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働き方改革のリーディングカンパニーSCSKのキーマンが語る
改革を成功させるためのIT施策とは【前編】


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政府が今、国会で成立をめざす働き方改革関連法案は、戦後70年ぶりの労働基準法の歴史的な大改革です。長時間労働の是正、ワーク・ライフ・バランスの実現、多様な人材の活躍などを主な柱とする同改革は、日本型の雇用慣行を大きく変化させるとともに企業価値の創出で競争力を強化するものとして大きく注目されています。
働き方改革には、経営企画・人事・総務部門主導による「意識改革・制度設計」と、情報システム部門がサポートする「IT施策」が不可欠です。これが両輪となって相乗効果を促し、誰にとっても働きやすい環境を支える仕組みづくりを実現できるのです。
SCSKはこれまで、システムインテグレーターとしてのITスキルをベースに、自社の改革に挑戦し、働き方改革先進企業として、各方面から高い評価をいただいてまいりました。現在はその経験を生かし、お客様企業の「生産性向上」と「健康的で持続可能な働き方改革の実現」をサポートする体制を整えています。
今回は特別編として、SCSK社内の働き方改革に「IT施策」の側面から取り組んできた担当部門のキーマン2人に、これまでの取り組みや成功へのノウハウなどについて、IT部門としての考えを前編・後編の2回にわたり赤裸々に語ってもらいました。

SCSK株式会社 情報システムグループ長補佐 コーポレートシステム部長 根本 世紀
SCSK株式会社
情報システムグループ長補佐
コーポレートシステム部長
根本 世紀
SCSK株式会社 情報システムグループ コーポレートシステム部 三瓶 登志江
SCSK株式会社
情報システムグループ
コーポレートシステム部
三瓶 登志江

改革のスタートは「健康経営」から

―― SCSKが働き方改革に取り組むきっかけとは、何だったのでしょうか?

根本:2000年代のIT業界は、3K(きつい・厳しい・帰れない)の象徴と揶揄されるほど、労働環境の厳しい時期が長く続きました。もちろん、SCSKも例外ではありませんでした。当時、社員の多くは長時間労働の影響で疲れ果て、お昼の休憩時間には、狭い自席に突っ伏して寝ているのが当たり前の光景でした。
この異常な働き方を変えなければならないと考えたのが改革のはじまりです。私たちはまず、2011年に住商情報システム株式会社と株式会社CSKが合併して、SCSKに社名変更したタイミングで「健康経営」を加速させました。健康経営として、「働きやすく、やりがいのある会社」を目指したのです。そこで長時間労働の削減、有給休暇の取得、場所を選ばない働き方の選択など、成長する企業の健康経営には何が必要かという観点から取り組みを本格化させていきました。

―― 健康経営が働き方改革へと進化していったわけですね。

根本:私も、以前は人事部長を務めていましたから、長時間労働が続くことでメンタルヘルスに問題を抱える社員が多くなることを、問題視していました。まずは、働き方を変えていくことを目的に、禁煙や運動の促進といった健康経営を展開することから、その第一歩を踏み出しました。
そして現在、SCSKでは「働きやすい、やりがいのある会社」を目指し、「スマートワーク・チャレンジ」(効率的な働き方)、「どこでもWORK」(柔軟な働き方)、「健康わくわくマイレージ」(健康増進)の3つを主体とした働き方改革を実践しています。

図1_SCSKが目指す「働きやすい、やりがいのある会社」への環境整備

図1 SCSKが目指す「働きやすい、やりがいのある会社」への環境整備

根本:働き方改革は、ITリソース/技術をうまく活用することで実現する範囲が広がります。中でも、「どこでもWORK」は、IT無くしては実現できない取り組みです。自宅やサテライトオフィスでの勤務を推進する「リモートワーク」、リモートワークの阻害要因となる紙の印刷と保管の両面から削減する「ペーパーダイエット」、フリーアドレスや多様な働き方スペースの導入などオフィスのあり方を変える「フレキシブルオフィス」の3つの施策を一体として展開しています。

図2_「どこでもWORK」の概念

図2 「どこでもWORK」の概念

リモートアクセスインフラの本格活用で改革を推進

―― 「どこでもWORK」を実現するため、IT部門としてはどのように対応したのでしょうか?

