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技術情報コラム

Citrine Platform技術情報コラム第五回

Citrine Informatics社の金属材料開発における取り組みとマテリアルズ・インフォマティクス(MI)活用

Citrine Platform技術情報コラム第五回

本記事はCitrine Platform製品紹介セミナー第五回 金属編のダイジェスト版です。

1. Citrine Informatics社の金属材料開発における取り組み

鉄、銅、亜鉛、アルミニウムなど、高強度で電導性・熱導性・延性があり、加工しやすい金属は、わたしたちの身の回りでも、自動車や建材などの工業用製品から日用品至るまで幅広く使われています。この金属材料の分野においても、高機能で高性能な新素材開発が進んでおり、カーボンニュートラルや再生可能というような今日の社会が求める機能を実現するために、日々研究が行われています。

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)プラットフォームCitrine Platformを提供しているCitrine Informatics社はMIプラットフォームの開発だけでなく、金属材料分野の知見獲得のための取り組みも独自で進めています。そのひとつが、MPEA(Multi-principal element alloy:多種主要元素合金)の機械的特性に関するデータベース開発です。

一般に、合金は、Feなど単⼀の主要元素 と、主要元素よりもはるかに低い濃度で存在する1つ以上の溶質元素で構成されています。対照的に、MPEAは、組成を支配する単一元素がなく、3つ以上の主要元素が存在する合金です。従来の合金と比較して、組成の設計空間が大幅に拡大してしまうという特徴があり、実験で網羅的に調べるには膨大な費用がかかります。そのため、有望な候補を特定するために、計算およびデータ駆動型のアプローチが有効になります。

Citrine Informatics社では、過去の論文などの文献からデータを収集し、MPEAの組成と降伏強度などの機械物性測定値を含んだ最大級のデータベースを開発しました。このデータは機械学習で扱いやすいように整備しており、論文として公開されています。

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Borg, C. K. H., Frey, C., Moh, J., Pollock, T. M., Gorsse, S., Miracle, D. B., Senkov, O. N., Meredig, B., & Saal, J. E. (2020). Expanded dataset of mechanical properties and observed phases of multi-principal element alloys. Scientific Data, 7(1), 430

実際に、このデータベースは、これまでにテストされていないMPEAの組成の特性予測に活用されています。UCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)の研究者との提携により、高い引張強度と伸びを備えた新しいMPEAの合成にも成功しました。

関連記事はこちら https://citrine.io/aggregating-data-to-accelerate-alloy-design/

2. 金属材料の研究開発におけるMI活用

Citrine Informatics社は、シーケンシャル・ラーニング(逐次学習)を反映したAWS上で稼働するSaaS型のMIプラットフォームです。シーケンシャル・ラーニングでは、過去の実験データなどから、研究者のドメイン知識を取り入れたAIモデルを作成していきます。その後、候補材料の算出に向けた設計空間の設定と候補材料のスコアリングを行った後、選定された候補材料の条件から次の実験内容を決定し、その内容に基づく価値の高い実験を行います。このサイクルを反復的に行うことで、従来の研究開発手法に比べおよそ50-70%少ない実験数で目標となる材料特性の達成を目指すことが可能です。今回は、Citrine Platformの機能から、主に金属材料の研究開発に活かせる機能を紹介します。

2-1 データ構造と機械学習モデル

合金などの製造には多くのステップが必要で、製品特性を予測するには、追加された成分だけでなく、製造プロセスなどの情報を、すべてデータセットに取り込む必要があります。しかし、一般的なデータベースでは製造順序を考慮して管理する機能はないため、一元的に管理しようとすると煩雑になってしまいます。Citrine Platformは、独自開発のデータ形式により、最終製品の製造までのプロセスを考慮してデータを管理し、素材・プロセス・測定履歴を可視化することができます。

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Citrine PlatformのAIモデル構築は、入力から特徴量化、学習までの一連の機械学習モデルをノーコードで作成できます。特徴量化においては、機械学習モデルに研究者のノウハウが反映できるドメイン知識実装機能を搭載しており、例えば、化学式(組成式、分子式)、構造式(SMILES/InChI)などの入力データから、合計100以上の物理量を追加で取得し、特徴量として利用することができます。このように、ドメイン知識を機械学習モデルに組み込むことで予測精度を向上させることが可能です。

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また、Citrine Platformが採用している転移学習について、疲労強度予測を例にご紹介します。疲労強度の予測には、引張強さの特性値がある程度相関しているといった知見をすでに持っていたとします。そのような場合、引張強さを予測する機械学習モデルを前もって構築し、その予測値を新たな特徴量として、疲労強度予測のための機械学習モデルの入力に利用することで、疲労強度の予測精度向上につなげることができます。このような手法をCitrine Informatics社では転移学習と呼んでおり、これは、材料開発のようにデータ量が豊富にそろわないようなケースでも予測精度改善の効果が期待できる非常に強力な手法です。

2-2 MI活用~シミュレーション連携~

では、金属材料の研究開発におけるMI活用について、シミュレーション連携をテーマにご紹介します。前述のシーケンシャル・ラーニングには、実験データだけでなくシミュレーションデータを使用することも可能です。昨今、マルチスケールでの解析により、ミクロな現象とマクロな現象を紐づけし、実現象を忠実に再現していくシミュレーション手法が期待されていますが、実際は1つのスケールが得意な個々のシミュレーションツールを繋げて異なるスケールを同時に考えるのは困難です。

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図は、一般的なシミュレーション技術例を長さスケールごとに記載しています。右側にCitrine Platformでこれらのシミュレーションデータをどのように扱うかの一例を記載していますが、Citrine Platformではそれぞれの長さスケールでプロセス、構造、組成の全てを考慮したモデル構築が可能です。このように、Citrine Platformは、各シミュレーションとの”連携ツール”としてのAIになり、理論、シミュレーション、実験結果を統合的に活用したアプローチにより予測精度の向上を期待できます。

2-3 MI活用~3Dプリンティング~

3Dプリンティングは、鋳造や射出などの従来の製造方法と比較し、特定用途に合わせたオーダーメイドでの製造、試作の容易さ、従来の製造方法では不可能なデザインの実現、廃棄物が少なく後処理も必要ないなどのメリットがあり、近年活用がますます進んでいる技術です。

反面、ほとんどの積層造形プロセスでは、設定すべき多彩なプリントパラメータがあるため、その最適化は高次元の問題となり複雑化します。また、積層造形では試作が容易なためデータは大量に生成できますが、製造パラメータも多くあり、これを手動で解析し全ての設計目標を満たす組み合わせを見つけることは困難です。そして、全ての製造パラメータは相互依存性があり部品性能に大きな影響を与えるため、一見するとノイズの多いデータになってしまいます。

これらの課題を解決できるのがMIです。機械学習モデルは、入力された製造パラメータと出力された部品の性能との間の相関関係を効率的に判断することができ、学習した相関関係を用いて目標に向かって次の実験を誘導します。また、複雑な因果関係の中で、部品性能を最適化するために必要な相関関係を特定します。

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Citrine Platformは、金属特有のドメインにも対応したMIアプローチを適用が可能で、研究開発の高速化を実現します。本コラムのより詳しい情報は、Citrine Platform製品紹介セミナー第五回 金属編にて、ご覧いただけます。セミナーの見逃し配信をSCSK動画配信サイトで行っておりますので、ぜひこの機会にご視聴下さい。

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