JCOM株式会社 様

約4700名が利用する「工事管理システム」を刷新し自動化
現場と管理側あわせて月間約9000時間の作業を削減

働き方改革・生産性向上

「Salesforce Field Service」を利用し、工事管理業務をDX
将来に向けて柔軟性とアジリティのあるアーキテクチャへ変革



事例のポイント

お客様の課題

  • 老朽化や幾度の拡張により基幹システムの一貫性がなくなっていた
  • 工事管理プロセスにおいて多くの担当者が手運用しさまざまな弊害が顕在化
  • 非効率なコミュニケーションを現場と管理側でとらざるを得ないシステム環境

課題解決の成果

  • 「Salesforce Field Service」をベースに工事管理システムを刷新し自動化
  • 1カ月あたり約9000時間におよぶ作業を削減
  • 社内SNSを活用した迅速な業務コミュニケーションやナレッジ蓄積が可能に
  • オンラインでの作業確認や移動時間の精緻化によりCXやEX向上の第一歩に
  • Infrastructure as Codeの仕組みを取り入れインフラ運用業務を効率化

導入ソリューション

  • フィールドサービス管理ソリューション「Salesforce Field Service」
  • クラウド構築・運用自動化サービス「S-Cred+プラットフォーム」

JCOM株式会社
技術部門 技術サポート
本部 工事オペレーション管理部 部長

長野 泰博

JCOM株式会社
情報システム部門
IT企画推進本部 次期基幹
システム開発部 部長

梅田 浩一

JCOM株式会社
技術部門 技術サポート
本部 工事オペレーション
管理部

小倉 啓士

JCOM株式会社
情報システム部門
IT企画推進本部 次期基幹
システム開発部

渡辺 裕太

「今回はシステムを刷新するとともに、それに合わせた新しい運用方法も確立する必要がありましたが、
SCSKはそのチャレンジに一緒に取り組んでくれました」

情報システム部門 IT企画推進本部 次期基幹システム開発部 部長

梅田 浩一

背景・課題

基幹システム刷新の第1ステップとして
約4700名が利用する工事管理システムを再構築

 ケーブルテレビ(CS、BS、地デジ)をはじめインターネットやスマホ、固定電話、電力、映像エンタテインメントなど多彩なサービスを提供するJ:COM 。「あたらしいを、あたりまえに」というブランドメッセージのもと、生活者を取り巻く環境が大きく変化していく中で、一層のスピード感をもって事業を通じた地域の課題解決と発展に貢献し、地域社会とともに成長する企業を目指している。

 ビジネススピードを加速させていくJ:COMが必要だと考えたのが、十数年前にスクラッチ開発で導入し、レガシー化した基幹システムの刷新だ。とはいえ、J:COMの基幹システムは非常に規模が大きく、一度にすべてを刷新するのは現実的ではない。そこで第1ステップとして目指したのが、お客様宅にケーブルテレビやインターネットなどの設備を設置・設定し、サービスを開通させるまでの業務を担う「工事管理システム」の再構築で、2020年にプロジェクトをスタートさせた。

 J:COM 技術部門 技術サポート本部 工事オペレーション管理部 部長の長野泰博氏は、「既存の工事管理システムは、15年程前から継ぎ足しで機能を拡張してきた結果、全体としての一貫性がなく、工事現場で問題が発生した場合には、電話や紙で対応する必要がでてきたり、途中のプロセスで多くの担当者が介在して人手で運用を回さなければならなかったりと、さまざまな弊害が顕在化していました」と語る。

