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導入事例 |アルプスアルパイン株式会社 様 aPrioriを活用した全社横断的な原価企画活動の推進

導入前の課題

  • モビリティ事業の良質化と収益改善を加速させたい。
  • DXにより原価企画活動とコスト見積の精度を上げ、原価のPDCAをまわしたい。
  • コストの最適化とデジタルファクトリーの活用による最安値の算出を行いたい。

アルプス電気株式会社とアルパイン株式会社が経営統合し、2019年に新たにアルプスアルパイン株式会社としてスタートした同社は、「コンポーネント」「センサー・コミュニケーション」「モビリティ」の3つを事業軸として、メカトロニクス設計、磁気、高周波、静電、音響、プリンティングなどのコア技術と、精密加工や生産技術、そして光学、ASIC設計、ソフトウェアなどの注力技術を磨いてこられました。中核ビジネスである車載向けモビリティにおいては、来るべきSDV(Software-Defined Vehicle)時代を見据え開発を進められています。今回は、そのモビリティにおける原価管理体制の強化にaPrioriを導入した事例をご紹介いただきます。

ご所属の組織や事業をご紹介ください。

私が所属する原価革新室は、モビリティ事業に属 しています。この事業は、主に車載関連製品の企 画、開発、生産販売を行っており、パワーウィンド ウスイッチや電子シフターなどのモジュール製品 や、デジタルキャビン、サウンドシステム、統合ディ スプレイなどのシステム製品を提供しています。モ ビリティ事業は全社売上の約6割を占めています が、この事業のさらなる良質化と収益改善の加速 を目的として、原価革新室が2022年4月に新設さ れました。

aPrioriを導入した背景をご紹介ください。

原価改善、そして原価企画活動をどのように進めるかを検討する中で、原価シ ミュレーションツールaPrioriを知りました。2022年の自動車未来サミットのイ ベントレポートにaPrioriの情報があり、わたしたちの原価企画活動と自社で 設計をしている機構部品のコスト見積に活用できそうだと考えて、導入検討を 行うための部門横断プロジェクトを立ち上げ、原価革新室や金型技術部隊、 資材部門、設計担当のメンバーが参画して技術的な検討を開始しました。
2024年はじめに1か月のトライアル評価を実施し、その結果を受けて2024年5 月にaPrioriを導入しました。トライアルでは、aPrioriで行いたいことの全容把握と精度確認、独自ロジックの可否判断を短期間で行うことができたため、非 常に有意義な取り組みであったと考えています。この間、SCSKさんからも多大 な技術支援をいただきました。

どのように原価管理体制を改善したのですか。

わたしたちが扱っている車載製品は、顧客固有の専用設計が非常に多いた め、専用固定費や変動費などの管理をプロジェクト単位で実施しつつ、ライフ 収益管理を行うことがとても重要です。従来は、プロジェクトマネジメントチー ムが原価企画を担当し、原価管理や原価改善は、経営企画、技術企画、生産企 画などの各部門が個別に行っていましたが、残念ながら一貫した管理はでき ていませんでした。そこで、2022年に原価革新室が加わることで、原価企画、 原価改善、原価管理を一元化しました。一つの部門が一貫して管理・推進する ことで、製品プロジェクト単位での原価やライフ収益の管理が可能となり、収 益改善に向けたPDCAサイクルを実現できるようになりました(図1)。

原価管理体制の改善 従来の管轄部門から原価管理の一元化

原価企画、原価改善、原価管理がどういうものかもう少し具体的に説明する と、原価企画活動では、受注段階から目標原価の割り付けを行い、それを実現 するコストの創り込みを行います。その際、環境変化や技術進化、コト・モノの 進化、他社のベンチマーク情報をもとに、どのように目標原価を達成するかを 議論し設定していきます。ここで重要なのは、原価の見積精度です。次に、原価改善活動では、原価企画で目標達成に向けたアイテムを明確にして 、それを 具体的な改善活動に落とし込んでいきます。この中で重要になるのは、金型発 注前の見積精度、量産開始前の部品単価の見積精度です。そして、原価管理 活動にDXツールであるaPrioriを採用することで原価を可視化し、最善策を取 れるようにしています。わたしたちはこれを、原価のPDCAと呼んでいます。

