株式会社東急ストア 様

人手不足というスーパーマーケット業界の課題に対する新たな一手
RPAの有効活用で、より生産性の高い業務への変革を推進
※RPA:ロボティック・プロセス・オートメーション

働き方改革・生産性向上

システム化でカバーしきれない
人手の作業をRPAで自動化
流通BMS対応後の業務をさらに
年間1,000時間削減 ※流通BMS(Business Message Standards)は、経済産業省の「流通システム標準化事業」により2007年4月に制定されたメーカー、卸、小売のためのEDI標準仕様

事例のポイント

お客様(東急ストア様)の課題

  • 人手不足が深刻化し、業務の生産性向上が急務
  • 業務の粒度やコストの面でシステム化に踏み切れない業務が存在
  • RPAへの関心は高いが、実績がまだなく有効な活用方法が不明確

課題解決の成果

  • システム化した業務領域にRPAを活用し、全体の生産性がさらに向上
  • RPAの特性を理解し、活用ノウハウを獲得
  • 今回の成功体験を足掛かりに、より踏み込んだ業務改革を推進

導入ソリューション

CELF RPAオプション

株式会社東急ストア
経営統括室 情報システム部長

鈴木 恵介

株式会社昭和システムエンジニアリング
ソリューションサービス事業本部
第二統括部 係長

田中 光昭

システム化というアプローチ以上に現場の業務改革に踏み込むことができたのは大きな成果。
今後も新しい技術をうまく取り入れ、生産性向上を追求していきたい。

経営統括室 情報システム部長

鈴木 恵介

背景・課題

人手不足という深刻な業界課題に対し、業務の生産性向上が急務

 東急グループの生活サービス事業としてスーパーマーケットを営む「東急ストア」。同社は、地域の人々の生活を支えるだけでなく、共に豊かな社会を築くことを目指し、東急沿線を中心に84店舗(2019年5月現在)を展開。現在もさまざまな取り組みを実施している。2018年9月には、複合施設の渋谷ストリームにグローサラント(販売する食材で調理したメニューの飲食もできる)型の新業態となる「プレッセ シブヤ デリマーケット」をオープン。また、11月には東急百貨店とマーチャンダイジングを融合させたグロサリー売り場の展開を開始し、話題となっている。

 しかし、明るい話題だけではない。スーパーマーケット業界全体に目を移すと、「人手不足」が深刻な課題となっている。東急ストアもその課題に直面しているのだ。「当社はさまざまな取り組みが奏功し、業績は伸長していますが業界全体と比較すると利益率は高いとはいえず、伸び悩んでいます。その理由の1つが人手不足です。人手が確保できない状況の中、どうやって生産性を向上させていくのか、ということが大きな課題となっていました」と経営統括室・情報システム部長の鈴木恵介氏は語る。

 東急ストアは、これまでにも生産性向上やコスト削減につながる取り組みを行ってきた。2012年にはいち早く「スマクラ(流通BMS・WEB-EDI)」を導入。取引先側の負担分も含めたコストの低減と、発注、出荷、受領、支払など各種やり取りの効率化を実現。さらにはEDI取引以外に残る手書き伝票(月間約4万枚)や青果不良品のクレーム対応など、手入力の作業で多大な負荷やコストが発生していたものをシステム化によって削減している。

 しかしシステム化というアプローチだけでは限界がある。業務の粒度やかかるコスト/期間によってシステム化に踏み切れない領域は多くあり、また必ずしも人による作業がすべてなくなるわけではない。「青果不良品のクレーム対応は、システム化によってFAXでのやり取りなど多くの手作業をなくすことができました。しかし、原価情報や取引先情報などをシステム上で入力する必要があり、件数自体が多いため、その対応負荷も軽減できないかと考えていたのです」と鈴木氏は語る。

解決策と効果

システム化に加え、RPA導入という次なる一手。業務を改革し、さらなる生産性向上を実現

 そこで鈴木氏が着目したのがRPAの活用だ。RPAとはこれまで人が手作業で行ってきた作業をロボットが代行・自動化することにより、業務プロセスの処理にかかる時間を短縮し、業務効率を向上させるものだ。デスクトップ上で行うキーボードやマウスによる操作の手順、特定の条件による分岐をロボットに教えると、ロボットは教えられたとおりに自動実行する。

 RPAの活用を考えていた鈴木氏に時宜にかなった具体的検討の機会が訪れた。SCSKが実証実験の提案をしてきたのだ。SCSKは先述した「スマクラ(流通BMS・WEB-EDI)」導入や、手書き伝票、青果不良品のクレーム対応のシステム化など、東急ストアの生産性向上への取り組みを支えてきた。そのため更なる改善ニーズがあることを察知していたのである。

 SCSKが導入提案してきたのが「CELF RPAオプション(以下CELF)」。CELFは“RPAオプション”という名のとおり単なるRPAツールではなく、プログラミング知識不要でWEBアプリケーションが開発できる機能も提供している。一般的にRPAが特に威力を発揮するのは定型処理など標準化された業務である。そのためRPA導入にあたっては、まず現状業務の整理・見直しが求められることもあり、中には大がかりではなくともシステム化が必要なケースも出てくる。CELFはそういったニーズにも対応。また、複雑で大規模な業務に適用するよりも、個別業務の自動化に適しており、小規模から導入しやすい機能・料金体系になっていることもポイントだ。

