気候変動への対応

地球環境への貢献

背景と考え方

近年、さまざまな環境課題の深刻化により、経済、社会システムの見直しが世界的に進んでいます。2015年の「パリ協定」を契機に、政府による環境規制や2050年カーボンニュートラル宣言、ESG投資の拡大、ステークホルダーの環境意識の高まりなど、環境負荷低減に向けた社会的な動きは大きくなり、その影響は企業活動にも及んでいます。異常気象や風水害が社会生活や事業活動に及ぼす影響は甚大であり、気候変動リスク緩和に向けた「脱炭素社会」へ向けたチャレンジと、事業継続リスク抑制の観点からの取り組みが加速しています。

SCSKグループはITサービスを通じて、これらの社会的変化への対応を強力にサポートします。AIやIoT、クラウドサービスなどを活用した事業変革や業務効率化などの支援を通じて、エネルギーの効率的利用に伴うお客様の環境負荷低減に寄与するとともに、災害面においては、堅牢なデータセンターやBCPソリューションなどの提供により、お客様の事業継続に貢献しています。

幅広い業界にわたるお客様やパートナー企業と連携しながら、温室効果ガス排出量削減や環境負荷低減に取り組むことで、気候変動への適応、環境に配慮した事業活動を実践するとともに、事業機会の創出・拡大を通じて、より良い地球環境の実現に貢献していきます。

TCFD提言に基づく情報開示

2021年4月、SCSKグループは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)(※1)提言に賛同しました。

気候変動に関するSCSKグループの方針に則り、TCFD提言にて推奨される4つの要求項目に対して、継続的な検討および、情報開示をすすめ、さまざまなステークホルダーとの建設的な対話を通じて、企業価値の向上を目指します。

情報開示の詳細につきましては、TCFD提言に基づく情報開示(詳細版)をご覧ください。

TCFDが推奨する開示内容

(※1)気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):
気候変動にかかわる金融市場の不安定化リスクの低減を目的に、金融安定理事会により設立されたタスクフォース。企業が任意で行う気候関連のリスクと機会などに関する情報開示のフレームワークを提示。


ガバナンス


SCSKグループでは、環境に関するマテリアリティ「地球環境への貢献」、気候変動への対応につきましては、代表取締役 執行役員 会長・代表取締役 執行役員 社長の諮問機関であるサステナビリティ推進委員会にて、気候変動やその他のサステナビリティに関する全社的な課題、取り組み施策の検討や確認を行っています。

検討内容は、サステナビリティ推進委員会から、経営会議に報告し、経営会議で全社的な経営に係る観点からさらなる議論を行った後に、サステナビリティ推進委員会から定期的に取締役会に報告が行われ、取締役会で適切に監督されるような体制を整えています。

気候変動に関するガバナンス体制及び、各会議体の構成

戦略


シナリオ分析の前提


SCSKグループは、気候変動への対応は企業の長期的価値を左右する重要な経営課題と認識しており、不確実な状況変化に対応し得る戦略と柔軟性を持つことが重要であると考えています。

このような考えのもと、気候変動が事業に与える影響を評価するために、気候変動による影響が大きいと考えられるSCSKグループの事業を選択の上、TCFDが推奨する変動シナリオを用いて、2050年度における外部環境の変化を予測し、分析を実施しました。

■対象事業:データセンター事業
SCSKグループの売上高に占めるデータセンター事業の比率は、システム開発系の事業などと比べ相対的に低いものですが、Scope1+2を対象としたSCSKグループの温室効果ガス排出量の約8割を占めており、気候変動による影響(炭素税や環境規制など)が大きいと考えられる為、「データセンター事業」を分析対象として選定しました。


気候変動リスクと機会


■気候変動のリスク(要約)
炭素税導入や省エネ規制強化に伴う再エネ・省エネ設備への切り替えグリーン電力購入などの対応コストが増加すること、加えて自然災害によるデータセンターの操業・復旧コストの増加気温上昇に伴い冷却に必要な空調コストと電力消費量が増加するため、データセンターの運用コストが増加することなどが考えられます。

■気候関連の機会(要約)
再エネ化・省エネ化された脱炭素型もしくはレジリエント性の高いデータセンターに対する需要が増加すること、今後のデジタル化社会の到来により、スマートXの普及による通信量の拡大、大量データの保存ニーズの増加に加え、データセンターに蓄積したビッグデータ利活用のための周辺サービス需要が発生することなどが考えられます。

各シナリオの世界観および、影響評価


<4℃シナリオの世界観および、影響評価に関する要約>

世界観
経済活動を最優先し、積極的な温暖化対策が行われないことで、気温上昇や自然災害の激甚化が加速する。政府は自然災害激甚化への対応として、海面上昇被害などへの補償制度の拡充や防災対策・BCP対策を積極的に推進する。一方で、炭素税の高税率化や再エネ利用の推進は行わない。再エネ利用は進まず、電力価格はなりゆきで推移する。

影響評価
気温上昇により空調コストは増加するものの、継続的な効率化・省力化の取り組みにより事業に与える影響は限定的であること。また、データセンターの建設用地は、大雨や洪水などの自然災害の影響が少ない地域を事前に調査したうえで選定しているため、今回のシナリオ分析においても大雨や洪水などの影響は少ないと評価しました。一方で、自然災害が激甚化することにより、BCPの観点からビジネス機会が増加すると評価し、ビジネス機会に対応するレジリエンスなDCサービスを提供することによって収益の増加が可能と評価しました。

