一人ひとりに寄り添うダイレクト保険会社を目指し
“Fit to Standard”でCRM基盤「顧客接点ポータル」を構築
「お客さまのあらゆる情報を集約し、今まで以上に一人ひとりに寄り添った応対を
実現する仕組みづくりをSCSKとともに目指しました」
セゾン自動車火災保険 DX推進部 DX推進 課長代理
細井 茜美 氏
『おとなの自動車保険』を主力商品に自動車保険や火災保険など、SOMPOグループのダイレクト損害保険事業を担うセゾン自動車火災保険様。お客さまの抱える不安やリスクを解消する商品やサービスを、お客さまに合わせて提供できるよう、お客さまと会社の接点である、コールセンターやサービスセンター、Webサイトなど、デジタル技術とリアル接点を通して、きめ細やかにニーズを掴み、より良い商品やサービスへとつなげるべく取り組んでいる。
この取り組みを進めていく上でのネックとなっていたのが、多岐にわたる保険種目や業務ごとに縦割りで構築・運用されていたシステムである。
「お客さまからお問い合わせを受けた際に、各システムにアクセスして情報を確認する必要がありました。そのお客さまが他にどんな保険商品やサービスをご契約いただいているのか、瞬時に把握するのが難しい状態でした」と語るのは、同社 DX推進部 DX推進 課長代理の細井 茜美氏だ。
続けてコールセンターを統括している同社 お客さまサービス部 お客さまサービス企画の池谷 千亜紀氏も、「システムが複数に分散していることで操作の習得にも時間を要してしまい、新人コミュニケーターの育成や定着化の妨げにもなっていました」と語る。
そもそもシステムが乱立・分散してしまった背景には何があったのだろうか。
同社 システムサービス部 開発課長の岸 和浩氏は、「ダイレクト保険会社としての競争力を強化するため、スピード優先で新商品やサービスを拡充していく必要がありました。その結果として、保険商品や業務ごとにシステムが存在し、お客さま情報が分散する状態を招いてしまいました」と振り返る。
とはいえ、これ以上にシステムが乱立することは経営面でも大きな阻害要因となってしまうおそれがあり、「今のうちに手を打つ必要がありました」と岸氏は強調する。
そこでセゾン自動車火災保険が向かったのが、社内に分散する複数のシステムの横断的かつシームレスな利用を実現する「顧客接点ポータル」の構築である。
「過去の応対履歴やご契約情報、事故の情報など、社内にあるお客さまの情報を名寄せして集約し、今まで以上に一人ひとりのお客さまに寄り添った応対を実現するシステムを目指しました」(細井氏)
そして約4カ月にわたるPoCを実施した結果、顧客接点ポータルの基盤となる新たなCRMシステムとして、Salesforceの「Financial Services Cloud」の導入を決定した。金融・保険業界に特化したCRMシステムならではの業務カバー率の高さが決め手となった。
ただしFinancial Services Cloudを実業務に適用していくためには、多くの壁を乗り越えなければならない。そこで同社がプロジェクトを共に推進していくパートナーに選定したのがSCSKである。
「これまでもSCSKにはさまざまなシステム構築を依頼してきた経緯があり、弊社の業務内容や顧客接点ポータルが必要となった背景も熟知しています。またSalesforceに関して、独自の開発基準に基づき効率的・高品質なシステム構築を手がけてきた豊富な実績にも大きな安心感がありました。数社の提案を比較検討しましたが、私たちの要求に対して最も腹落ちできる解決策を示してくれたのがSCSKでした」(岸氏)
こうして2022年4月から本格化した顧客接点ポータルの構築における最大のチャレンジとなったのが、Financial Services Cloudの標準機能に合わせた形で業務プロセスを置き換える、いわゆる“Fit to Standard”のアプローチである。
「今後のアップデート対応を含めたSaaSのメリットを最大限に享受するためにも、基本的にカスタマイズやアドオン開発は行わない方針でしたが、実際に業務をシステムにフィットさせていくという考え方で進めるのはなかなか調整が難しい部分でもありました」(細井氏)
そうした中で大きな役割を果たしたのが、SCSKから提示されたポータル画面のプロトタイプである。
「お客さまと応対するコミュニケーターをはじめとする担当者に、自分たちの業務がどう変わるのかイメージを掴んでもらうことが大事です。そこでエンドユーザーを集めたワークショップを7、8回にわたって開催してきたのですが、ポータル画面のプロトタイプを実際に目で見て操作しながら、皆で意見を出し合うなど前向きな議論ができた効果はとても大きかったです」(池谷氏)
