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PLMとは?システムと機能・製造業に導入するメリットを解説


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PLM(Product Lifecycle Management)とは、日本語では「製品ライフサイクル管理」とされる、製品のライフサイクル全体を統合的に管理する手法やシステムを指します。PLMは製品の開発、製造の各段階におけるさまざまな情報を繋ぐための基盤です。グローバル化、IT化による現代の日本の製造業を取り巻くさまざまな変化の中、ものづくり変革を実現し、企業の競争力を強化するための取り組みとして注目を集めています。

この記事ではPLMの概要、仕組み、機能とともに、導入の手順や注意点、メリットについて解説します。

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PLMとは

はじめに、PLMについて概要を解説します。

PLMの概要

PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理/マネジメント)とは、製品のライフサイクル全体を統合的に管理する取り組み、またそのシステムを指します。PLMは製品の企画、設計、製造、販売、保守などの各段階におけるデータやプロセスを、関連する部門が相互に連携して共有し、製品に関連する情報の一元管理を目指すものです。

【PLMとは】
製品ライフサイクル全体にわたって技術情報を管理するためのシステム

  • 企画、設計開発、生産、調達、物流、販売、アフターサービス等の各プロセスに渡って発生する様々な技術情報を集約してエンジニアリングチェーンを繋ぎ、製品開発力や企業競争力を強化することが目的。
  • 全工程で情報を共有することで、製品開発力の強化、設計作業の効率化、在庫削減等が可能となる。

(出典)経済産業省資料:令和2年度 製造基盤技術実態等調査 サイバーフィジカルシステムの戦略的導入等に係る調査 p4

PLMが今、必要とされる背景

PLMの概念はすでに1990年代には生まれていたとされます。その後、2000年代には急速なPCの普及に伴い、PLMの推進が製造業の一部(自動車産業・電機産業等)で進められてきました。PLM導入が必要とされるようになった背景・理由として、日本のモノづくりを取り巻くグローバル化、IT化の推進、膨大で緻密な製造データの効率的な管理の必要性などがありました。

さらに最近では、これまでの業種に限らずPLMのニーズが高まっています。背景には、従来の要因に加えて、以下のような新しい要因も挙げられます。

(1)事業環境の不確実性への対応力とQCDを高める基盤の必要性

戦争、半導体不足、感染症の世界的な蔓延など、おそらく数十年前には予期しなかった事業環境の変化が、現在次々に起きています。またこれらを受けて脱炭素の流れなども加速しています。

変化の激しい時代、今後のことを確実に予測することは誰にも不可能でしょう。だからこそ、「変化」に迅速かつ柔軟に対応できるものづくり力が製造業に求められています。ここから、エンジニアリングチェーン全体の情報を有機的に連携し、不確実性への対応力とQCD(Quality:品質・Cost:コスト・Delivery:納期)を高めるものづくり基盤として、PLMが期待されています。

(2)市場環境・市場需要への迅速な対応の必要性

現在は日本国内だけの競争ではなく、グローバル競争が激化しています。より高品質かつ高機能な製品を低コストで開発し、適切な価格で、需要のある市場に迅速に投入しなければなりません。

PLMによって製品に関連するデータがすべての部門に紐づけられることで、営業部門が得た市場におけるトレンドやニーズも素早く開発部門へ連携でき、「今市場が欲しいと思っている」製品を迅速に設計に反映できます。

なお上記の理由から、PLMツールそのものも進化を遂げています。また製品データの量・質ともに以前より膨大かつ高度になっているため、すでにPLMを導入済の企業においても刷新する機運が高まっています。

(参考)製造業を巡る動向と今後の課題 2021年9月 経済産業省製造産業局

PLM導入の4つのメリット|導入で実現・改善できること

PLMを導入することで企業が得られるメリットを解説します。

【メリット1】業務効率と生産性が向上する(リードタイムの短縮)

すべての情報が関連づけされる

PLMの導入により、自社製品の企画・開発から製造・販売・保守・廃棄まで、一連の製造プロセスに関する業務が効率化できます。これは製品に関するデータを一元管理でき、迅速な共有・連携が可能となるためです。