<1.5℃シナリオの世界観および、影響評価に関する要約>

世界観
全世界の合意のもと脱炭素化に向けた気候変動政策などが革新的に推進される。政府は高税率な炭素税の導入、化石燃料の使用規制、スマートシティ拡大政策を推進する。再エネ利用が推進され、再エネ利用率が一定の高水準を保ち電力価格が上昇する。省エネ関連の技術需要が高まり、スマートシティなどが拡大し、情報通信量が増加する。

影響評価
炭素税の高税率化や炭素排出規制の強化、再生可能エネルギーの利用が世界的に広まることで、炭素価格や電力価格が高騰し、事業コストの増加要因となります。炭素価格については、SBTイニシアチブの認定を取得した温室効果ガス削減目標に沿った取り組みを推進することで、炭素価格が増加した際の影響の緩和が可能になります。また、電力価格が上昇することで電力コストの増加が見込まれますが、事業に重大な影響を与えるものではないと評価しました。
一方で、脱炭素化に向けた世界的な動向から、お客様の環境配慮に対する意識が高まり、脱炭素型データセンターの需要が増加すると評価しました。
SCSKは、かねてよりAIなどを用いた先進的な空調制御など、データセンターの運営効率や省エネ性能の向上を進めてきました。現在は、従来の取り組みに加え、再生可能エネルギーの積極的な活用の検討を進めデータセンターの脱炭素化を図っています。今後、環境に配慮した脱炭素型データセンターサービスの提供を進めることで、収益の増加が可能と評価しました。

主要なインパクト項目に関する評価結果

  • (※1)収益への影響度:各シナリオの主要な事業インパクト項目が収益に与える影響を「+/-」で記載。相対的に3段階で評価
  • (※2)レジリエントDCの需要増加:「レジリエントDC」の新設・運用費用については、今回試算対象外。想定シナリオ次第でコストインパクトが大きくなりうる
  • (※3)電力価格の変動:4℃シナリオの電力価格はIEAなどのレポートより、2030年時点ではコストが増加するが、2050年時点ではコストが減少すると想定
  • (※4)炭素税の上昇:温室効果ガス排出量削減により、炭素税上昇による費用増加の影響緩和が可能であると想定

対応策定義


各シナリオにおけるリスクと機会を特定し、施策の方向性、対応策の観点を検討しました。

今後、リスクに対しては回避/軽減する施策、機会に対しては機会を獲得するための施策の検討を継続的に実施し、策定された対応策を実行することによって、事業活動のレジリエンス向上を目指します。

対応策定義

リスク管理


SCSKグループでは、グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを適切にマネジメントするため、リスクマネジメントに関する規程を定めています。サステナビリティに関するリスクについては、リスク所管部署とリスク統括部署が共同し、外部レポートや外部有識者の助言をもとにリスク項目を分析しています。

分析したリスク項目はリスク所管部署からサステナビリティ推進委員会に報告を行い、同委員会にてリスクの確認、特定を行っています。特定したリスク項目はリスク所管部署からリスク統括部署に報告を行い、リスクマネジメントに関する規定に則り、適切に管理されています。


詳細は、リスクマネジメント体制をご覧ください。


指標と目標


SCSKグループは、温室効果ガス排出量の削減に向けて、SBTイニシアチブ(※1)の認定を取得した中長期的な削減目標を設定しています。
温室効果ガス排出量の削減に向けて、環境に配慮した事業活動に意欲的に取り組むとともに、脱炭素社会への変革を事業機会ととらえ、幅広い業界にわたるお客様やパートナー企業との共創を通じて脱炭素社会の実現、持続可能な社会の発展に貢献します。

SCSKグループの温室効果ガス排出量削減目標

 

  • (※1) SBT(Science Based Targets)イニシアチブ:世界の平均気温の上昇を抑えるために、企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定するよう求めるイニシアチブ。
  • (※2) Scope1:自社による温室効果ガスの直接排出量
    Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気などの使用に伴う間接排出量
  • (※3) Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出量(自社の活動に関連する他社の排出)

削減に向けた取り組み


温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みは、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みをご覧ください。


温室効果ガス排出量(Scope1/2/3)の状況

温室効果ガス排出量(Scope1/2/3)の状況

温室効果ガス排出量の開示にあたっては、第三者保証を取得しています。
詳細は第三者保証をご覧ください。


Scope1+2排出量

■Scope1+2排出量の削減目標
・2050年 100%削減
・2019年度比で2030年までに47%削減、2024年までの中間目標は21%削減
(年間約4.2%の削減)

Scope3排出量

■Scope3排出量の削減目標
・2019年度比で2030年までに28%削減、2024年までの中間目標は12%削減
(年間約2.5%の削減)

※ SBT基準年は2019年度、SBT目標の設定年度は2021年度
Scope1,2,3について、2030年度目標および中間目標の対象範囲はSCSKグループ全体、目標の対象となる基準年排出量(2019年度)の割合は100%

 

CDP(気候変動)に対する情報開示

近年、機関投資家の間で投資判断にESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を組み込む動きが見られ、財務情報だけでなくESG情報が投資家とのコミュニケーションにおいて重要になってきています。

こうしたESGに関するコミュニケーションの一環として、SCSKでは、機関投資家が気候変動問題に対する企業の取り組みについての情報開示を要求しているCDP(旧カーボン・ディスクロジャー・プロジェクト)に協力し、積極的な情報開示を行っています。

CDP DISCLOSER2022

また、2022年度はCDP 「サプライヤー・エンゲージメント評価」で 最高評価となる「サプイライヤーエンゲージメントリーダー」を獲得しました。

CDP SupplireEngagementLeader_2022