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リモートワーク普及で多様化する働き方を、人事はどう管理すべきか?


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働き方が多様化するなか、どうやって長時間勤務や仕事量の偏重を察知するか

リモートワークを導入する企業が増え、働き方の多様化がますます進んでいます。一方で、2019年4月から長時間労働を規制する働き方改革関連法が施行され、これまで以上に厳格な勤怠管理が求められるようになりました。しかし、いつでも・どこでも仕事ができるリモートワークは、役職員がどれだけ仕事をしているのかを上司や人事部で正確に把握することは難しく、役職員による自己申告ベースの勤怠管理に限界を感じている企業もあるのではないでしょうか?

早くからリモートワークを推進してきたSCSKの人事部も、同様の課題を抱えていました。この課題を解消すべく、SCSK人事部ではリモートデスクトップのアクセス情報など、ITデータの活用を検討。
そこで導入したのが、セキュリティ対策やインフラ管理で多く活用されるデータ解析プラットフォーム「Splunk」を使った方法です。多様化する働き方を可視化し、長時間勤務や仕事量の偏重などをいち早く察知。事前に対策が取れる“攻めの勤怠管理”を実現しました。ここでは、その取り組みを紹介します。

※「Splunk」とは:https://scsksecurity.co.jp/services/splunk/(紹介ページ)

インタビュー対応者 ※所属組織は2019年6月現在の情報です。


SCSK株式会社
人事グループ
人事厚生部 労務課長
南 政克

SCSK株式会社
人事グループ
人事厚生部 労務課
村田 宜則

SCSK株式会社
人事グループ
人事企画部
東田 将樹

SCSK株式会社 プラットフォーム
ソリューション事業部門
ITエンジニアリング事業本部
ミドルウェア第二部 第三課
大竹 雄樹

リモートワーク管理は役職員が入力した勤怠情報だけが頼りだった

全国拠点7,600名の役職員が働くSCSKでは、人事厚生部 労務課で全社の勤怠管理を統轄しており、以前よりリモートワーク時の勤怠をどう管理するかが課題となっていました。

「自宅などでリモートワークをした場合、役職員自身がその時間も含めて勤怠管理システムに勤務時間を計上するのがルールです。しかし、勤怠管理システムに計上すべきリモートワークの時間が一部漏れていた場合、勤務時間を過少に申告したこととなってしまいます。社員一人ひとりの健康を守るためにも、こうした状況を改善しなければと、以前から対策を検討していました」(南)。

また、リモートワークのアクセスログと勤怠情報の突合による確認も、簡単にはできない事情がありました。

当時、リモートワーク時の勤怠管理の検討を担当した東田は、「弊社のリモートワークは、社外からVPN接続で社内のPCにアクセスする仕組みです。しかし、リモートでPCを利用する業務自体が終了しても、VPN接続を切断(ログアウト)せず、そのまま放置してしまう役職員も複数いました。
情報システム部門はVPN接続のログは管理していますが、その間、実際に業務として利用していた時間までは把握できません。
単純にアクセスログと勤怠情報を突合するだけでは、正しく勤務時間が計上されているかどうかを判断できない状態でした」と話します。

単なるログの集計ではなく、人事部が必要とする条件にあわせてデータを可視化

もともと、一部の役職員が利用していたリモートワークですが、2017年8月に全役職員を対象とした制度がスタートしたことから、リモートワーク時の勤怠管理の重要性がさらに高まり、その強化が急がれました。

「リモートワークを行っている時間をシステム側で把握するには、VPN接続のアクセスログを解析するしかありません。これは膨大な量のログになるので、それでも解析可能なログ解析ツールを中心に情報を収集するところから始めました。
また、すべてのアクセスログを確認するのではなく、業務対応の可能性が高いと懸念されるアクセスログを抽出したいと考えていたこともあり、単なるログの解析や集計ではなく、条件にあわせてロジックを組めることが必要でした。
その上で、アクセスログから抽出したリモートアクセスの時間と、役職員が勤怠管理システムに入力した勤務時間を比較し、その差をな容易に確認できるツールはないかと探していました」(東田)。

そんな時、出会ったのが「Splunk」でした。
SCSK内で、既に100以上の企業への「Splunk」導入・提案を手がける担当部署の大竹に相談した結果、人事が期待していることを、「Splunk」なら実現できそうだと分かりました。

「さまざまなログを、一元的に扱えることが『Splunk』の強みです。今回は自社開発のアプリケーションのログも解析対象でしたが、そういった自社システムのログも事前の加工なしですべて取り込むことができ、後からログのどの部分が何の項目に該当するのかを設定できます。また、設定した条件について、即時に管理者への通知送付が可能です。勤怠管理として実現したいと相談されたことも、一通り対応できると説明しました」(大竹)。

既存の勤怠管理システムの改修が不要で、コストを抑え、スピーディに導入できることも決め手となり、「Splunk」導入を決断。
実際に、導入を決めてからわずか2~3カ月と短期間でのリリースに成功しました。

