
【はじめに】
9/26(金)にオンサイトセミナー「SCSK×ScrumInc.が語る 新規事業開発のリアルとアジャイルの実践知」が開催されました。
(セミナー紹介ページ:https://www.scsk.jp/event/2025/20250926.html)
【セッション内容】
目次
1.挑戦を成果に変える──アジャイルチームとマネジメントによる価値の共創
発表者:Scrum Inc. Japan スクラムトレーナー/スクラムコーチ 山本尊人
昨今、デジタルによる創造的破壊が起きており、AI技術の進歩などの変化のスピードが加速している不確実な状況下においてイノベーションを起こすためには大企業においてもアジャイル変革が求められています。
その一例として、Microsoftの事例があります。Microsoftの強みであるエンタープライズのサーバビジネスを成熟事業領域として持ちながらも、より挑戦を促進するグロース領域に向けた新たな組織運営に変え、Azureのクラウドビジネスという新規事業領域を成長させ、大企業において組織変革を成し遂げました。。
では、こうした大企業でのイノベーションをどのように起こしていくべきでしょうか。
大企業は官僚的な承認プロセスとその結果生まれた組織風土により、イノベーションが起こしづらい環境にあります。一方で、人材や資金力、ブランドといった自社資産を活用することがイノベーションを生む利点となります。
そこで新規事業を育て、企業を成長させていくには『コーポレート・エクスプローラー ――新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則』(アンドリュー・J・M・ビンズ 他, 2023)に示されている4つの要素を意識することが重要です。
① 戦略的抱負:投資すべき領域を特定した成長戦略
② イノベーションの原則:顧客志向で高速な仮説検証を行う事業創造プロセス
③ 両利きの組織:成熟事業と新規事業、様々な段階の事業を同時に運営する
④ 探索事業のリーダーシップ:実行する覚悟を持ち、イノベーションと組織変革を牽引する

中でも「イノベーションの原則」として謳われていることは、仮説検証と改善を繰り返すことで価値を探索できるアジャイルな働き方と高い親和性があります。イノベーションの原則である、着想、育成、量産化という3つのプロセスを繰り返して学びを得ることが新規事業を完成させる上で欠かせない活動と言えます。
Microsoftの事例からも言えるように、イノベーションと組織変革は「2重らせん」となっており、両方に取り組んで「両利きの組織」を作っていくことが重要です。
企業全体が新たな働き方へ向かうためには、まずはスクラムチームとマネジメント層の連携チームであるパイロット組織を立上げ、成功モデルを確立し、全体へと拡大していく方法が望ましいです。一方で、既存事業も行いながら働き方を変えていくことは容易ではありません。その際、組織変革の鍵となるのはリーダーのマインドシフト、組織全員の共通言語化です。Scrum Inc. Japanでは、SCSKが提供するNebulaShiftにおいてアジャイルな組織への変革支援と、マネージャーやメンバーのマインドシフトと共通言語化を強力に推進するための認定資格研修や各種ワークショップを提供しています。お客様の本質的な学びと組織変革を支援することで、ビジネスアジリティを向上させ、成功の可能性を高めていきます。


2.試行錯誤がサービスを生み出す──SCSKが切り拓く、新たなふるさと納税のかたち
発表者:SCSK株式会社 産業・製造事業グループ統括本部 共創IT推進部 地域共創課 遠藤敦子/ITインフラ・ソフトウェア事業本部 サーバ・ストレージ部 技術第二課 尼子恵理佳
大企業で生まれた実際の新規事業事例として「SCSKのふるさと納税」について対話形式で講演します。
「SCSKのふるさと納税」は「教育機関を応援する」という目的に共感した人に向けて開発された新たなふるさと納税サービスです。目的型ふるさと納税と呼ばれるもので、返礼品がない代わりに、寄付金の使い道を自分で選ぶことができます。

