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メタバースで製造業が変わる!NVIDIA Omniverseセミナー


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どうも!ITPNAVI編集部の加藤です!今回は私が参加した、皆様注目のメタバースのビジネス活用に関するセミナーについて、内容をまとめてご紹介します。

全世界で話題となっているメタバース。その市場規模は、「2024年には7833億ドルに達する可能性」がある*とも言われています。
*出典:メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は8000憶ドルに達する可能性 | Bloomberg | ブルームバーグ

そんなメタバースですが、自分がアバターとなってゲーム空間やバーチャル渋谷といった仮想的な街・お店を自由に動き回るもの、そんなイメージを持たれているのではないでしょうか。
そのイメージが先行し、特に消費者と直接接点を持たないBtoB企業にとっては、自社のビジネスに対してメタバースがどう関わるのか、どんな活用方法があるのか、といったアイデアが湧かないという声を耳にします。

SCSKで取り扱う「NVIDIA Omniverse(以下Omniverse)」が生み出すメタバースは、従来イメージされるものとは少し毛色が違います。メタバースのビジネス活用を検討されている方は必見、製造業の業務を大きく変革するOmniverseをテーマにSCSKが9月に開催したセミナーをアフターレポートで紹介します。

この記事を読んでわかること

  • Omniverseとは3D仮想空間を構築、デジタル上でさまざまな検証を行うことを目指すプラットフォームソフトウェア
  • Omniverseのメリットは複数のメンバーが一つの共通データを同時に利用、業務を加速することが可能なこと
  • 具体的な活用事例|3Dデザインコラボレーション、デジタルツイン、デジタルヒューマンの活用
  • Omniverseのビジネス活用がもたらす無限の可能性とSCSKによる製造業務プロセス全体改革への支援方法

Omniverseとは

Omniverseとは、主に製造業のデザイン・設計領域で使われるさまざまなアプリケーションを繋いで3Dの仮想空間を構築するためのプラットフォームソフトウェアです。現実に近い高品質なシミュレーションとビジュアライゼーションによって、デジタル上であらゆる検証を行うことを目指しています。

<さまざまなデータを集約して作りあげられる仮想空間-Omniverse->

<さまざまなデータを集約して作りあげられる仮想空間-Omniverse->

開発元であるNVIDIA社はGPU*に特化した半導体メーカーです。その製品はグラフィックスや汎用計算用途に幅広く使われており、AIやディープラーニングに関するアーキテクチャも開発しています。メタバースには高性能なグラフィックスやAI性能が求められる中、これらの技術的なバックグラウンドによって新たに開発されたのがOmniverseです。
*GPUについてはこちらの記事もご参考ください:CAEセミナーアフターレポート

Omniverseでは、仮想空間上の1つの共通データに対して複数のメンバーが同時に編集・レビューしたり、シミュレーションを行ったり、AIによる最適化を行ったりといったことができます。従来現実で行っていた、あるいは現実では行えなかった検証をデジタル上で再現することによって、さまざまな業務を加速します。

Omniverseの活用事例

実際の利用イメージを掴んでいただくため、ここからはセミナーで紹介されたOmniverseの活用事例から3つを絞ってご紹介します。

(1)3Dデザインコラボレーション

製造業のデザイン業務では、工程やデザイナーに応じてさまざまなアプリケーションが使い分けられています。アプリケーションが違えばデータの種類も異なるため後工程にデータを渡す際はデータ変換が必要になり、その分工数がかかってしまう、うまくデータが変換されないといった課題があります。また、アプリケーション毎に異なるデータを持っているため、他のメンバーが全体イメージや進捗を確認することは困難です。

今回は自動車のデザイン業務を例に、これらの課題をOmniverseで解消しましょう。
Omniverseにはあらゆるアプリケーションと連携してデータをやりとりするためのコネクター*が備わっており、Autodesk社の「Maya」とのコネクターもその一つです。
例えばとあるメンバーがMayaでエンブレムをモデリングする場合、まさにその編集中のデータがコネクターによってリアルタイムにOmniverse上の自動車に反映されます。デザイン変更による全体イメージへの影響がOmniverseでレビューできるため、Mayaでは編集対象となる一部分のみのデータ(モデル)を保有するだけで良く、容量が軽くなりレスポンスが改善します。さらに別のメンバーがOmniverse側でエンブレムの材質を編集したり、背景を編集したりといった全く別の業務を並行して行うことも可能です。

