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3D 設計時代の大規模プロジェクト運用とは 多種多様な2D/3D データが ひとつに統合できる !?

長年2D でものづくりを行ってきた企業が3D 設計へ移行すると、その影響は想像以上に大きなものとなる。それはしばしば部門の枠 を超え、全社的な変革を促すことも珍しくない。たとえば、大規模プロジェクトにおけるデータの整理・統合や共有のやり方も変革を 求められる一つ。事実、2D ベースで行われる従来型の手法では、もはや3D 設計環境に対応しきれないのだ。大規模プロジェクトの 成否さえ左右しかねないこの問題の解決には、その手法自体の高度化が欠かせない。ここでは、3D 設計時代の大規模プロジェクトの データ管理&統合作業において核となるべきプロジェクトレビュー・ソフト Navisworks について紹介していく。

3D 設計時代の大規模プロジェクト

製造分野において、特に大型の装置開発や生産ライ ンを含む工場建設など、規模の大きなプロジェクトにおいては、そのプロジェクト全体を管理しながら 推進していくプロジェクト・マネジメントの役割がきわめて重要になる。特にプロジェクト規模が大きく なるほど、より多くの部門や外注先の協力が必要となる。プロジェクト・マネジメントを担う部門では、 これら社内外の多くの協力者の作業成果をきめ細かく把握し、コントロールしながら、プロジェクト全体 をトータルに捉えて進めなければならない。そのためには、各部門や外注先が作る図面データを整理・ 統合して全体像を把握し、これを広く共有していく必要があった。言うまでもなく2D 設計時代、この 作業は主に2D 図面データを用いて行われていた。

もちろん当時から、外注先や各部門は必ずしも同じ 2D CAD を使ってはいなかったが、2D CAD の世界には当初から AutoCAD と DXF という共通言語があっ た。この共通基盤の存在により、異なる2D CAD で作られた図面であってもDXF を用いて AutoCAD に より自由に扱うことができた。複数の作り手によるさまざまな図面を統合し、プロジェクト全体を掌握 することが可能だったのである。だが、その手法も、3D 設計の稼働とともに変革を迫られることになっ た。なぜなら3D 設計の世界は、多種多様な拡張子をもつ3D CAD データに2D CAD データまで混 在するカオスな状況となっており、しかも、そこにはDXF のような共通言語はいまだ存在しないの である。

大規模なプロジェクトを的確にマネジメントしてい くには、さまざまな部門・外注企業から届くデータを整理、統合して、共有していくことが欠かせない。 しかし、2D 設計時代のような「共通言語」が存在しない、この新しい3D 設計環境にあっては、共通 言語に代わるツールがどうしても必要となる。そのツールは、たとえばさまざまな拡張子を備えた多様 な3D CAD データや2D CAD データを自在に開いて閲覧でき、さらにこれらを一つに統合して広く共有で きるツールであることが望ましい。──だが、そんな都合の良いツールが現実に存在するのだろうか? 実は在る。オートデスクの「Navisworks」がそれだ。

メインツールに次ぐ重要なプロジェクト レビュー・ソフト

Navisworksは、オートデスクが提供するプロフェッ ショナル向けのプロジェクトレビュー・ソフトウェアである。「プロジェクトレビュー」とはあまり耳に しない言葉だが、要は大規模なプロジェクトの統合モデルやデータを総合的にレビューし、関係者 間で共有することを可能にするツールだ。製造分野の Inventor や建築の Revit のような設計のメイ ンツールではないが、3D 設計におけるニーズの高さでは両者に次ぐ。事実、Navisworks は製造向 けのProduct Design & Manufacturing Collectionにも、建築業向けのArchitecture,Engineering & Construction Collectionにも選ばれており、両コレクションのユーザーならいつでも使うことができ る。前述の通り3D 設計化が進み大規模なプロジェクトを扱うようになれば、否応なく使うことになる ソフトウェアなのだ。

大規模プロジェクトでは多様な2D/3D データの 適材適所での使い分けがきわめて重要な課題となる

多様なCAD データを取り込んで統合モデルを生成

では、Navisworks は具体的にどのような機能を備え、どう使われるのだろうか。その最も特徴的な 機能は「2D/3D を問わず多様なCAD データを取り込める」点だろう。言うまでもなく、3D モデルデー タには多様な形式があり、製造系では大きくソリッド、サーフェス、メッシュに分かれ、さらに使用 CAD ごとに拡張子は異なる。そのため、複数の部門/ 企業が何層にもわたって関わることになる大 規模プロジェクトでは、どうしても多様なデータが飛び交うことになる。

