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技術情報コラム

時間がかかる解析の効果を短時間で出すためのAI活用法

第一回:ものづくりと最適化

時間がかかる解析の効果を短時間で出すためのAI活用法第一回:ものづくりと最適化

ものづくりとCAE

家電などの小型のものから、自動車・航空機などの大型のものまで、昨今の多種多様な工学機械の「ものづくり」を後押ししているのが、流体力学や構造力学などの数値シミュレーションを代表とする、コンピュータを利用した工学支援システム(Computer Aided Engineering: CAE)です。例えば、航空機の設計者が機体の形を決めると、機体の周りに現れる空気の流れの様子を数値シミュレーションで再現することで、機体が所定の飛行条件でどのような性能を持つかを評価でき、設計者にフィードバックすることができます。このようにコンピュータ上で仮想的に試作を行い、設計の検討を行うことができるため、コスト低減と設計サイクルの短縮化が可能となります。これに対し、一連の設計作業をCAEではなく風洞試験だけで行うとなれば、チームで数ヶ月単位の期間にわたって、模型の設計製作から風洞試験・データ整理に取り組むことになります。

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1つ1つの設計対象の評価がCAEで簡単にできるようになると、あらかじめ設計にバリエーションを与え、それらを比較しながら評価したくなります(いわゆる「パラメトリックスタディ」)。さらに、コンピュータの性能向上に伴い、パラメトリックスタディが容易になると、その他のバリエーションも試して、パラメータの「最適な」組み合わせを見つけたくなります。この作業を、設計者の経験や勘に頼ることなく、コンピュータの力で自動的に行う「最適化」に興味が高まっています。

最適化とは?

最適化とは、次の問題において解xを求めることです。

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ここで、xは設計変数(計n個)からなるベクトル、fm(x)は目的関数(計M個)、gl(x)は制約条件(計L個)と呼びます。一般的に、目的関数および制約条件の関数形は未知(ブラックボックス)であるため、この問題の解xを陽に求めることは不可能です。すなわち最適化とは、すべての制約条件を満たす範囲内で、すべての目的関数を最小化(もしくは、符号を反転させて最大化)する設計変数の組み合わせ(最適解)を探索する数学問題と解釈できます。

例えば、航空機の設計の場合には、機体形状を表現するパラメータが設計変数、空力性能の最大化が目的関数、構造負荷が上限値を超えないことが制約条件となります。最適化は、ある設計要求の下で最適な設計候補を見つけ出すための有効な設計ツールとして既に認知されており、例に挙げた航空機の設計に限らず、様々な工学設計の分野で広く活用されています。

単目的最適化と多目的最適化

現実世界に見られる設計問題では、考慮すべき目的関数は唯一ではなく、複数存在するのが通常です。例えば航空機の設計は、空力・構造・推進などの多分野に由来する複数の目的関数の下に行われます。仮に1つの分野だけ、例えば空力性能だけに特化して航空機を設計すると、極端に大きな翼・極端に細い胴体を有する、非現実的な設計に繋がる危険性があります。よって、実用的な設計を創出するためには、複数の目的関数を同時に考慮した「多目的」最適化を行う必要があります。

1つの目的関数だけを考慮した「単目的」最適化問題では、最適解が唯一存在します。一方、多目的最適化問題では、ある1つの目的関数を改善しようとすると他の目的関数が改悪する相反関係(トレードオフ)が往々にしてあるため、最適解は唯一に定まらず、「非劣解」あるいは「Pareto最適解」(すべての目的関数について、他のどの解にも劣らない解)と呼ばれる無数の解の集合として存在します。

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単目的最適化が唯一の(先述の通り、1つの分野だけに特化した極端な)設計候補を提示するのに対して、多目的最適化はPareto最適解として、トレードオフの関係にある多分野をバランスさせながら多様な設計候補を提示します。実際の設計では、各段階において様々なトレードオフが発生しますが、Pareto最適解のデータはトレードオフの下での合意形成に役立つ有益な情報となります。よって多目的最適化では、Pareto最適解を探索するに留まらず、そのデータを俯瞰して分析するまでの作業が求められます。

今回は、ものづくりの設計において活用される最適化について、基本的な考え方や方法をご説明いただきました。次回は、「サロゲートモデルとベイズ最適化」についてご紹介いただきます。

著者紹介
九州大学
工学研究院 機械工学部門 教授
下山幸治 先生

*SCSKの最適化ソリューション pSeven, Toffee-X

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