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マテリアルズ・インフォマティクスにおける自社開発vs外部プラットフォーム

1. 自社開発vs外部プラットフォーム

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、アカデミックとビジネスの両方で成功を収め、ここ数年間で勢いを増してきました。Citrine Informatics社の創業当初、多くのお客様は製品開発にAIを「使うべきかどうか」を考えていましたが、今では「どのように使うか」を考えています。一部のお客様はパイロットプロジェクトにて技術とビジネスの両面での価値を確認し、今後本格的にAIを採用するにあたり、自分たちでMIプラットフォームを構築するか、Citrine Platform等の外部プラットフォームを利用するかを決断しようとしています。この記事では、自社開発と外部ソフトウェアのどちらを採用するか、決断する上で考慮すべき重要なポイントをまとめます。

2. 時間とリソース

実用的なMIプラットフォームをゼロから構築するには、1~2年かかるでしょう。プロジェクトにどれだけリソースを割けるかにもよりますが、我々は最初のPoV(Proof of Value:価値実証)で結果が得られるまでに6~12ヶ月かかると見積もっています。(対照的に、Citrine Platformでは、通常購入後4~6週間で最初のPoVを実施できます。)しかしながら、最初のシステムは実用的なものではなく、グローバルに展開できるようなものにするには、そこからフルタイムで1年間は最低でもかかるでしょう。

時間とリソース

3. MIプラットフォームの構築に必要な人的リソース

実用最低限なMIプラットフォームを内部で構築するために必要な体制は次の通りです。

■エグゼクティブスポンサー(0.25工数×1年間)
■プロジェクト/プロダクトマネージャー(1工数×2年間)
■データアーキテクト(1工数×2年間)
■データサイエンティスト(1工数×2年間)
■データエンジニア(1工数×2年間)
■フルスタック開発者(1工数×2年間)
■インフラ/クラウドエンジニア(1工数×2年間)
■DevOpsエンジニア(1工数×2年間)
■マテリアルサイエンティスト(0.25工数×2年間)

この見積もりには、構造化データの管理を含むプラットフォームの構築、既知の材料物性を予測する能力、新素材の大まかな設計、を含みます。しかしながら、メンテナンスや、拡張、アップグレードなど、継続して必要となるリソースは含まれていません。

4. プロジェクト遅延の影響

MIにより、効率が改善され、成功しそうなプロジェクトに集中しやすくなり、決断が早くなったとします。また、競合他社が並行してMIの活用を模索していることを知っていたとします。その場合、MIの恩恵をフルで受けるのが1~2年遅れると、決算に大きな影響を与えるでしょう。

5. パイロットプロジェクトと実用的なプラットフォームの違い

オープンソースや低料金のMIライブラリ、データベース、データパイプラインツールなどは多く存在し、プロトタイプのMIシステム構築、最初のAIモデルの実装、PoCの実行などに活用することができます。しかしながら、我々はお客様が他のプロジェクトにも適用しようとしたときにトラブルに見舞われるのを見てきました。

実用的なMIソフトウェアが必要とすること

■優れたユーザーエクスペリエンス
チーム全体でプラットフォームを活用し、ドメイン知識を取り入れようとした場合、簡単なユーザーインターフェースが必要です。オープンソースのスパゲッティのようなツールは、洗練されたデザインの直感的なUIの下に隠されるべきです。
■安全性、アベイラビリティ、アクセスコントロール
競争力の低下に直結する、機密データの流出を防ぐようなセキュリティを構築することは非常に重要です。自動バックアップ、モニタリング機能、システムダウンへの対策もまた重要になります。ユーザーが増加した場合には、十分な計算リソースを確保できるようにプラットフォームも拡大する必要があります。部署や関係会社、ビジネスパートナーなどをまたいで、プラットフォームをグローバルに展開する場合、関係者が必要な情報にのみアクセスできるアクセスコントロールなども重要になってきます。

セキュリティ

■リソースの再利用
マテリアルズ・インフォマティクスでは、デジタルリソース(データセット、AIモデル、設計空間等)を再利用することで得られる発見もあります。したがって、研究者がすぐに見つけ、他のプロジェクトと共有できるような形である必要があります。展開していくAIモデルでは、コードをほとんど必要とせず、自動化されたプロセスであることが理想的です。

■継続的なメンテナンス
実装した後も、新しい特徴量を追加するだけでなく、データベースやコードのメンテナンスのためにも、ソフトウェアエンジニアが必要になるでしょう。必要に応じたコード変更の計画や、流行のコンピューター言語に合わせたリファクタリングが、ソフトウェアの寿命を伸ばすことに繋がります。そのためには、エンジニアリングチームはバージョンコントロール、回帰テスト、継続的なインテグレーションのシステムが必要になります。

6. 失敗のリスク

開発が遅れるリスクについては上で述べましたが、失敗するリスクはなんでしょうか?適切なアクセスコントロールを備え、ISO27001のセキュリティプロトコルに準拠した、安全なデータマネジメントプラットフォームを立ち上げることは簡単ではなく、間違ってしまうと、重要な知的財産が流出し競争力を失います。自社開発システムは期待したほどの成果は上げず、気づいた時にはサンクコストが膨らんでいるかもしれません。

7. 得意なことに集中するメリット

多くのマネジメントに関する本は、得意分野やコアコンピタンスに拘ることを推奨しています。これは、企業がその気になればなんでもできる優秀な人間で溢れているわけではない、という意味ではありません。準備ができている人は、同じことでも早く安くできる、という意味です。Citrine Informaticsは2013年に設立され、100人以上の従業員が、世界をリードするマテリアルズ・インフォマティクスのプラットフォームを作り上げてきました。そして我々は前進し続けており、お客様の潜在的な需要を満たす特徴を追加することでCitrine Platformを開発し続けています。お客様には自分の得意な材料開発の分野に集中していただき、Citrineにはそのお手伝いをさせて下さい。

8. 考えるべきキーポイント

■競合他社が自社よりも早くAIを活用したら、ビジネスにどのような影響を与えるでしょうか?
■サードパーティー製品のライセンス料と、自社開発に必要な内部リソースや実装の遅れに伴うコストは、どちらが高いでしょうか?
■プラットフォームの開発、メンテナンス、技術サポート、システムの拡張を行うのに十分なチームを確保できますか?
■複数のチームや地域にまたがる内部システムのセキュリティをどのように維持しますか?
■機械学習モデルの構築や、様々な開発プロジェクトや関係部署への拡張を、効率的に行うことができますか?

Citrine Platformは、マテリアルズ・インフォマティクスの推進に必要となる各種機能が搭載されたプラットフォームです。Citrine Platformの過去のセミナー動画は、SCSK動画配信サイトでご覧いただけます。ぜひこの機会にご視聴下さい。


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材料設計を加速させるAIプラットフォーム Citrine Platform

Citrine PlatformはAIを活用して製品開発を加速し、企業のR&D戦略を成功へと導くマテリアルズ・インフォマティクスソリューションです。AIモデルでの予測と実験を繰り返しながら最適解を目指すアプローチにより、少ない実験数で目標特性の達成を目指すことが可能です。