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3D 設計化に絶対失敗したくないあなたのための7+1 のハードルを超えていけ! 3D 設計「勝ち組」の新常識

「3D CAD を導入した」という企業は多いが、だからといってその会社が3D 設計体制を確立できているとは限らない。「使っている」といっ ても実は部分的な利用に留まっている場合がほとんどだし、主力は相変わらず2D CAD のままという所も少なくないのである。しかしそ の一方で、一年そこそこで見事に3D CAD 体制を確立し、いまや2D CAD はほとんど使わなくなっている企業も多い。同じ3D CAD 製 品を導入しても、実運用できているか/いないか、その結果ははっきり二分されるのだ。では、この両社の成功と失敗を分けたポ イントはなんなのだろうか? 具体的な事例を検討しながら、3D 設計化成功への条件を考察していく。

3D 設計体制の実現を阻む高い壁

もしもあなたが3D 設計に関心があるなら、耳にし たことがあるだろう。たとえば3D CAD が使われないままホコリを被っているA 社。壮大な3D 化計画 を提唱し多くのソフトを導入したが一向に成果が上がらないB 社。詳しい社員に3D 化を任せたら誰も 着いていけず、あげくその社員が辞めて全て無駄になったC 社。誰もがそんな失敗例を一度は聞いてい るはずだ。しかし、他方では1 年で3D CAD 導入に 成功し、3D 設計体制を確立した企業の成功談も数 多くある。しかも、そうした成功企業の多くでは社 員が「2 度と2D 設計には戻りたくない」と口を揃 えるのである。──この差はいったい何なのか。

3D 設計の確立には環境・スキル・レシピの3 要 素が不可欠だ。ハードとソフトを購入し、正しく設定してサポート体制など「環境」を整え、3D CAD の基礎知識を学び、操作方法を習得して「スキル」を身に付け、そして3D CAD の多様な機能を組合 せて自社に最適な3D 設計ワークフロー、すなわち「レシピ」を作ることが必要なのだ。そして、こ の3 要素実現の可否こそが、3D 設計化の成否を大きく左右する。もちろん環境は資金と人員を投入 すれば実現できる可能性が高いが、残り二つ……特にワークフロー作りは見逃されたり軽視されがち で、結果的にこれが3D 設計化を阻むことが多い。

なぜワークフロー作りが壁となるのか。それは2D 設 計の場合を考えれば想像がつく。もちろん設計部門 は既に完成した2D 設計ワークフローを持っているが、 それは誰かに与えられたのではなく、自分たちの手法に合わせて長年ブラッシュアップした十社十様の ワークフローだ。当然、3D 設計も自社に合わせたワークフローを自分たちで作る必要があるが、これが難 しいのだ。ワークフロー作りは、そのCAD の操作を習得し機能を把握することが前提となるが、3D CAD は操作そのものが難しく2D よりはるかに多機能なため、この前提が高い壁となってしまうのである。

操作習得&機能把握への7つのハードル

この壁を越えるにはどうすれば良いのか。──実 は3D CAD 導入における「つまずきポイント」は共通しており、以下の7 つに集約することができる。 すなわち ①製品体系 ②操作習得 ③設定項目 ④ファイル管理 ⑤専用機能 ⑥モデリングルール ⑦解 析 だ。①では3D CAD のモジュールやライセンス等への理解が求められるが、複雑なため最初の躓 きに繋がる。②操作習得も特に年配ユーザーには高いハードルとなるだろう。③では多様な設定・オ プションから最適な組合せを選ぶため深い理解が必要で、④も2D に慣れたユーザーほど、3D 独特 のリンク構造のファイルに悩まされることになる。

また、⑤の専用機能は3D CAD 独特のオプションで、 各分野に特化した機能が豊富に用意されているが、それらを理解し把握するだけでも大変な上、いざ理解し てみると実は自分の業務に向かない機能だった、と気づくことさえある。ともあれ、こうして機能を正しく弁 別することでようやく⑥モデリングルールを決めてワークフロー作りに進めるわけだが、さらにその先の⑦解 析でも、やはり相当の努力と時間が必要なのである。

