クラウドネイティブとは? 導入のメリットや実例などをわかりやすく解説!
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海外のクラウドサービスの利用が当たり前になった今、「自社の機密情報や顧客データは、本当に安全なのだろうか」「海外の法律によって、意図せずデータ開示を求められるリスクはないのか」といった不安を感じたことはないでしょうか。クラウドの利便性と引き換えに、データの所在・法的管轄・運用主体が見えにくくなっている――この問題意識を背景に、近年注目を集めているのが「ソブリンクラウド(Sovereign Cloud)」です。
本記事では、ソブリンクラウドの定義から注目される背景、国内外の動向や自社に適した選び方までを体系的に解説し、「ソブリンクラウドは自社に必要なのか?」を判断するための軸を提供します。
【監修者】小林 朗 (こばやし あきら)

SCSK株式会社 ITインフラサービス事業グループ
データ・AI基盤事業本部 USiZEサービス部 第一課 課長
【経歴】
1999年にCSK(現SCSK)に入社。
ネットワーク/周辺サーバのエンジニアを経て、クラウドサービスの企画・開発・運営を担当。
【資格等】
・ITILv3 Expert/ITIL4 マネージング・プロフェッショナル
・2026 Japan All AWS Certifications Engineers他
目次

ソブリンクラウドとは、「どの国の法律のもとでデータが管理されるか」を重視したクラウドの考え方です。クラウド上のデータやシステムを自国の法制度と統制下に置き、運用や維持まで含めて管理することで、デジタル資産に対する主権(コントロール)を確保することを目的としています。
「ソブリン(Sovereign)」とは、「主権を持つ」「独立した」という意味を持つ英単語です。つまりソブリンクラウドでは、クラウド環境における「主権」が重視されます。データセンターが国内にあるという単純な「データレジデンシー」だけではソブリンクラウドとは言えません。どの国の法律が適用され、誰が運用し、誰がアクセスできるのかを、自律的に管理・統制できることが重要であり、経済安全保障の観点からも注目されています。
ソブリンクラウドと混同されやすい概念に「データレジデンシー(Data Residency)」があります。
例えば、データが日本国内のデータセンターに保管されていたとしても、そのクラウドを運営している事業者が海外企業であれば、その国の法律の影響を受ける可能性があります(※詳細は後述)。つまり、データが国内にありさえすれば安心とは言えません。ソブリンクラウドは、このような法的・運用的なリスクが残る状態をどこまで許容するかという課題に対し、リスクを残さないためのクラウドの考え方です。

ソブリンクラウドは、現代社会において避けることのできない5つの大きな課題への対応策として、その必要性が急速に高まっています。ここでは、ソブリンクラウドが注目される背景を詳しく解説します。
国際情勢の不安定化は、グローバルに展開するクラウドサービスにとって無視できないリスクとなっています。例えば、特定の国や地域で紛争や政治的対立が発生した場合、その国にデータセンターを置くクラウドサービスが制裁措置などによって突然利用できなくなる可能性があります。ソブリンクラウドは、データやシステムを自国の管理下に置くことで、こうした地政学的リスクからデジタルインフラを保護し、事業の継続性を確保する上で重要な役割を果たします。
電力、通信、金融といった重要インフラの上で扱われるデータや、企業が保有する知的財産は、今や国家の経済安全保障を支える重要なデジタル資産です。しかし、日本は海外クラウドへの依存度が高く、利用料が国外に流出する「デジタル赤字」が問題視されています。ソブリンクラウドの推進は、こうした機微な情報を国内で保護するだけでなく、国内のクラウド産業を育成し、経済的な競争力を強化する側面も持っています。
サイバー攻撃は金銭目的にとどまらず、国家が関与することもある高度な持続的脅威(APT)へと進化しています。こうした脅威に対抗するためには、より強固なセキュリティ対策が不可欠です。ソブリンクラウドは、国内の厳格なセキュリティ基準に基づき、信頼性が検証されたサプライチェーンと国内人材による運用体制を構築することで、高度なサイバー攻撃に対する防御力を高めます。
海外の法律が日本企業に影響を及ぼすリスクも増大しています。代表的な例が米国の「CLOUD Act」です。これは、米国政府が米国のクラウド事業者に対し、データが国外にあってもその開示を要求できる法律です。逆に、EUの「GDPR(一般データ保護規則)」は、EU市民の個人データをEU域外へ移転することを厳しく制限しています。特にグローバルに事業を展開する企業は、これらのデータ開示を求められるリスクと、データ移転を制限されるリスクという、相反する海外法規制の圧力を同時に受ける状況に置かれています。
生成AIの発展に伴い、「AI主権」という新しい概念が登場しました。AIの学習には、企業のノウハウや個人情報など、機密性の高いデータが大量に利用されるケースも少なくありません。そのため、そのデータをどこで管理し、誰が制御するのかというAI主権の観点からも、ソブリンクラウドの重要性が増加しています。
ソブリンクラウドの導入にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください

