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「With/Afterコロナに向けた企業システムを考える ~BRMSによる業務の変革~」セミナーイベントレポート


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コロナ禍でビジネス環境はめまぐるしく変化し、ビジネスの現場では素早い対応が求められています。しかし、もともと業務アプリケーションは頻繁に変更することが想定されておらず、改修には時間や手間がかかります。このような課題を解決する鍵となるのがBRMS(Business Rule Management System)です。

BRMSは業務アプリケーションからビジネスルールとなる部分を切り離して管理します。ビジネスルールとは、勤怠管理システムで例えるならば、「18時以降の勤務は、残業の時給を適用する」といった「条件」と「アクション」が該当します。ビジネスルールを業務アプリケーションから独立させることで、条件やアクションに変更があっても業務アプリケーションに直接変更を加えることなく、すぐに対応することが可能です。

2020年11月13日、SCSKはオンラインセミナー「With/Afterコロナに向けた企業システムを考える ~BRMSによる業務の変革~」を開催しました。当記事ではセミナーの内容をお伝えいたします。

セミナーではBRMS製品を提供する株式会社アシスト、イノルールズ株式会社、レッドハット株式会社の専門家とともに、コロナ禍におけるビジネス環境の変化をテーマにBRMSの最新動向も含めて解説しました。

開催概要
主催:SCSK株式会社 協賛:Red Hat株式会社、株式会社アシスト、イノルールズ株式会社
日時:2020年11月13日(金)14:00~16:00
会場:オンライン

ルールエンジンでビジネスルールを管理するBRMS

BRMSは組織や業務のビジネスルールを登録・管理するシステムで、ルールエンジンとも呼ばれますが、これまで業務アプリケーションのロジック内で処理されていたビジネスルールを、業務アプリケーションから切り離して管理できるようにしたものです。そのため、BRMSは業務アプリケーションと連携して機能するシステムともいえます。

ビジネスルールを変更するたびに業務アプリケーションを改修する必要がなくなるため、改修コストを生じさせないだけでなく、ビジネス変化にすばやく対応できるようになります。加えて業務の属人化を防いだり、業務が可視化されることで最適化を促進できるなどのメリットも期待できます。

SCSKで扱うBRMS製品は3種類あります。レッドハット「Red Hat Decision Manager」、アシスト「Progress Corticon」、イノルールズ「InnoRules」です。


「Decision Manager」は国内シェアが高く、OSS(オープンソースソフトウェア)をベースとし、自由度の高いルールが記述できるのが特徴です。複合イベント処理(CEP)やBusiness Optimizerなど機能が豊富です。「Progress Corticon」はユーザーフレンドリーなUI(ユーザーインターフェース)が特徴で、BRMSのパイオニアでもあります。
ルール記述がシンプルで、金融や官公庁など国内に大規模ユーザーが多数います。そして「InnoRules」はMicrosoft Office製品に似たUIで親しみやすく、ルール記述が多彩です。クライアント製品が軽量で、商品管理に特化したオプション製品「InnoProduct」を選択することもできます。

各製品の専門家が各製品の特徴とBRMSに関する最近の動向について解説しました。

コロナ禍で浮き彫りになった業務改善点

 アシストからは東日本技術本部 情報基盤技術統括部 技術4部 1課 課長 船木 聖人氏が登壇し、コロナ禍で業務の形が変化していることを指摘しました。

株式会社アシスト
東日本技術本部
情報基盤技術統括部 技術4部 1課 課長
船木 聖人 氏
株式会社アシスト東日本技術本部情報基盤技術統括部 技術4部1課課長船木 聖人氏

 コロナ禍で会議はオンラインが中心となり、頻繁に開催でき、勤務地によらないメンバーが集えるようにもなりました。テレワークが常態となり、オフィスの数を削減または規模を縮小する企業も出てきています。

 これまで企業は業務をオフィス内で実施していました。テレワークやソーシャルディスタンスを確保するとなると、業務遂行が難しくなる場合もあります。典型的なのが書類の処理、例えば印刷して目視でチェック、チーム内で回覧してダブルチェックするなどです。

