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3D 設計の「さらに先」にある目標を目指して リスクだらけの 3D CAD 選び たった一つの「最善の選択」

3D CAD の導入とともに、設計 3 次元化への道を歩み始めた日本の製造業界。だが、多くの企業が導入への取り組みを続けているに もかかわらず、そのゴールはまだまだ遠いようだ。3D 設計化を目指す製造業が直面する課題とその裏にある問題点をとらえ直し、事例を引きながら実践的な対応策をまとめて いく。なお、本シリーズ監修のデジプロ研代表 太田明氏よりメッセージをいただいたので、合わせてお届けする。

3D 設計体制構築を阻むもの

日本の製造業界において、設計 3 次元化を目指す 流れが生まれて 10 年余が経過した。流れを先取りいち早く3D 設計体制を軌道に乗せ、本格運用する 先行企業がある一方、3D はビジュアライゼーションなど限定的な活用に留まり 、 主力は相変わらず 2D CAD のまま──という企業も少なくない。こと 3D設計化の成否については、先行するアーリーアダプ ターと後追い企業の差は 、 縮まるどころか逆に開きつつあるようだ。事実、この 10 年で 3D CAD 購入 者は急増したが、多くが 3D 設計体制への完全な移行を果たせないでいる。

3D 設計構築に不可欠とされる 3 要素がある。環境 とスキル、そしてレシピだ。環境とは 3D CAD 製品やパソコン等のハードを指し、スキルは操作方法や 3D の基礎知識のことで、どちらも予算と時間があれば手に入る。だが 3 つ目のレシピ、すなわちワー クフローはそうはいかない。なぜならそれは多彩な3D CAD の機能のどれを誰がどう活かし、連携させ るか、新しい流れを作る作業にほかならないからだ。いわば設計に関わる一連の流れを 3D の視点で再 構築するわけで、誰にとっても簡単に実現できるこ とではないのだ。

そもそも 3D CAD 導入には多くのハードルがある。 それはたとえば以下の 7 つに集約できる。①製品体系(3D CAD のモジュールやライセンス等の理解) ②操作習得 ③設定項目(多様な設定・オプションから最適な組合せを選択)④ファイル管理 (3D 独 特のリンク構造を理解)⑤専用機能(各分野に特化した豊富な機能の理解と使い分け)⑥モデリングルール ⑦解析である。もちろん全てをクリアしなく ても 3D CAD は運用できるが、最低でも④まで行きつかなければ、その効果は実感し難いだろう。しか し、実際には多くの企業は、その先にどれだけ高い壁が続くのか、全く分からないまま挑戦を始めてし まう。どこまでも先が見えないままでは、途中で息切れしてしまうのも当然だろう。

いきなり 3D CAD を選ぶことのリスク

7 つのハードルを越えて新たなワークフローを作る。 前述のとおり、それが 3D 設計構築の前提だが、そこにもう一つ問題がある。3D 設計をめざすほぼ 全ての企業が、まず 3D CAD 購入から始めてしまう点だ。本来、3D 設計の構築では、リードタイム 短縮や工数削減、顧客満足度の向上等々の「やりたいこと」がまずあり、それを実現するためのワー クフローを考え、さらにそのワークフローに適した3D CAD を選ぶ──という流れであるべきだが、実 際には目標も曖昧なまま、いきなり 3D CAD を選び始める企業が大半なのだ。

もちろん購入した 3D CAD を使ううちに「3D ででき ること/できないこと」も見えてくるだろうから、自ずと「3D でやりたいこと」もはっきりしてくるはずだ。 しかし、困ったことにその 3D CAD があなたの「やりたいこと」に適した CAD とは限らない。もし合 わなければ、別の 3D CAD に乗り換えてやり直すしかない。中には最初の投資が大きすぎて、引き返 すに引き返せなってしまうケースも珍しくない。こうした無数の落し穴を避け、リスクを最小限に抑えて 3D 設計を構築するには、どのような 3D CAD を選び、どんなふうに導入を進めればよいのだろうか?

ここに含まれているソフトウェアのうち 2 種以上を使えばそれだけで「元が取れる」

躊躇なく断念でき、やり直せる「柔軟さ」

言うまでもなく3D CAD 導入は難度の高い作業で あり、失敗のリスクを完全に避けることは難しい。しかも購入後「3D でやりたいこと」に合わない製 品と判れば、別製品への乗り換えも必要だ。しかし、一般に 3D CAD は 2D CAD に比べ高額で、シート 数が多くなれば数千万から億単位という金額にもなりかねない。こうなると、いったん導入したら中 途での撤退ややり直しはきわめて困難だろう。3D設計化の現状を踏まえれば、これは大きな問題だ。 必要なのは、できるだけコストを抑えながら都合に合わせ使用期間も調整できる、柔軟な利用方法 なのだ。そんな都合の良い方法が在るのか?と疑問に思うだろうが、実は存在する。オートデスクの 「サブスクリプション」方式がそれだ。

