量子コンピュータとは

量子コンピュータとは、量子力学の現象を応用して計算を行う次世代のコンピュータを指す。従来型のコンピュータでは簡単に解くことができない複雑な問題でも、短時間で答えを導き出せる可能性があるため、創薬や金融、物流などさまざまな分野での活用が期待されている。しかし、微細な環境に影響されやすく、エラー発生頻度が多いなど、実用化に向けては課題が残っている。

量子コンピュータとは|概要

量子コンピュータとは、量子力学の現象を応用して高速な計算処理を行うコンピュータです。従来のコンピュータ(古典コンピュータ)は、「0」か「1」のいずれかの値を取るビットを最小単位として演算しますが、量子コンピュータは量子ビットと呼ばれる単位を使用します。量子ビットは「0」と「1」の両方の状態を持つ「量子重ね合わせ」や、異なる量子同士が相互に影響しあう「量子もつれ」によって、複数の状態を同時に取ることができ、一度により多くの情報やデータを処理することが可能です。

しかし、熱や電磁波に弱く、極低温環境(-273℃)を実現するための特殊な冷凍機が必要であることや、エラー発生頻度が多くエラー訂正技術の開発・導入が求められるなど、企業などで本格的に実用化されるにはまだまだ課題が残されています。

量子コンピュータと古典コンピュータの違い

量子コンピュータの種類

量子コンピュータには、主に量子ゲート方式と量子アニーリング方式があります。以下に、各方式の主な特徴についてご紹介します。

量子ゲート方式

量子ゲート方式は、量子ビットに対して量子ゲート操作を行うことで演算を行う量子コンピュータです。従来のコンピュータでは論理ゲート(AND、OR、NOTなど)を使用することで演算を行いますが、量子ゲート方式を使用した量子コンピュータでは、XゲートやHゲート、CNOTゲートなどの量子ゲートを用いて量子状態を変化させ、量子重ね合わせや量子もつれといった量子の性質を利用して演算します。

量子アニーリング方式

量子アニーリング方式とは、膨大な数の組み合わせから最適な答えを導き出すことに特化した量子コンピュータです。初期状態として素子全体のエネルギーが高い状態に設定したうえで少しずつエネルギーを減少させていき、最も低い(安定した)状態を探すことで、最適解を明らかにします。量子のトンネル効果と呼ばれる現象を利用することで、局所最適解ではなく、大域的最適化を高速に解けると期待されています。

量子コンピュータの活用例

量子コンピュータは研究開発の段階にあり、信頼性や性能には課題が残っています。量子コンピュータの高速計算が実現すれば、既存の暗号化システムが解読される危険性も指摘されています。しかし、多くの研究機関や企業が次世代の量子技術の開発に取り組んでおり、その進展に注目が集まっています。以下に、量子コンピュータの活用が期待される分野をご紹介します。

創薬

新薬の開発では、膨大な化合物の組み合わせから最適な候補を見つけ出す必要があります。量子コンピュータを活用すれば、疾患の構造理解や新薬の材料となる素材の探索スピードの向上に役立ちます。

金融

金融市場は刻一刻と変化しており、市場とポートフォリオの動きを予測するには、膨大なデータの分析が必要です。量子コンピュータを活用すれば、膨大なデータを効率的に処理し、最適なポートフォリオの構築やリスク評価が可能になります。

交通

都市の交通状況を最適化するには、膨大なデータの処理と複雑な分析が必要です。量子コンピュータであれば、現在の交通状況に関する大量のデータを素早く処理し、状況に応じて信号の色を変化させ、交通渋滞の発生を抑えることができます。

物流

量子コンピュータにより、複数の配送拠点を効率的に巡回できるルートを短時間で計算することが可能になります。現在、物流業界では働き方改革に伴う人材不足が懸念されており、量子コンピュータが解決の手助けになることが期待されています。

AI

AIと量子コンピュータの技術を組み合わせることによる技術革新も期待されています。特に、機械学習の分野には組み合わせ最適化に絡む問題が多く、量子コンピュータによってAIの開発が飛躍的な発展を遂げる可能性があります。

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