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I-RECを日本で手軽に取引できる「EneTrack」のメリット

北米の「REC」、欧州の「GO」のベストプラクティスに基づいて作られた国際的な電力属性証明制度である「I-REC」。現在はアジア・南米・アフリカなど50カ国以上で採用され、日本国内でもいよいよ本格的な運用が始まろうとしています。本記事では、I-RECの役割や工程をおさらいするとともに、I-RECを日本語で手軽に取引できる「EneTrack」のメリットについて紹介します。

再エネ電力属性の正当性を証明するI-RECの3つの工程

一般的に、I-REC(International REC)は、オランダに本部を置く「I-REC規格財団(The International REC Standard Foundation)」が規定するルールブック群、およびそれに基づく電子的なトラッキングシステムによって認証・発行される再エネ電力属性証書を意味します。北米の「REC(Renewable Energy Certificate)」、欧州の「GO(Guarantees of Origin)」とともに属性証明制度の世界標準となっています。

I-RECは、以下の3つの工程によって再エネ電力属性の「唯一性」「追跡性」を証明します

①発 行(属性認証)
電力に関する属性情報(産地、電源種別、発電量など)をもとに、I-RECの発行申請を行うと取引口座に登録される。 I-RECの発行にあたっては、イシュアによる厳密な第三者認証が行われるため、二重発行を防止し唯一性を確保する。

②移 転(名義変更)
I-RECの取引に伴い、取引口座にある再エネ発電者名義のI-RECを、需要家企業名義に変更することにより権利を移転する。I-RECの権利移転にあたっては、トラッキング技術によりI-RECの正当性を追跡している。

③償 却(属性割当)
取引口座から償却口座へI-RECを移転することで、需要家企業はI-REC償却証書を取得できる。償却口座に移転したI-RECは無効化され、消去・再移転・変更などができない。これにより「唯一性」「追跡性」が担保され、二重使用ができない正当性の高い再エネ属性証書として、国際イニシアチブへの報告に利用できる。

日本でのI-REC利用を容易にする「EneTrack」

プラットフォームオペレーターの役割

I-RECを発行・移転・償却するときには、レジストリオペレーターである英国Evident Ev Limited(Evident社)が管理・運営するレジストリにアクセスする必要があります。しかし、そこには課題があります。

「I-RECを取引するマーケットプレイスがないため、売り手・買い手の双方が相手を探す必要があります。また、日本の再エネ発電者や需要家企業がI-RECを利用するには、Evident社の英語のWebサイト上で煩雑な手続きが必要になります。手軽に取引できる仕組みがなければ、再エネの活用が拡がっていきません」と話すのは、SCSK EneTrackプログラムマネージャーの高野元宏です。

この課題を解決するためにSCSKは、2023年5月にI-REC規格財団からプラットフォームオペレーターの認定を日本企業として初めて取得。再エネ発電者と需要家企業をマッチングし、日本語で容易にI-RECの発行・移転・償却ができる取引プラットフォ-ム「EneTrack(エネトラック)」の提供を開始しました。

「SCSKは、脱炭素社会の実現に貢献することをビジョンに掲げています。そのビジョンに向けた施策の一環として取り組んだのが、I-RECのプラットフォームオペレーターとして、再エネ発電者と需要家企業をつなぎ、日本語で取り引きを可能にするWebサービス『EneTrack』を提供することです」(高野)

EneTrackでは、再エネ発電者がI-RECを発行するときの「属性認証サービス」、I-RECの取引に伴い発電者から需要家企業に所有権を移転する「名義変更サービス」、需要家企業がI-RECを償却するときの「属性割当サービス」を提供します。EneTrackにより手続きの簡素化を実現するとともに、日本におけるI-RECの取引の活性化、再エネ需要を高めることで、企業の脱炭素経営のさらなる普及拡大につなげることを目指しています。

再エネ発電者と需要家企業のメリット

日本語で取り引きができるEneTrackは、I-RECを利用する再エネ発電者と需要家企業にさまざまなメリットをもたらします。

再エネ発電者にとっての大きなメリットは、I-RECの取引先となる需要家企業を探す手間がかからなくなることと、価格決定権を持てることです。

「EneTrackは、再エネ発電者と需要家企業の双方に提供し、マーケットプレイスとして機能するため、再エネ発電者は需要家企業を探す手間がかかりません。I-RECの発行後にすぐに販売できる即時性も、EneTrackの優位性といえます。また、再エネ発電者が設定したI-RECの販売価格は販売開始後でも変更できるため、販売状況に応じて価格を上下させるといった対応も可能になります」(高野)
こうしたメリットは、再エネ発電者の財務面に大きく貢献するとともに、新たな再エネ設備の投資にもつながります。

再エネ発電者のメリット

「Evident社のレジストリに口座を開設すると、通常は年間2,000ユーロ(日本円換算で30万円以上)のコストがかかります。それに対しEneTrackは、プラットフォームの口座でI-RECを預かるという形式をとっているため、口座利用のためのコストをかけることなくサービスを利用できます」(高野)

もう一つの需要家企業のメリットは、発電所の場所や設備などの属性や価格を選びながら、自社が使いたい再エネ電源をWebサイトで選び、その電源から発行されたI-RECを容易に購入できる点です。例えば、地産地消で地元の再エネを利用した、あるいは、最新の設備で効率的に作られた再エネを利用したと主張することが可能になります。

また、償却証書は、国際イニシアチブ( CDP、SBT、RE100など)への報告にも活用できます。国際基準の証書として世界的に認められているI-RECの信頼性は高く、グローバル展開している企業にとってはとくに有用だといえるでしょう。

需要家企業のメリット

日本国内の再エネ発電者はもとより、脱炭素・地球温暖化対策へ真剣に取り組む需要家企業は、I-RECを利用するための入口としてSCSKのEneTrackを、ぜひお役立てください。


※I-REC規格財団は、「I-Tracking規格財団」に名称変更しました。

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