事例から学ぶ!社内ヘルプデスク効率化と社員の自己解決率向上の方法とは?
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顧客への技術サポートといったBtoBの製品・サービスのサポートや、社内ヘルプデスクは、複数の関係者が関与したり、業務が専門的になったりすることで、対応が複雑になりがちです。そのため、一般的なBtoC向けのサポートツールでは十分に対応できません。多くの企業は既存のサポート製品をカスタマイズし、電話やメールでの問い合わせ対応やExcelでの情報管理を行っていますが、これでは業務効率が低下し、ノウハウの蓄積が難しくなります。
こうした問題を解決するため、SCSKが独自に開発したのが、BtoB専用のカスタマーサポート業務基盤「CarePlus Cloud」です。SCSKのアプリケーション開発・運用プラットフォーム「S-Cred+(エス クレド プラス)」でも、2024年12月からCarePlus Cloudを活用しています。今回はSCSKの3名に、BtoBカスタマーサポートの課題、CarePlus Cloudによる解決ポイント、導入効果などを詳しく聞きました。
目次
![]() SCSK株式会社 技術戦略本部 戦略企画部 モダン開発促進課 櫻井 智治 S-Cred+のサービス主管として全体を統括 |
![]() SCSK株式会社 ITインフラサービス事業グループ クラウドサービス事業本部 クラウドサービス第二部 第二課 鈴木 幹人 S-Cred+のサポート担当として 利用者からの問い合わせなどに対応 |
![]() SCSK株式会社 ITインフラサービス事業グループ ITインフラ・ソフトウェア事業本部 事業推進部 第一課 課長代理 樋口 貴志 CarePlus Cloudの製品担当 |
―― S-Cred+は、どのようなサービスなのでしょうか?
櫻井 「S-Cred+」はシステム開発や運用を自動化・標準化するプラットフォームで、基本的にSCSKの開発チーム向けに提供しています。AWSやMicrosoft Azureなどのクラウド環境(インフラ)から、コンテナ・サーバレスといったクラウドネイティブ(※)な開発環境、ローコード開発ツールなど、開発に必要なさまざまな要素をそろえています。S-Cred+を使う当社としては、開発及び運用を徹底的に自動化・標準化できる上に、一定のセキュリティと品質を担保し、開発コストの削減・期間短縮といった多くのメリットが得られます。それによってお客様に高品質なシステムを提供できます。
【図1】アプリケーション開発・運用プラットフォーム「S-Cred+」利用イメージ
※クラウドネイティブを詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
・クラウドネイティブとは? 導入のメリットや実例などをわかりやすく解説!|SCSK IT Platform Navigator
・クラウドネイティブ化の具体的手法を解説!企業のアフタークラウドを支援するNebulaShift【イベントレポート前編】|SCSK IT Platform Navigator
・クラウドネイティブ導入事例|企業のアフタークラウドを支援するNebulaShift【イベントレポート後編】|SCSK IT Platform Navigator
―― S-Cred+を利用する開発チームから、技術的な問い合わせがくることもあるのでしょうか?
鈴木 もちろんあります。そこで、開発チーム向けにヘルプデスクを用意し、私のチームで対応しています。社内向けのヘルプデスクではありますが、開発チームごとに担当者が異なり、ほかのチームとは共有できない情報も数多くあります。また、S-Cred+上で利用している環境やサービスもそれぞれ異なるため、過去の問い合わせ履歴を踏まえた回答が必要です。
樋口 ヘルプデスク業務は大きくBtoC向けとBtoB向けに分けられます。BtoCでは、お客様は基本的に1人で、どのお客様も同じ製品やサービスを利用しています。対してBtoBの場合、お客様側も部署やチームなど複数人が関わり、製品やサービスがお客様ごとにカスタマイズされているのが特徴です。
さまざまな人が関与し、プロジェクトに応じて異なる利用環境を使っているという点で、S-Cred+はBtoB向けヘルプデスクとの共通点が多いように思います。
―― S-Cred+のヘルプデスクではどのような課題を抱えていましたか?
