケアの遠隔診断や今後の自動車を含めた自動運転システムなど多くの産業へ寄与することでしょう。また、上記ユースケースの電力サービスのように実生活におけるコスト削減・効率化も現実のものとなってきています。さらにIoTに伴って必要なクラウド技術、セキュリティ技術の進化も見込まれます。この状況の中でビジネスサイドをサポートできるBRMSの導入は市場の活性化へ確実に寄与できるはずです。
参考資料)「Business Rules Applied」(Barbara von Halle) 、「ITナビゲーター」(野村総合研究所)