本田技研工業株式会社 様

AWSをベースに
「Rent to Own型バイクレンタルサービス」を新規創出
ケニアで労働意欲のある人にバイクと情報と
「成長する喜び」を提供

SCSKの「S-Cred+プラットフォーム」と「FastAPP」を活用し、
高品質でセキュアに新たなビジネスモデルに資する広範囲なシステム環境を提供



事例のポイント

お客様の課題

  • モノづくり企業からモビリティサービス企業への発展を目指す
  • Hondaが求める要件に合致する高品質・セキュアなシステムを短期間で構築したい
  • 将来の機能拡張や多国展開を想定したプラットフォーム

課題解決の成果

  • SCSKが提案する豊富な実績のあるクラウド開発ソリューションを採用
  • 新たなビジネスモデルに対応するシステム基盤を想定内のコストで迅速に構築
  • 信頼性の高いSCSKのシステム開発・運用によりサービス管理業務負荷を軽減

導入ソリューション

  • Bodaco登録ライダー利用モバイルアプリ
  • ローコード開発基盤「FastAPP」
  • クラウド構築・運用自動化サービス「S-Cred+プラットフォーム」
  • アマゾン ウェブ サービス(AWS) など

本田技研工業株式会社
二輪・パワープロダクツ事業本部
二輪事業統括部 事業企画部
電動事業企画課
チーフエンジニア

向原 穂高

本田技研工業株式会社
二輪・パワープロダクツ事業本部
二輪事業統括部 事業企画部
電動事業企画課
アシスタントチーフエンジニア

岩田 小笛

「ただシステムを作るということではなく、ビジネスモデルを共に創りあげ、
新たな価値創出をしていきたいという部分に感銘を受けていただいて、
情熱をもって我々にプレゼンしてくれました」

本田技研工業

向原 穂高

背景・課題

世界最大のバイクメーカーとして
新しいビジネスモデル創出に着手

 本田技研工業株式会社(以下、Honda)は、創業者・本田宗一郎氏が1948年に設立した自動車・バイクの大手メーカー。中でも同社の原点とも言える二輪事業は、「需要のあるところで生産する」という基本理念に基づき世界各地で事業を展開。2019年には世界生産累計4億台を達成し、世界最大のシェアを誇る。とくに交通インフラが未発達な開発途上国や新興国を中心に絶大な支持を得ており、それらの国々も含めた世界のバイク市場・産業全体を健全に発展させる取り組みに注力しているのも、Hondaの大きな特長となっている。

 そんな二輪事業のグローバルオフィスとして世界中の生産・販売拠点を統括する二輪・パワープロダクツ事業本部において、グローバル全体の事業戦略立案、市場開拓、新規事業開発などを担当するのが、二輪事業統括部 事業企画部だ。

 「Hondaではここ数年、従来の“モノづくり”にとどまらず、新たなモビリティサービスの開発を積極的に推進しています。そうした施策の一環として、部署横断のプロジェクトを立ち上げ、新しいビジネスモデルの創出に向けた研究を進めてきました。そのプロジェクトの研究成果を事業化する目的で部内に設置したのが私たちのチームであり、現在はケニア向けバイクレンタルサービス『Bodaco』に取り組んでいます」

 こう話すのは、Bodacoを発案し、プロジェクトリーダーとしてチームをまとめてきたチーフエンジニアの向原穂高氏だ。

 「Hondaの二輪事業は世界中でトップシェアを獲得していますが、アフリカ市場だけはインドメーカーに後塵を拝する状況です。こうした状況を踏まえ、アフリカ市場でビジネス拡大を図るために、アフリカ市場におけるビジネスの実験場と言われるルワンダで現地調査を行いました。その結果、アフリカではバイクタクシーが主な移動手段として利用されているものの、バイクタクシーライダーの多くはレンタルバイクを使用しており、高額なレンタル料をオーナーに支払い続けていることが分かりました。そこでライダーに負担のない初期費用でHondaのバイクをレンタルでき、既定の支払いを終えた後にライダー所有となるというBodacoのビジネスモデルの種を考えました」(向原氏)

 ルワンダでの現地調査の際に同行していたHondaのケニア現地法人メンバーと今後の展開について話し合ったところ、現地法人メンバーから「ケニアでやってみてはどうか」という提案があり、ルワンダの現地調査後にケニアで現地調査を実施。現地法人の協力を得やすく、アフリカ各国の中でも経済発展が著しくマネタイズしやすい環境にあるケニアを選定し、ビジネスモデルの実証実験を行うことにした。

解決策と効果

本番運用に向けてSCSKを選定
SCSKの「S-Cred+プラットフォーム」と
「FastAPP」で、開発期間とコストを削減

 ケニアでバイクレンタルサービスという新しいビジネスモデルの実証実験を行うために、Hondaは日本の事業会社とBodacoを運営するために提携。その事業会社はケニア現地に法人を設立。その法人がHondaの現地法人からバイクを購入し、それをバイクタクシー組合の身元保証のもと数名のライダーで構成されるグループにレンタルして、レンタル料を徴収するというビジネスモデルをつくり上げた。ライダーは、支払ったレンタル料に応じて付与されるポイントを貯めていくと、将来的にバイクを自分の所有にできるというものだ。

