第18回 OSSユーザーのための勉強会 開催レポート(前編)

第18回 OSSユーザーのための勉強会 開催レポート(前編)後編はこちら

OSSがリードする「AI/Deep Learning」分野を第一人者が語る

SCSK株式会社 R&Dセンター 技術戦略部は、2017年3月21日、5年目を迎えた記念イベントとして、「OSSユーザーのための勉強会<OSS X Users Meeting> #18 AI/Deep Learning」を開催しました。その内容を前編・後編に分けてご紹介します。

SCSKはNPO法人トップエスイー教育センター協賛の下、注目すべきOSSを題材に、開発コミュニティの当事者と、これからOSSを学びたい方々との交流や相互理解を通じて共に見識を高めることを目的に、この勉強会シリーズを2012年10月から2~3ヶ月に1度の頻度で開催しています。これまで21のテーマ(OSS)を取り上げ、40の組織の方の協力のもと各OSSの第一人者による勉強会に、延べ約800名の方にご参加いただくなど、OSS業界では最も信望されているイベントのひとつとして注目されています。

18回目となる今回は通常より講演数を拡大して、AI / Deep Learning をテーマに主要なOSSの特長やアーキテクチャ、最新動向、取り組み事例、今後の展望などについて各分野の専門家がレクチャーしました。また、世界的に活用が本格化しているWatsonとOSSのAI/Deep Learning についても特別にセッションを設けました。

講演資料はこちら:「ご挨拶:OSSユーザーのための勉強会のご紹介」

話題の人工知能、機械学習のオープンソースがテーマとあって注目度も高く、事前登録も早い段階で満席となり、開催当日は本格的な雨が降る悪天候にも関わらず、当初予想よりも多い130名以上の方が参加し会場は超満員となりました。

開会に先立ち挨拶を述べる
SCSK R&Dセンター 技術戦略部
OSS戦略課 課長の丹羽 幸雄

会場は満席状態。最新の情報を得ようとする参加者の熱気と集中力が伝わってくる

人とAIが協調しながら目的を達成することに大きな可能性がある

最初のセッションには、人工知能学会 会長で、国立情報学研究所 教授などを務める山田 誠二氏が登壇し、「AI技術の現状と課題、今後の展望」と題して講演が行われました。

現在の第3次AIブームは「統計学的機械学習」の応用が拡大しており、Deep Learningと統計学的機械学習の関係については、「双方の定量的組織的パフォーマンス比較が必須で、両者を使い分けるべきです」と指摘します。

また、「AI、Deep Learningとも得意・不得意があり、AIは動画処理や物体抽出、一般問題解決、常識的な推論、対面・対人的な処理、物理世界、ロボットなどの分野が不得意です。一方のDeep Learningはおびただしい数のパラメータや膨大な訓練データが必要で、論理的基盤が欠如しているため万能ではありません」と山田氏は注意を促しました。

今後、人とAIの現実的で望ましい関係として、山田氏は、人間がコンピュータの力を借りて対局するアドバンスト・チェスや、機長とロボット副操縦士による飛行機の操縦、工員がロボットに作業を教える例などを示し、「人とAIが協調しながら目的を達成することに大きな可能性があります」と語りました。

人工知能学会 会長で、国立情報学研究所 教授の山田 誠二氏

画像分類以外にも物体検出や領域分割への可能性も高いCaffe

次に、「Caffeの特徴と最近の動向 ~ CNN、そしてRNNへ ~ 」というテーマで、先端IT活用推進コンソーシアム クラウド・テクノロジー活用部会のサブリーダーで、株式会社イーグルの取締役 CTO の菅井 康之氏が登壇しました。

Caffeは主に画像分類で利用され、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)に最適化された形で実装されており、対象物の大きさの違いを認識し、対象物が回転、変形していても類似性を見出すことができます。

「しかし、Caffeは画像分類にしか適用できないわけではありません。対象物が画像内のどこにあるかを検出する物体検出技術などにも応用されています」と菅井氏は話します。

また菅井氏は、最近のニューラルネットワークのトレンドは長期依存の学習が可能となった「再帰型ニューラルネットワーク」(RNN)であり、画像や動画に対してRNNを使うことにより、Image Description(講演資料62,64ページ参照)で生成した説明文(キャプション)を付加する技術なども注目されていると紹介しました。

講演資料はこちら:「Caffeの特徴と最近の動向 ~CNN、そしてRNNへ~」

株式会社イーグル 取締役 CTO
菅井 康之氏

膨大なデータに対して今後もSparkが重要な役割を果たしていく

続いて、「Apache SparkとDeep Learningについて」と題し、日本アイ・ビー・エム株式会社 アナリテックス事業本部 第二テクニカル・サービス 田中 裕一氏がセッションを担当しました。

インメモリ分散並列処理フレームワークのSparkは、機械学習とも密接な関係にあります。SparkでのDeep Learningについて「現状はまだ難しい」としながらも、昨年から「Deeplearning4J」をはじめとした各Deep LearningフレームワークがSparkに対応、「DL4J on Spark」や「CaffeOnSpark」、「TensorflowOnSpark」などが続々と登場したことにより、Deep Learning基盤としてのSparkが注目されています。

田中氏は、「Deep Learningだけを使って全ての問題が解決できるわけではありませんが、膨大なデータに対する前処理や機械学習のパイプラインを作るには今後もSparkが重要な役割を果たしていくでしょう」と見通しを述べました。

講演資料はこちら:「Apache SparkとDeepLearningについて」

日本アイ・ビー・エム株式会社 アナリテックス事業本部 第二テクニカル・サービス 田中 裕一氏