郵船トラベルの業務渡航ビジネスを10年支えるWAN環境の帯域制御 -東西データセンターにVDIを分散配置したBCP実現を強力に支援-
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QoS(Quality of Service)とは、ネットワーク上で提供されるサービスの品質を確保するために、流れるデータの順番や量を調整する仕組み。主に優先制御と帯域制御という2つの機能を用いることで、Web会議の音声や映像が途切れる、Webサイトがなかなか表示されない、といった課題を解消し、スムーズなネットワーク通信を実現する。
QoSとは「Quality of Service」の略で、ネットワークのサービス品質を高めるために、通信されるデータ量や順番を調整する技術です。
一言でいえば、ネットワーク通信における「交通整理」の仕組みです。インターネットの通信経路という限られた道路で、多くのデータ(車)が同時に行き交うと、渋滞が発生してしまいます。例えば、この渋滞の中でどのデータを優先的に通すか、あるいは必要に応じて特定のデータに専用レーンを用意します。こうした仕組みによって、ネットワーク全体が効率的に利用され、快適な通信環境が実現します。
現代では、動画配信やWeb会議、オンラインゲームなど、大容量でリアルタイム性が求められる通信が増えています。そのような中、
Web会議:自分の声が遅れて届く、相手の映像が固まる
オンラインゲーム:操作の遅延(ラグ)で不利になる、接続が切れる
家族での同時利用:動画視聴中に読み込みが頻繁に発生する
このような経験をされた方も多いのではないでしょうか?家族が同時に別々の動画を見たり、オフィスで多くの人がWeb会議に参加したりすると、ネットワークはすぐに混雑してしまいます。QoSは、このような状況で特定の通信の品質が著しく低下するのを防ぐために不可欠な技術です。
優先制御は、データパケットに「優先度」を示す目印(マーキング)をつけることで実現されます。ネットワーク機器(ルーターなど)は、この目印を見て優先度の高いパケットを先に処理します。これは、サイレンを鳴らした救急車が他の車より優先して交差点を通過できるのと同じイメージです。
この優先度を示す代表的な技術が「DSCP(Differentiated Services Code Point)」です。通信の種類ごとに異なる値を設定することで、きめ細やかな優先制御が可能になります。
| DSCP値(例) | 優先度 | 主な用途 |
|---|---|---|
| EF (46) | 最高 | 音声通話 (VoIP) |
| AF41 (34) | 高 | ビデオ会議 |
| AF21 (18) | 中 | 重要な業務データ |
| BE (0) | なし(通常) | Web閲覧、メール |
帯域制御は、特定の通信のために通信帯域という「専用レーン」を確保する技術です。例えば「このビデオ会議システムには、常に5Mbpsの帯域を保証する」といった設定を行います。これにより、他のユーザーが大容量のファイルをダウンロードしていても、そのビデオ会議の品質は影響を受けません。
帯域制御には、設定した通信量を超えたデータをどう扱うかによって、主に2つの方式(シェーピングとポリシング)があります。これらの方式を使い分けることで、ネットワークの利用効率と公平性を保ちます。
| 方式 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| シェーピング | 超過したデータを一時的に溜めて、後で送信する | トラフィックを平滑化し、パケットの破棄を防ぐ |
| ポリシング | 超過したデータを破棄、または優先度を下げて送信する | 厳格に帯域を制限し、ネットワークを保護する |
QoSと似た言葉に「QoE(Quality of Experience)」があります。QoSがネットワークの「技術的な品質」を測る指標であるのに対し、QoEはユーザーが実際に感じる「体感的な品質」や満足度を指します。例えば、QoSの設定が完璧でネットワークの遅延がなくても、パソコンの性能が低ければWeb会議の映像はカクカクしてしまいます。この場合、QoSは良好でも、ユーザーのQoEは低いということになります。
QoSは高いQoEを実現するための重要な土台ですが、QoSだけが全てではないということを理解しておくことが大切です。最終的な目標は、技術的な数値を満たすことではなく、ユーザーが快適だと感じる体験を提供することにあります。