 「Bodacoのサービスを開始するにあたっては、バイクの所在やライダーの利用状況を管理するための仕組みが必要です。幸いケニアでは、通信回線が整備され、電子決済サービスも普及しているので、それらを活用したプロトタイプのシステムをHondaで開発しました」(向原氏)

 Hondaはそのシステムを利用し、2019年3月にごく小規模なPoC(概念実証)を実施。新しいビジネスモデルとして成立することを確認したのちに、より大規模なPoCの実施に向けてシステムをブラッシュアップすることにした。

 「まずは素早いシステム開発が得意なベンダーに委託してシステムを構築しましたが、新しいサービスとして事業化するためには、さらなるシステム品質向上とセキュリティ強化が必須です。そこで本番展開に向けて委託できるベンダーを改めて選定することにし、複数のベンダーに声をかけました」(向原氏)

 Hondaはベンダー各社に対し、HondaがグローバルITセキュリティポリシーとして掲げるセキュリティレベルを確保すること、短期間で確実なシステムを構築できること、将来の機能拡張や多国展開を想定したプラットフォームにすることといった要件を提示。ベンダー各社の提案内容を比較検討した結果、Hondaが選定したのがSCSKだった。

 「SCSKの当初の提案は期待以上のものでしたが、予算を大きく上回っていました。そこで再提案を依頼したところ、豊富な実績のあるSCSK独自のソリューションを採用してコストを圧縮するとともに、開発期間も大幅に短縮できる誠意のある提案を受けました。もちろん、Hondaが要求するセキュリティレベルも確保されています。海外での展開事業であるが故に海外のブリッジエンジニア等を挟んで依頼する選択もありましたが、日本企業ならではの配慮の行き届いたサービス品質を提供してくれたこと、さらに本番運用を安心して任せられるSCSKの信頼感や当該企画に感銘を受け『一緒にビジネスモデルを立ち上げたい』と情熱をもってプレゼンしてくれたことも決め手になり、SCSKを選定しました」(岩田小笛氏)

 SCSKは、アマゾン ウェブ サービス(AWS)やクラウド構築・運用自動化サービス「S-Cred+プラットフォーム」、およびローコード開発基盤「FastAPP」を利用し、Bodacoのバイクレンタルサービス基盤を構築。電子決済サービスやバイク本体に取り付けるGPS受信機内蔵通信ユニット(TCU)との連携、管理者が使用するダッシュボード、ライダーが使用するスマートフォンアプリなども合わせて開発し、2021年9月にリリースした。

 「本番運用を想定した新しいシステムが稼働したことにより、これまで頻繁に発生していたデータ不具合の修正作業がなくなるなど、業務負荷が大幅に軽減するという効果が得られています。セキュリティ対策も万全でインシデントは一切発生していません」(岩田氏)

今後の展望

ケニアでの経験と実績をもとに
他国への横展開も視野に

 Hondaは現在、ケニア向けバイクレンタルサービスをさらに広げ、レンタルバイクの数を拡大する計画で、企画をHonda、運用を含むシステム改修をSCSKで役割分担しながら、新しいビジネスモデルを成長させていくとしている。また、ケニアでの経験と実績に基づき、バイクタクシーが走る隣国・タンザニアをはじめとする他のアフリカ諸国、さらには中南米や東南アジア諸国への横展開も視野に入れている。

 「今回のビジネスモデルはHondaの『需要のあるところで生産する』という考えに則し、また現地の実情にあわせ、ライダーをはじめとした地域に暮らす人々の生活を豊かにしたいというHondaのビジョンを実現するものです。単純にレンタルバイクの数を増やしてバイクタクシー市場を飽和させてライダーが稼げなくなってしまっては問題なので、今後の展開においては、現地の状況を詳細にリサーチしたのちにローカライズさせ、バイクと仕事の両方を提供するサービスの拡大を図っていきたいと考えています」(向原氏)

 SCSKには引き続き、今後のHondaの“夢のある明日の社会づくり”を共創ITパートナーとして強力に支援してもらいたいという。

図:Bodacoのシステム構成
図:Bodacoのシステム構成

SCSK担当者からの声

「S-Cred+プラットフォーム」と「FastAPP」を最大限活用することでQCD全てにおいて高い評価をいただきありがとうございます。本田技研工業様の新しいビジネスモデルの創出に携わることができて大変感謝しております。これからもお客様の事業に貢献できるよう引き続きご支援させていただければと考えております。

産業事業グループ 製造システム事業本部 製造システム第一部 課長

平野 賢祐

本田技研工業様のBodacoを通して、SDGsに貢献できたことを心より感謝申し上げます。運用サポートを通し、今後とも末永くお付き合いさせてください。共創ITパートナーとして、貴社のビジネスに貢献できるよう精進して参ります。

産業事業グループ 製造システム事業本部 営業部 課長代理

坂野 真一郎


お客様プロフィール

本田技研工業株式会社

所在地:東京都港区南青山2-1-1
U R L:
https://www.honda.co.jp/

グローバルにビジネス展開する日本を代表する輸送機器メーカー。「The Power of Dreams」をコーポレートスローガンに掲げ、自動車(四輪)・バイク(二輪)・パワープロダクツ(発電機・除雪機・芝刈機・船外機など)・航空機の製造販売事業や、各種モビリティサービス事業を展開している。社業の始まりである二輪事業は、2019年には世界生産累計4億台を達成し、世界最大のシェアを誇っている。

2022年6月初版