GIGAスクール時代の教育ICT基盤を再設計
銚子市教育委員会が実現した認証基盤の集約と運用高度化
銚子市教育委員会では、GIGAスクール構想の進展により、児童生徒一人ひとりが日常的に情報端末を活用する環境整備を進めている。その一方で、ネットワークの安定運用とセキュリティ確保をいかに両立するかという課題にも直面していた。
そこで、同教育委員会では、学校ごとに分散していた認証基盤の運用負荷や証明書管理の煩雑さを解消するために、認証・DHCP機能を統合した「RADIUS GUARD S V7」を導入。認証基盤の集約により、管理負荷の大幅な軽減と、教育現場の利便性向上を実現している。
銚子市教育委員会
学校教育課 学校教育室
主任主事
飯嶋 様
銚子インターネット株式会社
専務取締役
ISP事業本部長
圡手 氏
関東最東端に位置する千葉県銚子市。同市 教育委員会ではこれまで、文部科学省が示す方針をベースに、教育ICT環境の整備を進めてきた。児童生徒一人ひとりに情報端末を配備するGIGAスクール構想は、「端末を配布する」段階から、日常的な学習や校務の中で端末を活用するフェーズへと移行している。
飯嶋氏は「児童生徒用端末に加え、教員用端末、ネットワーク環境、情報セキュリティ対策、ICT支援体制という5つの柱を軸に環境整備を進めてきました」と話す。その狙いは、ICTを活用して校務の効率化を図り、教職員が児童生徒と向き合う時間を確保することにある。一方で、端末利用が日常化するにつれ、情報セキュリティの重要性はこれまで以上に高まっていた。
「教育現場では、インターネットやクラウドサービスの利用拡大に伴い、個人情報の取り扱いや、意図しないトラブルへの懸念が保護者から寄せられるようになっていました。教育委員会としても、端末やアカウントの適切な管理といった技術的対策に加え、情報セキュリティポリシーの見直しや、情報モラル教育の推進を含めた総合的な対応が求められています」(飯嶋氏)。
こうした中で顕在化したのが、認証基盤の運用に関する課題である。GIGAスクール構想の初期段階では、認証サーバーは各学校に設置する構成が採用されていた。銚子市内には小学校11校、中学校5校があり、認証サーバーは合計16台。それぞれが独立して運用され、学校ごとに証明書や設定が異なる状態だった。
この構成は運用面では大きな負担を伴っていた。圡手氏は「端末の修理やリカバリーが発生した際には、学校ごとに異なる証明書を再設定する必要がありました」と説明する。また、学校間で端末を持ち運んで利用することが難しく、教職員の働き方の柔軟性を妨げる要因にもなっていた。
さらに、教育現場の教職員は必ずしもネットワークの専門家ではない。日常業務の中で、認証基盤の状態を意識したり、トラブル対応を行ったりすること自体が大きな負担となる。「運用を担う委託事業者にとっても、16校分の認証サーバーを個別に管理・点検する必要があり、障害対応や保守作業の負荷は決して小さくありませんでした」(圡手氏)。
こうした状況下で、銚子市教育委員会は認証基盤の在り方を見直す必要性を感じていた。
銚子市教育委員会では、認証サーバーのリプレースを見据えた検討を本格化させた。圡手氏は当時を振り返り、「もともと稼働していた認証サーバーのライセンスが切れるタイミングが決まっていたため、前年度から計画的にリプレースの提案を進めていました」と話す。提案にあたっては、既存ベンダーを含む複数の製品を比較検討し、予算確保から選定までを段階的に進めていった。
比較検討の中で重視されたのは、「今後も無理なく運用し続けられるか」という視点だった。飯嶋氏は「学校現場も教育委員会も、ネットワークの専門部署ではありません。日常的な運用負荷をできるだけ増やさないことが重要でした」と語る。具体的な検討ポイントの一つが、認証機能とDHCP機能を一体で提供できるかどうかだった。従来の構成では、認証サーバーとは別にDHCPサーバーを用意する必要があり、機器台数や管理対象が増えていた。「『RADIUS GUARD S V7』はDHCP機能が内包されていることで、構成をシンプルにできる点が大きな魅力でした」(飯嶋氏)。
加えて、物理的な設置スペースも重要な要素だった。庁舎内の電算機室では、計画停電が発生することもあり、機器台数が増えるほど運用の手間は増大する。圡手氏は「認証サーバーは止まると学校全体に影響が出るため、冗長化が前提になります。そのうえで、筐体サイズが小さく、集約できることは大きな判断材料でした」と説明する。