根本:実は、働き方改革を進める以前から、リモートによる作業環境や、電話・ビデオ会議が可能なインフラ基盤は用意されていました。しかし、それを使ったこともないという社員が大多数だったのです。在宅勤務制度はありましたが、全社を挙げて活用するには至っていませんでした。したがって、使っていない人にいかに使ってもらうかという事前準備から、働き方改革へのチャレンジは始まりました。

三瓶:当時の在宅勤務は、自宅でなければ業務ができない特別な事情がある社員向けの制度であり、年に数回しか使えませんでした。緊急時のバックアッププランのようなものです。また当時は、在宅勤務を行えば同僚に迷惑をかけてしまうという遠慮もあり、在宅勤務を行いにくい雰囲気があったともいえます。
そのような状況から、「普段からリモートワークを使いこなそう」というトップの意識がブレークスルーとなって、働き方改革が加速していきました。

―― 具体的にはどのように変えていったのですか?

三瓶:「どこでもWORK」を実現するには、リモート環境から個人のパソコンを使ってSkypeを運用する環境整備が必要でした。そのため、説明会を数多く開催したり、リモートワークガイドを作るなど、最低限の環境設定を一人ひとりが行えるようにしました。
また実施方法も、人事や総務、経理などのバックオフィス部門から活用をスタートし、そこで得られた課題を解決しながら、徐々に活用範囲を広め、最終的には全社に展開するという3ステップで行いました。
そのやり方は正解でした。最初のうちに発生したトラブルは全て記録してFAQにまとめ、次からはそれを参考にすることでスムーズに啓蒙できます。質問が多い事柄は説明会でケーススタディとして解説するようにしました。
さらに、「リモートでできないこと」をきちんと説明することも大切です。それを曖昧なままにすると現場が混乱します。可能・不可能を明確にすることは、たいへん重要です。

事故・トラブルを防ぐために「どこでもWORK」専用のサポートデスクを用意

―― リモートアクセスに不可欠なセキュリティ対策はどうしたのですか?

三瓶:会社のパソコンを自宅に持って帰ったり、自宅のパソコンを会社に持ち込んだりすることは許可せず、自宅で仕事をする時は、自宅のパソコンをVPNで会社のネットワークに接続するようにしました。
根本:さらに事故やトラブルを防ぐため、「どこでもWORK」専用のサポートデスクも用意しました。それまで、メール受付のみだったサポートデスクの運営方法を変更し、「どこでもWORK」に関する障害は電話対応も可能にしました。加えて、IT・人事・総務のいずれに関わる問い合わせも1つの窓口で受け付け、その後適切な担当部署が応対するワンストップサポートを実現しています。

――企画から実行までの間で、苦労したことや、上手くいったことなどはありますか?

根本:部門ごとに環境や事情が異なるため、全社的な対応を進めるときにはリモートアクセス権限の棚卸しと再配布に多くの手間と時間を費やしました。
上手くいったことは、部門ごとに異なる対応を丁寧に実施したことで協調体制を敷くことができたことでしょうか。その上で全社的にスケジューラー登録の標準化を図り、在席/在宅/休暇の見える化を行って、スケジュール調整を円滑に実施できるようにしました。

リモート会議では目より耳で情報を多く収集することが判明

―― 「どこでもWORK」の実現に取り組む中で新しい発見はありましたか?

三瓶:当初、リモートによる会議に対しては、声だけで顔が見えないと会議の質が落ちるのではないか、ビデオ会議の小さな画像では、臨場感が薄いのではないかといった懸念が多くありました。しかし実際に運用してみると、映像よりも「音声が途切れない」「聞き取りやすい」といった音質が重視され、目より耳で情報を多く収集することがわかりました。つまり、リモート会議ではクリアな音声や音の強弱を忠実に再現できるスピーカーやイヤホンなどを用意することの方が有効なのです。しかも映像にお金をかけるよりも比較的安く済みます。

根本:また、Skypeのチャット機能を積極的に活用したことで、メールでの形式張った書き方から解放され、スピーディーに要点のみを伝えることができるようになりました。実際、チャットをうまく使いこなしている部署ほど、調整や意思決定のスピードが上がっているようです。今後は、チャットが上司と部下の間で日常的に使われるよう、活用を促進していくつもりです。

「どこでもWORK」の効果や、社員の意識の変化、今後めざすべき働き方改革については、後編でお伝えします。

●「健康経営」は特定非営利法人健康経営研究会の登録商標です。

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