営業現場の対話に着目し、貴重なアセットとして共有化
組織全体でビジネス機会を的確に捉え、オフィスビル事業の
競争力強化を実現
Microsoft Dynamics 365
「オフィスビルの企画~運営管理までを“自前”で手掛けているからこそ、
お客さまとの直接の対話をもっと活かすことが会社の強みとなると考えました」
ビル事業本部 ビル営業部 部長代理
鎌田 剛 氏
総合デベロッパーとして知られる住友不動産の屋台骨を支えているのは、オフィスビル事業だ。東京地区に注力しており、大きなターミナル駅はもちろん、再開発などでオフィスニーズがあるエリアへ積極的に展開。運営するビルは交通利便性の高い東京都心7区を中心に220棟超、総延床面積は約120万坪にものぼる。
「営業部員は、他ビルのテナントとして入っている企業様の現賃貸借契約の更新時期といった情報なども踏まえ営業活動を展開しています」と、ビル事業本部・企画管理部の出口 健敬氏は語る。
お客さまとの商談内容は、自社で独自に開発した業務日報システムに日々入力していた。
「業務日報システムには60万件超の商談データが蓄積されていますが、知りたい情報を柔軟に抽出・加工できる機能が備えられておらず、二次利用するためには手間と労力がかなりかかっていました。担当営業以外はデータベースにどういう情報があるのか把握できていなかったのが実状です」と、ビル営業部・部長代理・鎌田 剛氏は話す。
たとえば、ある時期に契約更新が近い企業を分析しようとする際には、膨大な日報データから手探りで探さなければならないため、個々の営業部員がもつ手元情報を頼りに拾い上げてもらい、Excelなどに一件ずつ転記する必要があった。分析の時期や抽出条件が変われば、その度に情報を集めなければならない。同じ作業を何度もやっている、という営業部員と、全体像が掴めない管理側。これを改善して欲しいという声は以前から高まっていた。
また、開発ツールのサポート終了という問題もあった。
「業務日報システムは、Microsoft Visual Basic 6.0(VB6)で開発していました。この製品のサポートが終了することになり、最新OSでの動作保証がなくなる上、開発環境も提供されなくなることが分かりました」と財務部・情報システム課の源 哲幸氏。
そこで、これらの課題を解決するため、新しいCRM(顧客関係管理)システムの導入を検討することにした。
同社がいくつかのCRM製品を検討した結果、導入を決めたのはMicrosoft Dynamics 365(Dynamics 365)だ。
Dynamics 365は、CRM、SFA(営業支援システム)、CS(カスタマーサービス)をオールインワンで提供する総合型CRMソリューション。Microsoft製品との連携親和性も高く、ユーザにとっての操作性・カスタマイズの柔軟性が特に優れている。
とはいえ、Dynamics 365をそのまま導入するだけでは、同社のニーズを実現することができない。実際の業務に合うように細かくカスタマイズする必要があるのだ。そのカスタマイズを行ったのがSCSKだ。
SCSKは、日本語版発売以前より、Microsoft社およびユーザーと共同で、Microsoft Dynamics CRM(現Dynamics 365)の製品評価・検証などを実施してきた経験を持つ、日本でも有数のDynamics 365導入パートナーである。ルートセールス向けなど、複数の独自テンプレートを保有しており、高品質で生産性の高いソリューションを提供している。
「当社側の要件が定まっていなかったこともあり、SCSKの提案でアジャイル開発を用いました。SCSKとどんなシステムが必要なのかを共に考えながら、その都度、現場の要望を反映させていきました」(源氏)。最も注力した点は、「SCSKにやりたい業務を同じ目線で理解してもらうこと。そのための時間は少々要しましたが、その後は当社の要件をしっかりと汲み取って頂き、より良い機能のご提案を頂きながら、開発を進めることができました」(出口氏)。
住友不動産とSCSKは、打ち合わせや現場検証作業を重ね、自社にあったシステムを完成形に近づけていったという。
「尽力の甲斐があって、とても使いやすい形に仕上げることができました。Dynamics 365に蓄積したデータは簡単な操作でレポートを出力できるため、営業部員はそのレポートをもとに戦略を立て、営業活動を行えるようになりました」(鎌田氏)
前述の「ある時期に更新が近い企業様をリストアップする」ということもボタンひとつで実行でき、営業部員が手元で行っていた顧客情報の管理も不要となった。「Dynamics 365は、営業効率のみならず、お客さまに適切なタイミングにアプローチするという、営業品質の向上にも貢献しています」(出口氏)。
「管理側にもメリットがありました。これまでは業務日報にどんな情報を記載するかは営業部員任せでしたが、いまは状況を簡単に把握し、必要に応じて入力を促すこともできます。こうして、蓄積されるデータのマネジメントができるようになったのです」(鎌田氏)。
さらにDynamics 365にしたことで、システムの運用工数も削減された。
「基盤がクラウドなので、保守・運用をアウトソースすることができ、データのバックアップなども考える必要がなくなりました。常に安定したシステムを使えるのは、運用面での大きなメリットです」と源氏は言う。
「現場からは、商談時の提案資料なども共有したいという要望も出てきており、属人的だった営業スタイルが変わりつつあることを実感しています。営業活動に関するすべての情報を集めることができれば、Dynamics 365の価値はさらに高まるでしょう」(鎌田氏)。
「新規開拓の営業ではDynamics 365の活用は進み始めていますが、既存のテナント様に対する営業活動では、移転や賃料改定など重要イベントは記録されているものの、そこに至る経緯まで残しておこうという意識はまだまだ薄い。しかし既存の物件でもテナント様の入れ替えはあり、新規の物件ではなくともご要望に合えば選択頂く可能性はあるわけですから、日々の対話からすべてのお客さまのご要望を俯瞰し、当社が誇る220棟の物件の何をご提案すべきか考えられることを目指したい。そのためには新規、既存の枠組みを超えてお客さまの対話内容を一元化すべきだと思っています。その意義をどう浸透させていくのかがこれからの課題です」(出口氏)
Dynamics 365は、Microsoft Office 365との親和性が特徴であることはよく知られているが、使い慣れているOfficeアプリケーションの操作性でストレスなく使えるメリットはやはり大きい。「当社は紙文化が根強い会社なのですが、Excelベースのレポートを現場が自在に定義し、出力できることがこんなに素晴らしいこととは思いませんでした。それだけでもDynamics 365のメリットがあったと感じています」と鎌田氏は言う。同社の生産性の向上に寄与する基盤として一層活用されていくことになるだろう。
住友不動産様は、営業スタイルを変革するにあたり、業務のやり方を大きく見直しつつも、営業部員の方々が無理なく活用できることを目指し、あらゆる角度からあるべきシステムの姿を検討されていました。時には大幅な軌道修正を相談頂いたこともございましたが、住友不動産様が求めているものが何かを突き詰め、当社作成プロトタイプを検証頂きながら、ご要望を最大限叶えるべく実装機能を提案いたしました。アジャイル開発が初めてのお客様でしたが、当社の経験・ノウハウをうまく駆使し、Dynamics365の優位性をしっかりと活かした形で営業高度化に貢献するシステムを提供できたと考えております。
木村 真
所在地:東京都新宿区西新宿二丁目4番1号(新宿NSビル)
U R L:
http://www.sumitomo-rd.co.jp/
1949年に設立された住友不動産。「より良い社会資産を創造し、それを後世に残していく」ことを基本使命とし、ビルの開発・賃貸やマンション・戸建住宅の開発・分譲、宅地の造成・分譲など不動産に関わる幅広い業務を行っている。
2018年12月