RADIUS GUARD S V7は、冗長構成を前提としても1Uサイズで収まり、他社製品と比べて設置スペースを大幅に抑えられる点が評価された。また、Windows、Chromebook、iPadといった複数OSが混在する教育現場においても、証明書インポートや管理がしやすく、既存の運用を大きく変えずに移行できる点も安心材料となった。
さらに、銚子市役所内でRADIUS GUARD S(旧製品、Ver.6系)がすでに利用されており、長年安定して稼働してきた実績があったことも、選定を後押しした要因の一つだ。「これまで使ってきた中で大きなトラブルもなく、証明書周りの運用も慣れていました。その延長線で使える点は安心感がありました」(圡手氏)。
こうした点を総合的に評価し、銚子市教育委員会はRADIUS GUARD S V7の採用を決定した。
RADIUS GUARD S V7の導入により、これまで各学校に分散していた認証サーバーは集約され、現在は銚子インターネット株式会社が中心となって一元的な管理・運用を行っている。「日常的な操作はほとんど発生せず、定期的な点検とバックアップを実施することで、安定した運用が継続されています」と圡手氏は説明した。
特に、運用面で最も大きな効果として挙げられるのが、管理工数の削減だ。従来は、16校それぞれに設置された認証サーバーを個別に管理する必要があり、点検や設定変更、障害対応の作業は学校数に比例して発生していた。RADIUS GUARD S V7の導入により、これらの作業は一元化され、対応回数は従来の学校単位での個別対応と比較して大幅に削減された。
「以前は、同じ作業を学校の数だけ繰り返していましたが、今は1回の作業で済むようになりました。管理する側の負担は体感的にも大きく減っています」(圡手氏)。
証明書運用の面でも、改善効果は顕著だ。導入前は、学校ごとに異なる証明書を管理していたため、端末の修理やリカバリーが発生するたびに、どの学校の設定なのかを確認し、個別に証明書を再設定する必要があった。現在は、市内の学校共通で利用できる証明書を用いた運用が可能となり、端末の再設定や持ち運びに伴う作業負荷が大きく軽減されている。
この変化は、教職員の働き方にも影響を与えている。市内の複数の学校を巡回する教員は、これまで各校の端末を借りて業務を行うケースが多かったが、現在は自身の端末を持ち運んで利用できるようになった。飯嶋氏は「学校間の移動が多い教員にとって、自分の端末をそのまま使えるようになったことは、利便性の面でも大きな改善です。また、必要最小限の台数で運用できるようになり、端末台数の最適化と購入台数の削減によるコスト抑制にもつながっています」と語る。
今後のICT活用を考えるうえで、大きなテーマの一つがデジタル教科書の扱いだ。紙とデジタルをどのように使い分けていくのかについては、国の方針や近隣自治体の動向も踏まえながら検討を進めていく必要がある。「銚子市だけで判断できるものではありませんが、段階的に活用を進めていくことになると思います」(飯嶋氏)。
一方で、セキュリティの在り方も引き続き重要なテーマとなる。文部科学省のガイドラインはこれまでにも複数回改訂されており、今後はゼロトラストの考え方や多要素認証(MFA)への対応がより強く求められていくと見られている。銚子市教育委員会でも、次の段階を見据えた準備は進めているものの、運用面ではこれから検討すべき課題も多い。
その意味で、今回のRADIUS GUARD S V7導入は、単なる認証基盤の更新ではなく、今後の教育DXを支える基盤整備の一環に位置付けられる。飯嶋氏は「ICTは目的ではなく、あくまで学びを支える手段です。すべての児童生徒が学びの当事者として、デジタルの特性を理解し、活用し、協働できる環境を整えていきたいです」と語る。
圡手氏は「新しい仕組みを入れること自体が目的になってしまうと、現場の負担が増えてしまいます。まずは今の環境を安定して運用し、そのうえで必要なものを見極めていきたいです」と話す。今回の取り組みで、認証基盤を集約し、運用をシンプルにしたことは、将来のセキュリティ強化に向けた土台づくりにもなっている。RADIUS GUARD S V7によって整備された認証基盤は、銚子市の教育DXを下支えする存在として、これからも重要な役割を担っていくだろう。
銚子市に拠点を置く地域密着型のインターネット・IT関連企業。インターネットプロバイダー(ISP)事業を核に、クラウド、サーバー構築など、IT関連のサービスを提供。