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技術情報コラム

Citrine Platform技術情報コラム第四回

化学材料の研究開発におけるマテリアルズ・インフォマティクス(MI)

Citrine Platform技術情報コラム第四回

本記事はCitrine Platform製品紹介セミナー第四回 化学材料編のダイジェスト版です。

1. 化学材料の研究開発とその課題

日本で研究開発や製造が行われている多くの素材の中で、鉄鋼や金属、繊維、ゴム、ガラスなどを抑えて全体の約半数を占めるのが化学材料です。化学材料は、石油や石炭、ガスなどの基礎原料から、プラスチックや合成繊維などとして作られる中間材料で、それらは最終的に自動車、航空機、家電、食品、医薬品、農業まで幅広い分野で活用されています。特に日本の化学材料開発の技術力は世界でも高く評価されており、今後も強みとして誇れる分野であることは間違いないでしょう。

さて、このような化学材料の研究開発には、様々な課題があります。例えば、目標となる特性値を満たす化学材料を見つけるには、膨大な数の原材料や成分の組み合わせから最適なものを決定することになり、その作業は非常に困難です。さらに実際は、製造プロセスの複数の処理ステップにまたがる条件や、サプライチェーンなどの複雑な制約条件なども考慮する必要がありますし、昨今では、顧客要求の高度化、消費者の期待の変化、企業や投資家による持続可能性の要求、変化する規制環境、不透明な貿易環境などのように、予測しづらく変化の激しい市場要因も絡んできます。ではこのよう化学材料の研究開発をどのように進めていけば良いのでしょうか。その鍵となるのが、これまでのコラムでも紹介してきたAIを活用したマテリアルズ・インフォマティクスです。では、Citrine Platformは化学材料の研究開発にどのように役立つことができるのでしょうか。

2. 化学材料の研究開発におけるAI活用の課題とCitrine Platformによるソリューション

AIを使った材料開発は、適用先によって異なる独自の課題がありますが、それは化学材料の分野においても同様に、化学材料ならではの課題が存在します。

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【化学材料開発のためのAI活用課題】

この中から、今回は「化学情報の機械可読データへの変換」「顧客要求への迅速な対応」「制限成分の再配合」を取り上げ、Citrine Platformはどのように解決してきたかをご紹介します。

2-1 化学情報の機械可読データへの変換

まず、化学情報を機械可読データに変換する手法についてご説明します。Citrine Platformは、化学式(組成式、分子式)、構造式(SMILES/InChI)などの入力データから、分子量などの合計100以上の物理量を追加で取得し、特徴量として利用することができます。化学材料の研究開発に対するAIの単純なアプローチでは、成分とその配合比のみを使用して特性を予測しますが、Citrine Platformのアプローチでは、このデータ変換機能を利用して成分特性も特徴量に加えて性能を予測します。このアプローチにより、効果的で精度の高い機械学習モデルを構築でき、高速に材料開発を進められます。

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2-2 顧客要求への迅速な対応

ここでは、顧客対応力を向上させた一例として、ある特殊化学品のリーディングカンパニーの事例をもとに説明します。同社は以前、データの欠損により製品ポートフォリオの全体像が不完全な状況でした。一般に試験には時間と費⽤がかかるため、材料のすべての特性が測定および記録されているわけではないということは他社でもよく起こりえることです。ただ、そうなると、新製品の検討にあたり、実験を効率的に進められない、顧客要求に迅速に対応できない、という問題が発生します。そこでCitrine Informatics社は同社と協力し、データ欠損を埋めるためのAI主導のアプローチをとりました。

主に実行したプロセスは、データの構造化と可視化、ドメイン知識の組込み、不明な特性値の予測という3つのプロセスです。

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まずデータの構造化と可視化を行い、独自開発されたデータ形式により、最終製品製造までの一連のプロセスを考慮して、研究者の方が視覚的に管理しやすい形式でデータを整備していきました。続いて、ドメイン知識の組み込みです。各目標特性についてAIに予測させるためには、材料のどの構造的特徴が特性に影響を与え、成分と加工のどの側面が特性に影響を与え、可能性があるかを理解する必要があります。 Citrine Platformにはそのような研究者のノウハウをAIモデルに組みこむ機能があるため、ドメイン知識が統合されたAIモデルの構築を進めていきました。最後に、不明な特性値の予測です。前述の2つのプロセスを経て構築したAIモデルにより、既存の製品で不足している特性値を予測し、潜在的な新製品の特性値を予測することが可能になりました。その後も、同社は顧客要求に対応した有望な候補材料をCitrine Platformを使ってすばやく特定し、提案された実験から得られたデータをプラットフォームに追加し、モデルの再構築を繰り返すことで、モデルをさらに洗練させ、実験回数の削減も実現することができました。

2-3 制限成分の再配合

それでは、既存製品の改良、すなわち再配合はどのような場合に必要となるでしょうか。例えば、規制物質の除去、低コストの代替品の開発、サプライチェーンの混乱による原料の代替などの理由があげられます。ここでは、制限された成分を考慮した再配合時の対応についてご紹介します。

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Citrine Platformの材料開発アプローチは、シーケンシャル・ラーニングによって、材料データを取り込み、データの構造化や機械可読形式への変換を行い、既知の科学的な関係式や研究者独自のノウハウをデータに追加してデータの特徴付けを行います。そして、探索したい領域である「サーチスペース」 を定義し、そこから性能特性の目標に応じて機械学習モデルを構成し、候補材料を探索していきます。

コスト制約、成分制約などの特定の制約を考慮した上で、候補材料を算出していくには、それらの制約条件を「サーチスペース」で定義する必要がありますが、既存製品の改良、すなわち再配合が必要となった場合は、Citrine Platform上のサーチスペースの設定を修正していくことになります。その場合、データ、追加した特徴量、AIモデルはプロジェクト間で再利用することが可能です。このように、Citrine Platformでは、一から新規でデータを準備し、モデルを構築する作業が不要で、既存製品の改良も効率的に進めることができます。

例えば、規制等の理由によりある素材が使用不可になるといったことが発生したとしましょう。Citrine Platformのサーチスペース設定画面では、候補材料の探索範囲に特定の素材を含む/含まないといった選択が行えますので、その場合には探索範囲から該当素材を除外して容易に候補材料の選定を進めることが可能です。

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本コラムのより詳しい情報は、Citrine Platform製品紹介セミナー第四回 化学材料編にて、ご覧いただけます。セミナーの見逃し配信をSCSK動画配信サイトで行っておりますので、ぜひこの機会にご視聴下さい。

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