SCSK Column 03

atWillコラム
製造おっちゃんのつぶやき
『現場にこそ真実がある!?』

atWillコラム 製造おっちゃんのつぶやき『みなさん、ご安全に!』


「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」

少し古いですが、映画『踊る大捜査線(1998年)』で、織田裕二さんが扮する青島刑事が会議室の警察幹部に向かって叫んだ有名なセリフです。映画のヒットと共に流行語にもなったこのセリフですが、現場主義の大切さを訴えるメッセージ性に多くの人々が共感し、胸を熱くされたかと思います。

第3回目のコラムでは、そんな現場感について“三現主義の観点”から、私が経験したエピソードを交えお伝えいたします。

1. 三現主義とは?

『三現主義』とは、3つの“現”を大事にする考え方で、 “現場” “現物” “現実”の3つの“現”を表しています。机上の空論ではなく、実際に“現場”に足を運び、“現物”を観察して、自分の目で“現実”を見て確認する問題解決の大事なプロセスです。

製造現場に携わることが多かった私は、この三現主義の考え方の重要性を理解し、常に意識していたのですが、現場から離れた立場では、私含め現場の見方の違いに戸惑うことがありました。

三現主義を推奨する裏では、現場を見ずして経験や勘、思い込みによる対応が、結果として間違った判断に繋がるといった警告が含まれています。

この重要性を理解する一方で、「本当に現場目線だけで解決するものなのか?」。そんな戸惑いや疑問を持ちながら、これからご紹介する2つのエピソードを通して、私なりの三現主義を考えるようになりました。

2. 社員食堂での三現主義 ~エピソードその1~

以前、私が担当した製造業のお客様の社員食堂でこんなエピソードがありました。

その社員食堂では、常々味に対しての不満が出ており、改善策を検討されていました。改善策を探るべく、社員から直接ヒアリングしたり、詳細なアンケートを取得していたりしたそうですが、どうも傾向がつかめず対策をたてることができませんでした。

そこで、食堂の管理者は 社員食堂に足を運び(“現場”)、利用する社員を観察し(“現物”)、自身も食事をして実態を把握する(“現実”)、という行動を継続し始めました。そんなある日、ふと、ポリバケツの残飯に目が留まったそうです。

社員が残した日々の残飯の内容や量の観察と食堂担当者との会話から、仮説が立ちはじめました。その仮説を元に、好まれる嗜好や量を調査し、栄養士さんとメニューを改善する等の試行錯誤によって、残飯の量が減り、社員食堂への満足度が徐々に改善したそうです。

2. 社員食堂での三現主義 ~エピソードその1~

3. 現場システムのエラーメッセージ ~エピソードその2~

ある製造工場のMES(製造実行システム)の再構築を担当していた時、現場長より、「今度のシステムでは、画面に表示されるエラーメッセージを作業者“誰にでもわかる文言”にしてくれ」と要望されたことがありました。はじめは、どういうことを意図しての依頼なのか、腹落ちしていなかったのですが、現場見学で今の画面を見させてもらったことで理解しました。

確かに、単純なエラーメッセージを表示するだけでは、何がどう異常なのか、作業者はどうアクションしてよいかわからない状況ということに気がつきました。まさに、“現場”で“現物”をみて“現実”を知った瞬間でした。

新システムでは約1000件の“エラーメッセージ”出力箇所があり、相当な時間をかけて、全てのメッセージを「誰にでもわかる文言」に見直しました。その結果、新システムの稼働後は、一度もお客様から“エラーメッセージ”への問い合わせはありませんでした。

システム開発を行う上では、一見当たり前の確認作業ですが、これが結構できていないのです。オフィスで記載された要件書や設計書だけをみていただけでは、また同じようなわからない表示をしていたかもしれないと思ったのでした。

この経験以降、「誰にでもわかる文言」は、私にとってのシステム開発では鉄則となりました。

4.さいごに、「真実は現場にあります!」

これらの2つのエピソードから、三現主義は、起きた事象に関する情報を徹底して集め、その中から意味のある情報を捉える見方がとても重要なファクターであることに気が付きました。

問題は確かに現場にあり、三現主義の考えに基づいて課題へのプロセスを導くことが必要です。しかし、それだけでは不十分で、集めた情報の中から意味ある情報(真実)を見つけ出し、何が必要とされているのかを客観的且つ、俯瞰的に見て、解決策まで考案する事までが、三現主義の本質なのではないかと思います。

冒頭にご紹介した、青島刑事が会議室の警察幹部に向かって叫んだセリフ、これは、現場と本社(事務所)が同じ目的に対し、お互いの立場や目線で改善することの重要性を、多くの組織人が必要としているメッセージだったからこそ、記憶に残る名セリフとになったのではないかと思います。

つづく…。