Society 5.0時代の実践型人材を育成する教育系情報基盤を刷新
福岡工業大学様は、社会に貢献できる「実践型人材」の育成のため、経営理念に「For all the students~すべての学生生徒のために」を掲げ、全学で「アクティブラーニング型授業」と「就業力育成」を推進し実践する大学です。
教職協働で取り組む「丁寧な教育」および「面倒見の良さ」など、学生に寄り添った学生支援にも定評があり、学生一人ひとりの可能性を拡げる強力なサポートを行っています。また、教育面だけでなく手厚い就職活動の支援も徹底しており、高い就職率と質の高い就職実績も大きな特徴です。こうした取り組みにより、18歳人口が減少するなか、福岡工業大学様への入学志願者(2019年度入試時点)は13年連続で増加しています。
福岡工業大学
情報基盤センター長
エクステンションセンター長
情報工学部 情報システム工学科
博士(工学)
利光 和彦 教授
福岡工業大学
情報基盤センター次長
中島 良二 様
福岡工業大学
情報基盤センター
情報企画課 課長
藤原 昭二 様
―学内ネットワークとパソコン教室の刷新を行った背景についてお教えください。
「建学の綱領」にも掲げている“社会に貢献する実践型人材の育成”に力を入れています。本学の実践型人材は、Society 5.0※時代に必要な創造的問題解決力、さらにはSDGsにも対応できる人材を指します。この実践型人材を育成するため、これまで情報リテラシーの基盤的能力と知識やスキルの習得ほか、アクティブラーニングを取り入れるなどしてコンピテンシーの醸成にも注力してきました。
私たちは、Society 5.0時代で活躍するためには次のような力が必要だと考えています。
実践型人材の育成に欠かせないのが先進的なICTを駆使した「教育系情報基盤」の整備です。テクノロジーは日々進化しており、学習すべき知識やスキルおよびその教授法も変化しています。そのために必要な学内ネットワークの刷新とパソコン教室の継続的な整備は、変化に対応していくために重要な取り組みだと捉えています。
―学内ネットワークとパソコン教室、それぞれお話を伺いたいと思います。
まず、学内ネットワークの刷新について、詳しくお聞かせください。
約5,000台の端末が接続されている本学のネットワークは、ICTを活用した教育・研究活動の促進と高度化に欠かせない重要なインフラです。今回の刷新で実現したかったことは、高い処理能力はもとより、利便性とセキュリティ性のバランスが保たれたネットワーク環境です。
―次に、パソコン教室の刷新について詳しくお教えください。
学内ネットワーク刷新とあわせて大学と短期大学部を合わせて約600台のパソコンを刷新し、パソコン教室の一部什器も再整備しました。パソコンの老朽化への対応だけでなく、Society 5.0を生き抜く実践型人材の育成施策の一環としての対応です。そのため、STEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)の要素も勘案しています。
Society 5.0に求められる各能力の育成には、相応の情報環境が求められます。本学においては、パソコン教室もアクティブラーニングに対応した教室、創造性を発揮できる教育空間、最新の3次元CAD、CG、シミュレーションソフトなどを動かせる高いスペックのパソコンが必要です。
また、全学部共通のパソコン教室を整備するうえでは、十分な規模も必要となります。知識の定着には授業外学習も重要で、パソコン教室が空いている時間にパソコン不足に陥ることなく、学生が自由に使える環境も提供する必要がありました。
―SCSKの採用理由をお教えください。
SCSK提案内容と評価:学内ネットワーク刷新について
今回の学内ネットワーク刷新では、無線アクセスポイントの管理と可視化を重視していました。以前無線LANを導入した当時は、電波の発信状況や干渉状況を十分に把握する術がなく、ブラックボックス状態といっても過言ではない状況でした。
この問題を改善するため、SCSKに提案いただいたのは、ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)の無線アクセスポイント「Aruba」、同じくHPEのネットワーク管理ソフトウェア「Aruba AirWave」、SCSKのネットワーク認証・利用者管理アプライアンス「RADIUS GUARDS」でした。
「Aruba AirWave」は電波状況をヒートマップで確認でき、どのSSIDからどのように電波が出ているか一目でわかります。
約2年間検討し、「Aruba」と「Aruba AirWave」の組み合わせが我々の問題改善に最も適していたこと、保証期間が長かったことを評価しました。一般的にIT機器の保守期間は5年ですが、HPEの製品はさらに長期のライフタイム保証が付く点も採用のポイントとなりました。
また、自由度とセキュリティを両立させるには、適切なアクセス管理が必要です。「RADIUS GUARDS」のRADIUS認証で、ゲストも一定時間利用可能なアカウントを即時発行できる点も評価しました。
SCSKは、カタログ上のスペックだけで判断せず、実際のパフォーマンスを実機で検証したものを提案してくれました。限られた予算の中で最大のパフォーマンスを引き出せるよう、中には本学向けにカスタマイズしたオリジナル構成のパソコンもありました。予算内で希望通りのスペックを揃えてくれ、メーカーと連携した保守体制も万全だったので安心して利用できると判断しました。
―SCSKに対する印象についてお聞かせください。