ソブリンクラウドの本質は、「データ」「システム」「運用」「技術」という4つの側面における主権を確保することにあります。ここでは、それぞれの主権が何を意味し、なぜ重要なのかを解説します。
データ主権とは、データが物理的に国内に保管され(データレジデンシー)、その国の法律に基づいて管理・保護されることです。データが国内に保管されている場合でも、クラウド事業者が海外企業であれば、その国の法律の影響を受ける可能性があります。データ主権が確保されていれば、自国の法的管轄のもとでデータを管理できるため、外国政府によるデータ開示要求(例: CLOUD Act)のリスクを回避し、国内のデータ保護法(個人情報保護法など)への準拠を確実にできます。
システム主権とは、ITシステムに関する設計・運用・管理の制御権を自国・自社側で保持し、海外企業のサービスに過度に依存しない状態を指します。セキュリティ面のリスクや、海外ベンダーの方針変更によってシステムの利用条件が一方的に左右されるリスクを抑え、経済安全保障・事業継続性を確保します。
運用主権とは、クラウドの日常的な運用・保守・障害対応が、国内の信頼された人員・組織によって実施されていることを表します。外部からの不正な介入や運用リスクを防ぎ、機密情報へのアクセスを厳格に制御するとともに、障害発生時も国内で迅速な対応が可能になります。
技術主権とは、クラウド、OS、ミドルウェア、AI などの基盤技術について、海外ベンダーに過度に依存せず、自国の技術と人材で開発・維持できる状態のことです。他国のライセンス制約や技術制約に左右されず、中長期的に自律したIT基盤を確保することで、国内での技術革新や知的財産の蓄積、経済安全保障の優位性を加速します。
これらの4つの主権をどのレベルで満たしているかが、真のソブリンクラウドを見極める上で重要な判断基準となります。

ソブリンクラウドの独自性をより深く理解するために、他のクラウド形態と比較してみましょう。ポイントは、そもそもの利用目的が異なることです。それぞれの特性に応じて、目的を満たすクラウドが選ばれます。
| ソブリンクラウド | パブリッククラウド | プライベートクラウド | ガバメントクラウド | |
|---|---|---|---|---|
| 主な目的 | 国家・企業の主権確保、経済安全保障 | 利便性、俊敏性、スケーラビリティ | 高度なセキュリティ、カスタマイズ性 | 政府業務の効率化・標準化 |
| 想定利用者 | 政府、重要インフラ、機密情報を扱う企業 | 一般企業・Webサービス全般 | 金融・医療・基幹系 | 中央省庁・自治体(政府機関) |
| データ所在地 | 国内限定(法的管轄権を重視) | 選択可能だが法管轄権は事業者に依存 | 自社指定(自社データセンターなど) | 原則国内(例外あり) |
| 法的管轄・主権 | 自国法を前提に設計 | 事業者国の影響を受ける | 自社責任 | 日本法+政府要件(ISMAPなど) |
| 運用主体 | 国内の認定された人材に限定 | グローバル(国外からのアクセスあり) | 自社または委託した事業者 | 政府が認定した事業者 |
特に、政府が利用する「ガバメントクラウド」との違いは、多くの方が疑問に思う点です。ソブリンクラウドが主権をどこまで確保するかという統制の話であるのに対し、ガバメントクラウドは政府や自治体などの行政機関が行政システムを共同利用するために整備されたクラウド基盤であるという明確な違いがあります。両者は、ガバメントクラウドの中にソブリンクラウド的な要件を満たすサービスが含まれる場合があるという関係です。