2D CAD から3D CAD へ 設計体制の移行は2D/3D 混在環境で段階的に進める

コンサルタントとCAD マネージャー

このようにして7 つのハードルを乗り越え、独自の 3D 設計用ワークフローを構築すれば、ようやく3D設計環境は立ち上がり動き始めることになる。も ちろん7 つのハードル全てをクリアしなくても3D CAD の運用は可能だが、少なくとも④ファイル管 理程度までクリアしなければ、3D 設計の効果を実感することは難しいだろう。しかし、コストと人員 を大規模に集中できる大企業はともかく、中小規模の企業が自力でこれを達成するには、どうしても 相応の時間がかかってしまう。実際、10 年以上もチャレンジし続けている企業もあるほどで、運良く スムーズに進められたとしても最低5 年はかかってしまうのが一般的だろう。

しかし、わずか1 年で3D 設計を立上げた企業も 確かに存在する。彼らはどんな方法でそれを実現したのか?と不思議になるが、実は彼らは「答え」 を知る人物── CAD コンサルタントの協力を得たのである。日本ではまだ一般的とはいえないが、 3D 設計先進国アメリカでは、3D 設計の立上げに専門家を雇うのは常識だ。日本でもCAD コンサル タントも増えているし、SCSK のような優れたコンサルテーション機能を備えた販売会社も出現してい る。むろんコンサルタントも万能ではないし、その会社の設計スタイルはその会社の人間にしか分ら ないから任せきりにはできない。両者が徹底的に議論しながら二人三脚で進めることで、初めて1 年という短期間での立上げを実現できるのである。

とはいえ、3D 設計立上げに成功した企業全てがコ ンサルタントの協力を得たわけではない。専門家の手を借りず自力で3D 設計を立上げた企業も多 いが、代わりに、自社で育成したり他所からスカウトした専任のCAD マネージャーにその役割を託し ているのが通例だ。CAD マネージャーはCAD の導入・普及を推進するチームリーダーで、コンサルタ ントを利用する企業にもこの役割に相当する社員が必ず置かれている。つまり、CAD マネージャー の存在こそが3D 設計立上げの必須条件であり、その活動をよりスムーズに確実に後押しするのが CAD コンサルタントだといえるだろう。──以上を踏まえて、次項では3D 立上げ成功へのコツをま とめてみた。

3D 設計への段階的移行

3D 設計立上げを成功させる法

繰り返しになるが、3D 立上げには環境・スキル・ レシピの3 要素が必要で、特にレシピすなわちワークフロー作りは最も重要なカギとなる。このワーク フローを作る上で欠かせないのが、専任の責任者としてプロジェクトを牽引するCAD マネージャーだ。 そして、もう一つ重要なのは、このワークフロー作りを担う3D 推進チームに設計者が参加することで ある。ややもすればこうしたチームはIT 部門の社員や新人ばかりになりがちだが、ワークフロー作りで 最も必要となるのはその会社の設計スタイルと具体的な流れに関する知識と経験だ。これらを豊富に蓄 え、フロー完成後は自らそれを実践することになる設計者こそ、このチームの主役なのである。

3D 設計の立上げを阻む7 つのハードル を紹介したが、実はその前に第0番にあたるハードルが隠れている。「CAD 選定」がそれだ。この CAD 選定を間違えると、ワークフロー作りや操作習得に膨大な時間がかかるなど多くの問題に遭遇 しかねない。その意味では、CAD 選定の段階からコンサルタントを導入できればベストだが、本記事 第2 回でも紹介した通り、ワークフローが作りやすく操作習得への敷居も低いInventorを選ぶこと で、その問題の多くは容易に回避できるはずだ。さらにサブスクリプションでコスト面もミニマムスター トが図れるわけで、やはり Inventor は最も3D 設計を立上げやすいCAD なのだ。

最後に3D への移行の進め方だが、ミニマムスター トして段階的に進めるやり方が最も確実だ。フェーズ1 では従来通り2D CAD で設計・製図を行い、 これに加えて3D CAD によるモデリングを行うのだ。次は3D CAD で設計して2D CAD で製図するフェー ズ2 にステップアップ。これがスムーズに進められるようになったら、3D CAD で設計・製図するフェー ズ3 へ移行する。最終的にはデータ管理やシミュレーションなど設計・製図以外でも3D CAD を活 用できるようになればゴールだ。いざとなれば即座に2D に戻れる2D / 3D 混在環境を段階的に進 めることで、最小限のリスクで効率的かつ確実なステップアップを図れるのである。

Autodesk Inventor

Autodesk Inventor® は、機械設計、図面作成、製品シミュレーションのツールが搭載されたプロフェッショナルレベルの 3D CAD ソフトウェアです。

記事監修&資料提供

太田 明 氏 (デジプロ研代表 CAD/CAE エキスパート)

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