従来は、各部門でExcelに情報を整理していたり、紙に印刷して保管していたり…という方法がよくとられていました。これらの方法では、情報を各部門間で伝達する際、情報の重複や抜け漏れ、間違い、更新の不統一が発生しやすくなります。同じようなデータがあちこちの部門に散らばっていて、どれが最新の正確なものか分からないと、確認作業や古い情報利用で起きた間違いによる工程戻りなども発生してしまうためです。

PLMを導入することで情報が一か所にまとまり、製品情報の関連づけ(紐づけ)が正しく行われ、共有されます。その結果、製品の設計変更や品質管理も効率化され、タイムリーな意思決定と迅速なプロジェクト進行が可能となり、リードタイムが短縮できます。

【メリット2】製品の品質が向上する

上記のとおり、PLMは製品の品質管理にも重要な役割を果たします。製品仕様、設計データ、品質テスト結果などの情報が統合されると、品質の一貫性が実現でき、顧客からの信頼性を確保できるでしょう。

【メリット3】製造コストが削減できる

PLMの導入で、無駄な作業や重複したプロセスが見直される結果、コストを削減することができます。

現在の日本では「より良いものを、より安く売る」ことが重視されます(「より良いものを、価値に見合った価格で高く売る」手法もありますがここでは割愛します)。これを実現するには、可能な限り無駄をなくしてコスト削減することが求められます。

PLM導入でコスト削減が実現できる理由は、以下の4つによります。

(1)作業の無駄をなくし効率アップするため

必要な情報を探し出す手間がかかりません。一元管理されているためすぐに取り出せ、無駄がなくなり、これまでかかっていたコストが削減できます。

(2)リードタイムが短縮できるため

従来起きていた業務の手戻り自体が、情報共有によって起きにくくなります。また手戻りが起きた際にも各工程で必要なデータが紐づけられているため、すぐに情報が取り出せ、時間短縮が可能です。無駄なやり直しが発生すると材料費のほか人件費などもかかるため、リードタイム短縮と効率化はコスト削減につながります。

(3)情報管理によって無駄なコストそのものをカットできるため

例えば部品の統合管理によって、重複発注による無駄なコストが削減できます。その他、設計データの再利用などもコスト削減に役立ちます。

(4)不良品やリコールが削減できるため

製品品質の向上により、不良品やリコールの削減にもつながります。

【メリット4】市場のニーズに対応した製品を素早く、タイムリーに供給できる

リードタイムの短縮がもたらす付随的なメリットです。PLMの導入により、製品の企画から市場投入までの期間が短くなります。つまり、需要のある製品を、需要が高い間にタイムリーに供給できます。

例えば、製品開発から市場に出すまでの間に時間がかかると、市場の熱は冷めてその製品はすでに市場で必要とされなくなっていた…ということがあります。特に近年は市場変化の速さやトレンドの移り変わりは激しく、ニーズのある製品をニーズの高まっている間に提供するために、PLM導入が必須といえるでしょう。

【メリット5】顧客の信頼性を得られ競争力が高まる

PLM導入により製品に関するデータの可視化と追跡が可能になることで、製品の問題(欠陥など)の早期発見や原因分析がスムーズに行われます。顧客へのアフターサービス、不良品やリコールに素早く対応することで、信頼性がさらに高まります。その結果、競合製品に対する競争力が高まるでしょう。

PLMとPDMの違い

PDM(Product Data Management:製品情報管理、プロダクトマネジャー)とは、製品のデータ管理を行うシステムや手法のことを指します。主に企画・開発・設計部門が使用し、製品の図面やCADデータ、仕様書などの情報を一元管理し、共有することで、データの整合性や変更管理を効率的に行います。またBOMと呼ばれる部品表なども合わせて管理します。

PLMとPDMの機能の違い

PLMとPDMの機能の違い

PLMとPDMは名称が似ていますが、この2つはコンセプトが異なります。

PDMは製品の開発プロセスにおける設計データの管理に焦点を当てており、製造現場、営業、保守・管理など他の部門との連携は限定的です。一方、PLMは前述のとおり、製品のライフサイクル全体を統合的に管理するシステムや手法を指します。
「PDMは、PLMが関わる大きなサイクルのうち、主に製品開発に関する一部分を集中的に担う」
「PLMは、PDMの関わる部門も含めた広範囲にまたがるデータ管理を行い、それぞれを連携する」
と考えるとわかりやすいでしょう。

