製造業向け
稼働率改善ソリューション
「m-FLIP」を導入
生産ラインのリアルな状況を見える化し、
設備稼働率改善・生産ロス削減を実現
「今回のプロジェクトでは、SCSKの親切でていねいな導入支援に加えて、村田製作所には工場見学やディスカッションを通じてスマートファクトリーの背中を見せてもらったことで、進むべき道が見えてきました」
生産・技術室長付
馬場 淳 氏
トイレタリー・コスメティックス事業の分野で日本を代表する企業のひとつ、クラシエホームプロダクツ。同社は、ボディソープやシャンプー、コンディショナー、入浴剤、化粧水・乳液などの一般消費者向けの日用品と、業務用(プロフェッショナル)製品を展開しており、中でもヘアケアブランドの「いち髪」「ディアボーテ」はよく知られるところだ。
同社の主力ブランド商品の大半を製造している工場である津島工場(愛知県愛西市)では、設備の安定稼働、故障率の低減に向けて、各担当者が責任を持つ装置を決める「マイマシン制度」を採用するなど、長年にわたりさまざまな活動を行ってきた。そうした中、クラシエグループは2018年ごろから傘下の工場をスマート化するという方針を決定。事業ごとに生産品や製造プロセスが異なることもあり、具体的な手段については各工場に一任されることになった。2022年まで津島工場の工場長を務め、現在は生産・技術室長付の馬場淳氏は「これまで進めてきたさまざまな取り組みを束ね、見える化をすすめることが工場のスマート化へにつながるのではないかと考え、そういった仕組みがないか調査をはじめました」と今回のプロジェクトのきっかけを説明する。
当時の津島工場では年間2万トン以上もの生産ラインが稼働している。その原料の仕込みから製造までの前工程ではMES(製造実行システム)などのシステム導入が進んでいたのに対し、シャンプーやトリートメントなどを充填・包装する後工程は、人力でのオペレーションも多く、工程の状況を見える化する仕組みがなかった。そこで、充填・包装の各工程を常時見える化する仕組みを導入、稼働率の改善につなげることにした。津島工場における各種設備のメンテナンスを担当する製造部 設備保全課長の渡部宗則氏は「これまで装置ごとに稼働時間を集計し、故障すると想定される直前に部品を交換するなど予防保全の取り組みを行ってきました。この見える化の取り組みで工程の常態監視が可能になるので、さらに一歩踏み込んだ予知保全をすすめていきたいと考えていました」と当時のねらいを語った。
クラシエホームプロダクツは、生産ラインの見える化に向けて、稼働率を改善するソリューションに関する情報収集を開始。比較・検討を進める中で出会ったのが、村田製作所の「m-FLIP」であった。
「前任の課長が参加したセミナーで、村田製作所がm-FLIPを自社の生産ラインに導入し大きな成果を上げているという発表を拝見し、強い関心を抱きました。そこでさっそく、m-FLIPの開発にも携わり販売代理店でもであったSCSKと村田製作所の担当者も交えて詳しい説明を受けることにしたのです」(渡部氏)
m-FLIPの具体的な機能説明や村田製作所での利用説明を両社から受け、他製品と比べて現場寄りのソリューションであるという印象を持ったクラシエホームプロダクツ。さらにSCSKからあった、いきなり本格的な設備投資を行うのではなく、1ラインでトライアルを実施するという提案を評価、m-FLIPを採用することにしたという。
こうして2020年2月、津島工場においてトライアル実施に向けた準備作業がスタートした。製造部 設備保全課 設備保全係長の鈴木靖之氏は「各装置を制御するためのPLC(プログラマブルロジックコントローラ)プログラムをm-FLIPに対応させたり、サーバとLANケーブルで接続したりするのに苦労したのですが、SCSKや村田製作所の手厚い支援により解決していきました」と語り、実際に導入を担当した製造部 設備保全課 設備保全係 主任の木村大輝氏も「当初は手当たり次第にm-FLIPへデータを吸い上げていたのですが、視認性を高めるためにはデータの整理が必要なことも分かってきました。この際もていねいにサポートいただきました」と当時を振り返る。
なおトライアル前、同社は稼働率を80%程度と想定していたが、実際に行ってみると65%程度であることが判明した。
「一見正常に稼働しているように見えても、実際には充填がうまくいかず空運転していることもあり、オペレータの感覚だけでは稼働状況が見えづらいことが分かりました」(木村氏)