リモートワークの勤怠についても、勤怠管理システムに計上された勤務時間とアクセスログから取得したリモートアクセス時間の差異をバーで表示。
役職員ごとに、勤怠管理システムに未入力のリモートアクセス時間がないかを直感的に確認できる画面を実現しました(以下の画面を参照)。

「また、弊社の勤怠管理システムでは、システムの仕様上48時まで入力できますが、リモートアクセスログは一般的な時刻で出力されるため、23時59分の次は0時00分です。
時間表示の異なるログを突合するためにはデータ変換などが必要ですが、そういった点も含めて柔軟に解釈、実装できたのも『Splunk』ならではの機能で、今回の業務を運用する上での大きなポイントだと思います」(大竹)。

●データ分析の画面例:勤怠管理システムで申請している勤務開始~終了時間外にリモートアクセスしていることと、その未申告アクセス時間が分かります。

リモートワークの運用ルールについて、役職員への周知徹底も重要

もちろん、分析ツールを導入しただけですべてが解決できたわけではありません。
2018年6月の運用開始から3カ月間は、リモートワークで業務を行った場合、業務終了後はVPN接続を必ず切断(ログアウト)するよう役職員へルールの周知を徹底しました。

役職員への周知を担当した村田は、「業務終了後にVPN接続を切断することはもちろん、リモートワークで業務を行う場合には事前に予定を届け出て、実施後には勤怠管理システムに計上するという正しいルールを改めて全社に周知しました。
人事や上司にアクセスログを見られることに抵抗感があるという声も一部ありましたが、仮に勤務時間外に業務を行ったのであれば、それは正しく計上した上で、今後に向けて改善していくことが重要だと周知することで、理解してもらいました」と話します。

その結果、勤怠管理システムに計上されていなかった勤務時間外でのリモートアクセス時間・件数はともに激減したといいます。

「リモートワークは継続して全社で推進していますが、勤務状況を可視化する仕組み(『Splunk』)の導入と、適切な勤怠管理の周知などの取り組みを同時並行で行った効果が出ているのだと思います。
特に『Splunk』によって、多様な働き方を推進する中でも、勤務状況を可視化し、改善に向けて働き掛けることのできる体制を構築できたことは大きなメリットです」(南)。

さらに、勤怠を月末に締める前に残業や休暇取得の状況把握が可能に

そのほかにも、SCSKでは勤怠管理の一環として、役職員の残業時間や休暇取得状況も確認しています。

残業が上限時間を超えないようチェックするだけでなく、“ここ最近、休みが増えている”といったことから、役職員の心身状態を把握した上で、適切なタイミングにフォローすることは、会社の重要な責務です。
従来はこういった状況把握は、月末に勤怠を締めなければ確認できませんでしたが、「Splunk」の導入によって早い段階でつかめるようになりました。

「残業が36協定の上限時間を超える場合には事前に申請が必要ですが、万が一、申請が漏れてしまった場合にはコンプライアンス違反になってしまいます。
『Splunk』を活用することで、事前に会社が残業状況を把握し、個別に注意を促すフローができたのは大きいです。
また、心身の状態がすぐれない役職員についても、勤怠を締める前の段階で状況を察知し、役職員の上司に状況を確認しています。必要に応じて産業医との面談など、適切な対処をより早い段階で促す仕組みが構築でき、攻めの勤怠・労務管理を実現できたと思います」(東田)。

こういった勤怠不良のデータも、さまざまな条件にあわせて収集・集計しています。欠勤や遅刻・早退などが多い役職員に対し、従来のアプローチに加え、「Splunk」で解析したデータに基づいたアプローチやフォローが可能になりました。
役職員の勤怠状況を報告・共有する定例ミーティングでは、月末に締めた段階で把握できた役職員への対応に加え、「Splunk」で懸念事項が見つかった役職員にどう対応するか、といった積極的な意見も出ています。リモートワークの勤怠管理も含め、従来できなかったことができるようになり、社員一人ひとりの勤怠管理や健康管理について、会社としてよりきめ細やかにフォローできるようになったのは非常に大きな効果です。

個人ごとのふるまい分析など、働き方改革に繋がる今後のデータ活用にも期待

今後も「Splunk」を活用し、さらに踏み込んだデータ活用が検討されています。

「現状は、単月のデータを解析していますが、データがある程度溜まってくれば、個人の過去のふるまいを分析して活用できるのではと考えています。
具体的にどんなデータ分析結果が出るかは、実際に試さないと分かりませんが、出勤/退勤時刻の変動や有休を取得する月の傾向など、個人ごとの勤怠傾向や、特定の人に仕事が偏っていないかなど、組織ごとの勤怠傾向を見ることができるかもしれません」(大竹)。

冒頭でも触れたように、「Splunk」はもともとセキュリティ対策やインフラ管理、IoTなど幅広く活用されているデータ解析ソリューションです。
セキュリティ対策と勤怠管理の組み合わせなどでも、新しい切り口での分析や気づきを生み出し、対策や管理が可能になるかもしれません。

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