技術コラム
材料開発ソリューションにおける、CT/SEM画像からの実在材料構造生成
簡単登録で、GeoDict各種セミナー動画を視聴可能。ぜひアクセス下さい。
目次
- 1. ミクロ構造のシミュレーション
- 2. GeoDictの概要
-
3. 実在材料構造の生成機能
- 3-1. Import-Processing-Segmentationの流れ
- 3-2. Processing機能
- 3-3. Segmentation機能
1.ミクロ構造のシミュレーション
マクロ領域である機械設計において、CAEシミュレーションは80~90年代より次第に利用が拡がり、2000年以降は業種を超え研究開発や設計分野で必要不可欠と言われるツールへと変貌してきました。一方で、ミクロ領域で異種構造が組み合わさる材料設計も、実験だけでは分析評価や最適な材料構造の探索は困難なため、本来ならCAEシミュレーションを上手く運用すればその恩恵が大きいはずなのですが、現実的には、ミクロな構造物のモデル化の難しさや膨大な計算コストなどの複数のハードルで、これまでは一般化には至っていませんでした。しかし、脱炭素化や環境問題が地球規模での課題となっている現代では、このミクロな材料開発に熱い視線が注がれています。ここにシミュレーションというアプローチを取り入れてデジタルツインを実現することで、新素材や高機能材料の開発プロセスを標準化し、開発にかかる膨大なコストや時間の大幅削減を期待することができます。ここでは、その材料開発に特化したCAEであるGeoDictについて、連載でご紹介していきます。
2.GeoDictの概要
GeoDictは、材料の構造生成から分析・特性性能評価をワンパッケージで行う材料開発シミュレーションツールです。X線CT画像やFIB-SEMなどで撮影した連続断面画像を読み込んでモデル化する実在材料構造からの構造生成機能と、パラーメータ入力によりソフトウェア内で材料構造をモデル化する仮想構造生成機能の2種類が用意されており、保有するデータや設備によって柔軟な使い分けが可能です。また生成された幾何形状に対して、細孔径分布や繊維配向分布、パーコレーションパスなどの分析・評価や、流体計算・機械的計算などによる特性性能評価を行えます。さらに、これらの機能をマクロで自動化することや、インターフェイス機能で他ソフトウェアと組み合わせることも可能です。
適用分野としては、排ガスフィルターやオイルフィルターなどのフィルター領域、リチウムイオン電池や燃料電池など電池の開発を主体とする電気化学、ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂などを含む様々な複合材を扱う構造部材、石油・天然ガス生産やCCS関連での利用が多いデジタル岩石学などが対象です。これらの幅広い材料開発分野で、デジタルツインによる新素材や高機能材料の開発を促進するGeoDictですが、本コラムではまず、分析・評価するための幾何形状をモデリングする機能のひとつとして、実在材料構造の生成について詳しくご紹介いたします。
3.実在材料構造の生成機能
3-1.Import-Processing-Segmentationの流れ
実在材料構造の生成機能ではImportGeo-Volモジュールを利用します。まず、第1ステップとして“Import”機能で、X線CT画像やFIB-SEMなどで撮影したサンプルの2D連続断面画像を読み込みます。その後第2ステップとして“Processing”機能でスケールの変更やズレ補正/ノイズ処理などの画像処理を行い、最後に第3ステップとして“Segmentation”機能により画像内の各材料を仕分けて3次元の構造を生成します。
3-2.Processing機能
ここからは数多くある第2ステップである”Processing”の代表的な機能についてご紹介いたします。
- Rotation: 読み込んだ画像を任意の角度で回転することにより、この後に生成される構造の向きを微調整します。
- Slice Alignment: 主にFIB-SEMの撮影によって発生する枚数方向の位置ずれを自動的に補正します。
- Gray Value Adjustment: FIB-SEMなどの撮影時の影響で発生しやすい枚数方向や同一画像内の輝度を補正します。
<ノイズ処理フィルター>
- Non-Local Mean Filters: 材料間のエッジを残したまま平均化を行い、細かいノイズを除去します。
- Ring-Artifact Removal: X線CT画像撮影時に回転しながら撮影することによって発生するリング状のノイズを除去します。
- Curtaining Filter: FIB-SEM撮影時に表面を削る影響で発生するカーテン上のノイズを除去します。
3-3.Segmentation機能
次に画像に対し輝度などに応じて材料を分けるセグメンテーション処理機能をご紹介いたします。
- Manual Threshold: 最も一般的な手法で、画像の輝度に閾値を与えることで輝度に応じて材料を分けます。3種類以上の材料にも対応し多値化が可能です。
- Multi-Phase Segmentation: この機能では輝度に特定の閾値を定義する必要はなく、代わりに一定の材料相に属するグレー値の範囲を定義します。残りの部分は、Watershedアルゴリズムにより特定の材料相に自動的に割り当てられます。閾値が曖昧な画像を扱う際の一つの手段として有効です。
- AI Segmentation: グレースケール画像において、ユーザーがマニュアルで材料ラベルを描き、その後選択したAIモデルに学習させ適用することで3次元構造を作成します。使用したAIモデルは保存され再利用も可能です。ここでは、セグメンテーションが困難な正極構造のFIB-SEM画像に対しての、AIセグメンテーションを示しています。AIセグメンテーションには複数のモデルを用意しています。
以上、今回はGeoDictの実在材料構造生成機能についてご紹介しました。GeoDictについては、オンデマンド配信サイトで事例など含めたほかのセミナー動画もご視聴いただけます。ぜひご登録のうえご視聴ください。
また、今回ご紹介した実在材料構造生成や生成した構造に対して細孔径分布、パーコレーションパス、表面積などの幾何形状分析を行う受託サービスも行っております。ぜひ下記フォームよりお問い合わせください。
- ※掲載されている製品、会社名、サービス名、ロゴマークなどはすべて各社の商標または登録商標です。
製品・サービスに関する
お問い合わせ・資料請求
ご質問、ご相談、お見積もりなど
お気軽にお問い合わせください。
プロダクト営業部
TEL:03-5859-3012
E-mail:eng-sales@scsk.jp お問い合わせフォーム