ただし、PDMと銘打っている製品やサービスの中にも、PLM同様に、製品にかかわる全体的な情報を連携できるものもあるようです。実際、PLMとPDMの定義は厳密には決められていない面もあります。

そのためPLMの導入を検討する際には、製品についてリサーチを行っておく必要があります。「そのシステムがPLMなのかPDMなのか」の判断は、実際にベンダーから資料を取り寄せたり、セミナーに参加したりして、直接話を聞くほうが間違いありません。

PDMとPLMの違いや具体的な製品について、より詳しく知りたい場合は以下の記事を参照してください。

PLMの主な機能例

ここでは、PLMの代表的な機能を紹介します。実際にはさらにできることは多いですが、わかりやすいものをピックアップしています。なお、実際の詳細な機能説明はリンク先をご参照ください(SCSK製品ページへ飛びます)。

ポートフォリオ管理機能

ポートフォリオとはこの場合、企画部門が「市場需要があり、収益性の高い製品」を開発するためにプロジェクトを管理する機能です。その製品を世に出すために必要なリソースを効率的に管理します。
(資料)経済産業省:「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~

プロジェクト管理機能

進行中のプロジェクト全体を俯瞰し、管理します。進捗管理として設計のフェーズ管理やマイルストーン管理などの情報をダッシュボードに表示、進行中の業務全体を確認します。また作業タスクや納期にかかわるスケジュールなどをガントチャートで共有するなども可能です(サービスにより異なります)。

品質計画・管理機能

製品の品質管理に関連する機能です。リスクマネジメント・品質改善及び規制・コンプライアンスへの準拠などを管理します。

製品設計機能

製品情報を統合管理します。設計の期間短縮、効率的な設計変更プロセスの実現、化学物質規制への対応など、設計開発業務を支援できます。設計に直接携わるものからBOM(部品表)や文書管理なども含みます(ポートフォリオ設計をここに含むケースもあります)。

CADデータ管理機能

製造業において設計部門の重要データであるCAD(コンピュータ支援設計)データを管理します。CADアプリケーションや各種データとの連携など、設計部門だけでなくすべての部門での活用も可能です。

これ以外にもPLMは多くの機能をもちます。具体的な製品の機能については以下も参考にしてください。

【PLMソリューション Aras Innovator (アラス イノベーター)の機能例】

Product Engineering 製品エンジニアリング
Program Management プロジェクト計画・管理
Quality Planning 品質計画・管理
Manufacturing Process Planning 製造工程計画・管理
Visual Collaboration ビジュアル コラボレーション
Requirements Management 要求仕様管理
MultiCAD Connetor マルチCAD コネクター(メカ用)
Office Connector MSオフィス製品 コネクター

Aras Innovator

※ Aras および Aras Innovator の社名、ブランド名、製品名、または商標は、米国および/またはその他の国々における Aras Corporation およびその子会社、関連会社の登録商標または商標です。
※記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の登録商標または商標です。

PLMシステムを導入する際の注意点

PLMの導入前に、解決しておきたいこと、確認しておきたいこと

ここでは、PLMの導入前に、解決しておきたいこと、確認しておきたいことを解説します。

1.最初は「スモールスタート」を意識して導入する

PLMを導入することは、企業の全ての部門の情報を正しく紐づけるゴールを目指すことになります。とはいえ、最初から全社の全ての部門でPLMを活用させようとしても、PLMを上手く使いこなせない社員もいます。統括部門、開発部門、製造部門、営業部門…と全てが紐づけられるのは理想ですが、現場ごとの事情や特性を考慮しなければいたずらに混乱を招くことになりかねません。

そこで、新しくPLMを導入する企業の場合は、「スモールスタート」をおすすめします。スモールスタートとは、最初は例えば1つの部門だけで、機能も限定して導入する手法です。実際に触って使用してみながら効果を算出し、実際に効果が見込めるという結果が出たところで使う機能を少しずつ増やし、適用範囲の拡張を行います。

