株式会社ココカラファイン 様

ココカラアプリに寄せられるお客様の声を、
より支持される店舗づくりに活かす
「おもてなしNo.1」を掲げるココカラファインの新たな挑戦

顧客接点の高度化

毎週5000件を超えるお客様評価をいち早く各店舗に届けたい
その仕組みづくりの肝は“使いこなせるAI”の活用

事例のポイント

お客様(ココカラファイン様)の課題

  • 接遇向上のため、毎週5000件のお客様の声を有効に活用したい
  • 人の目による分析では、スピード・品質ともに限界
  • AI活用を検討するも、ツールの多くは専門知識が必要

課題解決の成果

  • 使いこなせるAIの導入で、公平な基準による分析を仕組み化
  • 1週間というスピーディーなサイクルでPDCAを実現
  • 「お客様の声に向き合いたい」という現場の意識がさらに向上

導入ソリューション

KIBIT Knowledge Probe

株式会社ココカラファイン
管理本部 企業品質部

石川 厚美

株式会社ココカラファイン
管理本部 企業品質部

金澤 直也

株式会社ココカラファイン
管理本部 IT・物流開発部
IT開発チーム 担当課長

島 智宏

高機能のAIを導入したかったのではなく、お客様の声にもっと向き合うための仕組みづくりが目的です。
AIの専門家ではない我々が求めていた解決策をSCSKは提供してくれました

株式会社ココカラファイン 管理本部 企業品質部

石川 厚美

背景・課題

「お客様の声に向き合いたい」という現場の意識の高まり。
一方で現状のやり方は限界に

 ドラッグストア、調剤、介護や訪問介護、EC、フィットネスなど、幅広い事業展開をしているココカラファイン。なかでも、コア事業であるドラッグストアは、日本の8割を超えるエリアで、OTC医薬品(市販薬)を扱う約1100店舗、調剤に関しては業界トップクラスとなる約300店舗を運営している。このドラッグストア市場は年々拡大しているが、競合店は多く、M&Aによる再編や異業種参入もあり競争は激化している。そのような中でブランドの価値を高めるには、利用者に喜ばれる魅力的な店舗をいかに構築するかが重要となる。

 ココカラファインが事業を推進する上で大切にしていることは、「おもてなし」だ。コーポレートスローガンに「おもてなしNo.1になる」を掲げ、来店客、患者への接客、接遇を重視している。管理本部 企業品質部 金澤直也氏は「大切なことは、一人ひとりのお客様のお悩みを解決すること。社内教育もおもてなしをなにより重視しています」と語る。

 おもてなし向上施策の一環として始めたのがスマートフォン用アプリ「ココカラ公式アプリ」のアンケート機能だ。2016年5月に公開したココカラ公式アプリは、累計ダウンロード数が134万(2019年9月時点)を誇り、お客様との重要な接点になっている。このアンケートでは、4段階の星(★)の数による評価で投稿できるほか、コメントが記入できる。特徴的なのは、購買した商品ではなく、店舗に関する評価を聞いていることだ。現在、毎週5000件以上のコメントが寄せられている。

 管理本部 企業品質部 石川 厚美氏は「これほど集まることは想定外でした。様々な意見が寄せられていて、多くはお褒めの言葉でした。ココカラファインはお客様から期待されていると強く感じました」と語る。集まったコメントは、石川氏が目を通し分類したものを、店舗運営を管轄する事業部門にレポートしていた。そこには店舗スタッフの励みになるようなものも多く、「お客様は店舗での応対をしっかり見ていて評価くださっているのがわかる。頂いた声に応え、より良いおもてなしを追求したい」と接遇向上に強い意欲をみせる店長が増えていったという。

 こうした事業部門の意識の高まりを受け、石川氏と金澤氏は、企業品質部として届けるレポートの重要性を再認識した一方、当時の方式には大きな課題を感じていた。コメントの分類をすべて人の目で行っていたからだ。毎週5000件以上のコメントに対し、これまで以上に向き合うためには、より早く事業部門に分類結果を届け、スピーディーに改善に活かしてもらう必要がある。レポートの精度も的確であることが要求され、その時々の感覚で結果が異なるようでは問題だ。このスピードと質の両立について「人間の力では限界だと思いました。公平な基準で分類できる仕組みに変える必要があったのです」と石川氏は語る。

「ココカラ公式アプリ」のトップ画面。「お客様満足度」から評価を投稿できる。

「ココカラ公式アプリ」のトップ画面。「お客様満足度」から評価を投稿できる。

4つの星とコメントが投稿できるようになっている。

4つの星とコメントが投稿できるようになっている。

解決策と効果

AI活用を検討するも当初は難航。
使いこなせるAIシステムと業務視点のPoC提案が解決の糸口に

 コメント分類のスピードと質の向上のためにココカラファインが検討したのがAI(人工知能)による自動化だった。2018年の夏ごろ、AIによるサービスを提供するいくつかのベンダーに相談し、PoCを試みた。しかしどれもコストが高く、使いこなすには高度なスキルも必要であり、操作性も難しく感じられた。何より問題だったのは分析レポートの複雑さだ。石川氏は「何十ページにも及ぶ詳細なレポートが出てきました。AIの専門家でもない自分たちや事業部門が毎週、そのツールを利用してPDCAを回していくのは困難だと感じました」と、一度はAI自体の導入を諦めてしまった。

