SCSK Column 02

atWillコラム
製造おっちゃんのつぶやき
『製造業での“うまい” “安い” “早い” !?』

atWillコラム 製造おっちゃんのつぶやき『みなさん、ご安全に!』


皆さん、「 “うまい” “安い” “早い”」という言葉は、有名な牛丼屋さんのキャッチフレーズで聞き馴染みあるかと思います。

第2回目のコラムは、製造業でDXを推進していくために意識しておきたい考え方を、製造業でのうまい(Q)・安い(C)・早い(D)の観点で、ご紹介をしたいと思います。

1. QCDのバランス

Q(品質)を良くしようとすると、C(費用)とD(納期)が悪くなる、C(費用)を良くしようとすれば・・・というように、どこかを良くしようとすれば、どこかが悪くなる、といった「QCD」にはバランスがあります。

『現場では“品質”を確保して、“納期”を短縮すれば、“儲け”は後からついてくる。
“儲け”を追えば、“品質”も“納期”も逃げていく。』

私はこの言葉を、新入社員で初めて担当した品質保証部のお客様から教えていただきました。

この教えもあり、私が考えるモノづくりにおいて、、

品質が最優先されるべき事項で、次に納期、最後が費用と、今まで意識してきました。

ところが、DXが注目され始めてから、疑問がわくようになりました。

  

「製造業でDXを推進するには、今まで通りの「QCD」を推進しているだけで良いのか?」

少し乱暴な表現をすると、この「QCD」という言葉は製造現場目線の考え方だけで、顧客目線として何かが足りていないように感じはじめたのです。

QCDのバランス

2. 「QCD」それぞれの考え

昔の話になりますが、私が海外工場の新システムのプロジェクトリーダーとして、海外法人の工場現場を行き来していた頃、現地の担当者の方と「QCD」に関するディスカッションで、私がこれまでもっていた考え方との違いを知り、そこから得た発見がありました。

企業の競争力において、「QCD」は重要な要素であることは一致したのですが、Good/No GoodのFactorは顧客に依存するものであり、企業としての社内基準にはあまり意味を見いだしてない、つまり「選ばれる製品は、顧客の価値基準によって評価されたものである。」ということでした。

コストにおいては、利益確保を目的としたコスト削減であると明言し、付加価値を高めるために改善できるポイントを積極的に探し、なければ商品自体の販売を中止するという潔よさが必要ということ。また、納期については「短い方が良い」というよりも「納期はないのが当然」とした在庫の在り方・考え方、について知りました。

つまり、企業は消費者が本当は何を求めているのかという「消費の本質」を考えることであり、自社の一方的な都合で品質・価格・納期の基準を決めるものではないということ。全ては「消費の本質」に基づいて決められるべきではないか、と考えるきっかけになりました。

3. 製造業での「うまい(Q)・安い(C)・早い(D)」は“製造現場視点” + “顧客視点”

とあるセミナーに参加した際、大手製造メーカの工場長の方が、『お客様は、「より良いモノを」 「より安く」 「少しでも早く」 欲しい!』と説明をされていました。

また、別のDXセミナーで機械メーカの方が、顧客が、「望む価値を」 「最適な価格で」 「望むタイミングで」 提供する。ということを説明されていました。

いずれも「消費の本質」に基づいた考え方と一致しており、まさに、“製造現場視点” + “顧客視点” を言われていると納得したのでした。

正直なところ、Qは内部での品質基準、Cは製品を造るのにいくらかかったか、Dは製品を造るのに何日かかるかを表しており、これらはいずれも、内部(製造現場視点)の管理指標であり、直接的には顧客に関係がありません。

顧客視点では、体感的に“良いと感じ満足できるか”・“不良と感じ・不満であるか”(Value)、 売り値は、“安いと感じるか・高いと感じるか”( Price )、商品は、“いつ製品が届くのか”(Speed)が問題であり、

この 『VPS』 視点が重要であると考えるようになりました。

4.さいごに、製造業での「 “うまい” “安い” “早い”」とは

冒頭ご紹介した有名牛丼屋さんのキャッチフレーズ「 “うまい” “安い” “早い”」

創業した当初は、「“うまい”」 「“早い”」だけで「“安い”」がなかったようです。これは、1号店にあたる築地のマーケットでは、舌の肥えているお客さんが多く、しかも忙しい・・といった背景から、お客さんにとって、「“うまい”」 「 “早い”」が重要だったからのようです。

その後の変遷は、時代の変化により、優先する項目の順番が変わってきていて、現在は、「“うまい”」が競争力の生命線となっています。

単なる価格の競争なら、資本力と規模が武器になるが、資本力と規模をもってしても真似することはできないもの、それが「味(うまい=品質)」です。競争力の決め手となる商品の「品質」は、これからも最優先課題として考えられています。

振り返ると私が新入社員のころ教えていただいた言葉も、有名牛丼屋さんのキャッチフレーズと同じように、QCDだけでなく、VPSの要素も加わった言葉であったということを、改めて納得したのでした。

つづく…。