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必見!ファイルサーバをリプレースするときに読みたい
クラウドストレージを採用したSCSKの考えとは?


                                                                        netappcvo_article.jpg

企業で扱うデータ量が増えるにつれ、オンプレミス型ファイルサーバにはさまざまな課題が生じるようになりました。ディスク容量の慢性的な不足や、古いファイルの管理、サーバのパフォーマンス低下や、事業継続の実現(BCP:Business Continuity Plan)などです。
8,000人以上の従業員と、数多くのビジネスパートナーを擁するSCSKは2021年、オンプレミス型ファイルサーバからクラウドに移行しこれらの課題を解消させることに成功しました。 クラウドへ移行するメリットやクラウドサービスを選定するうえでのポイント、移行の注意点までSCSKが考えた事実をもとにすべてをご紹介します。

この記事を読んでわかること

  • オンプレミス型ファイルサーバにおける4つの課題と解決方法
  • オンラインストレージとクラウドストレージのメリット・デメリット
  • SCSKが提供するクラウドストレージ「NetApp Cloud Volumes ONTAP」導入とクラウドストレージへの移行支援による効果

オンプレミス型ファイルサーバにおける4つの課題

SCSKはオンプレミス型ファイルサーバに、主に4つの課題を抱えていました。

1.サーバのパフォーマンス低下
サーバを数年運用すればハードウェアの老朽化によるパフォーマンスの低下は避けられません。その他にもSCSKは歴史的に合併を繰り返し、企業規模の拡大とともにユーザ数が急増していた事情がありました。その結果、パフォーマンス低下によるファイルアクセスの遅延が常態化するようになっていました。主な要因はCPUやメモリなどのリソース不足、ディスクI/Oの劣化などでした。

2.ディスク容量の慢性的な不足
動画や画像などのリッチコンテンツを扱う機会が増えたことや、セキュリティ強化を目的に業務端末にはデータを保管させず、ファイルサーバに保管することを徹底させた結果、ファイルサーバに保管されるデータは毎年30%ほど増え続けていました。2018年には、遂にファイルサーバ全体の総容量は160TBにまで肥大化していました。

3.ハードウェアの販売とサポートの終了
運用開始から5年近く経過する頃には、近い将来迎えるハードウェアの販売とサポートの終了にともない、ディスク追加ができなくなることが懸念される状況でした。

4.事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)と災害復旧(DR:Disaster Recovery)への対応
SCSKでは広域災害などで被災した際に業務全体を停止させないための議論はあらゆるシステムに対して行われています。強固なデータセンターに設置しバックアップ運用しているとはいえ、従来のオンプレミス型が最適かはファイルサーバのリプレース時にはいつも議論されていました。

図1 SCSKのオンプレミス型ファイルサーバ運用図(移行前)【主な利用方法】 格納データ:社内業務ドキュメント / データ容量:約160TB / データ伸び率:年間約130% / 接続方法:社内PC Windows/最大利用者数10000人 / 可用性:HWの冗長化(HA構成) / 操作性:Windowsファイル共有(CIFSアクセス) / バックアップ:ストレージミラーによる即時取得・スナップショットによる7世代日次保管(ユーザによるリストア可) / 監査ログ:全てのファイル監査ログを2年間保管 / ABE:アクセス権のないフォルダを非表示

図1 SCSKのオンプレミス型ファイルサーバ運用図(移行前)

オンプレミスへのリプレースとクラウド移行のメリット・デメリット

オンプレミスへのリプレースと、クラウドへの移行とでは、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。SCSKでは既存のオンプレミス型ファイルサーバをリプレースするにあたり、以下の比較を行いました。

オンプレミス → オンプレミス オンプレミス → クラウド
メリット
  • 移行がシンプルで負担が少ない
  • 使い勝手が変わらない
  • 費用変動が予測しやすい
  • 機密データを社内に保管できる
デメリット
  • データ量が大きいほど移行の負担が大きい
  • 使い勝手が変わる
  • 費用変動が予測しにくい(ユーザ数の増加による費用の増大など)
  • データが国外で保管される場合がある
デメリット
  • ハードウェアの運用が必要
  • リソースの拡張に手間と時間がかかる
  • ハードウェアの販売とサポートの終了を意識したリプレース計画が必要
メリット
  • ハードウェアの運用が不要
  • オンデマンドでのリソース拡張が可能
  • ハードウェアの販売とサポートの終了を意識せずに済む