【スモールスタートの活動イメージ】

【スモールスタートの活動イメージ】

(参考)PLMソリューション Aras Innovator (アラス イノベーター) | SCSK株式会社

一つの部門である程度慣れて活用がスムーズに行われるようになったら、他の部門にも徐々に展開していくことで、全体最適活動に切り替えることも可能です。

2.導入前に課題の洗い出しを行い、どのような機能が必要かリストアップする

PLM導入の前に、組織内における現在の課題を明確にしておく必要があります。現行のプロセスやボトルネックを分析し、改善すべき領域を特定します。これは部門ごとに行うことが理想ですが、後述のスモールスタートを行う場合はPLMを導入する部門に限定します。

また洗い出した課題ごとに具体的なニーズを明らかにし、どのような機能が必要かをリストアップしておきます。

3.サービスを比較検討・既存システムとの連携可能かなど最適なシステムを選定

PLMの導入には複数のサービスプロバイダやソフトウェアベンダーの比較検討が必要です。各社の提供する機能、カスタマイズ性、拡張性、価格、導入サポート、運用後のサポート、将来的なアップグレードなど、比較項目をリストアップしてそれぞれの項目ごとに評価します。

ここで注意しなければならない点が既存のシステムとの連携が可能かどうかです。PLMは最終的に、製品のライフサイクルに関わっているシステムやデータを一元管理することでその真価を発揮します。逆に言えば、PLMに連携されていない既存システムがあれば、PLM導入効果の最大値は見込めないおそれがあります。

PLMを導入する前に、既存システムとの連携は可能か、連携不可能な場合に打開策はあるかどうか、コストはどれくらいかかるのかなどをベンダーにあらかじめ確認しておきましょう。そのうえで、組織の課題解決や要件に最も適したソリューションを選択しましょう。

4.社内の連携を強化し全社的に導入へ取り組む

現状の姿と目指す姿

PLMを導入したいと考える企業は、何かしら現状に課題を抱えていることが多いです。それらの課題を解決するためにPLMを導入するのであれば、組織全体のコミュニケーションは不可欠です。お互いに情報を共有し、部門から部門への流れをスムーズにして、所属部署だけの利益ではなく「企業全体の利益と成長」を社員一人一人が求める風土を作らなければ、ますます広がる競争に生き残れないかもしれません。

PLMを導入すると、既存のシステムは使えなくなるものもあるかもしれません。新しいシステムをいちから覚えなければならないことに抵抗を示す社員もいるかもしれませんが、全社でトレーニングを行うなど、システム変更に伴うフォロー体制も固めておく必要があるでしょう。

5.PLMシステムに詳しい企業に依頼する

PLMの導入は、導入して完了ではなく継続していくもの。導入後も運用を行いながら、定期的な評価と改善が必要です。またPLMの導入と運用には、IT人材の確保と配置も必須になります。

とはいえ、すべてを自社で構築するには人的リソースが不足しているケースも多く、無理に運用すると担当部署と社員に多大な負担を与えることになります。PLMを検討している場合は、PLMシステムに詳しいベンダーに依頼することをおすすめします。導入後のサポートなどはもちろん、導入事例(導入実績)、ベンダー自体の信頼性も合わせて検討項目にするとよいでしょう。

まとめ|PLMシステムの導入で業務改善と効率化を実現しよう!

本記事では、PLMとは何か、導入のメリットや注意点、PDMとの違いについて解説しました。

市場ニーズの多様化に伴い、顧客の声を反映した製品の設計やカスタマイズをスピーディに実現できる柔軟性が企業に求められています。PLMを導入することで、製品ライフサイクル全体を統合的に管理して製品開発から販売・保守まで一連のプロセスを効率化できます。企業の競争力向上や社会により良い製品を長く供給できるシステムづくりに、PLMをぜひお役立てください。

PLMの導入で企業が変わる。企業を変える。
コスト削減・リードタイム短縮・業務効率化を実現!

Aras Innovatorは、製造業における製品の企画~保守を通した製品ライフサイクル全体の各データを繋ぐPLMソフトウェアです。膨大な情報を管理・連携するためのテンプレートを搭載しており、そのテンプレートを活用しつつ、柔軟にカスタマイズすることで、企業の業務内容に応じたデータマネジメントシステムを手軽に構築できます。
SCSKはAras Innovatorの国内トップクラスの導入実績を持つパートナーです。

PLMソリューション Aras Innovator (アラス イノベーター) | SCSK株式会社
Aras製品ページ:https://www.scsk.jp/product/common/aras/index.html

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