仮想ADC/ロードバランサ Ivanti Virtual Traffic Manager

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導入事例 | セイコーエプソン株式会社 様

  • ※記事中のデータや役職等の内容は取材当時(2015年2月)のものです。
セイコーエプソン株式会社
なぜAWS上に、ELB以外の仮想ロードバランサーが必要だったのか

プリンター、スキャナーなどのパソコン周辺機器をはじめとする情報関連機器、精密機器メーカーのセイコーエプソン。 同社は、情報システムの導入、維持、管理などにかかるコスト削減とスピード感あるビジネス展開などを目的に、IT基盤のクラウド化に取り組む。クラウド基盤はアマゾンウェブサービス(AWS)に決定し、2014年2月より移行が開始されたが、移行前の環境下で利用可能だった機能要件をいかにAWS上で実現するかという点で課題を抱えていた。

課題と効果

AWSへの移行で直面した問題

インクジェットプリンターのトップブランドの一つとして知られるセイコーエプソンは、パソコン周辺機器をはじめ、センサー産業機器などの製造販売を手がける。最近では、機器の製造のみならず、ネットワークを通じて機器から収集したデータを活用した事業にも取り組んでいる。たとえば、腕に装着して脈拍を高精度に計測する「PULSENSE」という機器は、専用アプリと連携し、一日の活動履歴や、睡眠の深い浅いなどを記録、分析し、ユーザーの健康管理などにも活用することができる。

また、同社は国内21社、海外73社の計94社のグループ会社を擁し、海外売上高比率は実に7割を超えるグローバル企業でもある。
同社は、情報システムの導入、維持、管理などにかかるコストを削減し、スピード感をもって新規サービスを展開するため、IT基盤の一部をクラウド環境であるAWSに移行した。同社の国内外ネットワークのインフラ構築や整備、顧客向けサービスやソフトウェアなどの開発を手がけるIT推進本部 情報化推進部の中村貴輝氏はその狙いを次のように語る。

中村 貴輝 氏

「従来は、社内向け、社外向けの各種ITサービスの基盤は、サーバーなどのインフラ機器を自社購入し、データセンターにホスティングして利用していました。しかし、そうした体制では、導入、保守、管理にかかるコスト削減の点で限界がありました。また、サービス展開までのスピードを短縮したいという課題もありました」(中村氏)

たとえば、新規のITサービスを開始する際は、インフラ機器の選定、購入からアプリケーション開発を経て、サービス開始まで相当の時間を要する。これを、クラウド基盤へ移行することにより、運用コスト削減とビジネス環境の変化などに迅速、柔軟に対応できる体制にシフトしたのだ。クラウド基盤は、導入実績の豊富さや可用性、拡張性などの機能面を総合的に検討した結果、AWSに決定し、2014年2月から移行を開始した。

「当面は、オンプレミスとAWSを併存させ、社外向けのシステムをAWSに移行し、その後、社内の各種業務システムを段階的に移行しようと考えています」(中村氏)

AWSへの移行を決めたセイコーエプソンだが、ここで課題に直面する。AWSが標準で提供するロードバランサーElastic Load Balancing(ELB)では、オンプレミス上で利用してきた機能要件を実現できなかったのである。

アベイラビリティゾーンをまたいだ柔軟な対応力が決め手

同社がAWS上のロードバランサーに求めた要件は、大きく2つあった。1つめは、オンプレミス上で利用していた機能をクラウド上でも実現できること。具体的には、自由にポート番号を設定できることや、Sorr yページの表示、アクティブ/スタンバイ構成ができるといったことである。もう1つは、AWSの複数のアベイラビリ

そこで同社は、AWS上で利用するロードバランサー製品の選定を本格的に検討する。選定に際しては、従来オンプレミスで使用していたF社のロードバランサーの仮想版とSCSKが提供するIvanti社の仮想ロードバランサー製品「Ivanti Virtual Traffic Manager (以下、vTM)」(旧名:Pulse Secure Virtual Traffic Manager)が候補にあがった。同社のシステム構成と、AWSの仕様、候補製品の機能などが総合的に検討され、最終的に「vTM」が選ばれた。

アベイラビリティゾーンをまたいだ柔軟な対応力が決め手

「従来、オンプレミスで使用していたF社のロードバランサーの仮想版では、アベイラビリティゾーンをまたいだクラスター構成ができませんでした。一方、vTMではそれが可能な上、GUIで一元的に管理、運用することができました」(中村氏)

