DLP(Data Loss Prevention)とは?
IT担当者が知るべき情報漏洩対策の要点【2025年版】

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    「最近テレワークが増えて、社内の情報が外部に漏れてしまわないか心配」
    「上司から情報漏洩対策を検討するよう言われたけど、DLPって一体何だろう?」
    このようなお悩みや疑問をお持ちのIT担当者様は多いのではないでしょうか。

    この記事では、情報漏洩対策としてのDLP(Data Loss Prevention)について解説しています。
    DLPの基礎知識から具体的な機能、類似ソリューションとの違いなど網羅的に理解いただける内容となっています。
    情報漏洩対策への具体的な第一歩を踏み出すために、ぜひご一読ください。

    DLPイメージ

    まずは基本から!DLP(Data Loss Prevention)とは何か

    DLPとは、「Data Loss Prevention」の略称です。
    日本語では「データ損失防止」や「情報漏洩対策」と訳されます。
    その主な目的は、企業内の機密情報や個人情報といった重要データが、意図的かどうかにかかわらず外部へ漏洩することを防ぐための仕組みです。


    DLPが今、必要とされる3つの背景

    なぜ今、多くの企業でDLPが注目されているのでしょうか。
    その背景には、主に3つの社会的な変化があります。


    1. 内部からの情報漏洩リスクの増大

    従業員の悪意によるデータの持ち出しだけでなく、メールの誤送信やUSBメモリの紛失といったヒューマンエラーによる情報漏洩も後を絶ちません。
    内部からの脅威は、外部からのサイバー攻撃以上に検知が難しいとされています。


    2. 働き方の多様化(テレワーク・クラウド利用)

    テレワークの普及やクラウドサービスの利用拡大により、社内と社外の境界線が曖昧になりました。
    これにより、従来のような境界防御型のセキュリティ対策だけでは、情報を守りきれなくなっています。


    3. 国内外の法規制の強化

    個人情報保護法やGDPR(EU一般データ保護規則)など、データ保護に関する法規制は世界的に厳格化しています。
    万が一情報漏洩を起こした場合、企業は厳しい罰則や多額の賠償金を科されるリスクがあります。


    では、DLPは従来の情報漏洩対策とどのように異なるのでしょうか。
    以下でその特徴を比較します。


    従来の情報漏洩対策との違いは?

    DLPは、従来の情報漏洩対策と比べて「何を守るか」という視点が根本的に異なります。
    以下の表で、その違いを確認してみましょう。



    比較項目 従来の情報漏洩対策 DLP (Data Loss Prevention)
    監視対象 データの利用者(ユーザー)の操作ログやアクセス権限 データそのものの内容や属性
    保護対象 社内ネットワークなど、場所や経路を基準とした一律的な保護 特定の機密データや個人情報など、情報の重要度に応じた保護
    対策方法 アクセス制御、ログ監視、セキュリティ教育が中心 データの常時監視、不正操作の自動ブロック、暗号化など


    DLPはどのように情報を守る?仕組みと主要機能

    ここでは、DLPがどのようにして重要な情報を見分け、そして守るのか、その裏側を具体的に見ていきましょう。
    DLPの技術的な仕組みと主な機能を分かりやすく解説します。


    機密情報を正確に見分ける!データ判別の4つの仕組み

    DLPの核となるのが、膨大なデータの中から守るべき機密情報を正確に識別する技術です。
    主に以下の4つの仕組みを組み合わせて、高い精度でデータを判別します。


    判別方法 概要 具体例
    キーワード 事前に登録された特定の単語やフレーズを検出します。 「社外秘」「顧客リスト」「新製品名」など
    正規表現 クレジットカード番号や電話番号など、決まったパターンの文字列を検出します。 NNNN-NNNN-NNNN-NNNN(クレジットカード番号)、090-NNNN-NNNN(携帯電話番号)
    フィンガー
    プリント
    文書の構造や特徴(指紋)を登録し、類似するファイルを検出します。 契約書のテンプレート、設計図のフォーマットなど
    AI
    (機械学習)
    データの文脈や内容をAIが学習・分析し、機密情報かどうかを判断します。 通常の業務メールとは異なる、異常なパターンの文章を検出


    ここまで守れる!DLPの7つの主要機能

    DLPは、見つけ出した機密情報に対して、さまざまな制御を行うことで漏洩を防ぎます。
    ここでは代表的な7つの機能をご紹介します。


    機能名 説明
    デバイス制御 USBメモリや外付けHDDなど、外部デバイスへのデータコピーを制限・禁止します。
    印刷・コピー・キャプチャ制限 機密情報の印刷や、PC画面のスクリーンショット取得といった操作を制御します。
    Webセキュリティ クラウドストレージやSNSなど、許可されていないWebサイトへのファイルアップロードをブロックします。
    コンテンツ監視 ファイルサーバーやデータベースに保存されている機密情報を常時監視し、不正なアクセスを検知します。
    メールセキュリティ 機密情報を含むメールの社外への送信をブロックしたり、送信前に上長の承認を必須にしたりします。
    アクセス制限 従業員の役職や部署に応じて、アクセスできるデータの範囲を細かく制御します。
    データ暗号化 データを自動的に暗号化し、万が一データが外部に持ち出されても内容を読み取れないようにします。


