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REC Market Meeting 2024参加レポート~再エネ属性証書の重要性のさらなる高まり~

今年4月にアムステルダムで開催された「REC Market Meeting2024」にEneTrackメンバーが参加しました。

REC Market Meetingとは

REC Market Meetingは、毎年開催される再生可能エネルギーを普及させる仕組みであるI-RECなどのエネルギー属性証書(Energy Attribute Certificate以下、再エネ属性証書)を軸においた再生可能エネルギーの規制、基準、市場動向の最新情報を議論する会議です。

12回目の開催となる今回は、関心の高まりを反映し、世界各国から700名もの参加がありました(昨年は550名)。会議には、規制当局、標準化団体、証書発行団体、取引所運営者、発電者、トレーダー、ブローカー、エンドユーザーといった再エネ属性証書のバリューチェーンに関係するプレイヤーが参加し、カンファレンスプログラムや、参加者同士のネットワーキングの機会が提供されます。

カンファレンスプログラムは、①ヨーロッパの動向、②世界の動向、③基礎理解という3つのカテゴリにわかれ展開されます。2日間を通じて行われるプログラムは多岐にわたるのですが、全体を概観するという意味で、最終セッションにおいて再エネ属性証書制度で今後もっとも取り組むべき事項として挙げられた「完全な情報開示(Full disclosure)と現代化(Modernization)」というテーマから、いくつかキーワードをピックアップしてレポートします。

キーワード1:完全な情報開示

再エネ属性証書は、消費者自身がつかったエネルギーの属性(いつ、どこで、どのような方法でつくられたエネルギーか)を外部に開示するための仕組みです。この情報開示に対する理解が世の中に「浸透してきた」という報告です。数年前までは「完全な情報開示が必要だ」と訴えていたのが、いまや情報開示は当たり前になり、その上での課題が議論の中心になっているということです。

一例として、もともと再エネ属性証書は「自発的(voluntary)」な行動のためにつかわれていたのが、近年は「義務的(Compliance)」にも使われるようになっています。これは、各国政府が脱炭素に向けた政策を実行する際の仕組みとして再エネ属性証書を使うようになったということです。日本においてもGHG排出量の報告義務があり、金融庁もサステナビリティ情報開示について具体的に制度検討を進めています。このような中、開示された情報の信頼性を裏づけるのが再エネ属性証書の役割です。

再エネ属性証書の制度をつくる側としては、コンプライアンスの要件を満たしつつ、市場がイノベーションを起こす余地(柔軟性)を残すにはどうしたらよいかが課題であると話されていました。柔軟性が維持されることで、より多くの市場参加者を集めることができ、様々なステークホルダーがコミュニティに参加できることが市場活性化のためには重要であるとのことでした。

キーワード2:法規制との整合性

上記にも関連するのですが、欧州連合(EU)の法規制である炭素国境調整措置(CBAM)や欧州電池規則といった法制度で再エネ属性証書をつかうかどうか、政策側の要件と再エネ属性証書側をどのように整合させるかという議論です。EU域内ではGO(Guarantees of Origin)という再エネ属性証書が使用されています。GOの償却プロセスは域内で統一されているのですが、償却の詳細ルールは各国政府との調整により各国独自のルールがあるとのことです。

パネルディスカッションに参加していたヨーロッパ全域で事業展開している企業のCEOは「国によって制度が異なり消費者にとって複雑すぎる。大変なストレスだ。」と消費者視点で複雑さの弊害を語っていました。消費者にとっては、開示するための仕組みは再エネ属性証書だけでなく、開示領域も電気だけでないため、より制度が複雑になっていると言われていました。法制度との整合性は、消費者視点で一貫性があることが重要だと語られていました。

キーワード3:時間の整合性、地理の整合性

現在進行中のGHGプロトコルScope2ガイダンスの改訂でも議論がされているテーマです。マーケット基準の品質要件として時間や地理(地点)の整合性についてどのように扱うかの議論です。

時間の整合性とは、使用している電力の時間と、再エネ属性証書つまり発電された時間を一致させるべきだという議論です。太陽光で発電された電力をイメージするとわかりやすいです。太陽光では夜間発電できません。消費者が夜間に電力を使っていたとすると、その分の電力は太陽光以外の電源で発電された電力なのです。消費者が太陽光のみの再エネ属性証書を購入して「再エネ100%を達成した」と主張しても、それは実態に即してないので、消費電力と購入した再エネを時間単位で整合性を取って報告すべきだという考えです。

地理の整合性とは、とても簡単に言うと、「電力が発電された地点と消費した地点は電線でつながっていないとダメですよ。なぜなら、電線がつながっていないとその電力はつかえないのだから。」という考えです。日本のような島国では本土と電線がつながっていない島はたくさんあります。たとえばその島で発電され、再エネ属性証書が発行され、その再エネ属性証書を本土にいる消費者が購入して「私は再エネを使いました」と主張したとしても、実態に即していないでしょ?という考えです。

パネラーたちはこのふたつの考えに異論はないようでしたが、制度として「完璧さ」をどのタイミングでどこまで求めるかは慎重に検討される必要があるとの見解が主流でした。完璧さを追い求めることで新規に参加する人々のハードルが高くなり、結果として市場が活性化しないことも十分想定されると。たとえば、仮に夜間に使用した電力が別の電源であってもその電力量分の再エネ属性証書を消費者が買ってさえいれば、購入代金は再エネ発電者に渡り、国全体で見ると再エネ創出につながっていると考えられる。

一方、時間的整合性をとるためにはまずは実態を把握することが必要で、実態把握をするだけで莫大な労力と費用がかかり、それが理由で再エネ移行を断念してしまうと、結果として再エネ創出にお金がまわらなくなるので、再エネ創出が進まない。それは好ましくないとの見解です。国や地域によって再エネ化への段階が異なるため、再エネ属性証書の信頼性担保は大前提として、それぞれの国と地域がおかれている状況に柔軟に対応していける制度設計が再エネへの移行を促進するとの見解が示されました。

所感

脱炭素に向けた変化が世界規模で急速に進む中、再エネ属性証書が果たす役割、重要性がさらに高まっていることを感じました。一方で、消費者にとって、わかりづらい・複雑なルールは、再エネ化への移行コストを増大させ移行を停滞させるため、各国・各地域の事情を反映できる世界レベルで整合性のとれたシンプルなものであることが重要であると改めて感じた次第です。

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執筆者:GXセンター EneTrack部 西谷

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