こうした機能面の優位性に加え、短期間で導入できたことも高い評価につながった。評価ライセンスで実際に環境を構築し、動作検証などが行われ、vTMの導入が決定する。検証開始は2014年4月、導入が決定し、実際に利用を開始したのは同5月末であった。

「ちょうど5月のタイミングで、アクティブ/スタンバイ構成やクラスター構成が必要な顧客向けサービスをAWSに移行する必要がありました。導入に際しては、ロードバランサーのインストールや冗長化構成といった構築自体は問題なかったものの、ユーザー部門側からの機能上の要求などがあり、進め方に苦労する面もありました。しかし、機能面での調整や機器の設定、UIの違いを含む使い勝手の面をSCSKにサポートいただいたおかげで、短期間で導入することが可能になりました」(中村氏)

通常、IT基盤を移行する場合には、サーバ機器の購入から構築、設定、本番稼働まで4~5ヵ月はかかるところだが、わずか2ヵ月ほどでAWSへの移行を完了し、サービスの本番稼働を迎えることができた。vTMにより、ビジネス環境の変化などに迅速、柔軟に対応するというAWSのメリットが存分に発揮されたといえる。

3年運用時の想定コストは、従来のロードバランサーの約3分の1程度にまで圧縮

vTMの導入から約10ヵ月が経過したが、現時点での導入効果としてはどういうポイントが挙げられるだろうか。

「UIなど操作性に関し若干違いはあるものの、性能面でもオンプレミス上で使っていた従来の製品と比べてvTMは遜色なく、概ね満足しています。現時点では、既存のデータセンターとAWSは併存しており、すべてのシステムをクラウドに移行したわけではないので、TCOという点でコスト削減効果が出てくるのはこれからだと考えています。
一方、ロードバランサー製品としての金額評価では、導入当初の段階で、3年運用した場合のコストが、vTMは従来製品の3分の1程度と想定しており、ライセンス料を含めた機器の運用コスト自体は削減されることが期待します」(中村氏)

現在、AWS上では、オンラインでの電子マニュアルの提供など、ユーザー向けにデータ量の大きいファイルをやり取りするサービスも稼働しており、常時200~300Mbpsという大きなネットワーク帯域を利用しているが、ロードバランサーの処理能力も問題なく安定稼働しているという。今後の展望として、同社ではクラウド基盤への移行をさらに進めていくそうだ。

「既存のデータセンターは、2015年度中にクラウドへの移行を完了したいと考えています。基本的にはAWSへ移行しながらコスト削減を図り、どうしてもAWSに移行できないシステムは、別のIaaSなどの利用を検討する可能性もあります。その場合においても、vTMによるメリットが享受できることを期待しています」(中村氏)

また、グローバル企業として、今後は、海外の拠点間のデータ連携も視野に入れていく必要があるという。

「今のところ、AWSについては東京リージョンを利用した国内向けのサービスがターゲットですが、今後は、別のリージョンを利用した拠点間のデータ連携も考えていく必要があります。現状、社内向けのサービスは従来のデータセンターを利用しているので、これをAWSに移行するに際しては、さらにvTMが必要になると考えています」

製品の導入を手がけたSCSKへの信頼も厚い。

「SCSKのサポートには大変満足しています。問い合わせに対する回答も迅速で、技術的にも高いレベルで対応していただいているので、安心して利用できます」(中村氏)

引き続き今後も、同社では、ITコストの削減と、ビジネス環境に柔軟に対応するためのIT基盤として拡張性と可用性に優れたクラウドサービスの活用を進めていく。同社の取り組みに、vTMが果たす役割はますます大きくなるに違いない。

  • 注1:AWSのリージョンとアベイラビリティゾーン
    世界各地で提供されているAWSのデータセンターは、リージョンとアベイラビリティゾーンという概念から構成されている。 リージョンは、地域に紐づく拠点の名称である(例:Tokyo, US Westなど)。1つのリージョンは複数のアベイラビリティゾーンにより構成される。 アベイラビリティゾーンは、リージョン内にある物理的に離れた個々のデータセンターの名称である。 各アベイラビリティゾーンは独立しており、低遅延のリンクで接続されている。

Corporate Data

社名
セイコーエプソン株式会社
事業内容
インクジェットプリンターを始めとするプリンターや、プロジェクタ、パソコンといった情報関連機器、水晶振動子(クオーツ)、半導体などの電子デバイス部品の製造メーカー
本社所在地
長野県諏訪市大和三丁目3番5号
創立
1942年5月18日
URL
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