SCSKは、私たちの経営理念と教育目標を理解し、本学の課題やニーズを的確に捉え、解決提案ができる力があると感じています。
大学の情報基盤システムの調達には、多くの国内有数企業との競合があります。
SCSKにお願いするきっかけとなったのは、ヒアリング力と提案力です。本学の要求仕様を読み解くまで足しげく通い、理解を深めていったのが印象的でした。実際に、その結果が提案内容に反映されていました。
また、高い技術力とコミュニケーション力を有した技術者チームを中核とした保守サポート体制も、ユーザーにとっては大変心強く、安心できるものだったと言えます。
―ベンダー選定後の進捗状況はいかがでしたか。
6教室にわたり約600台におよぶパソコンの入れ替えは本来であれば2カ月要するところ、実質1カ月で実施していただきました。事前に入念に準備していただいたおかげで、夏季休暇期間中に立ち上げることができ、2018年後期の授業から新しいパソコンが稼働しています。また、全てのパソコンにネットブート(vBoot)によるOSとソフトウェア環境の一元管理を採用しており、高速かつ安定稼働しています。
学内ネットワークに関しては、教職員の各研究室の配線も張り替えたため、2018年12月まで時間を要しました。教職員ごとに張り替え作業に対する要望が異なるため、なかなか大変だったと思いますが、根気強く丁寧に対応していただいたと感謝しています。
―学内ネットワーク刷新とパソコン教室の刷新を行った後、反響や効果はありましたか。
もともと本学では「学園全体のラーニング・コモンズ化計画」のもと、図書館をはじめ、各棟に学生が集い学び合える学修スペースをいくつも提供しており、キャンパス内で授業外学修や研究を行う主体的な学生がより一層増え、並行してICTの利活用も多種・多様に増えてきました。
そのような中、学内ネットワークとパソコン教室の刷新は、学生達のICTを活用した教育・研究活動において大変役立っています。
学内ネットワークに関しては、自前のパソコンやスマートフォンまたはタブレットなどで、どこからでも無線LANにつながる自由度の高いセキュアなネットワークを構築できたことが、ICT活用の促進につながっていると考えています。また、ゲストもワンタイムパスワードでセキュアにインターネットに接続できるので、学会やイベントで本学に訪れたゲストの皆様からも利便性が高く充実したネットワーク環境だと大変好評です。
電波の可視化も実現できましたので、管理面も楽になりました。従来は無線LANに繋がりにくい時の原因の特定が難しかったのですが、今はすぐに判断できます。
また、Zabbix、Grafana、Elasticsearch、Kibanaを組み合わせた「ネットワーク可視化システム」も構築いただき、各ネットワーク機器やサーバーの稼働状況や無線LANの利用状況もワンストップで細かに確認できるようになりました。
パソコン教室に関しては、授業外でのパソコン自習やグループワークを行う学生が増えています。
学生達には、本学の充実した情報環境を評価し入学してくる者も少なくありませんが、利用していると本学のネットワーク環境やパソコン教室が当たり前に思うようです。
しかし、他大学生との交流を通して、本学の情報環境の素晴らしさを再認識するそうです。キャンパス内どこでも自分の端末で利用できる高速なネットワーク環境、有用なソフトウェアが豊富で、どんなソフトウェアでもサクサク動作する高スペックな最新パソコン、これら優れた情報環境が学生のために整備され、授業外でも自由に利用できることに「他大学の学生が驚き、羨ましいと言われる」と聞いています。
―情報基盤センターが目指す今後の取り組みについてお教えください。
教育・研究活動の多様化に伴い、導入するソフトウェアも多様化し、その数も増えています。大学全体のニーズを見ながらトレンドを捉えつつ、限られたリソースでベストな環境を用意する必要があるでしょう。今後はAIやIoTおよびビックデータやブロックチェーン技術応用に係る情報環境がさらに重要になると予測しています。
また、欧米ではICTの活用により単位の認定方法など教育の仕組みに変化が出ています。今後日本でも大きく変わる可能性があり、変化にどう対応するか課題です。
また、中長期計画であるマスタープランにより、情報基盤センターが学校法人全体(大学・短期大学部・附属高校)の情報化支援を担うようになりました。今後はICTで学園全体にどのような価値をもたらせるのか、利活用を見据えた戦略が大きなミッションになると考えます。これまでは教育面を最優先にリソースを費やしてきましたが、今後は事務面もICTで効率化したいと考えています。企業でいう「働き方改革」に相当する部分、つまり教職員の業務の能率化や効率化を図るため、情報基盤センターが学内のICTサービスプロバイダーとして各種サービスを提供し、その実現を目指していきたいと考えています。
―最後に、SCSKに対する今後の期待について、お願いいたします。
SCSKは、難しい依頼でも「できない」と言わず、必ず何か提案してくれます。例えば、リスクの高いオープンソース製品の採用など、課題のハードルが高い場合でも、まずは持ち帰って社内で検討してくれました。新たなミッションも、変わらぬ姿勢で本学とともに取り組んでいただきたいと思っています。引き続きご支援をよろしくお願いします。
―本日は大変貴重なお話をありがとうございました。今後とも宜しくお願いいたします。
情報基盤センターのオフィス隣にサーバールームがあり、廊下から実機を見ることができます。
写真:サーバールーム