溶接条件の最適化 ~ウェルドローブの自動作成・最適化ソフト連携~ 後編

昨今、自動車業界では、EV化や車体軽量化に伴い、新たな溶接条件の探索や異種材接合の検討等、溶接技術における、さらなる性能向上に向けた取り組みが求められています。
今回の技術コラムでは、前編での、最適な溶接条件を効率的に導くSORPASの紹介に続き、最適化・機械学習による設計空間探索ソフトウエアpSeven DesktopとSORPASの連携をご紹介します。pSeven Desktopは、CAD・CAE・実験データの処理を自動化し、設計プロセスの工数削減を実現するソフトウェアです。pSeven Desktopを活用して自動化ワークフローを構築する仕組みや、電流値と通電時間の最適化を行った事例を解説します。
1. 設計空間探索ソフトウエア「pSeven Desktop」
pSeven Desktopは、SCSKが提供している最適化ソリューションです。CAD・CAE・データとプロセスを自動化し、pSeven Desktop独自のAIと強力な自動化エンジンによって、効率的なDoE・最適化を実現します。また、pSeven Desktopでは実データ、シミュレーション、またはその両方を基に予測モデルを構築することができます。この予測モデルにより、実験・シミュレーションを介さずに短時間で新しい条件の結果を予測できるようになり、設計プロセスの大幅な工数削減を実現します。
pSeven Desktopの最大の特長であるSmart Selection機能について紹介します。一般的に、最適化や機械学習には多数のアルゴリズムが存在するため、専門家がいなければ適切なアルゴリズムの選択や調整が困難となります。Smart Selection機能では、取り扱うデータに応じて、適切な最適化や機械学習のアルゴリズムが自動で選択・調整され、ユーザーはデータを用意するだけで簡単にデータ分析を行うことができます。

2. SORPAS×pSeven Desktop連携のメリット
次にSORPASとpSeven Desktopの連携の仕組みについて解説します。pSeven Desktopでは他のCAD・CAEソフトと連携するため、自動化ワークフローを構築し、計算条件の入力・計算実行・計算結果の読込と抽出という一連の流れを自動化します。pSeven Desktopでは変数の数によらず簡単にワークフローを構築できるようにテンプレートがシンプルかつ共通化されているので、初めて最適化に取り組むユーザーでも簡単に扱えます。
図1はpSeven Desktopで作成したSORPASの自動化ワークフローです。①のDSE(Design Space Exploration)ブロックでは設計変数・目的関数・制約条件が設定されており、最適化・予測モデルにおける入出力条件が定義されています。溶接シミュレーションの最適化では、設計変数に電流値・通電時間・加圧力などの溶接条件、目的関数にナゲット径・溶け込み深さなどの溶接品質、制約条件にスパッタの有無など溶接不良の結果が設定されます。このような条件設定により「溶接不良が発生せず、目的の溶接品質を満足する溶接条件を導出する」ようにシミュレーションを繰り返し実行します。

①で定義した設計変数は入力変数として②のpSeven DesktopのTextブロック機能でSORPASの入力ファイルに反映され、シミュレーションのプリプロセスを自動化しています。従来の方法ではPythonなどプログラミングを利用した複雑な操作によって、値を取得する必要がありました。一方、Textブロック機能を使えば、ファイル内の値をマウス操作で指定することができ、値の読み込み・書き込み設定を誰でも簡単に実施できます。SORPASの入力ファイルが書き換えられたら、③のマクロが起動しSORPASのシミュレーションが計算実行されます。シミュレーションが終了すると出力されたデータファイルを基に、④において再度Textブロックを利用し、結果を抽出、出力変数として計算結果が集約されます。

集約された計算結果は目的関数としてpSeven Desktop上で評価され、pSeven Desktopのアルゴリズムによって次に計算する入力変数を決定します。このような自動化ワークフローで自動計算を行うため、前編で紹介したSORPASの最適化機能で対応しきれないような最適化計算を実施できます。また、pSeven Desktopでは機械学習による予測モデル(サロゲートモデル)を構築することができるため、溶接条件から直接溶接品質を出力するエクセルツールを作成できます。


3. SORPAS×pSeven Desktop連携事例「多目的最適化」
次に、SORPASとpSeven Desktopを連携させた、多目的最適化の事例を紹介します。
今回の事例では、二枚組の鋼板の溶接後のナゲット径を5mm,溶け込み深さを0.6mmとするための、最適な電流値と通電時間の条件を求めます。制約条件として、スパッタが発生しないことを設定します。

図2と図3は、多目的最適化を行った結果です。図2はナゲット径と溶け込み深さ、図3は通電時間と実行電流を突き合せた図となります。赤丸が最適解を示しており、複数の最適条件が発見されました。溶接電流の基準値を7kAとして、公差の影響を加味した最適な通電時間を右図から推定すると、±0.5kAの範囲内でスパッタが発生しない220~240msあたりが最適な通電時間であると読み取れます。
このようにSORPASとpSeven Desktopを連携させることでより詳細で複雑な溶接条件の最適化を実施できます。今回の事例では、SORPASとpSeven Desktopの連携事例を紹介しましたが、pSeven DesktopはCAE以外の結果を取り込むことも可能なので、実機の溶接ガンやセンサーから取得したデータと組み合わせることで、より高度なAI予測モデルを構築することが可能です。

SCSKではpSeven Desktopの販売だけでなく、CAEソフトとの連携ワークフローの構築支援も行っております。お手持ちのCAEソフトで最適化技術の構築にご興味のある方はぜひお問合せください。
「SCSKデジタルエンジニアリングオンデマンド配信サイト」では、本コラムのより詳細な内容についても紹介していますので、ぜひご覧ください。
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