櫻井 ヘルプデスク向けのツールはBtoCを想定したものが多く、メール通知を同じ部署やチームに所属する複数人に送りたい場合など、S-Cred+のヘルプデスク業務に必要な要件を満たすものがありませんでした。そこで複数の製品を組み合わせ、カスタマイズして使っていました。その結果、システムがかなり複雑化し、ちょっとした機能改修にも時間とコストがかかり、運用負荷が高まっていました。また、オンプレミスで運用していたので、インフラの運用コストも問題でした。
鈴木 開発チームからの問い合わせは、Webポータルのフォームから登録してもらう仕組みになっています。そのポータルが別システムに連携していたため、レスポンスまでかなりの時間がかかり、「フォームを送信したあと、反応がなくて不安になる」といった声が寄せられていました。また、S-Cred+では、サービスごとに専用のフォームからヘルプデスクに問い合わせするフローになっており、IaaS/PaaSなどで取り扱うサービスを増やす際には、新たにフォームを追加することになります。この実装にも多くの工数が必要でした。
さらに、エスカレーション時の情報連携にタイムラグが発生し、システム間のインターフェースで障害が出るなど、うまく連携できないトラブルもあり、運用やオペレーションが煩雑で確認に手間がかかる状態でした。
―― BtoBヘルプデスクで起きがちな問題は何でしょうか?
樋口 BtoBヘルプデスクをオンプレミスで開発した独自システムで運用しているという話はよく聞きます。ただ、スクラッチのシステムはある時点のニーズに合わせて開発されているため拡張性の観点が抜けているケースが多く、「サービスが増えた」「問い合わせ項目を増やしたい」といった際には作り直しが必要です。そのため、変化に柔軟に対応できず、保守要員を抱えなければならないなど、工数面の問題も出てきます。
また、同じサービスでも、ユーザーによって使い方や利用機能が異なるため、問い合わせにはその状況を踏まえて回答する必要があります。蓄積されたナレッジをどこまで使っていいのかを気にしなければならず、うまくナレッジを活用できないという悩みも多いです。
櫻井 ナレッジの共有はS-Cred+でも大きな課題でした。これまでは検索機能がなく、過去の履歴を調べるには、データベースを直接確認するか、過去に回答した人に聞かなければならず、この状況を改善したいと考えていました。
独自開発したサポートシステムでよくある課題 |
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―― CarePlus Cloudに移行したきっかけを教えてください
櫻井 S-Cred+は、2020年5月にリリースから5年目を迎え、利用する事業部門も増えてきました。さらに利用者を増やし、サービスを拡張したくても、既存の問い合わせ管理システムではちょっとした改修でも実装に時間がかかり、限界があります。極力、サービスを止めずに移行するのが前提ですが、これ以上利用者が増えると移行の周知や調整も大変で、やるなら今しかないと決定しました。
―― CarePlus Cloudを選んだポイントは何でしたか?
櫻井 S-Cred+では、オプション・サービスとして社外のエンドユーザー企業向けにヘルプデスクを提供しているのですが、そこでは以前からCarePlus Cloudを利用していました。その中でも、使いやすさなどの評価がかなり高かったことが決め手です。
当初、「既存システムを統合し、開発し直す」「他の製品への移行」「CarePlus Cloudを導入」の3案を検討していました。しかし、既存システムの改修ではオンプレミスが残り、インフラコストの観点から難しいという結論になりました。また、一般的なBtoC向けの製品と比べて、CarePlus CloudはUIやナレッジ共有の仕組みもよく考えられています。BtoBに特化したツールなだけあって、開発チームにとっても、ヘルプデスク担当チームにとっても使いやすそうだと感じ、CarePlus Cloudを選びました。
―― BtoBサポートに特化した具体的な機能を教えてください
樋口 BtoBならではの機能は大きく3つあり、1つ目はお客様の異動や退職に対応できることです。CarePlus Cloudではお客様側での情報共有の仕組みを提供し、異動・退職のほか「部署内で上司・同僚に問い合わせ内容を共有したい」といったニーズにも対応します。
2つ目は、複数部署との連携です。BtoBでは、営業部門や委託先から、技術部門まで関係者が多くなり、連携不足が課題になりがちなのですが、必要な権限を設定することで、複数部署と柔軟に連携する機能を提供しています。
3つ目は内部承認機能で、複数部署に連携・エスカレーションした際に顧客への回答内容を内部で承認するものです。
ヘルプデスクとユーザー、どちらでも情報共有できる機能を揃えていることが特長と言えます。
鈴木 内部承認機能はとても便利で、エスカレーションする際に情報を追加することもできます。問い合わせしてきた担当者とのやり取りと、エスカレーション先との内部的なやり取りを色分けでき、回答品質を高めるための情報を管理しやすくなっています。また、ナレッジ検索も、時間軸や製品カットなど、さまざまな条件で情報を絞り込めるので、必要な情報が見つけやすくなりました。
【図2】「S-Cred+」とCarePlus Cloud 連携イメージ
―― そのほか、実際に使用して便利だと感じた機能を教えてください
鈴木 ユーザーごとに閲覧できる範囲を設定する機能です。S-Cred+は複数のサービスで構成されており、これまではサービスごとにサポート機能を持っていましたが、今回、すべてのサポート機能をCarePlus Cloudに集約しました。開発チームの担当者には自分が利用しているサービスしか閲覧できないように設定しており、サポートする側は担当する複数のサービスすべてについてCarePlus Cloudで対応できるようになりました。サポート担当者はこれまでサービスごとに別のシステムにログインして対応していたので、かなりの効率化が図られました。
―― CarePlus Cloudの導入はいかがでしたか?