表1 オンプレミスとクラウド移行のメリット・デメリット

どちらが良いとは一概に言えないことはもちろんですが、ユーザ数が多くまた変化も激しいSCSKにとっては、クラウドへ移行することが最適であると判断しました。移行の負担が少ないことや、従来通りの運用が可能なオンプレミスへのリプレースよりも、拡張性や運用上の課題を解消できることの方が享受するメリットが大きいと判断したためです。

オンラインストレージとクラウドストレージのメリット・デメリット

クラウドに移行する場合、利用できるストレージサービスは主に2つあります。BoxやDropBox、SharePoint Online、Google Driveなどを代表とするオンラインストレージと、NetApp Cloud Volumes ONTAP(以降、NetApp CVO)やAmazon FSxなどを代表とするクラウドストレージサービスです。それぞれについてSCSKでは以下の比較を行いました。

オンラインストレージ クラウドストレージ
メリット
  • すべてのデータが自由に扱える
デメリット
  • データを効率的に管理できる便利機能により、逆に古いデータは自由に扱えない
デメリット
  • 古いデータも新しいデータも同様の料金がかかる
  • ユーザ数が増えると比例して費用が上がる
メリット
  • 古いデータの管理には安い料金体系が用意されており、費用を抑えることができる
  • ユーザ数以外の要件で費用が決定するため、ユーザ数の増加に比例しない

表2 オンラインストレージとクラウドストレージのメリット・デメリット

どちらも一長一短があるものの、ユーザ数増減の見通しやコスト、ユーザの利便性などを見極めることが選定する上での重要なポイントです。SCSKは、ユーザ数とデータ量が非常に多かったため、ユーザ数の増加と比例してコストが増大するオンラインストレージではなく、クラウドストレージを選択しました。

代表的なクラウドストレージサービスの比較

クラウドストレージにはいくつかのサービスが存在します。その代表的なものが、クラウドベースのデータ管理サービス「NetApp CVO」と、フルマネージド型のファイルストレージサービス「Amazon FSx」です。SCSKは比較検討の際に、自社が求めるシステム要件に対するそれぞれの充足状況を整理しました。

システム要件 Amazon FSx NetApp CVO
AD連携 可能 可能
バックアップ及びユーザ自身でのファイルリストア 可能 可能
監査ログの取得
  • ファイルシステム変更に関するログの取得が可能
  • ファイルオブジェクトに関する操作ログの取得は不可
  • Alog ConVerter for NetAppと連携することで可能
  • 有事の際は、グラフィカルにユーザ操作のトレースが可能
容量利用上限の設定 可能 NetAppの標準機能で可能
ランサムウェア対策 × 未実装 FPolicy機能で実現可能
アクセス権を持つファイルとフォルダだけをユーザ表示 管理端末よりPowerShellで設定可能
※FSxノード単位で設定の実施が必要
NetAppの標準機能で可能
異なるデータセンター間でのデータ冗長化 マルチAZ(Availability Zone)構成のサポート
  • マルチAZ構成(HA構成)のサポート
  • DR構成(SnapMirror)のサポート
ストレージコスト削減機能 重複排除機能を実装
  • 重複排除機能を実装
  • ストレージ階層化機能を実装

表3 Amazon FSxとNetApp CVOを比較(2019年10月時点)

整理の結果はほぼ同等でした。SCSKにとってはランサムウェア対策に有効なスクリーニング機能や、古いデータの保管コストを低減させることができる「ストレージ階層化機能」が実装されていることが大きな決め手となり、NetApp CVOの導入を決定しました。

SCSKが実感するクラウドストレージ「NetApp Cloud Volumes ONTAP」導入効果

SCSKはNetApp CVOを活用し、約1万名のユーザが利用するファイルサーバをアマゾンウェブサービス(AWS)上に構築、2021年2月にほぼすべてのデータ移行を完了させました。NetApp CVOを導入し実感した効果はたくさんありますが、主に6つをご紹介します。