データ主権への関心の高まりを受け、国内外の主要クラウドベンダーがソブリンクラウド、またはそれに準ずるサービスの提供を加速させています。ここでは、各国の具体的な取り組みをまとめました。
国内では、政府のガバメントクラウド推進と経済安全保障の観点から、国産クラウドベンダーを中心にソブリンクラウドの提供が活発化しています。
| 事業者名 | サービス名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 富士通 | FJcloud-V | 日本の法的管轄下での管理や国内主体の運用により、海外法の影響リスク低減を重視。ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)にも登録されている国産パブリッククラウド |
| さくらインターネット | さくらのクラウド | 北海道と東京にデータセンターを置き、データ・システム・運用・技術の4つの主権確保を掲げる。ガバメントクラウドの提供事業者にも選定されている |
| ソフトバンク | Cloud PF Type A | データ主権を備えたクラウドサービスとして提供。国内データセンターで運用され、地政学的リスクや海外法令の影響を低減する |
| SCSK | USiZE | 自社データセンター基盤を活用し、業務システムや機密データを扱う企業に向けた現実的なソブリンクラウド実装を提供。ISMS-CLS認証を取得しており、エンタープライズに必要十分なセキュリティと統制を実現している |

(出典)データ主権を担保したソブリンクラウド ユーサイズ│SCSK株式会社
SCSKが提供する「USiZE(ユーサイズ)」は、国内データセンターと国内運用体制を前提とし、データ主権・運用主権を確保したクラウドサービスです。
USiZEに重要データを配置してハイブリッド構成のハブとして利用することで、パブリッククラウドの利便性を活かしながらも、海外法規制や地政学リスクへの対応を考慮した環境を構築できます。
また、ネットワークやセキュリティサービスと組み合わせることで、企業の業務要件に応じた柔軟な構成が可能であり、金融・製造・公共分野など、機密性の高いデータを扱う企業においても現実的な選択肢となります。
USiZEに関する資料のほか、自社にどのレベルの主権が必要か判断に迷う場合は、まずはお気軽にご相談ください。
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データ保護意識が非常に高いEUでは、GDPRへの準拠を背景に、特にデータ主権を強く担保するアプローチが取られています。
| 事業者名 | サービス名 | 特徴 |
|---|---|---|
| OVHcloud (フランス) |
Hosted Private Cloud | EU法に準拠し、データセンターも運用もすべて欧州内で完結。EUのデータ主権を代表するクラウドプロバイダー |
| AWS | AWS European Sovereign Cloud | EUの厳格なデータ主権要件に対応するため、物理的にも論理的にも既存リージョンから独立したクラウドをドイツに新設。2026年1月14日から提供開始 (参考:AWS European Sovereign Cloud の開設 | Amazon Web Services ブログ) |
| Microsoft | Microsoft Cloud for Sovereignty | 既存のAzureリージョンを活用しつつ、データレジデンシーや暗号化キー管理などの機能を提供し、各国の主権要件に対応するソリューション |
アメリカでは、主に政府機関向けの厳格なセキュリティ要件を満たすクラウド(GovCloud)が先行して発展してきました。近年はその延長線上で、同盟国の規制要件に対応したソブリンクラウドを提供する動きも活発です。
| 事業者名 | サービス名 | 特徴 |
|---|---|---|
| Oracle | Oracle Cloud for Government/Oracle Sovereign Cloud Regions | GovCloudの実績をベースに、EUや同盟国の規制要件を満たすためのソブリンクラウドリージョンを展開。顧客が完全に制御できる分離された環境を提供 |
| Google Cloud | Sovereign Controls by Google Cloud | Google Cloud上で、データ所在地や管理アクセスを制御するための機能群を提供。パートナー企業と連携し、各国の法規制に対応 |