櫻井 2024年7月から9月までの3か月間で開発・テストし、12月の本番リリースまでこぎつけることができました。テンプレートが事前に用意され、手厚いサポートがあったからこそ、これだけの短期間で導入できたと思います。
鈴木 CarePlus CloudはUIのカスタマイズ性が高く、GUIで入力フォームを簡単に作成できることも納期短縮に繋がっています。今回、問い合わせする段階で、状況を特定するために必要な情報を漏れなく入力してもらえるよう問い合わせフォームにも細かな選択肢を設けました。利用している環境やトラブル時の状況など、押さえておきたい事前情報を選択肢として提示、入力してもらうことで、問い合わせ内容の理解も進み、回答のためのナレッジも効率的に検索できるようになりました。
―― 既存システムからのデータ移行はスムーズに行えましたか?
鈴木 CarePlus Cloudのインポート用フォーマットにあわせて、データを作成しました。それをCarePlus Cloudチームに連携し、一括移行してもらいました。システムの切り替え当日は差分データを移すのみだったので、停止時間を最小限に抑えられました。あとはWebポータルのリンクを変更するだけで、とてもスムーズに完了しました。
樋口 CarePlus Cloudには、ユーザーに代わってオペレータが問い合わせ内容を登録できる「代理投稿」という機能があります。前述のリンクを変更するタイミングに、新しい問い合わせ内容が既存システムに登録されてしまっても、代理投稿の機能を使えば、新しいシステムに登録し直せます。
―― 具体的にどのような導入効果が得られましたか?
鈴木 CarePlus Cloudを導入してから3か月が経ちましたが、ナレッジ共有の仕組みにより、過去の回答などを参照しやすくなったことで、エスカレーションせずにヘルプデスクだけで対応が完結した「一次解決率」が20%向上しました。オペレータからは、以前のシステムと比較して分かりやすいと聞いています。開発チーム側からも、サポートシステムのレスポンスが悪いなどのネガティブな声がなくなり、「こういう機能を追加して欲しい」といった要望が寄せられるようになりました。
櫻井 導入3か月で要望が挙がっていること自体が1つの大きな効果だと思っています。これまでは要望すら来ない状況でしたから。
―― 今後、CarePlus Cloudをどう活用されていく予定でしょうか?
鈴木 「どこの回答に時間がかかっているのか」など、ヘルプデスクの対応・回答状況を集計・分析し、より高品質なサポートを目指します。また、他の製品・サービスのサポート委託先に紹介するといった横展開も考えています。
櫻井 S-Cred+にCarePlus Cloudを導入したことで、サポートのレスポンスが改善し、ナレッジを共有できる基盤が整備できました。S-Cred+としても、SCSKのグループ会社にも提供し、さらなる利用者拡大を目指す中、CarePlus CloudはSaaSなのでインフラコストの懸念もなく、利用者が増えても十分対応できるので安心です。
また、AIを活用した問い合わせ対応など、新しいサービスの追加も考えています。そのためには問い合わせフォームの追加も必要になりますが、CarePlus Cloudはテンプレートを使って簡単に対応できるので、とても心強いですね。
樋口 CarePlus Cloudへの機能追加も積極的に行っています。最近では、API経由で問い合わせを登録できる機能をリリースしました。「監視システムのアラートをもとに自動で問い合わせ登録」「画面コピーやエラーコードをAPI経由で連携」などが可能です。この機能により、事象を的確に把握でき、問い合わせへの回答時間の短縮・効率化につながります。
今後はCarePlus CloudでもAI活用を考えており、自動回答生成などの機能追加を予定しています。S-Cred+の利用者からの要望も含め、いただいた声を参考に、機能追加にも前向きに取り組んでいきます。