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担当者に聞く~ 専用の解析シミュレーションツールで電気めっきにまつわる課題を一度に解決!


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昨今のモノづくりのプロセスにおいて、各生産工程でCAE(Computer Aided Engineering)が盛んに活用されています。しかし、自動車、建設機械、農業機械、各種電気製品、などで広く使用されている電気めっきについて、専用のプロセスシミュレーション製品がほぼ見当たらないのが現状でした。
そのため、作業の大半がベテランエンジニアのノウハウや経験に依存しており、人手不足の解消や技術継承の実現という点からみても、早急な対策が求められています。

そのような中、SCSKは2019年1月にベルギーのElsyca(エルシカ)社の電気めっき解析シミュレーションツール「Elsyca Plating Manager(以下、「Elsyca PMgr」)」の国内提供を開始しました。今回は、電気めっきにおける課題、SCSKが「Elsyca PMgr」を選んだ理由、他のプロセスシミュレーション製品との違い、実際に業務改善や生産性向上にどれほど役立つのかについて、SCSKの担当者に話を聞きました。

デザインの複雑化が進み、めっき膜厚のばらつきが課題に

近年、自動車や電気製品、通信デバイス、インテリアなど、さまざまな製品の開発において、デザイン性が重視されるようになっています。また、高級感や質感を演出する加飾の一つとして、プラスチックへめっきを施した製品も増えてきました。

「デザイン性が重視されることに伴い、製品の形状も複雑化しています。こうなると、めっきの工程がとても難しくなってしまうのです。」(プラットフォームソリューション事業部門 製造エンジニアリング事業本部 解析ソリューション第一部 シニアエンジニア 石田 (以下、石田))

電気めっきには部品の窪んだ部分に電気が流れにくく、エッジなど尖った部分に電気が集中するといった特性があるため、同じ電圧を掛けてめっきを行うと、膜厚にばらつきが生じてしまいます。

「そこで、めっきが付きにくい窪み部の膜厚を優先して電圧を上げるのですが、今度は別の場所に電圧が掛かり過ぎて焼け(burn)が発生してしまうこともあります。これらの対策として、補助陰極を付けたり、逆に遮蔽版を追加する方法がありますが、最適な状態を見つけ出すには何度も試作を繰り返す必要があります。そのぶん、余計な時間とコストが掛かってしまうという課題がありました」(石田)

これまでこうした作業はベテランエンジニアのノウハウと経験に依存してきました。しかし、近年ではエンジニアの高齢化を背景に技術の継承が求められていますが、人手も不足しており、早急な対策が求められているのです。

「また、製造業の競争の激化により、“速く、安く作る”ことも重要になっています。以前から、他の解析ツールを使用しているお客様から『電気めっきのシミュレーションソフトは取り扱ってないのですか?』と問い合わせを度々いただいていました」(石田)




SCSK株式会社
プラットフォームソリューション事業部門
製造エンジニアリング事業本部
解析ソリューション第一部 第三課
シニアエンジニア 石田 俊介

欧州で電気めっき専用のプロセス解析シミュレーションツールと出会う

SCSKでは、日本のモノづくりに活用できそうな新たな製品やソリューションを世界中から探しています。2017年、新たな製品を発掘すべくヨーロッパに出張していたSCSK 村上が、ドイツのフラウンホーファー研究機構※を訪問した際、電気めっきに関連する資料を目にしました。

※フラウンホーファー研究機構は欧州最大の応用研究機関であり、CAEソリューションを含む数多くの製品に関わる研究開発を行っています。SCSKが提供している「IPS Cable Simulation」 「GeoDict」 「MpCCI」といったCAEソリューションも、このフラウンホーファー研究機構の研究結果を元に開発された製品です。SCSKは、このフラウンホーファーを含むいくつかの研究機構を定期的に訪問し欧米の最新動向をキャッチアップする取り組みを行っています。

「SCSKでは数多くの解析シミュレーションツールを提供しており、国内の解析ツールも探していましたが、電気めっきに特化したツールはそれまで目にしたことがありませんでした。そこでさっそく資料に記載されていた会社へコンタクトを取りました」(プラットフォームソリューション事業部門 製造エンジニアリング事業本部 解析ソリューション第一部 第一課長 村上(以下、村上))

村上が目を付けた会社は、電気化学に基づくシミュレーションプラットフォームとコンサルティングサービスを提供するベルギーのElsyca社でした。同社はフォン・カルマン研究所とブリュッセル自由大学(VUB)のスピンオフにより設立された会社で、その主力製品は電気めっきのプロセス解析を行うシミュレーションツールです。

