前のコラムでは、電力の属性を証明するしくみについて解説しました。
では、世界にはどんな属性証書があるのでしょうか。ここでは、国際的な属性証書のひとつ「I-REC」が生まれた背景についてご紹介しましょう。
I-REC(International Renewable Energy Certificate)は「アイレック」と読みます。
電力がいつ、どこで、どのようにして生まれ、誰に使われたものなのかを証明する国際的な「属性証書」のひとつです。
I-RECが生まれる前、世界には2つの属性証書がありました。この2つのベストプラクティスに基づいて生まれたしくみがI-RECなのです。
世界の属性証書とは
世界で広く普及している属性証書は、I-RECを含めて3つあります。
・REC(Renewable Energy Certificate)
・GO(Guarantees of Origin)
・I-REC(International Renewable Energy Certificate)


REC(Renewable Energy Certificate)
「レック」と読みます。
RECは、1990年代後半にアメリカで生まれました。現在、北米(アメリカ・カナダの2か国)で使われている属性証書となっています。
「属性証明」とは、いつ、どこで、どのように電力が生まれたのかという情報を証明するしくみです。(詳しくは、前のコラムをご覧ください)
属性証明をするためには、まず発電した電力の情報を登録する必要がありますが、その情報を管理するための登録簿(電力の戸籍台帳)があります。
RECの場合、その登録簿がアメリカとカナダそれぞれ複数の州に存在し、別々に管理されています。共通の登録簿ではないため、登録簿同士の相互的な情報連携が不十分であるという課題があるようです。
GO(Guarantees of Origin)
「ジーオー」と読みます。
GOは、2000年代前半に欧州で生まれました。EUに加盟する27カ国のほかに、アイスランド、スイス、ノルウェーを加えた合計30カ国で使われています。
すべてのEU加盟国がそれぞれGOの登録簿を持つことが義務付けられているために、RECと同じくGOも登録簿が複数存在することとなります。
ただ、GOを標準的な証書として普及させるために登録簿を共通化した証書管理システム(ヨーロッパエネルギー証明システムEECS)も存在し、EU主要国がメンバーとして参加しています。
そして、I-REC
I-RECは、RECやGOのベストプラクティスに基づき、まだ属性証明のしくみがない国が導入しやすくするために、2014年に作られました。
先ほどGOでご紹介したヨーロッパの共通管理システムと同様に、I-RECの登録簿は世界に1つだけとなっています。そのため、国ごとに複数の登録簿を持たず、標準化された登録簿によって、情報の管理が楽で使いやすい仕組みとなっています。その結果、I-RECは多くの国で使われるようになり、発行量も急拡大しているのです。
2023年11月現在、北米・欧州以外のアジア・南米・アフリカ等の世界62か国で展開されており、日本では2023年1月からI-RECを使えるようになりました。
- 世界には3つの属性証書(REC・GO・I-REC)が存在している
- I-RECは、北米のGOや欧州のRECのベストプラクティスに基づき生まれた
- 日本でもI-RECが使えるようになり、世界的にも急速に普及している