これを経て完成したのが、2分割された画面上でタブを切り替えながら、顧客に関するあらゆる情報に一元的にアクセスできるポータル画面である。
「従来は各システムにアクセスした後、画面を長々とスクロールしなければ必要な情報にたどり着けないことがありました。新たなポータル画面ではそうした不便を解消するとともに、お客さまにご案内しなければならない情報を見落としてしまうといったケアレスミスも激減させています」(池谷氏)
もっとも新たなUI/UXを整備するだけで顧客接点ポータルが実現するわけではない。電話やメール、チャット、LINEなど多様なチャネルを通じて問い合わせてくる顧客の応対、社内に分散する様々なシステムとETLツールを使ったリアルタイムのデータ連携など、システム構築の水面下ではインテグレーションの技術面でも多くの困難が伴う。そこでもSCSKは大きな貢献を果たしたという。
同社 システムサービス部 開発CRMチームの古川 美紀氏は、「私個人として最も苦労したのはシステム間連携のテストですが、SCSKはテストパターンの作成から上手くいかなかった際の回避策や代替案の提示まで、全面的に相談に乗ってくれました。またテストは深夜に及ぶこともありましたが付き合っていただき、おかげでスケジュールを遅滞させることなく顧客接点ポータルを無事に完成させることができました」と、今回のプロジェクトの成功要因を示す。
こうして2022年11月に運用を開始した顧客接点ポータルは、同社の業務に大きな変革をもたらしている。
「例えばCTI連携によって電話がかかってきた時点でお客さまを特定し、準備を整えた上で応対できるようになるなど、コミュニケーターの業務効率を向上するとともに、お客さま満足度の向上にも寄与できたと考えています」(池谷氏)
図:Financial Services Cloudによる顧客接点ポータル
すでに1年以上にわたって顧客接点ポータルを運用してきたセゾン自動車火災保険は、この基盤を活用した業務改革をさらに前進させていく過程にある。
「今後は顧客接点ポータルにおけるナレッジシステムや生成AIを活用していきたいと考えています。お客さまが自己解決できるよう、簡単に便利にというダイレクト保険会社としてのCX(顧客体験価値)を高めていきたいと思います。また、業務効率化や働きやすさ、全社員が活用でき、業務へ貢献できるプラットフォームとしても活用していきたいと考えています」(細井氏)
もう1つのテーマは、自分たちから顧客に働きかけるアウトバンド戦略の強化だ。同社は同じくSalesforceのMA(マーケティング・オートメーション)ツールである「Marketing Cloud」を導入しており、すでに顧客接点ポータルとの連携も実現している。
「例えば自動車保険のお客さまに対して車両入替や継続時のフォローを行うほか、各種保険商品を提案するマーケティング活動も積極的に展開していきます。今後はさらにパーソラナイゼーションなどの施策と組み合わせてPDCAサイクルを回すことで、着実にビジネス成果に寄与していくことを目指しています」(岸氏)
実現に向けて、引き続きSCSKのサポートにも大きな期待が寄せられている。
セゾン自動車火災保険様には、本プロジェクトのパートナーとしてSCSKを選定いただき、感謝いたします。貴社が業務課題解決に向け、情熱をもって本プロジェクトの推進をされ、そこに長年の協業で弊社が培った業務ノウハウや、国内有数のSalesforce導入パートナーとしての知見が組み合わさり、プロジェクトを成功に導くことができました。なお、本基盤はシステムリリースがゴールでなはく、貴社と共に今後も育て、改善を重ね、さらなる発展を遂げるための礎となります。我々は今後とも、貴社の目指す未来を実現するために、新たな価値を共創するパートナーとしてあり続けたいと考えております。
堀 智之
所在地:東京都豊島区東池袋3丁目1番1号 サンシャイン60 40階
設 立:1982年9月22日
U R L:
https://www.ins-saison.co.jp/
2022年度に設立40周年を迎えたSOMPOグループのダイレクト損害保険事業を担う保険会社。主力商品の「おとなの自動車保険」は130万件を超える契約件数となった。デジタル技術とリアル接点を通して、一人ひとりの「お客さまの豊かな人生の実現をサポートする存在」を目指し、今後も高品質な商品・サービスの提供に努めていく。
2024年5月初版