「OSSユーザーのための勉強会」の取り組み

5年目を迎えた『OSSユーザーのための勉強会』
多くのリピータに支持され続ける理由とは

Part.1

Part.2

Part 2

2012年10月にスタートし、今年で5年目を迎えた「OSSユーザーのための勉強会」(以下、勉強会)。これまでの歩みと成果について、R&Dセンター 技術戦略部 OSS戦略課 シニアプロフェッショナルITアーキテクトの渡邊 範尚と、R&Dセンター 技術戦略部 OSS戦略課 プロフェッショナルビジネスクリエータの湯川 栄治に話しを聞きました。

Part 2では、第18回 記念イベントの模様と参加者の声などをお届けします。(Part 1はこちら

各分野の専門家が参集し大盛況となった第18回 AI/Deep Learning勉強会
— 勉強会開始から5年目を記念して、2017年3月21日に開催した第18回は
大掛かりなものだったそうですね。

渡邊: 『#18 AI / Deep Learning』は、いつものNII様にお借りしている会場を離れ、東京駅近くの「ベルサール八重洲」に場所を移して開催しました。今話題のAI(人口知能)とDeep Learning(深層学習)に関連したOSSがテーマとあって注目度も高く、事前登録は早い段階で満席となりました。当日はあいにくの雨にも関わらず予想よりも多い130名以上の方にご参加いただけたので、会場は臨時の椅子を用意するなど超満員。大盛況となりました。

注目の講演は、人工知能学会 会長でNII 教授の山田 誠二様ほか、各分野の専門家にご参集いただき、主要なOSSの特長やアーキテクチャ、最新動向、取り組み事例、今後の展望などについてレクチャーいただきました。また、世界的に活用が本格化しているWatsonとOSSのAI/Deep Learning についても特別にセッションを設けました。

詳しくはこちらの開催レポートをご覧ください。

図5 大盛況となった『#18 AI / Deep Learning』の会場

湯川: 第18回は、5年目の節目として改めて当勉強会のこれまでの経緯と実績を説明し、さまざまな企業・団体の関係者とも深いつながりを持つことができ、またとない機会となりました。この成功を受けて、第18回のような比較的大規模な勉強会を年に1回は開催していこうと考えています。

まあ、企画・運営する側としては、テーマの検討に頭を悩ませ、運営はいつも手作りで椅子や机を並べて会場設営を行っているので、けっこう大変なのですが(笑)、現在新たなテーマを企画しているところですので楽しみにお待ちください。

— では、今年また期待できそうですね。
ところで、参加者の方は勉強会にどのようなご感想をお持ちなのでしょうか。

湯川: それは私たちも興味があったので、第1回から6~7割はご参加いただいている常連の方に感想をお聞きしたところ、以下のようなコメントをいただけました。

SCSKの勉強会が成功した4つの要因

法政大学大学院 情報科学研究科 兼任講師
坂本 寛 様

『OSSユーザーのための勉強会』を初めて知ったのはNIIのトップエスイープロジェクトからだと思っていましたが、メールアーカイブを調べてみると第1回(2012年10月)のテーマであるOpenStackの国内メーリングリストへの発表者でもあるNII アーキテクチャ科学研究系 特任教授の横山重俊先生による投稿がきっかけのようでした。

もう2010年代に入ると既にOSSを冠した勉強会は花盛りでしたが、その中でも御社が参入して成功したのは、私見ですが以下のような要因があるのではないかと思っています。

第1に、毎回のテーマに沿った第一人者を講演者に人選していること。

第2に、講演者に十分な講演時間を与えていること。

第3に、講演資料のアーカイブが固定サイトにしっかり保存されていること(今は他の多くの勉強会でも資料公開するのが主流ですが、アーカイブ性があまり高くないのが現状です)。

第4に、実は映像アーカイブもしっかり残っていること(サイトが異なるのでなかなか分かりづらいのですが、有益な情報なのでもっと周知した方が良いと思います)。

今後も可能な限り参加させていただきたいと思っています。

 