トライアルの成果を受けて、同社は2020年4月からm-FLIPの本格導入を決定。順次充填機・包装機と2022年末の時点で工場の1/4のラインに適用した。各生産ラインの稼働状況が見える化されていくことにより現場の意識も大きく変わったという。津島工場で製品の充填・包装の工程を担う製造部 仕上課長の佐野友則氏は「設備に不具合が生じたときなど、各種センサから上がってくるデータを基に、何が原因なのか現場で活発に議論できるようになりました。これまでのように設備保全課に修理を依頼して終わりではなく、お互いに協力しながら稼働状況を改善していこうという意識が高まってきたと思います」と語る。
実際、見える化が進み、データ分析による改善活動を通じてトラブルを防止していくことで、生産ラインの稼働率が上がり、生産能力の向上や、製造コストの削減、生産ロスの削減につながっているという。
撮影:クラシエホームプロダクツ様 東京本社、津島工場
クラシエホームプロダクツの生産ラインは、m-FLIP導入を契機にさらなる改善活動が進んでいる。
「ある生産ラインでは、1日に180回ものパウチ容器のつかみ損ねが出たのですが、データに基づきつかみ幅を調整したところ、翌日にはつかみ損ねがほとんどゼロになりました」(木村氏)
これらの効果をうけて、現場からはさらなるスマート化への要望が出てきている。人では気づきにくい改善点も、データから気づき、効果的なタイミングで機械のメンテナンスを行うなどしていけるよう「データを活用することができる人材育成に今後力をいれていく」(佐野氏)という。さらに製造部 仕上課 仕上係長の服部かおり氏も「例えば、オペレータが作業中に稼働状況が見えるようモニタを設置したり、仕上げ記録など手書きで記入しているものをシステム化したりすれば、より効果的な改善が可能になると思います」と語る。
これに馬場氏は「生産中の工程検査についても検査データを自動的に取得できるようになれば、品質保証の責任者は出荷判定に必要な情報が即座に手元に集まるようになり、製品の工場内での滞留を減らし、より早く出荷することができるようになると思います。こういったさらなるスマート化、DXを進めていくためには、現場のオペレータがm-FLIPをはじめとした各種システムをさらに使いこなせるようになるのが前提と考えています」と添え、さらに、今後の推進に向けては「今回のプロジェクトではSCSKの丁寧な導入支援に加え、村田製作所には工場見学やディスカッションを通じてスマートファクトリーの背中を見せてもらい、進むべき道が見えてきました。両社には引き続き手厚いサポートを期待しています」と語ってくれた。
クラシエホームプロダクツ様には、DX関連セミナーでの出会いをきっかけに、m-FLIPの導入支援をさせていただきました。工場の設備の見える化を通じて生産性を向上したいという強い思いをお持ちで、システム導入作業もスムーズに進めることができました。現在は見える化からデータ活用のフェーズに入っており、非稼動要因の分析や不良数の削減などの課題について議論させていただいていますが、今後もさらなる生産性向上への支援をしていきたいと考えています。
郷間 真治 氏
生産現場でのIoTの取り組みは、多くが設備稼動の可視化にとどまり、本来期待する具体的な成果まで至っていないのが実情ではないでしょうか。これは、現場の改善サイクルに可視化の内容が合っていない場合が多いからと聞きます。m-FLIPは、製造装置の稼働状況と現場作業者の活動を合わせて可視化する特徴を持ち、また改善への打ち手とその効果を考察できる豊富なレポート機能が提供されます。クラシエホームプロダクツ様では、従来から取り組む改善活動をm-FLIPベースで再構成することで成果を出し、改善活動を進化させるプラットフォームとして活用いただいております。今後も村田製作所とSCSKは、お客様のDX実現に向けm-FLIPをさらに進化させていきます。
小畑 惠史
所在地:東京都港区海岸3-20-20
U R L:
https://www.kracie.co.jp
クラシエグループの事業会社の一つとして、トイレタリー商品や基礎化粧品、その他日用雑貨の製造・販売・輸出入などを担っている。独自の技術とノウハウを生かし、生活に密着したさまざまな日用品や化粧品を、高品質でありながら求めやすい価格で提供。商品を通じ新しい提案をし続けることで、顧客とその家族の清潔で美しく快適な暮らしを、細やかな心遣いでサポートしている。
2023年3月