 アシストではエンタープライズRPAソリューションとして、「AEDAN」というブランドで関係するソフトウェア群を提供しています。企業で実施する業務を想定し、単純な入力だけではなく判断が伴う業務までを自動化することを目指しています。主にPC操作にRPAツール、データ連携にDataSpider、BRMSに相当する条件計算、チェック・判断、分配・割当を伴う処理にProgress Corticonを使います。

 アシスト 船木氏は「Progress Corticonは業務ルールを集約し、疎結合にします。疎結合とすることで、基幹システムと連携することも可能となります」と説明。Progress Corticonを導入すべきシーンとして、船木氏は3つ挙げています。1つ目は「アプリケーションのロジック分離手段」。複雑なロジックをアプリケーションから分離し、可視化することで開発生産性や保守効率を向上させることができます。2つ目は「既存システムのサブシステム基盤」。肥大化した既存システムやパッケージに機能追加するのではなく、その外側で稼働する自由度の高いサブシステム構築することができます。3つ目は「業務自動化ツール」。業務プロセスに潜む判断を自動化することで、業務プロセス全体を一気通貫で自動化することができます。

AIの推測とBRMSの判断と実行を組み合わせて効率化

 イノルールズからはシニアコンサルタントの白石浩一氏が登壇し、BRMSの歴史やInnoRulesの特徴を解説しました。

イノルールズ株式会社
シニアコンサルタント
白石 浩一 氏
イノルールズ株式会社シニアコンサルタント白石浩一氏

 昨今、業務の自動化でBRMSやAIが注目されています。歴史を見ると、両者は深い関係があります。実際、BRMSの「InnoRules」は第二次AIブームのエキスパートシステム(専門知識をエミュレートするもの)から発展しており、最近のディープラーニングや画像認識などの第三次AIブームの要素と組み合わせたソリューションが特徴です。

 「InnoRules」は維持保守のしやすさ、使いやすさにこだわっています。慣れ親しんだMicrosoft Office製品に似たUIでルールテンプレートが8種類用意されており、ユーザーはルール記述に注力できるようになっています。ルールエンジンの動きが可視化されており、どのような経緯で実行結果が導き出されたのか容易に分かるのも強みです。

 AIだと結果を出す過程がブラックボックスとなりがちですが、BRMSの「InnoRules」ならどのルールをどの順番で実行したか履歴を追うことができるため、過程を明確にするべき業務に適しています。

 AIとBRMSは二者択一ではなく、適材適所で使い分けるのがポイントです。例えば原子力発電所の機器点検業務では、各種センサーの測定値から診断結果の候補をAIで出しておいて、BRMSで実行する。両方組み合わせることで作業の効率化と正確性を実現しています。

 ルールエンジンは外部から呼び出されるため、連携や接続のしやすさも重要です。「InnoRules」では多様な接続インターフェースがあり、アプリケーションからの各種インターフェースのほか、WebサービスのSOAP(Simple Object Access Protocol)/REST(REpresentational State Transfer)、Microsoft Excel、メインフレームまで多彩です。

ルール管理に加えてリソース計画の最適化も

 レッドハットからはテクニカルセールス本部 チーフテクノロジスト 梅野昌彦氏が登壇し、近年の開発プロジェクトにおけるトレンドを説明しました。

レッドハット株式会社
テクニカルセールス本部
チーフテクノロジスト
梅野 昌彦 氏
レッドハット株式会社テクニカルセールス本部チーフテクノロジスト梅野昌彦氏

 近年、システムのリプレースでは、集約型システムから分散アーキテクチャへの変換が起きています。モノリスアプリケーションをただ細分化してマイクロモノリス化するのではなく、サービスという概念に置き換えてマイクロサービス化することが重要です。この過程でルールエンジンの活用も鍵となります。

 近年のトレンドにはリソース計画の最適化もあります。新規の設備投資を行うのではなく、現状の設備で稼働の最大化を目指します。2020年からは「コロナ禍で顧客の要望に変化が見られるようになってきています」と梅野氏。