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Elsyca社の解析シミュレーションツールは、欧州や米国、中国ですでに100社以上への導入実績があり、自動車、航空機、厨房機器、貴金属、高級文具などのメーカー、サプライヤーに利用されていました。
ただし、この時点では日本での取り扱いはなかったため、SCSKは国内でマーケティング調査を実施することにしました。

「国内の製造業に紹介したところ、『めっき専用の解析ソフトウェアがあるなんて知らなかった』『ぜひ検討したい』といった反応が多く、国内製造業でのニーズが高いことがわかりました」(村上)

SCSKは同社と販売代理店契約を締結。2019年1月より国内での提供を開始しました。




SCSK株式会社
プラットフォームソリューション事業部門
製造エンジニアリング事業本部
解析ソリューション第一部
第一課長 村上 敦

電気めっきに特化しているため、カスタマイズなしですぐに適応できる

Elsyca社の解析シミュレーションツール「Elsyca PMgr」の最大の特長は、汎用的なシミュレーションツールと異なり、電気めっきに特化していることです。そのため、業務に合わせてカスタマイズを行う必要がなく、そのまま電気めっきの工程検討業務に適応することができます。

「現場担当者がすぐに使用でき、いち早く業務改善に役立てることができます。例えば、製品を量産化する際にはめっき槽に大量のパーツを漬け込んで処理を行いますが、『Elsyca PMgr』でシミュレーションすれば、電極の配置やバランスを容易に可視化できます。これにより、どのように電極を配置すれば、めっきを均一化できるか前もってわかるため、歩留まりを大幅に改善可能になります。これは生産技術を担当されている方にとって、大きなメリットになるはずです」(村上)

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2つの導入事例~大幅なコスト削減や生産の効率化に貢献

それでは実際の事例をもとに、「Elsyca PMgr」の効果についてご紹介しましょう。

①航空部品:非常に厳格な品質要求をクリア

航空部品メーカーA社では、航空産業で求められるNadcap認証などの非常に高レベルの品質マネジメントや製造プロセスに対応するため、「Elsyca PMgr」を導入。
「Elsyca PMgr」のシミュレーション解析により、カドミウムめっきのムラが発生する部分に補助陽極を追加したり、膜厚が増加する部分には遮蔽版を追加するなど専用設備の検討を事前に行うことで、確実にスペックを満たすことができるようになりました。

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②自動車内装部品:製造リードタイムを短縮し、生産性を向上

自動車部品メーカーB社では、かつてハンドルに組み込むパーツのクロムめっきがうまく処理できず、納品に遅れが生じたことがありました。結果、ハンドルを生産にも影響がでてしまうなど、1パーツの製造がサプライチェーン全体に悪影響をもたらしてしまったのです。
こうした事態を防ぐため、B社は「Elsyca PMgr」を導入。

具体的に「Elsyca PMgr」で検討した項目は、次の5つです。
・クロムメッキの膜厚
・めっきプロセスの最適化
・ラックの設計
・ラック上の部品数/配置の最適化
・補助陽極の設計

デザインを重視するため、部品の形状変更は一切許されないといった厳しい条件の中、5~6週間といった非常に短い時間で最適なめっきプロセスの検討を実現しました。今ではスケジュールに遅れが出ることがなくなり、生産の効率化も実現しています。

このほかにも、めっき時間が25~80%短縮された例や、手直しの工数が軽減された例、部品加工において生産能力を80%向上させた例があります。

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企業規模問わず、電気めっきの効率化、品質の向上を目指す企業におすすめ

「『Elsyca PMgr』は、PCB(プリント基板)の銅めっきやアルマイト処理にも対応するオプションを用意しているため、多くの分野に適応することができます。また最近では、デザイン性や質感の向上などのため、PCやスマホ、電気製品などにおいて、プラスチック表面への電気めっき(POP)が増加していますが、こうした装飾めっきについても『Elsyca PMgr』を活用したシミュレーション解析によって、効率的な製造が実現できます」(石田)

なお「Elsyca PMgr」は、めっき設備の大きさによってライセンス価格を設定しているため、大企業だけでなく、中小企業でも十分に導入することが可能です。

「SCSKでは『Elsyca PMgr』についても、当社のエンジニアによる日本語でのサポートを提供するとともに、マニュアルの多くを日本語化しています。また、Webによるオンラインサポートサービスも提供しており、問題をいち早く解決することができます。ぜひ、安心して導入をご検討いただければと思います」(石田)

SCSKではお客様のニーズをしっかりとヒアリングし、Elsyca社にフィードバックを行い、解析シミュレーションツールの向上に役立てていきます。


SCSKのElsyca担当チーム

左から製造エンジニアリング事業本部 解析ソリューション第一部 シニアエンジニア 石田 俊介、部長 樋口 康一、第一課長 村上 敦

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