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「データ主権とITインフラ」IT担当者がおさえるべきポイント

「データ主権とITインフラ」IT担当者がおさえるべきポイント

企業の生命線であるデータ。そのデータ、本当に守れていますか? クラウド利用が進む現代、データの保管場所やアクセス権限は複雑化し意図しない法規制違反のリスクも高まっています。データ主権、難しそう…私には他人事かも…そう思っていませんか? 本コラムは、そんな皆様に「データ主権」を身近に感じていただき、具体的なITインフラの選択肢から、その選択肢が持つ課題と解決策まで解説します。

1.はじめに

近年、クラウドサービスの利用は拡大の一途を辿り、企業のIT計画において不可欠な要素となっています。総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」によると、令和5年にクラウドサービスを利用している企業の割合は約8割近くとなっています [1]。

クラウドサービスの利用状況(企業)
図1:総務省、「令和5年通信利用動向調査の結果」(令和6年発表)、総務省ウェブサイトより引用

一方で、クラウド上のデータ保管場所(データレジデンシー)については、課題も残されています。データが意図せず国外に保存され、他国法令の影響を受けるリスクも顕在化しており、EU一般データ保護規則(GDPR)[2]をはじめとする各国のデータ保護規制強化の流れを受け、日本国内でも「データ主権」の重要性が再認識されています 。

本コラムでは、企業がデータ主権を保護すべき理由を明確にし、データ主権を確保しながら柔軟かつ革新的なITインフラを実現するための方法について、GDPR、個人情報保護法[3]、CLOUD Act[4]などを参考に解説します。

2.データ主権とは

データ主権とは、自社のデータを自国の法令やルールに基づいて担保し、保護する概念です。データの保管場所、処理方法、移転先などを自社でコントロールすることで、法規制遵守、リスク管理、競争力強化を実現します。データ主権は、単にデータの物理的な所在地を指すだけでなく、データに適用される法律、データへのアクセス権、データの利用方法など、より広範な概念を含みます。

3.企業がデータ主権を担保すべき理由

データ主権の管理は、単なるコンプライアンス対策ではなくリスクを回避し、事業継続性を左右する重要な要素です。データ主権を保護することで得られるメリットを次表にまとめました。

表1:データ主権を保護するメリット

法規制遵守
GDPR、個人情報保護法 など、データ保護に関する法規制を遵守できます。これらの法規制は、データの収集、保管、処理、移転に関する厳格な要件を定めており、企業はこれらの要件を遵守する必要があります。
リスク回避
データを日本国内の管理下に置き、自国法令の管轄を及ぼすことで、データ開示要求リスクを軽減します。例えば、米国のClarifying Lawful Overseas Use of Data Act (CLOUD Act) は米国クラウド企業に対し海外保管データでも開示を求めますが、データが日本にある場合には自国法が優先され、データ開示要求を阻止、または制限できます。
事業継続性
データが特定の国や地域に依存するリスクを軽減し、事業継続性を高めることができます。

上記のメリットを実現し、データ主権を効果的に保護するためには、自社のビジネス要件や法規制に合致した適切なITインフラを構築することが不可欠です。次章では、データ主権を考慮したITインフラの構築について解説します。

4.データ主権とITインフラ

データ主権を保護する上で、企業は自社のビジネス要件や法規制に最適なITインフラを選択する必要があります。ITインフラは、企業のデータが保管、処理、利用される基盤となるため、その構成はデータ主権の確保に直接的な影響を与えます。

ITインフラの構成は多岐に渡りますが、主な選択肢としてはオンプレミス、クラウド、ソブリンクラウド、ハイブリッドクラウドなどが挙げられます。各構成はそれぞれ異なるメリットとデメリットを持ち、企業のデータ主権に対する影響も異なります。そのため、企業はシステム用途、データの種類、量、機密性、適用される法規制などを総合的に考慮し、最適なITインフラ構成を慎重に選択する必要があります。

各ITインフラ構成のメリットとデメリット、特長をまとめた次表[表2:ITインフラ構成の比較]からもわかるように、データの完全な保護を実現できるオンプレミスのメリットと、柔軟性・拡張性に優れサービス自由度が高いクラウドのメリットを両取りできるのが、ハイブリッドクラウド構成です。ハイブリッドクラウド構成を選択した場合、データ主権を確保しつつ、柔軟性とコスト効率を両立することが可能になります。

表2:ITインフラ構成の比較

構成
メリット
デメリット
備考
オンプレミス
データ所在を特定できる
拡張性・柔軟性が低い
データ所在を完全にコントロールできるが、旧来型で拡張性・柔軟性に乏しい
パブリッククラウド
柔軟性・拡張性が高い
サービスラインナップが多い
データ所在を特定できない
事業者との契約内容を十分に確認し、適切な対策が必要
ソブリンクラウド
データ所在を特定できる
サービスラインナップが少ない
事業者・サービスが限定
ハイブリッドクラウド
データ所在を特定できる
柔軟性・拡張性が高い
ネットワーク構成が複雑化
データ所在をコントロールでき、パブリッククラウドの柔軟性・拡張性も活かせる

ただし、ハイブリッドクラウドには異なる環境を組み合わせるためネットワーク構成が複雑化し、ネットワーク費用の増大やパフォーマンスの低下、運用が煩雑化するといった新たな課題も生じるため注意が必要です。これらの課題を解決し、ハイブリッドクラウドのメリットを最大限に引き出すためには、最適なマルチクラウド接続サービスを選択することが重要になります。

SCSKのマルチクラウド接続ネットワークサービス「SCNX」は、ハイブリッドクラウド環境におけるネットワークの複雑性を解消し、データ主権を確保した安全なマルチクラウド環境を実現します。SCNXは、データ主権を維持しながら、最適なITインフラを構築するためのソリューションです。

5.まとめ

データ主権は、企業がビジネスを守り、成長するための重要な要素です。法規制遵守、リスク回避、競争力強化、事業継続性といったメリットをもたらし、企業の持続的な発展に貢献します。データ主権を考慮したITインフラは、企業の規模や業種を問わず、ますます重要になっています。

SCSKのマルチクラウド接続サービス「SCNX」は、データ主権を保護し、柔軟なITインフラを実現するための最適なソリューションです。変化の激しいビジネス環境において、SCNXは企業の成長を強力にサポートします。

6.出典/参考文献

各記載およびリンク先は2025年6月現在のものとなります。

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