サブスクリプションとは、ソフトを買い取るのでは なく、その利用権を借りて使用期間に応じて料金を支払う方式である。コストは低く抑えられ、使い 方の自由度もきわめて高い。利用者が法人なら、そのコストを資産でなく経費として処理できるメリッ トもある。たとえばオートデスクのサブスクリプションなら、最短 1 カ月から 1 年、3 年と用法に合わ せて期間ライセンスを購入する。まず 1 カ月と決めて気軽に挑戦を始め、上手くいかなければすぐ打 ち切れるし、逆に上手く軌道に乗れば複数年に延長することも可能なのである。近年、製造分野で も映像業界や建築業界のようなプロジェクト型の取組みが増えているが、短期間でスタッフが集合・ 離散するこのプロジェクト方式での利用でも、サブスクリプションは最適だろう。

しかし、サブスクリプション方式で利用できる CAD を選ぶにしても、具体的にどのような製品を選べば良いのだろうか。次項では、また別の視点から 選ぶべき 3D CAD について考えていく。

3D 設計を無駄なく効率的に立上げる最善 の選択

製造業における設計分野は、コンシューマ製品を設 計する「製品設計」とそれを作る製造装置を設計する「機械設計」の2つに分けられる。前者は曲面 を多用するなどデザインにこだわり、後者は機構や機能を重視するから、両者の CAD は当然異なった ものとなる。しかも、この 2 者の間には産業機械や部品加工など膨大な中間領域が拡がっている。した がって、「その何処に自分が位置するか?」を把握しなければ、自身の業務にフィットする 3D CAD など 選びようがない。

実際、3D CAD も製品設計向けから機械設計向 け、そしてオールラウンド対応製品まである。その違いに気づかず選んだ CAD を使い続け、なかなか 3D 設計が立ち上がらないという企業も多いのだ。それほど「自社の位置づけ」とそれに合った CAD 選択は重要なのだが、位置づけを見極めるのは実はなかなか難しい。同じ社内で部署Aは製品設計を、 部署 B は機械設計を行い、別の事業所 C では中間領域で部品を、と多様な設計が混在することもしば しばだ。もちろん全てに合う 3D CAD など存在しないが、そこに一つだけ解決策がある。オートデスク の「Product Design & Manufacturing Collection」という選択である。

オートデスクは、コストパフォーマンスの高いパッ ケージ製品を業界別に用意しているが、Product Design & Manufacturing Collection は製造分野の それである。機械設計向けのオールラウンド3D CADの Inventor を中心に、製品設計向けの 3D CAD で ある Fusion 360 や AutoCAD、また CAM や解析ソフト、3D CG など 10 個以上のソフトウェアやサービス がパッケージされ、設計~製造の幅広いフィールドをほぼトータルにカバーしている。しかも、前述の サブスクリプション方式で提供されるため価格も低く抑えられ、10 製品のうち 2 製品以上使えば簡単に 「元が取れる」設定となっている。

パッケージ製品というと「使わないソフトまで押し 付けられる」と感じるユーザーもいるようだが、それは大きな誤解だ。仮に Inventor を選んで 3D 設 計体制を立上げても、すぐに 2D 設計のニーズが無くなるわけではない。当面は AutoCAD を加えた 3D/2D 併用が続くし、他方で解析ソフトや 3D CG を使ってみたいという設計者も出てくる。さらに 3D 設 計が本格化すれば、3D データに最適なデータ管理(Vault)や大規模プロジェクトのマネジメントツー ル(Navisworks)も必携だ。Collection のコストパフォーマンスは、向上することはあっても下がること はないだろう。

このように Product Design & Manufacturing Collection とサブスクリプションの組合せは、3D 設計立上げ のコストとリスクを最小限に抑えながら、無駄なく 効率的にこれを実現する最善の選択といえる。── そもそも、3D 設計は設計者にとってきわめて有効な ツールとはいえ、あくまで手段にすぎない。Product Design & Manufacturing Collection を使って最速で 3D 設計を立上げてしまい、時間とコストは、その先にある目標にこそ注ぎ込むべきなのだ。

「3D デジタルものづくりの新常識」監修者から皆さまへ

こんにちは。デジプロ研の太田です。
この 2018 年においても多くの企業が 3D 立上げに苦戦しています。何年も成果が出ていないケースを覗いてみ ると、自社の製品に合わない 3D CAD を違和感のなかで使っていたり、2D 設計の現場を無視した机上の 3D 論が設計者を苦しめていたり。分業化と人手不足が進む中で、3D 推進に当の設計者を十分投入できず、有効 なワークフロー作りができていない企業も多いようです。一方同時に、良いソフトが低コストでノウハウとともに 手に入る時代でもあり、すでに「3D 設計」のための下地はできているとも言えます。 このシリーズには随所に 3D 立上げ成功のコツやヒントも散りばめてありますので、この記事との出会いを機に 是非 3D にチャレンジまたは再チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

Autodesk PRODUCT DESIGN COLLECTION(製造業界向けコレクション)

プロダクト デザインと工場レイアウトに欠かせない設計・エンジニアリング ツールのパッケージ。複数のオートデスク製品が利用できるため、その価値と柔軟性が一層高まり、ソフトウェアのサブスクリプション契約および管理の方法が簡単になります。

記事監修&資料提供

太田 明 氏(デジプロ研代表 CAD/CAE エキスパート)

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