 例えばソーシャルディスタンスを確保するために限られた人数で作業する必要があるため「効率良くシフトスケジュールを策定したい」。同様に、接触機会防止のために「限られた人数で効率良く書類や作業を行いたい」、「物流量の変動に合わせた動的な料金体系にしたい」などです。

 レッドハットでルールエンジン(BRMS)の役割を担うのが「Red Hat Decision Manager(以降RHDM)」。人工知能から発祥したPHREAKアルゴリズム、前向き推論・後ろ向き推論の両方が実行可能です。技術的にはJavaライブラリでの提供やサービス型提供もあり、コンテナ化に完全対応していることも特徴です。主な機能にはBusiness Rules Managementのほか、Complex Event Processing、Business Optimizerも搭載されています。

 梅野氏は業務計画の最適化につながるBusiness Optimizerについて説明しました。RHDMではデータから初期解を作成した後、Business Optimizerのルールエンジンでルールを処理して最適解を導き出し、結果を可視化して表示します。例えば看護師の勤務シフトなら、看護師の人数から膨大な組み合わせが割り出され、この中からスキルのマッチングや「新人だけにしない」「日勤と夜勤の切り替えは10時間以上空ける」などの制約条件に違反していないかを判断し、優先順位を加味してより適合性が高いものを最適解として出力します。

パネルディスカッション:BRMSを使いこなすには?

 イベントの最後には先に登壇したイノルールズ株式会社 シニアコンサルタント 白石浩一氏、レッドハット株式会社 テクニカルセールス本部 チーフテクノロジスト 梅野昌彦氏に加え株式会社アシスト 東日本技術本部 情報基盤技術統括部 技術4部 部長 佐藤彰広氏、SCSK株式会社 プラットフォームソリューション事業部門 ITエンジニアリング事業本部 ミドルウェア第二部 加藤順昭をパネリストとして、パネルディスカッションを実施しました。モデレーターはSCSK株式会社 プラットフォームソリューション事業部門 ITエンジニアリング事業本部 ミドルウェア第二部 第一課長 奥浩史が務めました。

 直近のBRMS案件の傾向を訊くと、アシスト 佐藤氏は「モダナイゼーションやデジタル化に絡めるほか、サブシステムでの採用もあります。基幹システムが重くなりすぎると新たなレガシーとなりかねないので、新しい機能を実装したければBRMSを活用しましょうと提案しています」と言い、参加者全員が首を縦に振り同意していました。

 補足としてレッドハット 梅野氏が「ニッチな用途も多いです」と指摘。これまでシステム化できなかった領域でBRMSが強みを発揮しているそうです。イノルールズ 白石氏は「ビジネスとシステムでギャップがあると問題になるため、BRMSはそれを埋めることができます」と話していました。

 BRMSは広範囲に活用できるものの、まだ広く認知されていないのが実状です。どのように顧客にアプローチしているのかを問うと、アシスト 佐藤氏は「BRMSと言うと間口が狭くなるので『内製化ツール』、『ロジックを簡単にします』など肩の力を抜いて説明したら注目されるようになってきました」とのこと。SCSK 加藤も「まずは使ってみましょう」と呼びかけているそうです。

 最後にそれぞれから一言述べてもらいました。レッドハット 梅野氏は「コロナに関係なく、ルールエンジンは人間の活動を補佐するのに必須であり、今後は重要なコンポーネントとして伸びていくと思います」。SCSK 加藤は「BRMSは派手なキーワードで引きつけるものではなく、地味ではあるが、きちんと使えば効果を発揮できます」。イノルールズ 白石氏は「バッチ処理などでも活躍しているので運用での実績で評価されるようにしたい。BRMSは業務の自動化だけではなく、業務の効率化・高度化につながっていくものです」。アシスト 佐藤氏は「今はまだBRMSは過小評価されているものの、これからは新しいアプリ開発スタイルとして使われていくと思います」とのこと。SCSK 奥は「BRMSは多様な連携ができて使いどころがあります。これからも今回の皆さんと良さを伝えて行けたら」と意欲を語り、パネルディスカッションを締めました。

セミナー講演者様
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