    DLPと他のセキュリティソリューションとの違いを徹底比較

    IT担当者の方が情報漏洩対策を検討する際、DLPと似た目的を持つ他のソリューションとの違いに迷うことがあります。
    ここでは、CASB、EDR、IRMといった代表的なソリューションを取り上げ、DLPとの役割の違いを明確にします。


    ソリューション 主な目的 監視対象 アプローチ
    DLP 情報(データ)の漏洩防止 データそのものの内容・属性 データの出口対策:機密情報が外部に出るのを防ぐ
    CASB クラウドサービスの安全な利用 クラウドサービス上の操作 経路の監視:社内とクラウド間の通信を監視・制御する
    EDR サイバー攻撃からの防御 PCやサーバーの挙動 脅威の検知・対応:マルウェア感染などの異常を検知・対処する
    IRM ファイル単位での利用制御 ファイルそのもの ファイルへの施錠:ファイル自体に利用権限を設定し、永続的に保護する


    CASBとの違い:クラウド利用の保護に特化

    CASB(Cloud Access Security Broker)は、「クラウドサービスの安全な利用を監視・制御する門番」のような役割を担います。
    DLPが守るべき「データ」に着目するのに対し、CASBは「クラウドサービスという経路」に着目する点が大きな違いです。
    両者を連携させることで、クラウド環境における情報漏洩対策をより強固にできます。


    EDRとの違い:脅威の検知・対応に特化

    EDR(Endpoint Detection and Response)は、PCやサーバーがマルウェアに感染するなど、脅威に侵された後の対応を迅速化するためのソリューションです。
    DLPが「情報の出口対策」であるのに対し、EDRは「侵入された脅威への対策」であり、情報セキュリティにおいて互いを補完しあう関係にあります。


    IRMとの違い:ファイル単位の権限制御に特化

    IRM(Information Rights Management)は、「ファイルそのものに鍵をかけ、許可された人だけが利用できるようにする技術」です。
    DLPが情報の「流れ」を監視するのに対し、IRMはファイル「そのもの」の利用権限を制御します。
    一度IRMで保護されたファイルは、社外に持ち出されても権限のないユーザーは開くことができません。


    DLP導入のメリット・デメリット

    DLPの導入を具体的に検討する際のメリットとデメリットを客観的な視点で整理しました。


    DLPを導入する6つのメリット

    DLPを導入することで、企業は以下のような多くのメリットを享受できます。


    メリット 詳細
    情報漏洩の防止 企業の生命線である機密情報や顧客情報を守り、事業継続リスクを低減します。
    リアルタイムでの異常検知 不正なデータの持ち出しや誤送信の兆候を即座に検知し、被害を未然に防ぎます。
    運用・管理コストの削減 データ監視やレポート作成を自動化することで、セキュリティ担当者の業務負荷を軽減します。
    ヒューマンエラー対策 悪意のない操作ミスによる情報漏洩をシステム的に防止できます。
    法規制遵守の証明 個人情報保護法などのコンプライアンス要件を満たしていることを客観的に証明できます。
    内部不正の抑止 常に監視されているという意識が従業員に芽生え、不正行為を未然に防ぐ心理的な効果が期待できます。


    導入前に知っておきたい6つのデメリットと注意点

    一方で、DLP導入にはいくつかの注意点も存在します。
    対策と合わせて理解しておくことで、導入後のミスマッチを防ぐことができます。


    デメリット・注意点 対策・考え方
    初期導入・運用コスト クラウド型のDLPサービスを利用することで、初期費用を抑えることが可能です。
    誤検知のリスク 正常な業務を誤ってブロックしてしまう可能性があります。導入初期に丁寧なポリシー設定(チューニング)を行うことが重要です。
    設定の複雑さ ポリシー設定には専門知識が求められる場合があります。導入支援サービスが充実したベンダーを選定することが推奨されます。
    パフォーマンスへの影響 PCやネットワークの動作が遅くなる可能性があります。導入前に無料トライアルなどで影響範囲を確認しましょう。
    従業員のプライバシーへの配慮 従業員の操作を監視するため、導入目的や監視範囲を事前に十分説明し、理解を得る必要があります。
    業務効率への影響 厳格すぎるルールは業務の妨げになる可能性があります。セキュリティと利便性のバランスを取ることが不可欠です。


    まとめ

    本記事では、情報漏洩対策の要となるDLPについて、その基本概念から具体的な機能を網羅的に解説しました。
    重要なポイントは、「DLPは従来の対策とは異なり、守るべき『データそのもの』を監視する」という点です。

    DLP導入を成功させるためには、自社の情報資産やリスクを正しく評価し、適切な製品とポリシーを選択することが不可欠です。
    この記事が、貴社の情報セキュリティ体制を強化するための一助となれば幸いです。

    まずは、自社にどのような機密情報が存在するのか、その棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。


    SCSKグループでは、DLPを含む複数のSASEソリューションを取り扱っており、
    導入前の情報資産の棚卸しから、ポリシー策定・PoC支援まで一貫してサポートしています。
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