多くのベンダーがソブリンクラウドを提供し始めていますが、どれを選べばよいのでしょうか。そこに一律の正解はなく、自社がどの主権をどのレベルで求めるかによって最適解が変わります。ここでは、選定時に必ず確認すべき3つのポイントを整理します。
まず、自社がどのような法的要件や業界ガイドラインを遵守する必要があるのかを洗い出しましょう。
これらの要件をリスト化し、検討中のクラウドサービスがそれぞれに対応しているかをベンダーに確認することが、選定の第一歩となります。
「国内データセンター=ソブリンクラウド」という誤解には注意が必要です。ソブリンクラウドと謳われていても、4つの主権(データ・システム・運用・技術)をどのレベルで保証しているかは、サービスによって異なります。例えば、データセンターは国内にあっても、運用サポートは海外のチームが行っている場合、運用主権は完全とは言えません。自社がどの主権を最重要視するのかを定義し、各ベンダーのサービス内容を評価軸に沿って比較検討することが重要です。
一般的に、ソブリンクラウドは高度なセキュリティとコンプライアンス要件を満たすため、通常のパブリッククラウドよりも10〜30%程度コストが高くなる傾向があります。また、グローバルで展開される最新のAIサービスなどが、ソブリンクラウド環境で利用可能になるまでには時間差が生じる可能性もあります。絶対的な主権の確保と、コストや利用したいサービスの利便性との間で、どこに優先順位を置くのかを総合的に判断することが、現実的な選択につながります。
ソブリンクラウド選定で最も重要なのは、完璧な主権を目指すことではなく、自社にとって必要な主権レベルを見極めることです。

本記事では、ソブリンクラウドを多角的に解説しました。ソブリンクラウドとは、単にデータを国内に置くことではなく、「データ・システム・運用・技術」の主権をどこまで自社または自国側で保持するかという問題です。
クラウドの利便性が高まる一方で、海外法規制や地政学リスク、サイバー攻撃の高度化といったリスクが増大しています。こうした環境において重要なのは、自社に必要な要件を整理・評価し、コストや利便性などを総合的に判断したクラウド戦略を描くことです。その選択肢としてソブリンクラウドが非常に有効な選択肢となります。ソブリンクラウドは、もはや一部の政府機関や特定業界だけのものではありません。企業の競争力の源泉であるデータを、予期せぬリスクから守り、安全に活用していくための戦略的なITインフラです。
SCSKでは、パブリッククラウド・プライベートクラウド・オンプレミスなどのインフラ構築・運用をはじめ、クラウド接続サービスなどのネットワークおよびセキュリティ領域まで幅広く網羅したご提案が可能です。クラウド戦略の見直しやソブリンクラウドの導入にあたってお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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A. クラウド上のデータやシステムを自国の法律と管理体制のもとでコントロールし、デジタル主権を確保するためのクラウドです。
A. いいえ。データの保存場所だけでなく、どの国の法律が適用されるのか、誰が運用するのかなどを含めて管理されている必要があります。
A. CLOUD Actなどの海外法規制、地政学リスク、サイバー攻撃の高度化といったリスクから、企業のデータやシステムを守り、経済安全保障を確保するためです。
A. 「どこにデータがあるか」ではなく、「誰がどの法律のもとで管理しているか」にあります。