図2 SCSKの新ファイルサーバ構成図

図2 SCSKの新ファイルサーバ構成図

1.パフォーマンス低下の解消
クラウドのリソース配分を最適化することで、レイテンシーを平均10%以下に低減することができました。その結果、ファイルアクセスに関するユーザからの不満の声はなくなりました。
クラウドの良い点は、ハードウェアの増強にとらわれることなくリソースをオンデマンドに増減できることです。たとえば、当初の想定よりパフォーマンス不足に陥ったとしても、クラウドならオンデマンドで即時に設定し、増強することができるのです。

2.ディスク容量不足の解消
NetApp CVOの重複排除機能によって20%削減を実現することに成功しました。SCSKではリプレース前、移行対象のデータを削減することを目的としてファイルサーバ統合管理ソリューション「NIAS」を導入し、160TBにまで増大したデータを120TBまで削減していました。その上で、NetApp CVOを活用して重複排除をした結果、さらに削減することができ、現在は100TB程度です。

3.ハードウェアの販売・サポート期間の制限からの脱却
クラウドストレージを選択したことで完全に解消しました。

4.BCPとDRへの対応
NetAppの強力な武器のひとつであるデータレプリケーションソフトウェア「SnapMirror」を活用することで、今後、非常に簡易にDRサイトへのコピーが実現できます。

5.古いデータ管理の飛躍的な向上
SCSKがNetApp CVOを利用して最も効果を感じているのがストレージ階層化機能です。この機能は、普段使っていないファイルを抽出し、それらを課金料金が高額なブロックストレージ「Amazon Elastic Block Store(EBS)」から、比較的安価なオブジェクトストレージ「Amazon Simple Storage Service(S3)」に「自動的に」移動させることができます。これにより大幅なコスト削減が実現できました。

SCSKではこれまで運用していた2つのファイルサーバのうち、事務系ファイルサーバのデータをAWSに移しNetApp CVOで階層化処理したところ、全体のおよそ9割のデータを安価なAmazon S3領域に移動させることができました。また、プロジェクト系ファイルサーバも同じく階層化したところ、こちらも全体の実に9割以上が普段使われることのないデータだったことが分かりました。階層化機能で大幅なコスト削減を実現したことは、本プロジェクト最大の効果のひとつといえます。

6.大容量データをクラウドに移行する不安への対処
SCSKはクラウドストレージのAPIと連携してリアルタイムスキャン&コピーを実施可能な「PeerSync」を活用しデータ移行しました。綿密に移行手順を練り上げ、入念にリハーサルも行いながら、高速データ転送を行うことで、大規模なデータ移行をスケジュール通りに完了させることができました。

「NetApp Cloud Volumes ONTAP」の概要

SCSKが採用したNetApp CVOは、NetAppの独自OSであるONTAPを搭載したクラウドストレージです。オンプレミス型製品(NetApp FAS / NetApp AFF)と同等の機能を提供し、NFS、CIFS、iSCSIに対応しています。クラウド上でVMインスタンスとして動作し、HA構成にも対応しています。標準ストレージよりも高いコスト効率でハイブリッド/マルチクラウドによるデータモビリティを実現します。

図3 NetApp CVOの概要

図3 NetApp CVOの概要

また、重複排除や圧縮、データ階層化といったストレージ効率化機能により、ネイティブストレージと比較して3倍以上のストレージ効率が期待できます。

図4 ストレージ効率化機能によるコスト最適化のイメージ

図4 ストレージ効率化機能によるコスト最適化のイメージ

クラウドストレージへの移行支援

SCSKでは、今回のNetApp CVOを活用した自社ファイルサーバ移行プロジェクトで得た経験とノウハウをみなさまと共有し、お役立ていただきたいと考えています。SCSKはNetApp製品を長年取り扱っている知識だけでなく、AWSのプロバイダーも行っており、豊富な知見を持つスペシャリストが多数在籍している点に強みを持っています。また、オンプレミス型ファイルサーバからクラウドへの移行は、ネットワーク設計の最適化や安全なデータ移行といったさまざまな点を網羅した設計・構築のノウハウが必要です。オンプレミス型ファイルサーバからクラウドへの移行に不安を感じているお客様はぜひご相談、お問い合わせください。

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