3D CAD のデータは、ソリッドが最も一般的で中間ファイルも存在するものの、その種類は多岐にわ たり、各CAD 製品ごとに出力できる形式も異なる。 加えて最近は、3D スキャナで採取した点群データ やソリッドから変換したメッシュやサーフェスもあり、さらに昔ながらの2D データも相変わらず使い続 けられるなど、状況はますます渾沌としている。しかし、Navisworks ならば、これらを含めほぼあら ゆるデータを自在に取り込むことができるのである。※下図参照

Navisworks が取込めるデータ 2D/3D/ソリッド/ メッシュ/ その他多様なデータを取込み統合する

こうして2D/3D を取り混ぜ多様なデータを取り込 んだ Navisworks は、これらのデータを正確に統合してまとめ上げ、それを最も分かりやすい形で 提示する。たとえば製造工場などの生産ラインを作るプロジェクトなら、ラインの前工程はA 社が 3D で、中央の工程はB 社が2D で、そして後工程はC 社が別の3D で──となるケースも多く、プ ロジェクト・マネジメント担当の元には、これら3社3 様の設計途上のデータが次々届くことになる。 Navisworks はこれらを取り込んで統合し、1 つのモデルとして見ることができるように加工してくれ るのだ。たとえば、建物1 階のフロアレイアウトの2D DWG データに、装置類の3D モデルや既存 の配管の点群データを重ねて配置する。あるいは異なる3D CAD による大規模アセンブリを多数配置 した「超」大規模アセンブリの実現など、特定のCAD だけでは不可能なユニークかつ柔軟な統合モ デルを簡単に作りだすのだ。

3D 化を支えるテクノロジー

Navisworks のもう一つの特徴は、生成される統合 データがきわめて軽く、扱いやすい点だ。もともと大規模プロジェクトにおける利用が多いソフトだけ に、対象は大型の機械装置や工場の生産ライン、大規模な建築物など、通常は3D CAD でも軽々と扱 えないモノを得意としている。独自の技術でこれらのデータを超軽量化することで、大規模プロジェク トをまるごと扱い、同時にその詳細まで確認・共有できる状態を実現するのだ。実際、アリーナや工場 のような大規模建築物でも、Navisworks で統合したモデルなら詳細かつ超軽量で表現される。建物の 外観だけでなく内部のさまざまな施設や設備、家具類に至るまできちんと作り込んだとしても軽々と扱えるのである。

一方、そのデータ構造のずば抜けた自由度の高さ も大きな強みといえるだろう。一般に2D データはWindows 式の単一ファイル群、3D CAD のデータは リンク構造で、両者のデータ管理はまったく別物というのが常識だが、Navisworks はそのどちらにも 対応している。実際、Navisworks ネイティブの「.nwd」形式にすれば統合モデルを1 ファイルとして扱うこ ともできるし、ファイルを結合せずに元データとともにリンク構造を維持することも可能だ。すなわち、あるデータに加えられた変更情報を上位のデータへ 反映させるというリンク構造のメリットも、きちんと生かされる。

その他にも、Navisworks は3D 環境に適したさま ざまな機能を搭載している。強力な干渉チェック機能は、階層やファイル別に細かなルールを定められ るし、アニメーションを作成して「動きの中の干渉」も確認できる。また、クリアランス検出も可能なの で、装置の配置などで重要となる一定のクリアランス確保もチェック可能だ。そして、何より圧倒的な のは、そのスピードだ。たとえば複数のモデルデータを統合しアニメーション化した重いデータの干渉 チェック等においても、Navisworks ならまったくストレスを感じない高速性能を備えている。さらに、バー チャルデザインレビューを使えば、データ変換なしで Navisworks 上に表示されているモデルにそのま ま複数人でVR を用いて入ることもできる。

3D 化の本当のゴールは、実務設計部門が3D CAD を使いこなすだけではなく、そのデータを使う他部門や協力会社や顧客も含めて新たな3D ワークフ ローのメリットを実感した時である。ただし、これはすべてのデータを3D にすることを意味しているわ けではない。そこでは2D と様々な3D データを適材適所で使い分ける必要があり、大規模プロジェク トにおいて、それはいっそう顕著になる。プロジェクトレビューのための Navisworks という存在は、 このような真に実用的な3D 化において必ず必要となる「3D 設計時代の新常識」なのである。

Autodesk PRODUCT DESIGN COLLECTION(製造業界向けコレクション)

プロダクト デザインと工場レイアウトに欠かせない設計・エンジニアリング ツールのパッケージ。複数のオートデスク製品が利用できるため、その価値と柔軟性が一層高まり、ソフトウェアのサブスクリプション契約および管理の方法が簡単になります。

記事監修&資料提供

太田 明 氏 (デジプロ研代表 CAD/CAE エキスパート)

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