 しかしそれから半年経ったころ、IT開発チームと付き合いのあったSCSKから提案されたのが、自然言語処理AIエンジン「KIBIT(キビット)」を活用したビジネスデータ分析支援システム「KIBIT Knowledge Probe」(開発:株式会社FRONTEO)だった。

 SCSKは、ドラッグストア向けの新たなソリューションとして、企業がすでに蓄積しているデータをAIで分析し、お客様満足度の向上や業務オペレーションの変革につなげられるのではとアプローチを展開していた。同社の課題を聞き「KIBIT Knowledge Probe」なら解決できると考えたのだ。

 テキストデータの分析に特化した「KIBIT Knowledge Probe」は少ないデータから、分析のための判断基準を効率的に学習できる。AIの専門家やIT部門ではなくても利用可能な、わかりやすい操作性も特徴だ。

 AIによる分析は、実際に使ってみないと精度が把握できない。そこでSCSKは1か月のコメントを用いて、①接遇でのクレームとみられるコメントを抽出、②ココカラファインが考える重要度、優先度に合致する順に高い点数を付与して並び替える(スコアリング)、というPoCを実施した。その結果を見た石川氏は「求めていたものそのままのソリューションでした。この精度ならAIに任せても問題ないと感じましたし、スコアリングの結果もパッと見て分かるものでした。自分たちでも十分使えそうだと思ったのです」と、そのときの手ごたえを語る。

 このPoCを経て、ココカラファインは短期間で正式導入を決定した。他の選択肢を探す必要がなかったからだ。またSCSKは、同製品が判別できるデータや学習できた特徴、チューニングによる更なる精度向上の可能性なども報告。それも導入決定に大きく役立ったという。

 正式導入にあたりSCSKによるチューニングが施された。ココカラ公式アプリのアンケートコメント欄は入力文字数に下限がないため、一言で終わるコメントもあれば、問題を切実に訴えるコメントもある。どちらも重要な意見ではあるものの、接遇向上により役立てられるのは後者と定め「具体的に記述されているコメントを高くスコアリングする」という判断軸を加えた。この結果、精度を30%程度向上させることに成功した。活用を始めてまだ3か月程度だが、1週間というスピーディーなサイクルでレポートし続けることによって統括店長や地区長が関心を見せ、「もっと詳しく知りたい」などの声が挙がるなど、早くも効果を実感しているという。

接遇(おもてなし)向上の新たなサイクルを構築

今後の展望

「使いこなせる」という特徴が、AI活用の幅をさらに広げる。
より支持される店舗づくりを目指し、接遇の向上を追求する

 新たに異なる観点から分析を行いたい場合、「KIBIT Knowledge Probe」はそのための判断基準を学習するためのデータ(教師データ)を用意すればそれが可能だ。金澤氏と島氏は自身でさらなる活用を進めるべく、開発元であるFRONTEO社の一日研修を受講。「導入時は、接遇におけるクレームなどのネガティブなコメントに範囲を絞りましたが、販促や店舗構造など、他の視点の分析にも利用を広げていきたいと考えています。IT部門の経験がない私もこの研修プログラムのおかげで、これからの展開を進めていけそうです」と金澤氏は語る。

 島氏は「『KIBIT Knowledge Probe』はテキストをAIで分析するツールです。会社全体を見渡せば、さまざまなテキストデータが蓄積されており、有効活用する余地が多くあるのではと感じています。また、専門家でなくても活用できる操作性が、その可能性を更に高めていると思います」と語る。

 最後に石川氏は、「当社は『おもてなしNo.1』を標榜していますが、それはお客様から「良いお店だ」という評価があって、はじめて達成できることです。今回の取り組みの先には、店舗ごとの評価を可視化し、さらに高めることにつなげていけたらと思っています」と展望を述べた。

SCSK担当者からの声

ココカラファイン様には、公式アプリに寄せられるコメントのテキスト分析基盤として、AI製品「KIBIT Knowledge Probe」をご選定いただきました。お客様の「おもてなしNo.1」のため、データ把握と分析モデルのチューニングを通じて、期待以上の精度でAIエンジンKIBITを活用いただいております。ご提案時より簡易検証を行い、分析結果の議論を重ねることにより、AIに関する不安を払拭し、チューニングの方向をまとめることができました。お客様の業務的な知見、弊社および開発元の技術的な知見の相乗効果が、良い結果につながりました。今後も新しい分析テーマやデータに対して、SCSKはAIエンジンKIBITを活用したさらなる課題解決をご支援いたします。

プラットフォーム ソリューション事業部門
ITエンジニアリング事業本部 エンタープライズ第三部

西廣 恭太


お客様プロフィール

株式会社ココカラファイン

株式会社ココカラファイン

所在地:神奈川県横浜市港北区新横浜3-17-6 イノテックビル
U R L: https://corp.cocokarafine.co.jp/

ココカラファインは、2008 年に設立したドラッグストアチェーンなどのヘルスケアサービスを展開する運営会社。「おもてなしNo.1になる」をコーポレートスローガンに掲げ、「人々のココロとカラダの健康を追求し、地域社会に貢献する」を企業理念として活動し、単にモノを売るドラッグストアとしてではなく、誰もが健康でいきいきと暮らせる社会を実現するための「ヘルスケアネットワークの構築」を目指している。

2019年11月