湯川: また、主催者側の立場として、本勉強会の立ち上げから多大なご協力をいただいた、NIIの吉岡様からもご多忙の中、コメントをいただきましたのでご紹介したいと思います。

世界に向けて新しいOSSを開発・発信するきっかけづくり

国立情報学研究所(NII) GRACEセンター 准教授
吉岡 信和 様

NII GRACEセンターは、社会人向けソフトウェア工学教育プログラムであるトップエスイーを通して、SCSKと連携してまいりました。具体的には、SCSKにはトップエスイーの受講生を派遣していただいたり、教育を通じた共同研究を実施してまいりました。また、トップエスイーでは、クラウド関連の講座を初め、OSSを使った教育やOSSによる教育環境を構築し、活用しております。

OSSは、受講生が使うソフトウェアのライセンス管理を簡素化するだけではなく、ソースコードの中身が閲覧できるため、ソフトウェアの仕組みを教えるのに適しています。そのご縁もあり、「OSSユーザーのための勉強会」には、設立当初からその趣旨に賛同し、協賛させていただいております。

「OSSユーザーのための勉強会」を通してOSSの利活用が促進されれば、教育から現場まで広く使えるOSSの促進につながるだけではなく、ひいては日本から世界に向けて新しいOSSを開発・発信するきっかけづくりに貢献できると思っております。

引き続き、今後の「OSSユーザーのための勉強会」のコミュニティの広がりとOSSの発展に期待しております。

湯川: 一般に、勉強会というと発言を求められるのではないかとか、課題を与えられるのではないかといった心配をされる方もいらっしゃるかもしれませんが、当勉強会はテーマとなるOSSの技術など、営業目的に偏らないような観点で説明します。また、概要から講義形式で解説しますので、どのような立場の方も楽しんでいただけるような雰囲気です。

その後の懇親会もオープンで和気あいあいとしており、時間の許す限り自由参加となっていて、LTを目的に懇親会だけのご参加も可能。そして何より無料です(笑)。スタッフにお声がけいただければ、当日のキーマンにお引き合わせすることも可能です。

初めての方も「参加してよかった」という声をお寄せいただいていますので、ぜひお気軽にお申し込みいただきたいと思っております。

効率的で、効果的な情報交換ができるようSCSKは黒子の立ち位置でバックアップ
— 勉強会を開催することの副次的効果や、活用方法についてはどのように考えていますか?

湯川: さまざまな分野の第一人者、専門家との人脈がビジネスにつながることはあります。ご参加いただいた方の中にも、当勉強会で取り上げたOSSを会社に戻ってから皆で学び直し、それをきっかけにOSSの利用促進につながったり、ビジネスに応用できたりしたケースもあると聞きます。また、懇親会で知り合った方との人的なつながりのおかげで、OSSに関する情報交換がしやすくなったとか、知見が広がったという声も多くいただいています。

— 次回の第20回でひとつの節目を迎えますが、勉強会の今後の方向性について教えてください。

渡邊: 第20回は、これまでと方向性の異なる「ロボット開発のOSS」がテーマとなります。また、今後はこれだけさまざまな人々との繋がりができたので、参加者の皆さまからもいろいろなご意見をいただきながら、皆さまが本当に学びたいOSSをテーマを選定し、皆さまと共にノウハウを共有して、開発者・利用者双方の立場でOSSの活用を盛り上げていくことが理想だと考えています。そのために、皆さまに愛される勉強会をこれからも続けていかなければと思っています。

湯川: 今後も先進的な技術分野、例えばAIや自動運転、IoT、ロボット開発などでOSSが技術をリードしている限りはOSSの革新は続いていくでしょう。技術を支えるのは、人と人とのつながりも大きな要素であると考え、当勉強会を継続し、そういった面に貢献できると考えています。リピータの方も増え、人的ネットワークも拡がっているので、参加者や講演者の方々に効率的で、効果的な情報交換の場を提供し続けられるよう、当勉強会では今後もSCSKは黒子の立ち位置でバックアップしていきたいと考えています。

SCSKのOSSへの取り組みには年々、業界からの注目が集まっています。これからの活動に期待しています。

(インタビュー実施時期:2017年7月)