「SCSKのふるさと納税」のWebサイト:SCSKのふるさと納税
SCSKのふるさと納税のアイデアを事業にするため、まずはこの事業の「勝ち筋仮説」として事業モデルと拡大シナリオを描き、戦略を明確化しました。そして、コンセプトシートやプロトタイプを持って自治体や大学をめぐり、最初の実証実験先となった北海道大学と札幌市に関心を持ってもらうことができました。
社内での評価を高め、SCSKの新規事業としてのポジションを確立するため、「社長が新聞紙面に載る面積」の拡大を目標に、社長にも一目置かれる存在へと進化させていきました。その結果、既存顧客に向けた成熟事業のみならず本サービスによる新規事業という「両利きの組織」に近づくことができました。
さらにアジャイル導入も今回の新規事業を成功に導く重要な要素でした。私たちチームはアジャイル開発の経験がなく、スクラム独自の用語も知らない状態でした。そこでまずは「Scrum Inc.認定スクラムマスター研修」をチームで受講しました。研修の中ではスクラムの背景や成り立ちとともに用語だけでなく考え方そのものを学んだことでチームの共通言語を作ることができました。このスタートを切れたことにより、チーム全員で「なぜアジャイルで進めるのか?」を腹落ちでき、迷ったときに立ち戻れる考え方ができたと考えています。

また、スクラムマスターは、プロダクトオーナーに対しては対等なパートナーとして、メンバーに対しては迷ったときの拠りどころとして、1on1等による支援を常に行っていました。このサーバントリーダーとしての関わりがチームの良い関係性を生み出し、イノベーションを生み出す要因となっていました。

現在、チームは事業の量産化フェーズに入り、モデル化やサポート体制の強化、AI活用による効率化を目指しています。最終的には、企業ブランド価値の向上と社会的価値創出を両立させることが目標です。こうして新たな目標に向かえたのはチームビルディングとその後の成長にあると考えています。
新規事業成功のポイントは、良質なトレーニングとチーム成長、そして「応援心」に根ざしたサービス設計にあります。「SCSKのふるさと納税」など実践知を持ったSCSKのNebulaShiftがアジャイル支援によって新規事業を成功に導いていきます。
3.アジャイルのギアをもう一段上へ──NebulaShiftが築くクラウドネイティブ基盤
発表者:SCSK株式会社 ITインフラ・ソフトウェア事業本部 サーバ・ストレージ部 営業第三課 赤尾進太朗
これまでの講演の中で、大企業の新規事業に欠かせない4つの要素と「SCSKのふるさと納税」での実践という、大企業のイノベーションについてお話ししてきました。イノベーションを生み出す鍵としてマインドや組織の変革は語られていましたが、ITシステムはどうあるべきでしょうか。
イノベーションを推進するには素早く市場にサービスやアプリケーションを投入し、フィードバックを得てサービス内容を柔軟かつ迅速に軌道修正していくことが求められています。
そこで、ITシステムにおいてはクラウドネイティブという選択肢があります。ここでいうクラウドネイティブとは「柔軟性と俊敏性を兼ね備えたシステム」です。中でも、コンテナ基盤を活用することによって、小さく、早くアプリケーションを開発することで複雑な市場環境において試行回数を重ねることができます。まさに試行錯誤を繰り返す必要のある新規事業開発には欠かせない技術です。

「SCSKのふるさと納税」でもコンテナ、マイクロサービス、DevOpsといった技術要素や考え方が用いられ、変更頻度の高いユーザー向けの発信や機能追加が柔軟にできるようになっています。しかし、最新のクラウドネイティブ技術は日々進化し続けておりキャッチアップは容易ではありません。

そこで、SCSKのNebulaShiftであれば組織変革からアジャイル導入、ソフトウエア開発、基盤構築まで、高度な知識を持ったコーチやエンジニアによる様々なサポートを受けることができます。Scrum Inc. Japanと共に、新規事業に欠かせない組織・現場・システム基盤のすべての領域で新規事業、アジャイルへの挑戦をご支援します。
【最後に】
今回はオンサイト限定イベントということもあり、ネットワーキングタイムではご参加者様同士で多く交流いただきました。わずかな時間ではございましたが、新規事業やアジャイルのお悩みなど様々な意見交換ができ、密度の高いひと時となりました。
今後もこのようなセミナーを随時開催し、情報提供を行ってまいります。