 J:COMの工事サービスの主なプロセスは、①営業がお客様からお申込み受け(契約)②工事管理担当者がお客様先を訪問、工事の要・不要を判断③営業はお客様と相談し工事の日程調整④社内または協力会社のサービスエンジニア(SE)の中から適切なスキルを持った人材をアサイン⑤工事⑥請求業務担当への引継ぎ、である。この①~⑥のプロセスの中で橋渡し役となり各種調整を行うのが、ディスパッチセンターだ。J:COM 技術部門 技術サポート本部 工事オペレーション管理部の小倉啓士氏は、この一連のプロセスについて「SEや工事管理担当者はじめ、調整を行うディスパッチセンターともに、既存システムではプロセスの多くを手動対応に依存していました」と話す。④のSEのアサインであれば、依頼された工事内容に対応できるスキルや実績の情報は、従来の工事管理システムには反映されていなかったため、電話をかけて確認しなければならなかった。また、1人のSEに同日中に複数の工事をアサインした場合、個々の工事の作業時間や移動時間を正確に算出できず、訪問時間が次々に後ろにずれこんでしまったり、逆に無駄な待機時間が生じたりすることがあったという。

 J:COM 情報システム部門 IT企画推進本部 次期基幹システム開発部 部長の梅田浩一氏は「工事管理システムの刷新で大きなテーマになったのが、いかにこれらの人手作業を最小化するかということでした。デジタル技術でSEの手配・調整などを自動化することで、管理業務の効率を大幅に高めると同時に、ディスパッチセンターや協力会社、SE間のコミュニケーションの円滑化も、重要課題として強く意識していました」と当時を振り返る。

解決策と効果

人手に依存していたプロセスを自動化し
月間約9000時間におよぶ作業を削減

 どうすればこの課題を解決することができるか。第三者評価機関なども駆使し、ソリューションの調査・検討を重ねた結果、J:COMが導入を決定したのがセールスフォース・ドットコムのフィールドサービス管理サービス「Salesforce Field Service」である。そして同サービスを機能の要として、工事管理システムの刷新を共に進めていくパートナーにSCSKを選定した。

 SCSKをパートナーに選んだ理由として梅田氏は、「新たな工事管理システムも決して単独で稼働するわけではなく、前段階の申込管理システムをはじめ多くの周辺システムと緊密な連携が求められます。その観点から、これまでの基幹システム拡張案件など長年にわたりパートナーシップの実績があり、弊社の業務や課題を熟知するとともに、Salesforceの各サービスについても高度な知見を有するSCSKと手を組むのがベストと考えました」と話す。

 その後プロジェクトは途中で仕様や運用方法の見直しによる切り戻しがあったものの、徹底したテストを重ね、2022年11月に順次本番稼働にこぎつけた。

 同社 情報システム部門 IT企画推進本部 次期基幹システム開発部の渡辺裕太氏は、「まず神奈川県の湘南地域から先行運用を開始し、検証を行ったのち2023年1月に関西地域への展開を経て、2月いっぱいで関東・九州を含めた全国展開を完了しました。またこの過程で、ユーザーに対する説明会や研修も実施し、定着化を図っています」と語る。

 こうして現在、新工事管理システムは現場のSE約4200名、工事管理担当者約500名のユーザーがタブレット端末から利用しており、全国展開からわずか半年ですでに大きな効果が表れている。

 「1カ月あたり約9000時間におよぶ作業を削減しています。SE一人ひとりのスキルやシフト、スケジュール空き状況などを総合的に捉えた的確かつ迅速なアサインに加え、Googleマップと連動して道路混雑状況や迂回路といったデータも加味しながら移動時間を予測的に算出する自動ルーティング機能など、SEの手配・調整などが自動化され、現場側と管理側のコミュニケーションが高度化されたことが、この業務効率化に大きく貢献しています」(長野氏)

 新システムを利用するSEや協力会社からは「移動ルートの自動作成が非常に便利」、従来エクセルで管理されていた工事計画がオンライン画面で協力会社と共有できるようになり「先の予定が見れて嬉しい」と評価する声が数多く寄せられているそうだ。

 また、現場で生じた問題について小倉氏は、「ケース機能を使うことで、現場からディスパッチセンターへの問合せ電話も大幅に減りました。作業現場で撮影した写真も伝達できるので、問合せへの的確な回答も容易になっています」と、FAQによる自己解決やチャットでの相談により、以前は解決までに何度か電話をかける必要があったことが現在は迅速に解決するようになったと話す。