このように、色々なアプリケーションおよびメンバーのコラボレーションを加速し、デザイン業務の工数を短縮することができます。
*その他のコネクターについてはDL資料に掲載しています。

<OmniverseとMayaの編集画面>

<OmniverseとMayaの編集画面>

(2)デジタルツイン

デジタルツインとは、現実世界を仮想空間にコピーして再現すること=デジタルの双子を作成することです。IoTで収集した現実世界のデータをリアルタイムで仮想空間に取り込み、AIによって仮想空間上でさまざまな予測・分析を行うことで、例えば製造業では工場設備の故障を予見するといった将来予測ができるようになります。正しい予測をするためにはいかに現実世界に近い仮想空間を作り出すかが重要ですが、そのためのデータやグラフィックスの性能が不十分だとそれは叶いません。

例えばAmazonでは、AIで商品画像を学習させたロボットが商品の仕分けやピックアップをしています。しかし商品数があまりに膨大なため学習データが足りず、ロボットが商品を正しく識別できないトラブルが発生していました。そこでOmniverse上にロボットのデジタルツインを作成し、実物と見分けがつかないほどリアルな商品画像を生成して学習させ、その学習モデルを現実のロボットに反映することにしました。結果として、ロボットの学習期間を大幅に削減するとともに、仕分けやピックアップの正確性を向上することができました。

このように、Omniverseの高品質なグラフィックスと豊富なAIライブラリによって造られるデジタルツインが、現実世界を超えた検証を可能にしています。

<Omniverseで生成された商品画像とロボットのデジタルツイン>

<Omniverseで生成された商品画像とロボットのデジタルツイン>

デジタルヒューマン

続いて紹介するのは、「Omniverse Machinima(以下Machinima)」によるデジタルヒューマンです。
人の動きをデジタルに取り込んで再現するためには、専用のスタジオで専用のスーツを着用し、体の正確な位置にマーカーを取り付けて撮影するといった専門的なノウハウが必要です。そのため、デジタル上で何度も検討を繰り返すために撮影しなおすことは現実的でなく、業務においてデジタルヒューマンを日常的に活用することが困難でした。

Machinimaは姿勢推定AIエンジンを用いて、頭や関節を自動で検出し、3Dのデジタルヒューマンを作成するアプリケーションです。スマートフォンやPCに付属のカメラなどを使い、専用のスーツやマーカーを着用していない普段着の人の動きでも、正確に捉えてリアルタイムでデジタル化します。例えば先ほど紹介したOmniverseによるデジタルツインの工場に入り込み、作業者の導線や動きやすさを気軽に、リアルに検証することが可能です。また設備のメンテナンスや危険な場所での作業といった、現実世界では何度も実施することが困難な業務もOmniverseで再現して繰り返し検証できるため、技能向上や安全性向上にも役立てられます。

<スマートフォンで撮影した人の動きがOmniverseで再現される様子>

<スマートフォンで撮影した人の動きがOmniverseで再現される様子>

アフターレポートでは紹介しきれませんでしたが、セミナーでは、VR・ARなどのXRによってOmniverseの仮想空間に入り込む、荒い点群データから高品質なデジタルツインを生成するといった別の事例も数多く紹介されていました。

Omniverseには今後も新しい機能が続々登場する予定です。メタバースは現実世界とは別のもう一つの世界であり、どんな世界を創り出すのか、そこでどんな価値を生み出すのか、つまりビジネス活用に向けた無限の可能性を秘めています。これからもSCSKではOmniverseを含めたさまざまな最新のITソリューションによって新たな価値を提案し、製造業の業務プロセス全体にわたる改革を支援してまいります。

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