貴社課題に対して、aPrioriトライアルではどのような内容を確認しましたか

機構系部品に特化した見積フローについて、実際に現場でどのようなことが起 き、それをどう改善したかをお話します。わたしたちは車載製品を扱っていま すので、自動車メーカーがお客様です。営業がお客様から要求書を入手し、設 計部門で3Dモデリングを行うと、それを元に資材部門が見積を行い、サプラ イヤーがその見積を検討します。しかし、この見積フローの中で十分な時間が 取れなかったり、初期段階で仕様が曖昧であることが多く発生します。その結 果、見積精度が悪くなり、意思入れによるコスト低減が必要になるということ がありました。そこで、見積りロジックの構築やコストテーブルの整備を目指し て、原価革新室が中心となってaPrioriによるコストの判断会を行うようにしま した。サプライヤーが見積った結果と設計から入手した3Dモデルをもとに aPrioriでコストを算出し、それらの数字を設計の意図する数字と照らし合わ せながらコストを判断するというものです(図2)。

図2 基本設計段階でaPrioriを使ったコスト判断

次に、開発が始まって詳細設計から量産までの段階では、設計担当が3Dモデ ルを精査し、それをもとに資材部門が見積を行います。内作の場合は自社の 生産工場に依頼し、外部調達の場合はサプライヤーから見積を入手します。し かし、この段階では設計変更が非常に多く見積作業が追いつかないことや、 設計担当が変更に追われて本来の設計業務に十分な時間がさけないという 課題があります。そこで、ここではタイムリーなコスト検証が必要ということ で、原価革新室が設計部門と連携して入手した3Dモデルと資材部門と連携し て入手したコスト情報から、aPrioriを使ってあるべきコストの見積をどのよう に設定するかの判断を行っています(図3)

図3 詳細設計から量産段階でのaPrioriを使ったコスト判断会

aPrioriの役割としては、想定したデジタルファクト リーの中に、aPrioriの計算ロジック、これを軸とした 機械テーブル、変数、材料テーブル、参照テーブルとそ の他ファクターをおき、ユーザーの入力すべき情報、 その結果として出されるコストのアウトプットを把握 できるようになっています。このaPrioriの計算ロジッ クは、カスタマイズすることで独自ロジックの構築も 可能ですし、このロジックを使えば長期的にも活用 できることがわかりました。機械テーブルでは、最適 となるマシン条件の追加、生産拠点の独自条件を追 加することで、弊社固有の見積が可能となります。さ らに、材料テーブルは、現在採用している材料、コス ト、物性などを登録することで、各生産拠点で購入・ 生産している材料と紐付けができることも確認でき ました。

aPrioriのトライアル結果はいかがでしたでしょうか。

成形部品、成形金型を使ってトライアルを行ったの ですが、最初の結果では成型部品では実際の購入コ ストより高い値段が出てきました。一方、成型金型は かなり安い値段が出てきました。そこで、成型部品に おいては材料単価や賃率、サイクルタイムの最適化 を、成型金型においてはCNC加工時間の変更や、設 計金型製作のプロセスおよび賃金、モールドベース の標準化ラインナップなどの追加を行って調整しま した。その結果、成形部品はaPrioriが算出した方が 安価に、成形金型も約2/3の値段となり、これまで自 動車メーカーから高いと言われていた価格を、ある 程度抑えられるようになりました。現在、最も課題と なっているのは金型の見積です。車載製品などには 非常に精密な金型が使用されており、加工方法や構 造に大きな違いがあります。そのため、これらもカス タマイズの必要があり、独自ロジックを構築すること で精度向上が可能だと考えています。

今後の取り組みについて教えてください。

aPrioriの計算ロジックと自社の独自計算ロジックを 組み合わせて、購入部品のコストの最適化やデジタ ルファクトリーの活用による最安値の算出に取り組 む予定です。一方、生産拠点との紐づけについては、 機械テーブルと材料テーブルをaPrioriの独自のテー ブルと、我々の各生産拠点に紐づいた機械テーブル、 材料テーブルとで適宜切り替えをしながら、どちらが 安くどう改善していけばいいのかを判断していきた いと思っています。

大変興味深い取り組みをご紹介いただき、どうもあ りがとうございます。SCSKとしても今後一層の技術 サポートをさせていただきたいと思います。

図4 デジタルファクトリーにおけるaPrioriの役割
事例 アルプスアルパイン株式会社 様 aPrioriを活用した全社横断的な原価企画活動の推進
課題解決ソリューション

製造原価シミュレーション aPriori(アプリオリ)

aPrioriは3DCADモデルから形状やPMI情報を抽出し、構築したデジタルファクトリーの情報を考慮して、モノづくりの意思決定に必要な3つの指標を提供します。 aPriori活用で自社内に明確なコストテーブルを持ち、設計の早期段階からコストを意識した製品開発体制を整え、イノベーションを促進することに貢献します。