 加えて新工事管理システムの運用管理面でも効率化が図られている。

 「ITインフラ構築・運用をコード化する、いわゆるInfrastructure as Codeの「S-Cred+プラットフォーム」をSCSKが提案し、取り入れたことで、Field Serviceにおける動的なインスタンス追加やリソース増強などのオペレーションの自動化を実現しています。これにより人為的なミスを排除し、障害からの復旧時間も短縮することができました」(梅田氏)

図:工事管理のプロセスと新システム構成
図:工事管理のプロセスと新システム構成

今後の展望

新工事管理システムの成果を生かしつつCX向上と
J:COM全社のDXに資する基幹システムを目指す

 採用したSalesforce Field Serviceは、SaaS型のクラウドサービスとして日々進化を続けており、J:COMはそうした中から提供される新機能も柔軟に取り入れながら新工事管理システムの改善を進めていく考えだ。今後Salesforce内に蓄積されていく一連の業務に関するデータを活用することで、工事業務のさらなる効率化・生産性向上も容易になる。

 「今回は既存のサービスフローの各プロセスをできる限り自動化し、業務を効率化するという観点からシステム構築を進めてきましたが、今後はさらに工事管理のオペレーションはどうあるべきかといった領域まで課題を深掘りしていき、抜本的なデジテル変革につなげたいと考えています」(梅田氏)

 また、今回リリースした新工事管理システムは、J:COMにおける基幹システム刷新の全体構想のあくまでも第1ステップであり、今後いよいよ他の周辺システムの刷新にも本格的に着手していくことになる。

 「今回、移動時間や作業時間をより正確に見積もれるようになったことで、SEだけでなくお客様にとっても、在宅していなければならない時間を最小化できる、というメリットにつながりました。この新システムで成果を得られた自動化のアプローチなどを継承しつつ、次のステップでは、お客様から弊社サービスの新規申し込みや追加などを受け付けるフロント業務部分のシステムの自動化を可能にするなど、CX(顧客体験価値)向上、ひいてはJ:COM全社のDX(デジタルトランスフォーメーション)につなげていきたいと考えています」(長野氏)

 J:COMでは、引き続きSCSKとのパートナーシップを深めつつ、今後のプロジェクトにチャレンジ精神をもって臨んでいく考えだ。

*

SCSK担当者からの声

JCOM様には社内取り纏めや関係先様との調整など、プロジェクト推進に多大なご尽力をいただきました。我々にとっても新しい取り組みが数多く含まれる難易度の高いプロジェクトでしたが、長年のお取引にて培った業務ノウハウと国内有数のSalesforce導入パートナーとしての知見を最大限に活かし、大規模な工事管理システム刷新の実現とJCOM様の課題解決への貢献ができたことを大変嬉しく思います。今後も基幹システムの更なるDX・CX推進、業務高度化の実現に向けて、共創パートナーとしてお客様へ「あたらしいを、あたりまえに」新たな価値をご提供できるよう、引き続き取り組んでまいります。

メディア事業本部 システム開発第一部 第三課
課長

足立 祐一郎


お客様プロフィール

JCOM株式会社

所在地:東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館
設 立:1995年1月18日
U R L:
https://www.jcom.co.jp/

「もっと、心に響かせよう。もっと、暮らしを支えよう。明日を、未来を、拓いていこう」の企業理念のもと、1995年に創業したJCOM株式会社。それ以来、地域密着型の放送・通信事業者として、ケーブルテレビやインターネット、固定電話、モバイルなど、地域社会の生活を支援する幅広いサービスを展開し続けている。また、映画・番組の制作・配信などの映像エンタテインメント事業を通じて、国内外の多様な映像コンテンツも提供。「あたらしいを、あたりまえに」というブランドメッセージを実現するため、変化し続ける環境の中で、改善と独創的・創造的な取り組みを日々継続している。

2023年11月初版