コストエンジニアリングの改善による市場投入までの時間短縮

タイム・トゥ・マーケット(TTM)とは何か、なぜメーカーにとって重要なのか?

TTMとは「市場投入までの時間」を表します。これは、製品のアイデア出しから発売までの時間を測定する重要業績評価指標 (KPI)です。市場投入までの時間が企業に市場における優位性に影響を与えることが知られています。投入時間が短いと自社製品が早期に顧客に公開され、より大きな市場シェアを達成できるようになります。

TTMはどのように測定されるのか?

シニアリーダーは、製品開発チームが協力し、製品コンセプトを迅速に市場に投入できるよう、製品の発売期限を設定します。 一部の組織では、NPIプログラムが承認され、製品ライフサイクルチームが整ったとき市場投入までの時間測定を開始します。市場投入までの時間は、製品を消費者に届けるのにかかる時間を日数、数か月、または数年で測定できます。 NPIプログラムがどれほど網羅されても、以下の点が欠如した製品チームは市場投入時間を短縮できません。

専任の原価計算部門

製造組織は、製品コストと製造可能性の問題を早期特定するため、コスト計算部門を設置する必要があります。コスト計算部門は、コストのかかる後期段階のエンジニアリング変更指示書(ECO)のリスクを排除するために、設計段階でこれらの問題を特定する必要があります。コストエンジニアリング部門は、コスト計算の知識を製品チームのメンバーと共有することで、NPIプログラムを順調に進めます。

自動化されたシミュレーション主導の製造に関するインサイト

第4次産業革命 (Industry 4.0) により、製造部門に自動化が進み、組織は生産プロセスを合理化できるようになりました。製造シミュレーションソフトの登場により、コスト計算と設計に関するリアルタイムのインサイトがチームに提供され、新製品開発が一変しました。

新製品をより早く市場に投入するためのコストへの注力

製品開発プロセスの近代化（既存製品を市場や消費者ニーズに合わせ更新・改善するプロセス）は、NPIにおいて市場投入時間の短縮に重要です。マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、社内機能を効率化するチームは、市場投入時間を30〜50%短縮できます。また、すべての機能領域の生産性を最大26%向上させることができます。

製品チームは、コスト計算機能の最適化を目指す際に、市場投入時間を短縮するチャンスがあります。高度なソフトとコストファーストのアプローチを採用し、社内でのコスト見積の加速が必須です。ここでは、チームが製品コスト計算プロセスを合理化し、市場投入時間を短縮する3つの方法をご紹介します。

1. DTC(Design-to-Cost Approach)の活用

製品開発チームは、新製品の市場投入時間短縮に、設計コスト計算(DTC)アプローチを採用する必要があります。DTC手法では新製品の誕生からコスト設計が可能です。これにより、製品のライフサイクル全体で、後期段階の再設計やECO要求を排除でき、市場投入時間を短縮します。 この手法では、製品開発に携わる全ての部門での密接な連携が必要です。たとえば、コストエンジニアリング部門と設計エンジニアリング部門は、NPIプログラム中にコスト目標が達成されるように戦略的に連携しなければなりません。最近の調査によると、プログラムにDTCをうまく組み込んだ企業は、約15〜40%時間を節約できます。

2. 製造シミュレーションソフトの採用

製造シミュレーションソフトは、製品開発チームに対し、コストデータのためのリアルタイムかつ信頼できる唯一の情報源を提供します。これにより、あらゆる部門が適切なタイミングで適切なコストの見積もりを行えるようになります。

このソフトは、デジタルファクトリを使用し、現実世界において、設計段階での製品コストをシミュレートします。工場条件、製造プロセス、人件費、材料などを実際の条件に設定でき、コスト見積もりが可能です。また、コスト詳細を一元化してチームに情報を共有できるため、チームのより迅速な意思決定と、製品の市場投入加速化を支援し、結果として製品のコストとリリース目標を達成できます。

製造シミュレーションソフトの使用開始にあたり、コストエンジニアは既存の製品ライフサイクル管理(PLM)システムとソフトの連携が必要です。シミュレーションソフトは、PLMシステムに保存されている3D CADの設計ファイルを自動的に評価します。その結果、製品コストと製造可能性のフィードバックが生成されるため、製品開発プロセスの改善に有効です。

3. コストエンジニアリング部門の役割理解

コスト部門の役割は、DTCを促進するべく、製品開発チーム全体とコストインサイトを共有することです。コストスペシャリストは、設計や調達業務など製品開発のすべての段階でコストを優先するよう、チームに働きかけます。各部門へ連携をとるため、コストエンジニアは、従来時間のかかるコスト計算を、シミュレーション主導のコスト分析ソフトに代替する必要があります。

製造シミュレーションソフトを活用するコストエンジニアは、製品開発サイクルの早期段階で各部門への訴求が可能です。たとえば、設計エンジニアに対し正確かつ早期段階でコスト削減のフィードバックを提供できます。これにより、設計エンジニアは、製品立ち上げのかなり前から、コストに対して設計を最適化する時間を確保できます。また、コストを抑えて製品を設計するチームは、製品開発の後期段階におけるECOリスクを軽減できます。

製造シミュレーションは、取引先との交渉を担う調達部隊を、コストエンジニアがサポートするのに役立ちます。コストエンジニアは、ソフトのバルクコスト計算モジュールを活用するだけで、一度に多くの新製品のコストを自動的に評価できます。バルクコスト計算は、コストの外れ値を特定し、調達の部品価格決定に役立つ目標値を生成します。その後、調達部隊はその目標値をサプライヤーとの交渉材料とすることで、開発サイクルの早い段階で部品コストを節約できます。

結論:コストエンジニアは、市場投入時間短縮の自動化を必要としています

競争激化により、生産プロセスを合理化し、先行者利益を確保すべく、コストエンジニアは自動化されたシミュレーション駆動型ソフトを必要としています。

コスト計算部門は、製造シミュレーション使用によりコストと製造可能性に関する早期のインサイトを得、チームメンバーにアドバイスを提供できます。これにより、製品はコストを考慮して設計され、部品は最適な価格で調達されます。そしてさらに製品チームは、低コストかつ高機能な新製品の市場投入時間を短縮することができます。

本記事はaPriori社からの転載記事です。オリジナルのサイトで記事を読む。