 鈴木氏は、CELF導入の実証実験を行うにあたり、情報システム部内で検討を重ねた。

ひとたびRPA導入を検討するといっても製品ごとに特長があり、どういった業務に適用すればよいのかはやってみなければわからない。そのための検証でコストがかかってしまうのも本末転倒だ。「CELFはPC1台から始められ、かつSCSKが実証実験から提案してくれたこともあり、導入検討に踏み出せたのです」(鈴木氏)

 鈴木氏はCELF導入の実証実験を行う対象業務について部内で意見を募った。期せずして手が挙がったのは、SCSKの「スマクラ」が支えている業務領域への適用だった。「青果不良品のクレーム対応でCELFが活きるのではと考えました。毎日のように、どこかの店舗で返品処理が発生します。SCSKの「スマクラ」を通じてシステム化したといっても、その処理にはまだ手間がかかっていました。システムを追加開発するにはコストが見合わないと思っていたため、RPAならばと思ったのです」と語るのは、東急ストアの情報システムの保守・管理を支援している昭和システムエンジニアリング・ソリューションサービス事業本部・第二統括部・第一システム部・係長の田中光昭氏だ。

 鈴木氏は、田中氏のアイデアを採用し、CELFを使って不良品の情報に原価情報や取引先情報などを付加する作業の自動化を進めることに決めた。同社にとってRPA導入はまだノウハウがなかったため、試行錯誤しながら約半年かけて「CELF」を実装していった。「経験もないなか、CELFでどう実現したらよいのかを理解するには多少苦労しましたが、SCSKのサポートもあって無事自動化を実現することができました」(田中氏)

 CELFによる自動化でこれまで5〜6時間ほどかかっていた本部側の作業時間が約半分になったという。年間でいえば1,000時間ほどの削減となる。本導入でも十分費用対効果が得られる成果だ。

 鈴木氏は今回のCELF導入の価値についてこう語る。「これまでシステム化というアプローチ以上に現場の業務改革に踏み込むことはできていなかったので、今回その実績が作れたことは大きい。また、現場の業務には生産性を高められる業務がまだまだあり、貢献できる余地がたくさんあるというのも大きな発見です」

東急ストア  生産性向上と業務変革への取り組み

東急ストア 生産性向上と業務変革への取り組み

今後の展望

新しい技術をうまく活用し、今後も業務の生産性を高めていく
最終的には当社のお客様に喜んでいただくことにつなげたい

 CELF導入により生産性向上を果たした東急ストア。今回の経験で得たRPAの特性の理解を踏まえ、今後も活用を積極的に進めていく構えだ。スーパーマーケットの裏側だけに留まらず、東急ストアのお客様に喜んでいただくことにつなげるのが最終的な目標だ。

 最後に鈴木氏は次のように語った。

「技術の進化はとてもスピーディー。RPAに限らず最新技術を導入することで、作業効率や精度をあげることができるなら、どんどん取り入れたい。とはいえ、実際に使ってみなければ、どこに活かせるのかは未知数。だからこそ試していき、考えていく必要がある。SCSKにはそのパートナーとして、他社のモデルケースなど、契機となる情報を紹介いただきながら、共に取り組んでもらえることを期待しています」

SCSK担当者からの声

東急ストア様には、青果部門の不良品報告の際の手作業を自動化する目的で、弊社スマクラforWeb(Web-EDI)を導入いただきました。しかし、Excelでの手作業が一部残っていたため、「CELF RPAオプション」導入の実証実験を提案しましたところ、最終的に不良品報告作業にCELFがぴたりとはまり、業務のさらなる生産性向上に寄与することができました。

東急ストア様には、現在、スマクラのほか、電子稟議システムなどさまざまなIT価値を提供させていただいております。今後も、本部・店舗・エンドユーザー様にとって、よりよい価値を創造できるよう、SCSKは引き続きご支援させていただきます。

流通・メディアシステム事業部門
流通・メディア第三事業本部 営業第二部

馬場 瑞紀


お客様プロフィール

株式会社東急ストア

所在地:東京都目黒区上目黒一丁目21番12号
U R L: https://www.tokyu-store.co.jp/

「東急ストア」は、1956年に設立したスーパーマーケット。東急グループの生活サービス事業の中核として、東急沿線を中心に主力業態である食品スーパーマーケット「東急ストア」や、ハイクオリティー&ハイサービスをテーマに健康・品質・味にこだわった食の専門館「プレッセ」、小型店舗でありながら地域の生活を支える「東急ストア フードステーション」、食料品からファッショングッズ、ヘルスケアまで取りそろえたショッピングスクエア「フレル」などを展開。「地域一番店」であることを目指し、東急ストアらしい価値の提案に日々取り組んでいる。

2019年5月